襲い受けなエロですよー
しかしいいところで終るのでR15くらいで←
最近の俺は本当におかしい。 気がつくと一樹を探して校内をふらふら歩き回っていたり、門限ぎりぎりまで一樹の部屋に居座ったりしてしまうのだ。 いや、それだけならまだマシだ。 問題は、その程度じゃ済まされなかったことにある。 これからするのは、そういう話だ。 下校時刻が迫るのを感じながら、俺は急ぎ足で一樹の姿を探していた。 今日はどういうわけかやけに忙しくて、朝から一度も会えていない。 昼休みは別々に食事を取る破目になったし、放課後になっても教室で足止めを食らったりしちまったのだ。 それでも、今日は一応週の中日だし、だから昨日も一樹に会ってはいるのだ。 それなのに、こんなに切なく、寂しい気がするなんて、俺も相当末期だが、俺でさえこうなら、一樹は俺以上に寂しがっているに違いない。 そのためだ、と自分を誤魔化しながら、一樹を探して歩いていると、美術室で見かけたと教えてもらった。 美術室なんかで何をやってんだ、と首を捻りながらも、俺は足を早めた。 会いたいなんて、どうして思うんだろうな。 会ったって、下校時刻が迫っていて、ろくに会話が出来るほどの時間も残っていないのに。 それでも俺は、一目だけでいいから一樹に会いたかった。 会って、あの綺麗で可愛い笑顔を見たいと思った。 つんと澄ましていても、一樹は美人だと思う。 だが俺は、ちょっと締まりがないくらいに緩み、喜色に染まった一樹の顔が一番好きだ。 可愛くて、愛しくて、幸せになれるような、顔。 それを思い出すだけで自分の顔がにやけてくるのを感じながら、俺は美術室の前に立ち、一応ノックしたものの、返事は待たずにドアを開けた。 それくらい、一樹に会いたかった。 返事を待つのももどかしかった。 しかし、ちゃんと待つべきだったのかも知れない。 そうしたらきっと、見なくて済んだはずだから。 一樹が俺じゃない誰かを抱きしめてるところなんて。 「ぁ……」 わななくように手足が震えた。 わななく、という言葉は本来怒りや恐怖、寒気で震えることを言うらしいのだが、俺が今感じているのは怒りでも恐怖でもない。 ただ訳が分からなかった。 ひたすらに悲しかった。 「っ、失礼しました!」 一方的に言って、俺はドアを乱暴に閉めた。 あれ以上、見ていられなかった。 自分の方がよっぽど間男みたいになって、俺はその場から逃げ出した。 逃げて、逃げて、気がつけば、勢いに任せて学校を飛び出し、家まで逃げ帰っていた。 「キョンくんー?」 なんて心配そうな声を上げる妹に言葉を返すことも出来ずに、俺は自室に閉じこもる。 ひとりになった途端、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちはじめた。 胸が痛くて、苦しくて、だから泣いているんだと思った。 何かの病気に違いないとさえ思った。 それが間違っていることくらい、俺にだって分かったさ。 だが、認めたくなかった。 目撃したその時は驚いたし、狼狽したが、今、ちゃんと考えてみれば、あれは別に一樹がどうとか言うんじゃなくて、俺もよく頼まれるように、元気づけるためとか応援のためのハグだったんだろうと分かる。 分かるのに、どうして胸の痛みが治まらないのか。 たったそれだけのことでも、そして、仕事と分かっていても許せないほど、妬いているんだと、鈍い俺でも分かった。 一樹を取られたくないだけじゃなかった。 人前ででも一樹といちゃつきたいだけじゃなかった。 俺は、俺以外の誰かが一樹に触れるのも嫌なんだ。 それどころか、俺じゃない誰かに一樹が微笑みかけるのも、優しい言葉を告げるのも、それで俺じゃない誰かが一樹にうっとりした瞳を向けるのも、嫌なんだ。 ぞっとした。 自分の独占欲の思っても見なかった強さをまざまざと見せ付けられ、自分の醜さを叩き付けられたような気がした。 それは多分、気のせいじゃない。 俺はこんなに汚くて、醜くて、狭量で、嫉妬深くて、泣き虫で、気持ち悪くて、卑しくて、どうしようもないんだ。 それなのにどうして、一樹と付き合ってられるんだ。 付き合ってなんていられない。 そう思って、携帯を手にとったところで、けたたましく着信音が響いた。 一樹だ。 「……はい」 怖々通話ボタンを押すとすぐに、 『ああ、よかった。