エロですよ
スマイル? 2
しっかりして見える服装やきちんと整理整頓された部屋の様子からはとてもそうは見えないのに、どうやら彼はとても寂しがり屋らしい。見知らぬ他人にこんなにも甘えるなんてどうなんだろう。
そんなことが出来るなら、赤の他人でなくても慰めてくれる人間の一人や二人いてもおかしくないだろうに。
それとも、素面だとそんなことが出来ないとでも言うのだろうか。
しっかり者なら、そんなこともあるかも知れない。
何にせよ、僕はこんな風に頼られるのが嬉しくて、一層彼を可愛いなんて思いながら、少しずつ欲を強めていた。
「キス…しますから……」
嫌なら抵抗してください、という意味で言ったのに、彼は小さく頷いて目を閉じる。
可愛いなんてものじゃない。
愛しい、なんて言葉を使ってしまいたくなるほどの暖かくてくすぐったい感情が湧き上がり、僕を困惑させる。
同時に、こんなに従順で寂しがり屋の彼が心配で、あらぬ嫉妬めいたものまでくすぶり始める。
「……赤の他人の僕にもそんな風に抵抗しないってことは、他の人でもそうなんでしょうね」
そう独り言めいた呟きを漏らすと、彼は閉じていた目を見開いて、泣きそうな顔をする。
「……んなこと……した、こと……ない…」
震える声でそう呟いて、僕のシャツの胸のあたりを心細そうに握りしめる。
「…こっちに、きて、俺に優しくしてくれたのなんて………お前…くらいだ……」
「優しくされたらいいんですか?」
「ん………優しい…なら……いい…」
酔っているからにしても、
「…心配な人ですね……」
そっとため息を吐けば、呆れられたとでも思ったんだろうか。
「お、置いてくな…」
とまたもやしがみついてくる。
「置いて行ったりしませんよ」
むしろこちらが離れられなくなりそうで怖いくらいだというのに。
しっかりとしがみついて離れない彼に、
「…そのままだとキスも出来ませんよ?」
と囁けば、彼はびくっと反応をしておいて、そろそろと体を離した。
真っ赤な頬を指先で撫でると、嬉しそうに鼻を鳴らしてすり寄ってくる。
その唇にちょっと触れるだけのキスをすると、酒の味がしたように思えた。
「ん……」
くすぐったそうな声を上げる彼に、
「キスの経験もなかったりします?」
と意地悪な問いかけをすれば、彼は目をそらしながら、
「うるさい…」
つまりは経験もない、あるいはないようなもの、ということなんだろう。
僕は改めて、おそらくまだ二十歳になるかならずというところなんだろう彼の純粋さを感じ、
「……本当に、いいんでしょうか」
「何が…?」
「このままあなたを襲ってしまって…」
「………まずいと思うならやめればいいだろ。…俺は……こうやって引っ付いていたいだけなんだし…」
そう言ってすり寄る仕草がどれだけ挑発的か、彼は自覚してないんだろう。
「好ましいと思うような人とおとなしく引っ付いているだけでいられるほど、きれいじゃないんです。すみませんね」
「んな…きれいな顔で何言ってんだお前……」
そう言った彼が僕の顔をそろりと撫でる。
「…誘ってます?」
「違う…」
「誘ってるようなものですよ」
そう言ってもう一度口づける。
薄く開かれたままだった彼の唇を舌でなぞり、その内側まで撫でると、彼の舌先に触れた。
怯えるように逃げようとしたそれを追い、舐め上げ、音を立てて吸うと、彼が苦しげな声を上げた。
「うぁ……っ、ん…」
「もっと…いいですよね」
「お、れに…聞くな……ばか…」
毒づいても可愛いだけだ。
もうひとつ、触れるだけのキスをしておいて、僕は彼のシャツに手をかけた。
頭からすっぽりとかぶるタイプのそれを脱がせるのは少し手間だけれど、かといってめくるだけにする必要はなかった。
「脱がせますから、手を挙げて…背中を浮かせてくれますか?」
と囁けば、彼は羞恥に顔を赤くしながらも頷き、その通りにしてくれるからだ。
子供が服を脱がされる時のようにされても、彼はまだ抵抗する気にならないらしい。
こうなったらとことん甘やかしたいような、甘やかすふりをして虐めたいような気持ちになる。
あらわになった白い肌を、へそのあたりからのど元までそっと撫で上げ、
「色白なんですね」
「お前が言うな…」
そう言う声が震えているのは、感じているからだろうか。
「くすぐったいですか?」
「当たり前だろ…。……つか、むずがゆい……。お前の触り方がおかしいんだ…」
恨みがましく言っているつもりかもしれないけれど、どうにも甘く聞こえる。
僕は笑みだけを返して、彼の小さな突起を撫で始める。
それは突起と言うのもどうかというほど小さくて平らだけれど、優しく撫でくすぐっているうちに、だんだんと形を成し始める。
最初から形がはっきりしているというのよりも、この方がよっぽどいやらしくて興奮する。
