眠り月

エロなのですよ






























































ゆめうつつ



僕もキョンくんも、それからもちろん、はるにゃんさん、ながとさん、ちみさんも、生まれた日は同じなので、誕生日も同じです。
初めての誕生日パーティーをしてもらった頃には、僕たちもすっかり成長していて、耳や尻尾といったオプションと、それからちょっとした鍛え方の違いを除けば、オリジナルである幕僚総長や参謀たちとあまり違いがなくなっていました。
特にキョンくんは参謀との違いがありますね。
参謀が体を鍛えていて、しなやかなのに対して、キョンくんは細く華奢で、薄着をしていると体つきだけで区別できそうに思えます。
でも、きちんと軍服を着こんでいると、本当にそっくりで、それが意図的な物かと思うと複雑な気持ちになります。
「お前こそ、総長にそっくりすぎるだろ」
横槍を入れたキョンくんは不機嫌な顔で僕をじっと睨んでいました。
「というかだな、」
ぴしゃんと長く細い尻尾で僕のことを軽く叩いておいて、彼は不機嫌そのものといった声で言います。
「なんで俺と二人きりなのに、キョンのことなんか思い出してんだお前は」
「はあ…いえ……ちょっとした現実逃避と言いますか……その……」
しどろもどろになりながら、視線をさまよわせていると、ぐいっと顔を近づけられました。
「まっすぐこっちを見ろ」
「きょっ…きょきょきょきょ」
「なんだその奇声」
「っ、キョンくん!」
「おう」
「……か、顔が近いんですけど…!」
「……お前が目をそらそうとするからだろ」
それに、と言った唇が、やけに艶めいて見えます。
「顔を近づけずにキスをする方法があるのか?」
え。
「顔以外の場所にするのなら、出来るのかも知れんが……やっぱり、最初は顔だろ?」
そう言って彼が目を細め、僕の唇に柔らかなものが触れた…んだと思います。
キス、してるんでしょうか。
……うん、まず間違いじゃないはずです。
でも、どうして。
目を白黒させる僕を見て、彼は明るく笑って、
「変な顔だな、わん古」
「だ、だって、なんでこんな……」
「好きだから、こういうことするんだって教えてくれたのはお前だろ。俺が……あいつらのしてるの見て、パニクった時に」
「あ……」
そういえばそんなこともあったような気がします。
でも、
「それ、説明になってませんよね…!?」
「はあ?」
苛立たしげに僕を見て、彼はぎゅっと眉を寄せました。
「本当に、分かってないのか?」
「え、ええ、分かりません……」
余りにも顔が近くてどきどきして、もうどうしたらいいのかさえ分かりません。
「……ばかわん古」
いつものようにそう罵って、彼が僕の鼻の頭をかじりました。
引っかかれるような軽い痛みに、頭がくらくらします。
「好きだから、こういうことをするんだろ?」
「え……ええ、まあ、一般的には……」
「こういうことをするってことは、好きだってことだって分かれよこの激ニブ男」
え。
「……わん古…」
聞いたことがないほど甘い響きで僕を呼んだ唇が、もう一度重ねられました。
ざらりとした舌が僕の唇を舐めたかと思うと、驚きにぼんやりしたその隙間へ入ってきて、痛いのかくすぐったいのか分からなくなります。
「ん……っ! きょ、キョンくん……!」
「ふあ……」
とろりとした目をしたキョンくんの唇から、唾液が透明な細い糸のように伸びているのを見るだけで、僕までどこかおかしくなってしまいそうです。
「きょ……キョンくん……あの、ほ、本当に…?」
悪いものを拾い食いでもしたんじゃないでしょうね、と疑いたくなるけれど、それを口にすると流石に本気で機嫌を損ねると分かったので堪えるしかありません。
