百合でエロです
苦手な方はバックプリーズ
「古泉…」 自分でも嫌になりそうなほど熱を帯びた声で、古泉を呼んだ。 そうして、きつく抱き締めた。 キスしたい、と、極自然に思えた。 ああ、本当に俺はこいつが好きなんだな。 そう思うと、くすぐったいくせして、何故だか酷く嬉しく思えた。 「古泉、好きだ…」 込み上げてくるまま口にしたのに、古泉は不安そうで、 「…本当ですか?」 「本当だって、言ってるだろ」 「……それが、僕が女性になってしまったからだとしたら、僕は今になってやっと、このことを嬉しく思えますよ」 「ばか、違う」 そんなことを言うほど自分に自信がないようなやつに、こんなにも夢中にされちまっている自分がなんだか悔しくて、俺は苛立ちを装って古泉の真っ白くて柔らかな太腿を赤くなるほどに抓った。 「っ…」 「お前だから、だ」 女になってるからじゃない。 同じ境遇に陥った者同士だからでもない。 古泉が、俺を好きになってくれて、いつまで経っても応えられない俺にもめげずに好きだと言ってくれて、俺のことを優しく慰めてくれたりもしたからだ。 だから、 「たとえ今、お前が男に戻っても、俺が男に戻っても、俺はお前を放すつもりなんて、毛頭ないからな」 また泣きじゃくりそうになりながら言った俺に、古泉は眉を跳ね上げた。 「そんな……」 「喜べよ、アホ」 毒づいて、しがみついて、ああもう、俺はどうしたいんだろうな。 自分でもさっぱり分からないんだから、古泉はもっと分からんだろう。 混乱したって仕方ない。 「本当に? 本当に、僕のことを、僕自身を、好きになってくださったというんですか?」 「そうだって、何度言えばお前は信じられるんだ?」 いっそのこと、手っ取り早く信じさせてやろうか。 「え」 絶句する古泉に構わず、俺は強引に古泉の頭を引き寄せると、そのふっくらした薔薇色の唇に、自分の薄いそれを押し付けた。 同時に、お互いの胸が触れ合い、潰れあう感覚がして、じんと痺れるような感じが走った。 いかん。 「こ、れでも、信じられんか?」 羞恥もあって、体を離しながらそう言ったってのに、古泉は意外なまでの力強さで俺の体を抱き寄せると、もう一度口付けた。 正確に言うなら、それを「もう一度」と言うのは間違いだったのかも知れん。 何しろ、古泉のキスは俺の稚拙なそれとはまるで違っていたからな。 それだけで、おかしくなってしまいそうな情熱的なキスに、知らず知らずのうちに腰が揺れた。 「ふ、ぁ……っ、ん、古泉……?」 焦点の定まらない目で古泉を見つめると、その白くて細い喉が大きく震えるのが分かった。 「なんて顔をしてるんですか…」 「お前の方がよっぽどだろ」 白い肌が薄いピンクに染まっていて、興奮しているのが伝わってくる。 触れ合った胸はひたすら柔らかくて、そのくせ弾力があって、触れているだけで気持ちいい。 「…ん、もっと……」 俺は引き寄せられるように古泉をきつく抱き締め、自分のささやかな胸を古泉の柔らかなそれに押し当てた。 もっとくっつきたい。 もっと触れ合いたい。 もっとキスしたい。 止め処なく溢れてくる欲に押されるように、俺は古泉の唇を求め、その体に抱きつく。 古泉も同じくらいの必死さで俺を抱き締め、唇を重ね、舌を絡める。 それが、酷く嬉しくて、興奮した体は熱くて、 「…も、脱いで、いいか……?」 「…思ってたよりずっと積極的なんですね」 驚いてるのか呆れているのか見当もつかないような口調で言われ、 「わ、悪いか…!?」 恥かしくて、悔しくて、怒鳴るように言えば、古泉はくすくすと笑って、 「嬉しいです。…脱がせても、いいですか?」 「……早くしろ」 「はい」 古泉の綺麗な指がセーラー服のリボンにかかり、しゅるとかすかな衣擦れと共にリボンが解かれる。 それから、小さなボタンをぽちぽちと一つずつ外され、素肌が露わにされていくのを、俺はぼうっと見つめていた。 服は脱がされているのに、体はどんどん熱くなっていく気がした。 見せ付けるような緩慢な動きがもどかしくて、俺からも手を伸ばして性急に古泉のリボンを引き抜いた。 脱いだものをどこかに寄せておくなんてことも出来なくて、がむしゃらに剥ぎ取り、その辺に放り出す。 下着も全部脱ぎ捨ててしまって、俺たちは初めてお互いの、変わってしまった体を直視した。 「…変わっちまっただろ」 自嘲するように俺は呟いたのに、古泉はふるふると頭を振って、 「あなたは相変わらず綺麗です。