「ん……っ、ぁ……なんか……やっぱ……変………」
「変、ですか?」
「む、ずむず、して……、おかしい…っ……」
そんなことを言いながら、僕の腕を握り締めるのは逆効果ですよと教えてあげた方がいいんだろうか。
「胸で感じちゃうんですね」
虐めるように囁けば、彼は大きく目を見開いて、
「んな…っ……」
「だって、そうでしょう? …ここで、気持ちいいんですよね?」
ぐりっと少し抉るように押しつぶせば、
「ひっ……ぃ…」
と泣きそうな声を上げるのに、興奮が冷める様子もない。
僕はくすくす笑って、
「違うんですか?」
「ちが……わ……ないから………もっと…」
「もっと……なんです?」
「い、言わせるな…!」
と睨んでも可愛い。
もっと虐めたいなんて思ってしまう。
「もっと、痛くしてほしい?」
赤くなってきた彼の突起をぎゅっときつめに抓ると、
「ぃあ…!」
悲鳴じみた声を上げて、彼はきつく目を閉じる。
反射的に殴られても仕方ないかと思ったのに、彼は相変わらず抵抗らしきものを見せない。
「痛いのも、好きですか?」
「好きな、わ、け、あるかばか…っ……!」
「暴れるなりなんなりしていいんですよ?」
「……したら、いなくなるくせに………」
泣きそうな声でそんなことを言うなんて、この人はどれだけ寂しいんだろう。
「すみません、つい、意地悪なことをしてしまいましたね。……優しくしますから…」
そう言って、真っ赤になってしまった突起をそっと舐めると、
「ひゃ…っ……」
と今度はくすぐったそうな声が上がる。
「痛くはありませんよね?」
「ない……が……変だって…。…んぁ…っ!」
ちゅ、と音を立てて吸いあげると、彼の体がくすぐったそうに震える。
「あ、っ、ん……、あっ……やぁ…!」
「嫌ですか?」
「む、むずむずして、やだ…って……」
いつの間にか泣きじゃくっていた彼にそんな風に言われると、止めなくてはいけないようにも思うのだけれど、
「でも、このままじゃつらいのはあなたも同じですよね?」
と言って、さっきからじわじわと存在を主張し始めているものを手の平で押さえると、
「ひっ…」
と短く上がった声の色は、判然としなかった。
悲鳴なのか嬌声なのかさえ、よく分からない。
それをゆっくりと揉み込めば、彼は苦しそうに唇をかんで僕を見つめる。
「ただむずむずするんじゃなくて、気持ちいいんですよね?」
彼は悔しそうな顔で小さく頷いておいて、
「……優しくするって、言ったくせに…」
と呟いたけれど、そういうのは逆効果だとどうしたら分かってくれるんだろう。
「…なんであなたはそんなにも、可愛らしいんですか」
「なっ…!? か、可愛くなんかないだろ! お前、ほんとは酔っぱらってんじゃないか!?」
真っ赤な顔で反論されても余計に可愛いだけだ。
「可愛いです」
「んなこと…」
「ありますよ。……ああ、どうしましょうか」
困ったなと笑って、僕はそっと囁く。
「…あなたのことを好きになってしまったみたいです」
「……は…?」
何言ってんだお前、とばかりに見つめてくる彼には笑みを返し、
「だから、続き、しましょう」
と言って彼のズボンを脱がせにかかった。
混乱しているからか、それともまだ酔いが醒めていないからか、彼の従順さは変わらなくて、
「腰を浮かせてください」
と頼めば素直にそうしてくれるから、彼を裸にしてしまうのなんて、本当に造作もないことだった。
薄暗くてよく見えない、と不満に思ったほど、彼の体はきれいだった。
もっと見たい、もっと知りたいと望むということは、やっぱり僕は彼を好きになってしまったということなんだろうか。
人を好きになるなんて久しぶりで、それもこんなきっかけでなんておかしくて、つい笑ってしまう。
自分の気持ちを試すような思いで、彼の半勃ちになったものに顔を寄せる。
独特の匂いに眉を寄せはするのに、萎えることがない自分に呆れつつ、そっと舐めてみる。
「ぁ…っ、ば、っか……! なに、やって…!」
「何って……説明してほしいんですか?」
「するな…ぁあ!」
軽く甘噛みすると、悲鳴のような声を上げるのに、彼は脚をばたつかせることもしない。
口に含んで、わざと音を立てるようにして唇でしごき、吸い上げてみれば、甘い声が溢れて止まらない。
それに夢中になって、我に返るのに時間がかかったということは、本当に僕は相手が男だなんてことがどうでもいいということなんだろう。
我に返った理由だって、
「やっ…! あ、も、もう…っ、イく、から……っ…」
と彼が声を上げたからだったし、我に返ったとはいっても、行為を止める気などさらさらなかった。
「どうしましょうか?」
「は………?」
「優しくすると言った手前、勝手なことは出来ませんよね。ですから、教えてください。…このまま出したいですか? それとも……」