と、言いますか、
「……お前は、嫌か?」
と不安げに聞かれて、理性が吹き飛びました。
ぼ、僕だって男なんです。
仕方ないでしょうっ。
「い、いやな訳ありません!」
手を伸ばして、キョンくんを抱きしめると、細い体は簡単に腕の中に捕まえられます。
いつもだったら嫌がって暴れるキョンくんが、大人しくしてくれるばかりか、くすぐったそうにしながらもすり寄ってくるのが信じられない気持ちになるけれど、嬉しくてたまりません。
「キョンくん……好きです、キョンくんが大好きです…」
「お……俺も……だから……」
その続きは言えないようだったけれど、行動で十分すぎるほど示されていますよね。
キョンくんの滑らかな肌は何にも覆われておらず、惜しげもなくさらされています。
一緒にお風呂に入ったりする時に、ちらっと見るだけでも眩しくて堪らなかったそれが目の前にあって、自由に触れられるということが信じられません。
でも……いいんですよね。
僕はキョンくんの頬にキスをして、それから顎のラインを舌先でなぞりました。
「んっ……く、すぐったい……」
三角形の可愛らしい耳を震わせる彼に、ごくりと喉を鳴らしながら、彼の首筋まで舐め、
「……首の後ろ、噛んだ方がいいですか…?」
「は……?」
「猫ってそうするんでしょう?」
「お、俺は猫じゃないって言ってんだろ!」
顔を赤くしてそう言って、尻尾でぺしりと叩かれても、嬉しいんだからどうしようもありませんね。
僕は彼の肩に軽く歯を立ててみました。
「ひうっ……! な、ながとじゃないんだから食べるなっ!」
「ながとさんとは意図も意味も違うんですけどね」
「うう……けど…噛まれるのはやだ……」
と目を潤ませる彼は、まるで小さい時の彼のようで、凶悪なまでに可愛らしいのです。
「すみません、嫌がることはもうしませんから……」
「……ん、優しく…してくれ……」
そう言って彼はぽふりと僕の肩に頭を預けてきました。
彼が甘えるなんて珍しくて、まるで別人のように感じられます。
でも……これは本当に彼で、意地っ張りな彼がこんなところを僕に見せてくれているんですよね。
「…愛してます」
囁いて、彼の背中をそろりと撫でてみました。
白く艶やかな背中は滑らかで、触れているだけでも気持ちがよくなります。
それは、彼も同じようなものだったようで、
「は……っ……ん……ぅ……」
かすかな甘い声がしました。
逃れようとしてか、僕の手から背中を離そうとすると、僕の体に自分の体を押し付けるような形になっていることに、気づいているのでしょうか。
「もっと、ですか?」
「や…っ、ちが……!」
真っ赤になって否定しようとするのも可愛らしいです。
「それとも、こちら側を触ってほしい、ということでしょうか」
意地悪なことを言いながら、窮屈な体勢のまま、彼の胸を探り当てると、
「ひあっ…!」
かすかな、でも鋭い声を上げて、彼の体がのけぞります。
少し体が浮き上がったおかげで、触りやすくもなりました。
ツンと立ち上がった突起を指でこねると、彼の体が震えます。
あまりに敏感で、ちょっと心配になりますね。
でも、
「可愛いです…」
「か、わいくなんか、ね…え……」
苦情を言われて、恨めしげに睨み付けられても、やっぱり僕は彼が大好きです。
「キョンくん、僕の上に座ってくれますか?」
「う……? 別に構わんが……」
もぞもぞと体を起こした彼が、最初のように僕のお腹の上に座ると、彼の体がよく見えるようになりました。
赤い突起も、細い腰も、露わになった性器も。
「キョンくん…」
「な……んだよ、あんまり見るなばか」
「綺麗ですよ。もっと…見せてください」
「……っ」
絶句した彼は、僕を睨んで、でも、反論を思い付けなかったようで、
「くだらないこと言ってないで、さっさとしろ馬鹿わん古!」
