眠り月

エロです
いちゃいちゃです
どろどろになってたら嬉しいけど
ふわふわでも嬉しいかも知れない
































































切望感



気持ちよくてふわふわする。
なんかもうどっちが上で下なんだかさえ分からん、というのは今やっている行為の状態じゃなくて、俺自身のことだ。
自分の下半身が持ち上げられて上からがつがつとされているのかそれとも自分が跨って腰を揺らしているのかさえ理解できない。
体が熱いのか冷えているのかも分からん。
ただ、時折滴り落ちてくる雫が心地よく思えるってことは、俺は古泉の下にいて、体は相当熱いのだろう。
空気を求めて開いたはずの口に突っ込まれたのはすっかり冷えて硬くなった何かだった。
「ん……っ、ん、む……」
口に入れたものは咀嚼しなくちゃならんから、と大人しく噛んでいる間にもがつがつと最奥を突かれ、苦しくて堪らないっていうのに、もはや俺の脳は壊れちまったらしい。
そんな行為さえ快感として認められた。
なんとか噛み砕いたそれを飲み込んで、涙目になりながら古泉を睨みつければ、体を痛いほど曲げられ、唇を奪われる。
「は……っあ、んん……」
ぐちゅぐちゅと口の中をかき混ぜられ、飲み込み損ねて残っていたものを掻き取られる。
「ば……か、食いたいなら、普通にっ、く、えっ……!」
返事はない。
代わりにもっと強く舌を吸われた。
食いちぎられるかと思った。
「ふっ……あっ、あんっ…ん、ま、またイく、イくから…ぁ……!」
体全体が性器になっちまったかのように、気持ちがいい。
何もかも出てしまいそうで怖いくらいだ。
それでも俺は逃げないし、逃げられない。
自ら古泉にしがみついて、その背中に爪を立てる。
「ふぁっ、あっ、ああっ、あぁああああ…!」
上がった声の割に、吐き出したものは大人しかった。
勢いがないどころか酷く薄い。
もはや生産能力が追い付いていないようだ。
それなのに、なんでだろうな。
止まりやしないんだ。
空腹を訴える腹に冷えたピザを押し込みながら、それ以上の飢えからくう衝動によって古泉の体に足を絡める。
「古泉……もっと…」
「喜んで」
こんな状況には似合わないほど爽やかな笑みを寄越した古泉が、俺のくわえたピザにかじりつく。
「は……つ、うか、お前、凄いな…。なんでまだ勃つんだ……」
「それくらい、足りなかったんですよ」
しれっとして言っているが、それこそ超人的だ。
なにしろもう二日以上……いや、もう三日か?
時間の感覚が分からなくなるほど、それだけをしているんだからな。
「この…絶倫……」
「ありがとうございます」
そう笑った古泉が俺の体を抱き起す。
今度こそ、俺が古泉に跨る形になって、腰を揺らす。
緩やかに腰を使えば、じんわりとした温かさにもホットミルクの甘さにも似た快感が立ち上る。
「んっ……ん……あ……こういうのも…いいな…」
「ええ…あなたのとろんとした顔も堪りません」
「……あほか」
「事実ですよ」
そう言って、古泉は手を伸ばし、赤くなったままの胸に触れる。
いくらか血がにじんだりもしたからだろう。
かすかにかさぶたの出来たそこに爪を立てられ、出来立てのかさぶたを削られる。
「やっ…あ、痛いって……」
「痛いのも、気持ちがいいんでしょう?」
「…ん……もう、なんかもう、分からん……」
肌が触れるだけでもいいどころか、吐息が触れるだけでも危ない。
痛いのか気持ちいいのか気分が悪いのか恥ずかしいのかさえ、何も。
「は……あー……古泉…」
「なんです…?」
「…多分、次イッたら落ちる……」
「おや……眠たくなりましたか」
そう言いながら古泉が俺の頭を撫でる手つきは、決して妖しくなどなく、むしろ子供にするような優しさに満ちているだろうに、今の俺にはそれさえ快楽の内だ。
頭皮から伝わった感触が脳を震わせているかのような感覚にぞくりとした。
「疲れたし…眠いし……なのに…足りない……とか…」
「お互い様ですよ」
そう苦笑して、古泉は俺の頬に口づける。
「嫌になったら…ちゃんと言ってくださいね」
「どうせなら…もう嫌だってくらいまで、してくれ…」
と告げるついでに、唇に噛みついてやった。
緩やかな動きでも、じわじわと熱量は上がっていく。
