眠り月

エロです
行為は控えめですが、結構えろいと思うのです
雰囲気エロ?みたいな……
























































キスキスキス



目が合って。

あ。

これは来るな。

――そう分かった。
何しろ古泉と来たら、普段は澄ましているか、あるいは何を考えてるんだかさっぱり分からん調子で細めている目を見るからにぎらつかせていたし、色の白い頬はうっすら赤く染まっている。
呼吸だってなんかちょっと荒いし、何よりお前さっき唇舐めただろ。
荒れてないか確かめるつもりか、舌舐めずりなんだか知らんが。
荒れてるか心配したというならそれは全く無用の心配だ。
日頃リップクリームを愛用するような奴の唇がそうそう荒れてるもんか。
むしろ、舐めて唾液が付くと荒れるんだぞ。
ああだがな、リップクリームの常用も実は結構危ないらしいぞ?
唇が黒ずんだりしてくるらしいからな。
気になるならもっと野菜を食って、ビタミンを取れ。
どうでもいいことを考えている俺の心臓がドクドクとうるさい。
古泉の熱に当てられているとしか思えん。
今にも丸呑みにされそうなくらいだってのになんでお前は、
「キスしてもいいですか……」
なんて聞いてくるんだ。
そんな余裕ないだろ。
今の声だって熱くて湿ってるってのに。
それに、俺が嫌だとでも言ったらどうするつもりなんだ。
「嫌だと言ったら?」
意地悪をするつもりと焦らすつもりの半々くらいの気持ちで聞いた俺に、古泉は困った顔をして、
「……待ちます」
と妙にはっきりと答えた。
待つ?
「ええ。……あなたがその気になってくれるのを待ちます」
そう言って古泉は実にさりげなく、そして手慣れた様子で俺の手を握り込んだ。
指を絡め、おまけに親指で俺の親指を撫で上げてくる。
その動きが、なんというか、全然別の物を撫でさすっているかのようにいやらしくて、興奮を尚更煽られた。
ギラギラした目で見つめられて、そんな風に触られて、俺がその気にならない訳がない。
「……キスしても?」
頷いた途端、おずおずと触れてきた。
自分の心臓の音が本気でうるさい。
触れるだけで一瞬離れかけたそれが、離れられないとでも言うようにもう一度重ねられる。
薄く開いた隙間から伸ばされた舌が俺の唇を撫でた。
「んっ……」
くすぐったい。
くすぐったいんだが……やめてほしいとは思えない。
俺は古泉の手を振りほどいて、自分から古泉の背中に腕を回した。
もっと深く、もっと気持ちよくしてほしい。
こうなるともう動物も同然で、ぐいぐいと体をくっつけ合ううちに、俺はソファの上に横たえられていた。
その頃にはもう口の周りまで唾液でべちゃべちゃになっててなんか痒い気がしてくるし、けどそれをぬぐうのも勿体ない気がしてくるあたりどうかしていて、ああもう正常な判断なんて出来やしねえしその必要も感じられん。
「こ……いずみ……」
はふはふと喘ぐように息をしながら古泉を求める俺の顔も相当赤いはずだ。
古泉の顔も、真っ赤である。
普段の取り澄ましたコイツしか知らない連中が見たらびっくりするだろうってくらい。
だが、絶対に見せたくない。
これは俺だけに見せる表情であるべきだ。
「はい……」
俺の言いたいことなど分かってるんだろう。
律儀に返事をしながら、そのくせ、古泉の指は俺のシャツをめくり上げたいかのように、裾のあたりをさまよっている。
「……したいんだろ」
自分がしたいくせに、と思いながら、精いっぱいの強がりでそう言ってやる。
もし古泉が性格の悪い奴だったら間違いなく、揚げ足を取られてもっと露骨にねだらされそうなところだが、幸いにして古泉はそんな奴ではない。
「したいです。……いいです、よね」
「……ん」
頷くとすぐに、シャツをめくり上げられた。
露わになった素肌をたどる視線が熱い。
「あ……あんまり、見るな……」
「すみません。でも……見たいです」
そう言って古泉が顔を近づけてくる。
「……乳首、勃って来ましたね」
「い、うな……!」
キスをして、それから見つめられただけでこんなになるとか恥ずかしい。
自分でも分かってるんだから指摘しないでもらいたい。
「嬉しいですよ。ねえ、キスしてもいいですか」
「したけりゃしろよ……」
そう唸って目を閉じたのは期待したからだってのに、古泉はらしくもなく肩透かしを寄越した。
いや、それともフェイントだとでも言うべきだろうか。
あるいは、古泉としてはそんなつもりもなかったのかも知れない。
キスと言えば普通は唇だとか頬だとか手の甲だとかにするものだと思うのだが、古泉は恥ずかしく尖った乳首にキスを寄越したのだ。
「んっ……! ちょ……」
触れるだけのキスが、くすぐったいだけのはずのそれが、余計に体温を上げる。
おまけに、さっきのキスをたどるように、離れかけたそれが戻り、舌で舐められた。
「ひあ……っ、あ……古泉……ぃ」
さっき俺の唇をそうしたように乳首をついばまれる。
舌を吸った時と同じ調子で吸われ、唇で食まれる。
ちゅっちゅと音を立てるようなキスを繰り返し落とされた。
「ひ、ぅう……古泉……、もう……」
それだけで腰が砕けそうだってのに、というかすでに砕けてるとしか思えないってのに、古泉はあの熱っぽい目でもって、
「まだもう片方ありますよ」
などと言いやがる。
「んな……、何が楽しいんだよ……!」
「楽しいことだらけですよ?」
どうしてそんなことを質問されるのか理解できない、というような顔で古泉は俺を見つめ、それから、まだゆびで触れてもない方の乳首に視線を落とした。
「あなたに触れるのも楽しいですし、あなたを味わうのも、それはもう楽しくて嬉しくて、最高の気分です。それに……あなたがそうして感じてくれるのも嬉しいです。あなたの声がどんどん艶めいてくるのも」
恥ずかしいことを恥ずかしげもなく言った古泉に、俺はもう言葉も出ない。
何を言おうと恥ずかしい言葉が返って来るだけだと悟ったし、頭がぐらぐらしてもうまともに考えられもしない。
なんかもう、恥ずかしかろうと生殺しだろうとなんでもよくなってきた。
だって、なあ?
あの古泉が。
ハルヒだとか機関だとかなんだかんだと特殊で面倒な制限がなかったとしても、おそらく十分大人しい優等生として高校生をやっていたであろう古泉が。
大したとりえもなければ容姿も平凡な俺にこんなに発情してるんだぞ?
これで熱に当てられない方がおかしいってもんだろう。
俺は涙目だか笑ってるんだか分からんような顔で古泉を見つめ、
「もう、なんでもいいから」
と続きを求めるしかなかった。