眠り月

エロです
いちゃいちゃです



























































シーツの中で


寒いなんて感覚は、とっくの昔に失ったとばかり思っていた。人間の体が痛みや寒さを感じるのは、そうすることで自分が危険な状態にあるということを意識させるためのものである。
だからこそ、それを感じてもどうにも出来ないという状況が長く続くと、痛みも寒さも感じなくなる。
ずっとそうなっていたから、もうそれを取り戻すこともないと思ってたってのに、俺は今、ほんの少しの寒さで目を覚ましていた。
部屋の中は空調によっていつでも快適な温度に保たれ、薄くて柔らかなシーツはほどよい暖かさで体を包んでくれているのに、それでも寒いと感じた。
温もりを求めて手を伸ばせば、その背中に指が触れた。
寝返りを打ったんだろう。
向かい合って眠っていたはずの古泉の背中が、俺の前にあり、転がっていったせいで開いた隙間が、今の俺には寒さをもたらす。
俺はそろりと古泉の背中ににじり寄り、それに頬をすり寄せる。
つるつるとしてきれいな背中。
ちらほらと傷が見えなくもないが、その傷だって勲章のようなものだろう。
ハルヒをかばったり、戦闘中に撃たれたり、それから、ハルヒが暴れて…なんてのもあるらしいが、そのどれもが、名誉の傷になっている。
俺の体に今も残る傷とは、全然違う。
違うのに、古泉は俺の体をきれいだと言ってくれる。
俺を好きだと言ってくれて、愛してくれる。
それが嬉しくて、俺も古泉を好きになった。
よく眠っている古泉を起こさないように気を付けながら、その体に腕を絡ませる。
背中に口づけて、体をぴったりとくっつける。
これでやっと、寒くなくなった。
昔よりもずっといい環境にあって、とても甘やかされているのに、俺はとても贅沢でわがままになってしまったらしい。
こうして古泉とくっついていないと、寒くてつらいのだ。
その暖かさを感じて、やっともう一度眠れると思ったところで、
「…どうしました?」
と声がかけられ、回した腕をそっと撫でられた。
「……お前が離れたから、寒くなったんだ」
正直に返して、きつく抱きしめると、古泉は小さく声を立てて笑い、
「可愛いことを言ってくれますね」
でも、と意地悪いものをその声ににじませた古泉は、
「そんな風に後ろから抱きつかれては、キスも出来ませんよ?」
「……じゃあ、こっち向けよ」
腕の力を緩めると、古泉は体を少しずつ滑らせるようにして、こちらに向き直った。
そうすると、密着と言ってもいいほど体が触れ合う。
少し頭を動かせばキスが出来るような距離だ。
俺がそれを期待しているのをちゃんと心得ているんだろう。
古泉はそっと触れるだけのキスを寄越した。
そのまま離れていきそうな唇を舐めて引き止める。
もっと、と言葉でなく行為でねだる。
唇の端を食んで、歯をなぞり、舌を吸う。
それはとてもきれいなものじゃない。
ちゅぷ、じゅぷ、ずると生々しい音を立てて、求め合う。
「……は………」
やっと離れて、息を吐き出す。
でも、満足なんか出来やしない。
「………古泉」
そう呼べば、十分だった。
古泉は柔らかく笑って、
「まだするんですか?」
「…いじわるいうな」
甘えた声でねだって、その唇に噛みつけば、古泉は悪戯にその手で俺の腰を撫でつけた。
それだけでぞくりとしたものが湧き上がり、もう止まれなくなる。
「ん…っ、古泉………」
「あんなにたくさんしたのに?」
「……こんなにくっついてられるのに、しない方がもったいないと思わんか?」
拗ねたように呟けば、頬にキスされた。
「そうですね」
「だったら、」
と俺は古泉の胸から腹へと指先でなぞり下ろし、
「意地悪せずに、してくれ」
「お疲れじゃないんですか?」
「疲れなんかどうでもいい。お前として疲れたって、そんなもん、嬉しいだけだ。……だから、」
「ええ、もう意地悪なんて言いませんから…」
そんな言葉と共に、古泉の指先が腰よりも下へと滑り、まだぬめりの残る場所に触れた。