それを味わうように、ゆっくりとした動きを続けていたのだが、それでも限界はやってきた。
「はっ……ん、ぅ……もう……」
「ええ……」
相槌なのか残念がっているのかよく分からない呟きを聞きながら、俺は薄く少ないものを吐き出し、意識を手放した。
夢も見ないほど深く眠ったつもりだったのだが、それほど長い時間ではなかったらしい。
目を開けると、
「もういいんですか?」
という声が降ってきた。
横向きにされた俺の中でも深いところに古泉がいる。
「ん……目が覚めた……」
「すみません、勝手なことをして」
「いいから……もっと……」
手を伸ばせば簡単に抱きしめられた。
体をひねっていても、股関節なんかは楽に思える。
だから、という訳でもないのだが、遠慮なく中を締め付ければ、古泉が小さく呻いた。
「あまりきつくしなくてもいいんですよ…?」
「んん………緩くなってんじゃ、ないか…?」
何しろもうずっと入れっぱなしなのだ。
がばがばになっていてもおかしくないだろう。
「平気なようですよ」
そう薄く笑った古泉が、俺の体を回転させると、正面から向き合う形になった。
「ふあっ…」
「すみません、こちらの方が体勢がつらいと言うのは分かるんですが……」
「ん、いい、から……好きに、しろよ……」
もう何度目とも分からない言葉を繰り返し、古泉に許可を与えるようなふりをして、俺の方こそ貪欲に求めた。
それくらい、古泉が足りなかった。
足りないと思わされるようなことがあったせいだ。
それを埋めたい気持ちを古泉も持っているからこそ、こんな有様になっていると分かっていても、それを別の方法で埋める気にはなれなかった。
言葉では足りないどころか、更に傷つけてしまいそうだった。
もっと健全に拳で語り合うなんてことをするには、古泉が愛しすぎた。
その結果がこれってのも笑うしかない話ではあるがな。
ただ、これはこれでよかった。
他の何も考えなくてよかったし、世界の全てが古泉になったかのようで悪い気分でもなかった。
古泉にとっても今は、他の何もなく、ただ俺をむさぼることだけしか頭にないだろう。
それが、何よりも俺を満たした。
そのくせ、むさぼってもむさぼっても足りなくて、もう壊れたかと思うほどだ。
何をされてもいいし、何でもしたい。
他の何についても考えたくなかった。
それがたとえ古泉自身のことであっても、今はもうこの行為のことだけでよかった。
もっともっともっとと求め合う気持ちに際限はなく、それこそ異臭すら放っていそうな状況だと言うのに、醜悪ささえ快感だった。
それでも――どうやら二人とも、本当に壊れはしなかったらしい。
学校を明日に控え、いい加減俺も帰らなくてはならないという時間になると、どちらからということもなく離れた。
汚れきった体をきれいに洗い流し、よどんだ空気を入れ替え、ゴミを押し込んだ袋の口をきっちりと閉じてしまえば、そこには狂った宴の痕跡もない。
時間だからと離れた以上、まだ不満なのかと思ったが、そうでもなかった。
思ったよりは満足しているし、段々と頭が落ち着いて来てみれば、あの狂ったような有様をすぐさま黒歴史として闇から闇へと葬りたいような気持にもなる。
だが、まだ夢は完全に醒めてはいない。
名残を惜しむようにソファに座り、古泉を見れば、古泉も俺と同じような顔をしていた。
「……学生という身分による義務があってよかったな。じゃなかったら死ぬまでくっついてるぞ」
冗談めかして口にすれば、古泉は唇を卑しく歪めて、
「僕としてはそれでもいいですよ」
と悪びれもせずに答えた。
そう真正直に言われてしまうと、俺としても同意するしかない。
ニヤと唇の形を醜く変えて、
「死ぬときは腹上死か」
「出来れば二人同時に」
「そりゃいいな」
クッと喉を鳴らして笑った。
最後までふわふわ気持ちよくいられるなんて最高だ。
死の恐怖を感じることもないだろう。
それどころか、自分が死んだことさえ理解できないかも知れない。
「どうする? 自分が死んだってことにも気づけなかったら」
「そうして幽霊にでもなると言うんですか? だとしても、僕はあなたから離れませんし、あなただってそうでしょう?」
分かりきった問いかけに答える言葉なんて持っていない俺は、醜い形をしたままの唇を、古泉のそれに重ねるだけにとどめた。