「可愛いおねだりですね…」
「なにが可愛いんだなにが……」
「どこもかしこも可愛いですよ」
苛立たしげに握りしめられた手を取って、口元まで引き寄せ、触れるだけのキスをしました。
誓いのキスのつもりで。
「愛してます」
「わん古……」
「あなたのことがずっとずっと好きでした。これからもあなたのことを愛し続けます」
「……そんなこと、今更言うまでもないだろ」
「僕が言いたかったんですよ」
「分かったから……早く」
僕は苦笑を返して、でも、僕だって我慢なんて出来ない状態でしたから、彼の太ももをそろりと撫で上げて、形のいいお尻に触れてみました。
これまで触れたことのない場所に触れる、ということに言い知れない興奮を覚えながら、その柔肉をかきわけるようにすると、彼がくすぐったそうに体を震わせて、
「すーすーする…」
「嫌ですか?」
「……やじゃない」
素直な彼が可愛くて愛おしくて、堪りません。
僕は嫌味にならない程度に笑って、その肉の奥に指で触れてみました。
やっぱり、人間とは違うからでしょう。
彼のそこはしっとりと水けを帯びていて、既に柔らかくなっているようでした。
「準備万端ですか?」
「かっ……からかうな…!」
「からかってませんよ。嬉しいだけです」
「うー……」
耳を伏せて唸る彼がどうしようもなく可愛い。
「指、入れますね」
「ん……」
少しだけ体を強張らせたけれど、それは障害になるほどではありませんでした。
ちょっとした手応えと共に僕の指を包んだその場所はとても熱くて柔らかくて、なんだかとても優しく思えます。
「キョンくん……気持ちいいです…」
「ゆ、びだけで、何言ってんだ……」
「でも…キョンくんも気持ちよさそうですよ?」
「そ、そういう風に出来てるんだろっ! 多分!」
だから俺のせいじゃないと言い募るのも可愛らしいです。
「ええ、そうなんでしょうね。ですから、恥ずかしがらないで……」
くちゅ、と音を立てて中をかき混ぜると、キョンくんの顔がなおさら赤みを増します。
「ひぅ……ぁ……ん……みゅぅ……」
仔猫のような声を上げるキョンくんを見つめ、そこに嫌悪や痛みの色がないことを確かめつつ、僕は慎重に指を動かしました。
そこがもっと柔らかくなるようにと。
ぬるついた液体がどんどん溢れてきて、僕の服まで汚しましたけれど、汚れることさえ、僕は嬉しいんです。
キョンくんが気持ちよくなってくれることも、僕がそうしていることも。
「あっ……あ……わん古……もう……我慢、出来ないから……」
「ええ……僕もです……」
ズボンの中で自分のものが堅くなっているのが見なくても分かりました。
もう痛いくらいです。
彼もそれが分かっていたんでしょう。
「……お前の…出してやるから……」
「……いいんですか?」
「ん……」
どこかぼんやりした顔のまま、彼は少し腰を浮かせて、僕のベルトを緩めると、そのまま前も寛げてくれました。
ようやく解放されたことを喜ぶように、勢いよく顔を出したものへ嫌悪感を示すことがなくて何よりでした。
いえ、むしろ彼はそれを喜んだようにさえ見えました。
「怖くありませんか?」
「……お前のだから、大丈夫だ」
という言葉が、僕を好きだからということならもっと嬉しかったのですが、
「お前なんか怖いわけないだろ」
と続けられては、苦笑するしかありません。
「怖くないのでしたらいいんですけどね」
「……だから、もう……」
そう言いながら彼は更に高く腰を浮かせ、自分からそれにまたがりました。
「入れる……ぞ……」
「…無理はしないでくださいね」
「んっ……! ……ふ、ぁあ……!」
その声はなんとも判別しがたいものでした。
痛みに苦しむようでもあり、悦んでいるようでもあり、それから、泣いているようでもありました。