「んっ……」
「すぐにでも入りそうですけど…そうしてほしいです? それとも、もっと色々なところに触れても?」
「す、きに…しろよ……! お前の、あっ、好きに……されたい…」
可愛い、とかなんとか、古泉の唇が動いたような気がしたが、深く考えたり追及したりする必要はないだろう。
古泉は俺を仰向けに転がすと、俺に伸し掛かるような格好でキスを寄越した。
さっきまでのよりもずっと激しくて、一方的にむさぼられるようなキス。
それが苦しく思えないほど、求められることが嬉しい。
「はぁ……っ、あっ…ん、古泉……」
名前を呼びながら、古泉の背中に腕を回す。
もっと引っ付いていたくて、夢中になって求めれば、脚すら絡み合う。
「これじゃ、動けませんよ?」
「だ……って……」
「ああ、くっついていたいんでしたっけ? それなら…」
「ひぁ!?」
思わず驚きの声を上げちまったのは、おそらく人体の中でも一番と言っていいような急所を古泉がその膝でこすり上げてきたからだ。
「やっ、ちょ……」
「こんなところに脚が来るように動いたのは、あなたでしょう? こうしてほしかったんじゃないんですか? ほら、気持ちよさそうにしてるじゃないですか。ぐちゅぐちゅ音まで立ててるの…聞こえますよね?」
「ひっ…ぁ、あんっ……やぁ……!」
そういうつもりじゃない、と苦情を言うことも出来ない。
荒っぽい動きが、いつもの古泉がするような丁寧なものとは違って、妙に興奮した。
「あっ、あ…あ、んん………」
「いいです?」
「んっ…、いい……! ひ、ぁ……あ!」
このまま果ててしまいそうで、それが悔しくて、古泉の脚を締め付けると、
「このまま素股でもするつもりですか?」
とからかわれた。
「く…っそ………」
「それでもいいですよ?」
「や…だ、……お前とするのに、そんなんじゃ、足りないから……!」
ふふ、と嬉しそうに笑った古泉は、優しいキスを落とし、
「僕もです」
と言ったかと思うと、強引に脚を割り開かれた。
「うあ…!?」
「あなたの寝顔を見てたら、寝てるあなたに無体を働きそうになったから、わざと背中を向けたんですよ? それなのに、あんな風に可愛くねだられて、大人しくなんてしていられませんよ」
そう言って、古泉は少し乱暴に指を突き立てた。
「ひっ…!」
「柔らかいですね。…でも、少しきつくなってる……。一体どんな鍛え方をしたらこうなるんでしょうね」
「お、れだって、大変なんだよ……っ! あっ、あ…そ、そこ、ひぃん…っ!」
「大変、ですか?」
そこ、と訴えたってのに、古泉は指を止め、じっと俺の顔を覗き込んでくる。
「……ゆるゆるのがばがばなんてことになったら、お前だって嫌だろうが」
だからちょっとは鍛えとこうなんて思ってるってのに。
「杞憂ですよ」
ばっさりとそう切り捨てて、古泉は俺の中を大きくかきまぜる。
「んあぁっ、あっ、出る……!」
「まだ大丈夫でしょう?」
知り尽くしてるとばかりに低く囁かれる言葉が心地よい。
「ここがどんなに柔らかくなったとしても、いつだって僕のことを包んでくれるだけのことじゃないですか」
そうでなければ許さないとばかりに、中を開かれて四肢が震えた。
「ん……っ、だ、ったら…俺の中…お前の、形にして……」
恥ずかしい言葉を選んでねだれば、古泉は笑って俺の肩に噛みついた。
「んっ!」
「入れますよ」
短く宣告して押し当てられた熱は、俺の物よりもよっぽど高くないか?
そんなになってるなら、嫌がらせじみたことを言ったりしないで、さっさとしてくれりゃいいのに。
先ほど強引に開かれた足を、今度こそ自発的に開く。
その隙間を古泉が埋めてくれることを願って、
「早く…」
と求めれば、優しく抱きしめるような形で、古泉がそれを埋めた。
「ん……っ、ぅ、ふあぁ…!」
暖かい。
でも、もっと埋め尽くしたくて、唇を合わせる。
何もかもを絡め合う。
どこにも隙間がないように。
「……古泉………好き」
そう囁いて、俺は古泉をきつく抱きしめたまま意識を手放した。
体の中も、心の中も、暖かく満たされて。