男性であった時にも思いましたけど、女性になっても、あなたはとても綺麗です」 そう言いながら、細い腕をすっと伸ばして、俺の体の輪郭を優しくたどった。 「あほか……。そもそも、俺の裸なんて数えるほどしか、んっ、見て、ない、だろ…っ……」 「それでも、ちゃんと覚えてますよ」 「あっ、ん…」 くすぐったさに身をよじる俺の体を、異様なまでに熱のこもった目で、余すところなく見つめながら、古泉は低く囁いた。 「肩が華奢になってしまいましたね。腕も細くて、なのに柔らかくて…」 古泉は俺の肩に触れているだけだ。 それなのに、その言葉が、視線が、俺の肌に直接触れてくるようだった。 「胸のふくらみは変わってますけど、でも、中心の色は変わってないんですね」 「やっ、い、言うな…! 恥ずかしいだろっ…」 見つめられ、言葉でなぶられるだけで、そこが硬くなっていくようで、恥ずかしい。 それなのに、それは紙一重のところで気持ちよさや嬉しさと重なりそうになるのだ。 ぞくんと身を震わせた俺に、 「そこも、変わってませんね」 「はっ!? 何言って…」 たったあれだけで感じてしまっていることを見透かされ、揶揄されたのかと慌てる俺に、古泉は微笑して、 「羞恥心の強さも、慎み深いところも、変わってないじゃないですか。…可愛いですよ」 相手が男であれ女であれ、可愛いと言われて喜ぶ日など、決して来ないと思っていた。 それどころか、いつまでも不快なだけだろうと思ってきた。 それなのに、だ。 古泉の言葉だと思うと、嬉しくて胸が震えた。 俺が思わず黙り込んでしまったからだろう。 古泉は心配そうに俺を見つめて、 「可愛いなんて言われたくありませんでした? すみません、つい…」 「あっ、謝るなよ…! それとも、ただのお世辞だったのか?」 真っ赤になりながらそう言った俺に、古泉は一瞬怪訝な顔をしたものの、 「いいえ」 とはっきり答えてくれた。 「本当にあなたは可愛いです。可愛らしくて、愛しくて、なりません」 「……なぁ、」 「はい?」 「……こういう時って、どう答えたらいいんだ?」 「…と、言われましても……罵倒したいのでしたら、どうぞ、お好きになさってください」 全くもって的外れのことを言った古泉に、 「それはつまり、好きにしろってことだよな?」 「はい」 「…お前が言ったんだから、後で悔やむなよ」 そう言い終わるなり、俺は古泉を抱きしめた。 戸惑いの声をかすかに上げる古泉の耳元で、 「これまで、可愛いなんて、誰に言われたって嫌なだけだったのに、お前に言われたら、どうしようもなく嬉しいんだ…。心臓はばくばくして痛いくらいだし、体は熱いし……。お前、責任取ってなんとかしろよ」 触れ合う素肌が気持ちいい。 肌そのものの滑らかな感触も、女性らしい柔らかさも、丸みも、ただ触れられるだけ、触れるだけでも気持ちよかった。 それなのに、俺も古泉もそれで満足なんて出来やしなかった。 古泉はまだ俺の体の表面をそろそろと撫で上げながら、 「……腰、揺れてますね」 と俺自身、気がついていながらどうにも出来ずにいることをわざわざ指摘してきやがった。 「い、うなって…!」 「どうして? 嬉しいですよ。期待してくれてるんですよね? それとも、もう、感じてます?」 「ひゃっ…!」 おかしな声が出たのは、古泉の手が腰を過ぎて、丸みの狭間をすっと撫でたせいだ。 「感じるときゅっとお尻が締まって、…可愛い」 「ひ、ぁ……」 ぶるぶると身を震わせる俺の太腿を撫でさすりながら、古泉は意地悪く囁いた。 「ねぇ、もしかして、もう濡れてます?」 「知るか……っ!」 「確かめてみましょうか」 とんでもないことを言った古泉は、太腿をまさぐっていた方の手を、いきなり脚の付け根に滑らせたかと思うと、割れ目までずっと真っすぐに撫でた。 「ひっ、ぅん…!」 たったそれだけのはずなのに、俺の体は震え、自分の体を支えきれずに、古泉にしがみつくはめになった。 電撃のような快感が体を貫き、制御不能に陥ったような感覚だ。 「ああ、やっぱり濡れてましたね」 楽しそうに笑って、一樹はもう一往復、そこを撫でた。 「いっ、ぁあ…っ!」 きゅうっと体の中が震えたような気がした。 震えた場所から熱いものが溢れてくるようだというのに、古泉はそれくらいでは足りなかったらしい。 「もっと溢れさせてあげますね」 柔らかい笑みを浮かべながら、その両手は俺の体をなぞって、胸のささやかな膨らみへと向かう。 力の抜けた俺の体がそれを止める役に立つはずもなく、呆けたように薄ぼんやりと古泉の白魚のような指を見つめるしかなかった。 