微エロです
部室でいつも通りにメイド服にお着替えをして、今日はどのお茶を淹れようかなぁ、なんて独り言みたいに呟いても、有希は返事をしてくれませんでした。 それであたしは、多分誰かがもうすぐ来るんだろうなって思ったんですけど、それは大当たりで、コンコン、とドアをノックする音がしました。 この叩き方はキョンくんね。 あたしは、 「はぁい」 と答えてドアを開けました。 そこにはやっぱりキョンくんがいて、 「こんにちは、朝比奈さん」 「こんにちは」 キョンくんは自分の指定席に向かいながら有希に、 「よう、長門」 と声を掛けました。 有希は小さく頷き返すだけでしたけど、キョンくんにはちゃんと通じたみたい。 気にした様子もなく、いつもみたいに座ります。 「キョンくん、今日はどのお茶がいいですか？」 紅茶もジャスミンティーも煎茶もあるんですけど、どれにしようか迷うんです。 今日は暑くも寒くもなくて、丁度いいお天気でしょう？ だからかえって、どれにしようか迷っちゃうんですよね。 「俺としては、朝比奈さんが用意してくださるなら、水でも何でもいいくらいなんですけどね」 そんな風に冗談を言うキョンくんにあたしは笑いながら、でも怒ったようなフリをして、 「もう、それじゃ全然張り合いがないじゃないですか」 「すみません」 「ちゃんと選んでくださいな」 あたしが言うと、キョンくんは少し考え込んだ後、 「じゃあ、煎茶をお願いします」 「はい」 キョンくんが真剣に考えてくれたのが嬉しくて、あたしは弾んだ声でそう答えました。 あたしもちゃんと真剣にしなきゃと思って一生懸命お茶を淹れます。 それをキョンくんが、 「美味しいです」 って言って飲んでくれるのが、あたしとしても嬉しいんだけど、今日はなんだか変だなって思いました。 違和感の原因は、有希です。 どうしたのか分からないけど、あたしのことをじっと見てるんです。 「長門さん、どうかしたんですか？」 あたしが聞くと、有希は首を振りました。 本当かな。 なんだか、変なのに。 「長門がどうかしましたか？」 キョンくんに聞かれて、あたしは小さく首を振ります。 「なんでもないです。あたしの気のせいみたい」 そんなことないって思いながら、でも、キョンくんには言わない。 だって、キョンくんが気付かないのなら、言わなくていいでしょう？ 有希の恋人はあたしで、そのあたししか気付いてないってことはきっと、恋人の勘っていわれるものだと思うから。 だからあたしは、下校時刻が来て、古泉くんもキョンくんも涼宮さんも帰っちゃった後になって、有希に聞いたんです。 「ねえ、今日、やっぱりちょっと変だったでしょ？ どうかしたんですか？」 「……ごめんなさい」 「…え？」 どうして謝るんだろう。 いきなり謝られると、嫌な胸騒ぎがしちゃいます。 このままさようならって言われちゃいそうだと思うからかな。 「どうして、謝るの…？」 あたしが聞くと、有希は少しの間、言い辛そうに黙ってました。 でも、最後にはちゃんと言ってくれました。 「…あなたと彼が仲良く話しているだけで、どこかが痛くなった。体を点検しても異常がなかった。システムにも異常はない。それなのに、痛かった」 「どういうことですか？」 「……おそらく、私は嫉妬したのだと思われる」 「嫉妬……ですか？」 有希が、と思うと驚いた。 でも、どうしてだろう。 凄く、嬉しい。 「だから、ごめんなさい」 そう言ってもう一度謝った有希に、あたしは思わず笑っちゃいました。 だって、そうでしょ？ ヤキモチ焼いちゃったってだけで、そんなにも深刻に考えて、しかもこんなに真剣に謝ってくれるなんて。 嬉しいんだけど、おかしくも思えます。 