プレゼントは、値段とかシチュエーション以上に、相手が本当に喜んでくれるかどうかが重要であり、それを考えながら真剣に選ぶからこそ価値のあるものになるのではないのだろうか。 相手とやりようによっては、道端の石ころであっても喜ぶだろうし、どんなに高いものを山と積み上げたところで承知しない人間だって、そんなに少なくもないに違いない。 つまりは、プレゼントなんてものは結局のところ、それに込める気持ちであり、物質的な形状や価値なんてのは気持ちを仮託する対象に過ぎないのではないのではないか。 実際、形のないプレゼントだってアリなんだからな。 とはいえ、そうであればあるほどに、プレゼント選びなんてのは手間がかかるものだし、頭を使うことになる。 頭を使い、手間をかけた分だけ相手が喜んでくれるなら万々歳だし、やりがいだってあるものなんだが、その保証もないとなるとやる気が削がれる。 ところが、やる気が削がれた状態で選んだらそれは簡単に看破され、むしろ手ブラで行った方がマシだった、なんてことにもなりかねないので気は抜けない。 本当に、プレゼント選びというのは厄介な大仕事だ。 俺はかなりの時間を脳内における思考実験に費やした後、結局最初に思いついたそれをプレゼントとして進呈することに決めつつ、パイプ椅子から立ち上がった。 今日、部室の中にいるのは俺と古泉と長門の三人だけだ。 朝比奈さんは鶴屋さんと一緒に出かけ、ハルヒはハルヒでどこかを駈けずりまわっているらしい。 ハルヒが次にここにやってきた時、どんな無理難題を押し付けられるかと思うと気が滅入るが、長門によると今日はとりあえず二人はもとより他の誰もやってこないという話なので、心置きなく内緒話が出来る。 「長門、」 俺が声を掛けると、長門はすぐに本から顔を上げ、俺を見た。 「今度、またあの世界に行ってこようと思うんだが、世界が違ってもハルヒはハルヒでな。土産もなしに行ったら追い返されちまいそうだから土産が欲しいんだ。それも、ただの土産じゃまずいだろうから、お前に協力してもらいたい」 先を促すように長門は俺を見つめている。 俺はしばし逡巡した後、思い切って、 「お前の髪の毛を、一本もらえるか?」 だめで元々、もらえりゃラッキーくらいの気持ちで言った。 あのハルヒなら、宇宙人の髪の毛を手土産にしたらかなり喜んでくれることだろうと思っての選択なのだが、長門が嫌がるなら無理強いをするつもりはない。 しかし幸い、長門は頷いてくれた。 その手が頭に伸ばされ、細く綺麗な髪の一本が音もなく引き出された。 抜いたのか切ったのかよく分からないまま、一本の髪の毛が俺に向かって突き出された。 「ありがとな」 俺が受け取ると、長門はすぐに読書へ戻った。 特に気にもしていないといった風情である。 俺はもらった髪の毛を大事にしまい込み、自分の席に戻ったのだが、それを待っていたように、古泉が難しい顔で言った。 「今日、行くんですか?」 「ああ、出来れば今すぐ」 あっちも、今頃活動中だろうからな。 その方が都合がいいことは言うまでもない。 「そうですか…」 古泉の声に覇気がなく、なにやら歯切れが悪いのは、俺が頻繁に世界を移動することに懸念を抱いているからのようだ。 しかし、この前未来の俺にも会い、安全も確かめたはずだってのに、そこまで心配するのは過保護ってものじゃないのかね。 だが俺も、伊達に古泉と時間を共有してきたわけではない。 こういう時には、こうするのが一番いいというのをちゃんと学んでもいる。 と言うわけで俺は古泉に自分の荷物を押し付けると、 「それじゃ、ちょっと行って来る。帰る時はお前を目標点にするから、荷物とか頼む」 「え?」 「それとも、俺の帰りが遅くなっても、ここで待っててくれるか? そんなのはお前も大変だろ。だから、お前は俺の荷物を持ってお前の家に帰ってろ。俺もお前のところに帰ることにするから。…いいな?」 「……はい」 ふわりと古泉が笑ったのを見て、俺は自分の作戦が当たったのを感じた。 そう、古泉にはこういうところがあるんだよな。 頼られると弱いというか、普段俺が緊急事態でもない限り頼ろうとしないからか、俺がこういうちょっとしたところで頼ると、妙に嬉しくなるらしい。 それを自分で把握しているのかどうか、そこを俺に利用されていると言うことを理解しているのかどうか、その辺りはよく分からないんだが、当分はこの手が使えそうだと思いながら、俺は鼻先でコショーを振り、くしゃみをした。 「それじゃ、行って来る」 と改めて言い残して。 強烈な立ち眩みが収まっても視界にあるのは文芸部室だ。 しかし、その様子は少しばかり違い、何よりも、 「やっと来たわね、ジョン!」 とハルヒが歓声を上げた。 「よう。久しぶりだな」 よろめきながらもそう言ったところで、 「おい、大丈夫か?」 と心配したキョンに支えられた。 「大分慣れたつもりだったんだが、やっぱり多少よろけるな」 「無理せず、座った方がいいですよ」 と言ってパイプ椅子を引き出し、勧めてくれるのは古泉だ。 「すまん」 短く答えて椅子に腰を下ろし、小さく息を吐いた。 「大丈夫ですか?」 心配そうに聞いてくれる朝比奈さんと、言葉こそ口にしないもののやはり心配そうな眼差しを向けてくる長門に笑顔で頷きを返したところで、ハルヒがにんまりと笑って言った。 