「大丈夫ですか……?」
柔らかくて熱くてとろとろになった彼に包まれているということ、それ以上に、彼とつながっているということに興奮しながらも、務めて理性的にそう尋ねると、彼は真っ赤になった顔を横に振り、
「だ…いじょうぶじゃ、ない……」
そう言って泣きそうな目で僕を見つめ、
「……気持ち、よくて……も……だめ……」
「っ…! きょ、んくん……!」
思わず体を起こし、彼をベッドに押し倒しました。
「ひあぁっ! ちょ、や、やめ、動くなばかぁ…!」
「ご、ごめんなさい。でも……僕ももう、我慢出来ませんっ」
一度腰を引いて、それから少し強めに押し入ると、ぎゅうっときつく締め付けられます。
「やぁっ…! あっ、それ、深いぃ……」
悲鳴じみた声を上げていますけれど、痛い訳じゃないようです。
腰がぶつかるほど激しく腰を使う僕に、彼は必死になってしがみつき、僕の背中に爪を立てました。
猫科らしい鋭い爪によって生まれる痛みは相当なもののはずなのに、僕には嬉しいばかりでした。
いえ、僕がそういう特殊嗜好の持ち主という訳ではありませんよ?
それ以上の快感と幸福に包まれていたからです。
「中に……出して、いいですか……」
「んっ…いっぱい、出して……俺のこと、孕ませて……」
「ええ……僕のたまご…産んでくださいね……」
一番深いところを突いて、彼に口づけて、僕はそれを吐き出しました。
彼もまた、お腹を白く汚していました。
届く範囲のそれをぺろぺろと舐め取って体の中に取り込みながらも、僕たちはまだ離れられません。
離れたくありませんでした。
彼もそうだったのでしょう。
手足を使って僕を引き止めています。
疲れたせいで、随分と眠たそうにも見えるのに。
「……ねえ」
「ん……?」
溶けそうな目で僕を見つめる彼に、僕はおずおずと尋ねました。
「こんなことを聞くと怒られそうなんですけど……でも、一度だけ、聞かせてください」
「…なんだ……?」
「……も、もしも、ですよ。もしも作戦参謀に何かあって……幕僚総長が一人残されるようなことになったら………あなたは……幕僚総長のところに、行ってしまいますか……?」
「………ピロートークとしてはおそらく最悪の部類に入る質問だな」
呆れきった、というよりもむしろ軽蔑したような声で言われ、思わず身を竦ませた僕に、彼はくっと喉を鳴らして笑ったようでした。
「そんなもん、分かってるだろ。……たとえ作戦参謀と一緒にお前がいなくなったとしても、俺は幕僚総長のところに走ったりしねえよ。毎日毎日お前の墓の前で泣き暮らしてやるから……俺よりも早く死んだりするなよ」
「キョンくん…っ!」
感激してもう一度キスをしようとした時、
「いきなりどうした」
という可愛らしい……幼い声がして驚きました。
「え?」
目を瞬かせると、そこには僕の部屋の天井をバックにした彼がいました。
大人じゃありません。
子供の彼です。
「え……あれ……? どうしてまた小さく……」
「寝ぼけてんのか?」
呆れる彼に、慌てて自分の体を見れば、僕もやはり小さいままです。
どうやら、大人になった夢を見ていたようですが……なんだってあんな夢を見てしまったんでしょう。
発情もまだまだなのに。
「すみません、ちょっと夢を見ていたようです。あなたはどうしてここに?」
「……お前が珍しく寝坊してるっていうから、見物しにきてやっただけだ」
そう言いすてて、彼はすとんとベッドから飛び降りました。
「さっさと着替えろよ。今日も忙しいんだからな」
「あ、はい!」
慌てて僕もベッドから降りたのですが、その瞬間、背中がずきりと痛みました。
「あれ……?」
なんだろうと思いながら服を脱ぎ、鏡で背中を確かめると、そこにはくっきりと爪の跡が刻まれていました。

……あれ?