古泉の片方の指先は少しだがぬめりを帯びていた。 そのぬめりのせいで、白魚なんて形容を思い出したわけだが、そのぬめりの正体が何かと考えるだけでいたたまれない。 「何考えてんですか?」 「べ、つに…」 「……今はこちらに集中してくださいよ?」 言いながら、古泉は膨らみを揉み始める。 はじめは感触を確かめるように。 それが次第に感触を楽しむためのものに変わり、やがては俺の反応をうかがうようになっていった。 「乳首で感じるんですね」 慎重にそこを撫で回し、揉みながら囁いた古泉を恨みがましく睨みつけて、 「っ、はっ…誰、の、せいだよ…っ」 「僕のせいでないなら許せないところです」 そう言って小さく笑った古泉は、膨らみの中心で震える尖りをそろりと撫でた。 「ぁっ……ん…!」 「硬くなってますね…」 「…ひ、ぁ、……だ、って、んな、触られたら…っ……」 「可愛い」 また囁かれ、ぞくんと体が跳ねる。 「ぁ…あ……っ、や、古泉…」 「触られたから、感じるんですか?」 「そ、だろ…っ! ひ、ぁあ…」 強めに潰された尖りが、電流のような快楽を伝えてくる。 痛いのに気持ちいい。 痛いのも、気持ち、よくて…。 「自分で触ってもこうなるんですか?」 「なっ、るわけ、ない…っ、お前、だから、…っ、こい、ず、みが、あっ、ぁ、さわ、る、からぁ……!」 「……嬉しいです」 言いながら、古泉は唇で弧を描き、尖りを弄ぶ。 しこりのように硬くなったそれは、どんなに押し潰されても芯を残し、痛いほどにされてもまだ気持ちよかった。 「ひっん、やぁっ、い、たい、のに…っ、あ、んっん、気持ち、い…っ…!」 電流に頭まで焼かれて、気が狂ったようなことを喚く俺に引きもせず、古泉は柔らかく微笑んだ。 「あなたのそんな甘い声を聞ける日が来るなんて、夢にも思いませんでしたよ…」 その声が、俺の体をくすぐって、燻るように体内で燃える火を煽っていく。 「はっ、ぁ、古泉…っ、」 「なんでしょうか」 「…もっと、して」 「いくらでも」 「俺のこと、好きだろ…?」 「好きです。愛してますよ。たとえあなたが男性に戻っても、いえ、こうして女性に変わらなくても、あなたのことが、ずっとずっと好きで、愛しくて……」 言いながら、古泉はほろりと一粒の涙をこぼした。 暖かな涙だった。 舌を差し出して、それを舐め取って、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻した頭で、俺は記憶をたどる。 「…なあ、お前、前に言ってたよな…?」 「…何を、ですか?」 「俺に告白しようとしたところで、女になっちまったとか何とか…」 「ええ、そうです。……あの時は、出鼻を挫かれた気分になりましたね。でも、結果的にはこれでよかったようです」 そう、古泉は幸せそうに笑ったのだが、俺はぐっと眉を寄せた。 「だから、そうじゃないって言ってんだろ」 「…は?」 俺の言いたいことが飲み込めていないらしい。 古泉は首を傾げている。 …こいつ、頭はいいはずだってのに、何で分からないんだ。 「…俺が女になっちまったから、お前も女になっちまったから、だから、俺はお前を好きになったんじゃないって、さっき言っただろ。……お前が、…俺は、お前の性別がどうとかなんて、どうでもいい。お前が、お前らしくしてくれて、その、お前らしいところに、俺が惹かれて、好きになったんだから、つまりは、お前のせいでお前に惚れちまったんだから、ハルヒのせいみたいに言うなよ…」 「……っ…」 古泉は、何も言わなかった。 多分それで正解だ。 こいつは余計なことばかり言う癖があるからな。 で、何も言わなかった古泉が何をしたかと言うと、思う様俺を抱き締めたわけだ。 「……分かったか?」 こくんと頼りなげに頷くってことは、あんまり分かってない気がするが、感激はしているらしい。 「俺は、お前が好きだ」 「…はい」 「お前も、俺が好きだろ?」 「はい。あなたが好きです…っ」 「好きだから、お前のこと抱き締めたいって思うし、キスだってしたいし、もっと色々したい。お前に触るだけでも、気持ちいい。触られたらもっとだ。気持ちいいだけじゃなくて、その、…愛しい、とも、思うから……だから……」 「…だから、続き、しましょう?」 悪戯っぽく笑った唇が俺のそれに重なって、俺たちは互いの瞳に共犯者めいた笑みを映して、もつれ合うようにして倒れ込んだのだった。 |