やっと出てくださいましたね』 という、安堵に満ちた一樹の声がした。 それを聞くだけで、またもや涙が止まらなくなる。 せめてしゃくりあげたりして一樹に気づかれないようにと思ったってのに、 『…泣いてましたか?』 と聞かれ、びくりと体が震えた。 『泣かなくていいですよ。何も心配することはありませんから。……先ほどのは…』 「分かって、る…」 泣き濡れた情けない声しか出なかったが、泣いてたことを知られてるならもう同じことだろうと開き直り、声を上げた。 「仕事、だろ? 分かってる。分かって、る、のに…」 ひっくと喉が勝手に震えた。 「わ、かって、て、それ、なのに、嫌なんだ…! お前が俺以外の、誰、か、に、触れるのも、…わら、い、かけた、り、するのも、嫌なくらい、っく、ぅ、……ふ、えぇ…」 最後はもう完全に泣き声だった。 泣きすぎて、横隔膜まで痛くなりそうなくらい泣く俺に、一樹は優しい声で、 『苦しくさせてごめんなさい。大丈夫ですから』 などと宥めてくれる。 それは確かに嬉しいのに、他の誰かにもそんな風に優しい言葉を欠けることもあるんだろうと思ったら、胸の痛みは酷くなった。 『妬いてくれて、嬉しいです。……僕も、同じくらい妬いてしまいますし』 「…おま、え、も……?」 なんでだよ、と訝る俺に、一樹は鈴を転がすような声で笑った。 『あなたは本当に、自分がどんなに魅力的な人か分かってくださらないんですね。……あなたは優しいでしょう? 優しいから、たとえ頼まれなくても、困っている人がいたら手助けをしに行くじゃないですか』 「んなの、当然だろ?」 『そうやって、当然のこととして出来るから、凄いんですよね。でも僕は、あなたが僕でないどなたかのために東奔西走されたり、胸を貸しているのを見ると、どうにも堪らない気持ちになるんです。そのまま、割って入って、邪魔をしてやりたくもなりますし、あなたは僕のものですと大声で叫んでやりたくもなります。……それくらい、あなたが好きです』 そう言われるだけで、涙が溢れたが、今度は勿論嬉し涙に決まっている。 『本当は、すぐにあなたを追っていきたかったんです。でも、門限が迫っていたのに加えて、寮長に見つかってしまいまして…』 「ばか、無理して来なかっただけ褒めてやるよ」 『褒めていただけるのは嬉しいですけどね。…僕は、あなたに会いたかったのに』 切なく囁かれて、心臓が跳ねる。 「俺も、会いたい。……だから、明日の朝、お前のところで朝飯食ってもいいか…?」 『え?』 「弁当、作っていく、から…」 羞恥で声を震わせながらも、何とかそう言った俺の鼓膜を、一樹の軽やかな笑い声がくすぐった。 『お待ちしてますね』 翌朝、いつになく早起きして弁当を作り始めた俺にお袋がにやにやしながら、 「なに? 好きな人でも出来たの?」 と聞いてくるのへ、よっぽど、彼女が出来たとでも答えてやろうかとおもったのだが、それで下手に騒動になって、今日も一樹に会えないなんてことになりでもしたら、今度こそ焦がれ死にでもしちまいそうだったので、 「んなわけあるか。一樹に会いに行くだけだ」 と返し、手早く詰め込んだ弁当を手に、家を飛び出した。 道行く人もまばらな早朝の街を駆け足に近い早足で歩く。 会いたくて、会いたくて、堪らなかった。 朝練のある運動部員のために開け放たれていた門をくぐり、寮に駆け込む。 驚く子も、誰かの挨拶の言葉も、俺の目には入らず、耳にも届かなかった。 そうして、やっとの思いでたどりついた一樹の部屋は真っ暗だった。 どうやらまだ眠っているらしい。 「一樹」 と呼ぶが返事はない。 弁当を食卓の上に置き、そろそろと寝室に忍び込むと、一樹がすやすやと眠っていた。 「……いい気なもんだな」 半ば呆れて呟いた俺は、それでもやっと間近に見れた一樹の顔に見惚れた。 やっぱり綺麗だと思う。 それが俺のものだと思うと優越感に胸も震えた。 それ以上に一樹が愛しくて、一樹に触れたくて、俺は眠る一樹をきつく抱きしめて、眠り姫よろしく寝こける一樹の唇にキスをした。 柔らかくてぷるんとした感触に、胸がどきどきする。 もっと触れたい。 触れるだけじゃなくて、触れてほしい。 そう思ったら、理性なんてどこかに行った。 俺は制服がシワにならないようにと脱ぎ捨て、下着姿になると、軽い羽布団をはぐって、その中に潜り込んだ。 