だから、 「もう、可愛いんだから、有希は」 って言って、あたしは有希を抱きしめました。 「…どうして？」 驚いたみたいで目を見開く有希に、笑って言います。 「ヤキモチ焼いてくれて嬉しいからに決まってるでしょ？」 「…何故嬉しいの？」 「だって、それだけ有希があたしのことを好きでいてくれてるってことじゃないですか。それとも、違うんですか？」 「……違わない。あなたが好きだから、あなたがほかの人と楽しそうにしていると、苦しい」 「苦しい思いをさせちゃって、あたしの方こそごめんなさい。でも、あたしは有希と一緒にいる時が一番楽しいと思ってますよ」 「……そうなら、私も嬉しい」 「それに、」 あたしは恥かしくて頬っぺたが赤くなっちゃうのを分かってて、言いました。 言わなきゃだめだって思ったから。 「…あたしも、妬いちゃいますよ。キョンくんと有希って仲良しだから」 「彼は…お母さんみたいな人」 「分かってます。分かってるんだけど、妬けちゃうの。……有希も、そうでしょ？」 こくんと有希が頷きます。 頼りない有希って珍しくて、だから余計に愛おしくて、あたしは抱きしめる腕に力を込めます。 あたしが渾身の力をこめて抱きしめても、有希はきっと全然平気だと思うから、思いっきり。 「あたしもそうなんです。キョンくんの方が有希のことをよく分かってるんじゃないかって思っちゃう時もありますし」 「そんなことはない。……彼はあなたよりも知らない。彼に見せていないことは、多い」 「だったら、嬉しいです」 あたしはそう言って、有希にキスしました。 ちゅって、軽く。 「大好きです」 「……私も、あなたのことが好き。愛してる」 お返しのようにキスをされます。 それだけで幸せで、嬉しくて、あったかい気持ちになります。 立ったまま、抱きしめあって、何回くらいキスしたんだろ。 触れ合わせて、くすぐるみたいに唇を舐めて、舌を絡めて。 そうこうするうちに、有希の手が服の中に入り込んできます。 「んっ……や、だめ、です…ぅ……」 「どうして？」 「学校で、なんて、そんな……」 「初めてじゃない」 「そ、そそ、それは、そう…です、けど…」 真っ赤になったあたしの頬に、有希の冷たい唇が触れます。 「そもそも、きっかけはこの場所だった」 「そう…でしたね」 有希と出会ったのもここ。 あたしが有希を好きだって気が付くきっかけになった、あのびっくりしちゃうようなことが起きたのも、ここだった。 「……あの時より、大きくなった」 そう言って、有希があたしの胸を持ち上げてみてる。 「有希のせいです…っ…ん、や、だめぇ…！」 「嘘ばっかり」 囁きながら、有希はあたしの耳を軽く噛みました。 それだけで、 「ひゃんっ…」 って声が出ちゃうのは、やっぱりあたしがおかしいのかな…。 「可愛い」 有希が言って、ぺろってあたしの耳を舐めると、もう何がなんだかわかんなくなっちゃいそうです。 あの時、みたい。 下着の中に入り込んできた有希のひんやりした手が、あたしの胸を押し潰したりつまんだり、好き勝手すると、それだけで膝がガクガク震えてきちゃいます。 「んっ、ふ、ぁ、…ぁん…！ や、ぁあ…」 「感度もよくなった」 「や……っ、だ、から、……全部、有希のせいです…！」 「分かった」 そう言って有希は手を離しちゃいました。 あの時みたいに。 「ふ、え……？」 「責任は取る。だから、続きは私の部屋に行ってから」 「そ…んな……」 「ここでは嫌と言ったのはあなた」 怨みをこめて睨みつけても、有希は涼しい顔のまんまです。 あたしは、 「意地悪…っ」 と毒づくくらいしか出来ません。 その後あたしが、大人しく有希と一緒に帰ったのか、それともこの場で有希を押し倒したのかは、ご想像にお任せします…。 |