と僕は自分の唾液や彼の先走りが混ざったものを指先ですくい、彼の脚の間まで滑らせる。
「ふあ……っ……!?」
「先にこちらですか?」
「や、こ、こっちって、な……」
「分からないなら、教えてあげますよ」
まだ意地悪だろうかと思いつつ、そう囁き、何も知らない小さな窄まりをくすぐると、
「ひゃ…っ、あ……! それ、やっ…、くすぐったい…!」
と甘い声を上げる。
「くすぐったいんじゃなくて、気持ちいいんでしょう?」
「……き、もち、よくなりそうで、怖いから…!」
「気持ちよくなっていいんですよ」
指先を少し強引に押し込むと、彼は怯えるように体を竦ませたけれど、
「痛くないように、優しくしますから」
と言い聞かせるまでもなく、抵抗はない。
まるでそうするすべを見失っているかのようだ。
「……ねえ、本当に嫌なら、暴れたっていいんですよ」
心配になってきてそう言った僕に、彼は一度は止まっていたはずの涙をまたもや溢れさせそうになりながら、
「こ、んな、状態で、放り出されたいなんて、思えるか…ばかぁ…!」
「すみません」
謝って、指を少しずつ動かし始める。
「っふ、ぅ……くっ………んん…」
「痛みますか?」
「…い……たくは…ないが………気持ちわる……」
「…ローションでもあればいいんですけどね……」
流石にそんなものを準備している余裕はない。
少しでも楽にしてあげたくて、唾液をたらし、更にそこを舐めると、
「ひゃっ…! あっ、ば、か…! 病気になっても知らんぞ……!」
と言われたけれど、
「心配してくださってありがとうございます」
と笑うしかない。
「治療費の請求なんてしませんから、安心してください」
「あほか…!」
彼のことを知るほどに、愛しさが募る。
どうしようもなく惹かれてしまう。
僕はそれこそ彼が泣きじゃくりながら、
「も、やだぁ……」
と声を上げるまでじっくりとそこに愛撫を加えてしまった。
「…も……するなら、しちまえよ……」
涙を溢れさせながらそんなことを言う彼は扇情的で、
「……してしまいますよ」
「ん……っ、早く…」
自ら脚を開き、彼は僕を待つ。
僕はごくりと唾を飲み、狭苦しい場所から取り出したものを押し当てた。
「…入れます……から…」
「あ……ああ…」
怖がっているのか、目を閉じ、体を固くする彼のまぶたに、僕はそっと口づけた。
「ん…?」
「…あなたが好きです」
「……ばか」
というのが彼の返事だったけれど、今はそれでいいと思えた。
よく解したつもりだったけれど、それでも彼の中は狭くてきつい。
「…痛かったら…すみません」
謝りながら、慎重に腰を進めると、
「ひ……っ、く……ぅあ………」
と彼が苦しげに呻く。
「ゆっくり息を吐いて…」
「…ふ………っう……………ぅ…」
「その調子ですよ…。………ほら…これで全部です」
「……あ………はぁ……」
ため息めいた息を吐いて、彼はぐったりしてしまった。
「…大丈夫ですか?」
「なんとか……な…」
「……動いても?」
「…ゆっくり、なら……?」
「ありがとうございます」
彼の唇にキスをして、ゆっくりと腰を使うと、柔らかな内壁に締め付けられて、思わず呻く。
「く……っ…」
「ひあ…! あっ……、ぅ…や……ぁ…」
「だめ…ですか……?」
「だ、めじゃ、ない、ない、ん、だが……っ、ひ、ぅ………、気持ち…よく、て……」
「……それは確かに、だめじゃありませんね」
少しばかり人の悪い笑みを浮かべた自覚はあるけれど、どうにもならない。
「あなたはこのあたりがいいみたいでしたよね?」
そう言いながら、狙ってこすり上げると、
「ふあぁ…っ! だ、めだって…! ひっん……、んっ……んぁあ……」
彼の甘い声が聞きたくて、そこばかりいじめると、彼は必死にしがみついてくる。
「……好きです…」
囁いて口づければ、苦しいだろうに彼は舌を伸ばして求めてくれる。
愛しいと思った。
「…あなたの名前が知りたいな」
「……ひっ、あ、だ、った、ら……あぁっ…」
「後で聞かせてください。…今は……ね…?」
「あん…っ、んっ、ああっ…!」
きゅうと締め付けられて、自分がもう我慢出来なくなるのを感じた。
彼ももう限界だろう。
「…どうぞ、イッてください」
そう言って、今にもはじけそうになっている彼の物をしごくと、彼は悲鳴のような声を上げて達した。
それと共に搾り取ろうとするように彼の中が動き、僕は堪らず身を引くと、彼の上に白いものを吐き出した。
彼は酒のせいもあってか、ぐったりしたまま眠り込んでしまい、名前を聞き出すことは出来なかったけれど、後始末をして彼の隣に潜り込んだ僕は言い知れない幸福感に包まれていた。
うっすらと涙の後の残る彼の目元に口づけて、
「…あなたが好きです」
ともう一度囁いた。