一樹は薄いネグリジェ一枚だったから、体を擦り寄せるとその温かさも柔らかさも伝わってきた。 ぞくんと体を震わせながら、俺は一樹に抱きつき、キスをした。 触れるだけのキスを何度かする内に、それだけでは足りなくなる。 相手は寝てると分かってて、唇を薄く開き、舌を差し出して唇を舐める。 熟睡しているらしい一樹が憎たらしくて、軽く唇を噛んでやる。 それでも起きない一樹の手を掴んで、自分の胸に押し当てた。 「んっ……ぁ…」 一樹の手だというだけで、ぞくぞくした。 大して膨らみもない胸の中心で熱を持った突起を摘んでほしい。 胸をいっぱいに揉みしだいてほしい。 いっぱい触って、愛してるって言ってほしい。 眠る一樹の体に自分の体を擦り寄せて、あえかな嬌声を上げる浅ましい姿を、一樹に見せたくないのかそれとも見てほしいのかさえ分からなくなりながら、満たされないまま高ぶりつづける熱に震えたところで、きつく抱きしめられ、舌を吸われた。 「んむ…っ…! ぁ……」 反射的に身をすくませたのは一瞬で、その後は安心して身を任せた。 言葉もないまま、遠慮なく体を撫で、まさぐる手に、興奮しながらも呆れるほど安堵した。 「はっ……あ、いつ、き…ぃ……」 甘えた声で呼ぶと、やっと一樹の優しい瞳が俺を捉え、 「おはようございます」 とどこか場違いなことを言った。 「ん……。最悪な起こし方で悪かったな」 羞恥に頬を染めながら言ったってのに、一樹は小さく声を立てて笑ったかと思うと、 「最悪どころか、最高ですよ」 と、いきなり俺の乳首を痛いほどに抓った。 「いぁ……っ!」 「僕も、あなたに触れたくて仕方なかったんです。……あなたも、でしょう?」 「んっ、ぁ、そう、だ、けど、ぉ…!」 「愛してます」 昨日の分もと言うように、一樹は囁き、俺の体に触れる。 「好き、だ…。好きだ、から…っ…!」 「時間の許す限り、こうしていましょうね?」 こくこくと頷く俺のブラを外し、更に薄い下着越しに、細く長い指で濡れた谷間をなぞられると、体がどうしようもなく震えた。 耐え切れずに倒れ込んだ俺の体を抱きしめて、一樹は俺の体を自分の上に重ねた。 柔らかな胸が自分の下で潰れる感触と、気持ちよさそうに目を細める一樹のいやらしくても綺麗な表情に、ぞくぞくした。 「ねぇ、どうしてほしい?」 滅多に聞けない、敬語でない言葉に歓喜しながら、 「い、つきの、指で、……いかせて…」 なんて平気で言える俺の頭もそうとういかれてる。 「喜んで」 にぃっと笑った一樹の指が、下着を寄せて出来た隙間から入り込んできて、くちゅりと音を立てる。 「はっ、…あ、やぁ……」 「可愛い」 そう囁きながら、啄むようなキスを降らせた。 「あなたを独り占めしたいのに」 一樹がそんなことを言い出したのは、俺が泣きそうになるほど喘がされた後のことだった。 まだ名残惜しそうに人の体を撫でては、俺の着替えを邪魔しながら、切なげに呟いたのだ。 「あなたとふたりきりで、思う存分過ごしたいです。他の誰にも会わずに、僕はあなたのためだけに服を作り、あなたは僕のためだけに料理をしてくれて、そうして、暮らせたらいいのに……」 夢見がちにそんなことを言った一樹は、俺がじっと見つめているのに気がつくと、慌てた様子で、 「あっ、そ、そのっ、冗談です、よ…?」 「冗談なのか?」 「え?」 「本気なら、嬉しいと思ったんだが……」 赤くなりながら、小声で言うと、一樹は顔をかっと赤く染め、俺以上に赤い顔で、 「ほっ、本当ですか?」 「ああ」 答えて、俺は一樹を抱きしめた。 もう制服を着ちまったが、それでも一樹の温かさも柔らかさも感じられる。 「俺も、お前のことを独占したい。他の誰にもやりたくない……。誰も、抱きしめないでほしいし、笑い掛けないでほしいくらいだ…!」 こんなことを言ったら、嫌われてしまうんじゃないかと思っても、言わずにはいられなかった。 もう、自分の気持ちを隠すのも苦しかった。 せめて一樹には言いたかった。 それも怯える俺を、一樹は強く抱きしめてくれた。 「嬉しいですっ……」 「一樹……」 「あなたも、そんなことを思っていてくださったなんて」 感激したように言いながら、一樹は俺に何度もキスしてくれた。 それが俺にだけの特権だと言うように。 そして、俺たちは悟ったのだ。 もう、俺も一樹も、王子様役なんてしていられないということを。 |