6限の授業が終了してすぐの文芸部室は既に無人ではなくなっていた。 部屋の付属物と化している長門は果たして授業に参加しているのだろうか。 そろそろと入ってきたばかりのみくるはみくるで、どうしてこうもさっさと現れるのだろうか。 二人に尋ねたところで、「禁則事項」その他の言葉が返ってくるだけなのだろうが。 この日は珍しく、古泉もキョンもハルヒもなかなか現れなかった。 びくびくしながらみくるは長門の様子を伺い、長門はマイペースにページを繰り続けていた。 ――と、不意に、本を閉じる音がした。 「ふえっ?」 飛び上がらんばかりに驚いたみくるに、長門が接近する。 「どどど、どうしたんですかっ? 長門さんっ」 「実験」 物騒な言葉を、長門は口にした。 「じじじ、実験って…」 「涼宮ハルヒの観察をしているうちに、我々には理解出来ない行動が多くなってきた。このままでは涼宮ハルヒの観察という使命に支障を来たしかねない。それは我々の望むところではない」 「そ、それが私になんの関係があるんですかあぁ…」 「情報統合思念体が私を今のように作り出したのは、我々には理解できない、有機生命体の思考、能力及び行動プロセスを体験することによって理解するためでもある。よって、私は理解できないことを理解するために、涼宮ハルヒの行動をトレースしなければならない」 「だ、だからどうして私に……」 「涼宮ハルヒはあなたと必要以上の接触を行う。その意味を理解したい」 そう言うなり、長門はみくるの胸を鷲掴みにした。 「ふえええええっ!?」 みくるが叫んでも、大きな目に涙が滲んでも、長門は無表情のまま胸を揉み続ける。 「いやっ、いやですぅ! や、やめてくださぁぁいぃ」 わんわんと泣き喚くみくるが視界にも入っていないかのように、長門はみくるのセーラー服に手を掛けた。 そうしてそのまま一息に剥ぎ取る。 「いやああああぁぁ…!!!」 露わになった可愛らしいピンクのブラジャーがはち切れそうなほど豊満な胸を必死に押さえ込んでいる。 長門は一瞬手を止め、視線を落とした。 ……自分の胸と比較しているのだろうか。 その短い間に、みくるはほっと息を吐いた。 彼女のことだから、これで乱暴は終りだと思ったのかもしれない。 しかし、次の瞬間、長門はブラジャーの中に手を突っ込んだ。 その手のあまりの冷たさに、みくるが飛び上がる。 「ひっ!」 長門は黙々とみくるの胸を揉み続ける。 ハルヒを真似てか乱暴な手の動きに、みくるの胸はブラジャーからこぼれ、ブラジャーの肩紐も肩からずり落ちている。 「やっ、あっ、…っん、やめ、やめてぇ…っ」 みくるの顔は真っ赤になり、唇からは甘ったるい声がこぼれだしていた。 そんなみくるを長門は冷静に観察し続ける。 それが余計にみくるの羞恥を煽る。 突然、長門の手が止まった。 みくるが長門を見ると、長門は平然と言った。 「……涼宮ハルヒの時と反応が違う。これでは理解の補助手段にはならないと判断した。実験は失敗。協力に感謝する」 言い切るなり、所定の位置へ戻る長門を呆然と見つめながら、 「……えっ」 とみくるは声を上げた。 その声がどこか残念そうに聞こえたのは……気のせい、だろうか? みくるは深くため息をつき、服装を整え始めたのだった。 ちなみに部室の外に、中からの物音に硬直したまま結局最後まで立ち聞きをしてしまった不幸な普通の男子高校生が一名いたことを付け加えておく。 それに長門が気付いていたことも。 |