「よく来たわね、ジョン。元気らしいとはキョンと古泉くんに聞いてたけど、やっぱりこういうのは本人の顔を見なきゃだめね。あ、みくるちゃん、ジョンにお茶入れてあげなさい」 「はぁい」 と快く応じた朝比奈さんは、今日もやはり愛らしいメイド服姿である。 何度見ても、そしてどちらの朝比奈さんでもよく似合っている。 うっかり目で追いかけそうになるのをこらえつつ、俺はハルヒにポケットから掴みだした物を差し出した。 「ハルヒ、土産だ」 「何よそれ」 怪訝な顔をするハルヒに、 「聞いて驚け。これは、一見するとただの人間の髪の毛に見えるかも知れんが、実は、」 「宇宙人の髪の毛ね?」 俺の台詞を横取りしやがって、と言ってやるのは簡単だったのだが、それを言う必要性を感じない程度には、ハルヒはきらきらと目を輝かせていた。 「本当にもらってきたわけ?」 「喜びながら文句を言うな」 「うるさいわよ、ジョン」 ハルヒはいきなり俺の手からそれを掴み取り、 「うーん……見た目だけだとやっぱり有希のと同じに見えるわね。DNA鑑定とかしてみたら違いが分かるかしら」 好きにしろよ。 俺が呆れて投げ出したところで、朝比奈さんがそっとお茶を差し出してきた。 来客用の湯飲みと言うのが不思議な気分だが、ここにおいては俺は客であり異邦人に過ぎないのだからこの扱いで当然だろう。 「おいしく淹れられてたらいいんですけど…」 と控えめに言う朝比奈さんだが、あなたが用意してくださるなら水道水だって甘露に変わりますよ。 実際、そのお茶は俺の世界の朝比奈さんに勝るとも劣らない味わいだった。 「おいしいです。ありがとうございます」 と俺が言って、やっと安心したらしい朝比奈さんが小さく微笑んだ。 こういうところも、同じだな。 そう考えながら、俺は部室の中を見回す。 なにやら怪しげな備品がまたもや増えているが、それでいて、それらの品々には俺にも見覚えがあった。 ハルヒの私物だからだろうか。 ボードゲームも案外運び込まれているようだし、朝比奈さんのコスプレ衣装も、少ないながら増え始めているようだ。 こうして、少しずつ差が埋まっていくのだろうか。 それとも、ハルヒのことだ。 予想外の方向に路線変更を図るかどうかするのかも知れない。 そうそう、違いと言えば大きな違いがあったな。 ハルヒの髪の長さだ。 こちらのハルヒは相変わらず、髪を伸ばし続けているらしい。 「髪、伸ばし続けてるんだな」 ぽつりと呟いた俺に、ハルヒはどこからともなく取り出したルーペで長門の髪の毛を観察していた手を止め、こちらを見て不敵に笑った。 「なんとなくよ。まあ、あんたがポニテ好きみたいだったから、こっちのキョンも釣れないかと思ったってのもあったんだけど」 当人を前にして悪びれもせずにそんなことを言ったハルヒは、 「大体、何もかも同じじゃつまらないでしょ?」 「…かもな」 つられるように笑い返した俺は、改めて部室の中を眺めた。 ハルヒがそれを狙っているのが成功しているのか、部室の中には俺の知らないものもいくらかある。 ためしに聞いてみると、 「あたしが用意したんじゃそっちのあたしと同じものを集める可能性が高いでしょ? せっかくだから、有希とみくるちゃんにも協力してもらうことにして、一緒にフリマに行ったり、キョンや古泉くんにも探してきてもらったりしてるの。どう? 成功してる?」 「ああ、そうだな。俺の知らないものもある」 正直にそう言ってやれば、ハルヒはどうだとばかりに胸を張った。 こっちのハルヒの方が、いくらか素直な気がするな。 素直と言うか、分かりやすいと言うのか? 俺はほほえましいような気持ちになりながらハルヒの様子を眺めていたのだが、ふと思い出して携帯を取り出した。 「ハルヒ、俺の世界の長門と話したいか?」 「当然でしょ!」 というのがハルヒの簡潔な返事だった。 俺は苦笑しながら、 「なら、話してやってくれ。あいつも、前に話したのが案外楽しかったらしいからな」 俺は携帯を操作して長門に掛けた。 すぐに出たのは、長門がそれを予想していたからだろうか。 それとも、待ち構えていたから、だろうか。 後者ならいい、と思いながら、 「長門、ハルヒが話したいらしい。今、構わんか?」 『いい』 長門がいくらか嬉しそうに声を響かせたのを確認し、俺はハルヒに携帯を渡した。 「もしもし? 久しぶりね」 という口ぶりからするとまるきり仲のいい友人同士のようですらある。 思わず目を細めたところで、こちらの長門と目があった。 本から顔を上げていた長門は、俺にそれを気づかれたと見て取ると、恥ずかしそうにかすかに顔を赤らめたが、読書に戻りはせず、珍しくも立ち上がってこちらに近づいてきた。 「こんにちは」 「ああ、そういやまだ挨拶もしてなかったな」 すまん、と謝れば、 「いい」 と短く返される辺りは、長門らしい。 しかし、はにかむように笑って話しかけてくるのは、いい意味で違ったところのように思える。 「あれから、他の世界にも行った?」 「ああ、そうだな。厳密に言うと少し違うが」 「聞きたい。どんなところに行ったのか、どんな人に会ったのか。……教えてもらえる?」 ああ、と俺が頷こうとしたところで、ハルヒが長門の肩をむんずと掴み、 「有希っ、あんたもあっちの有希と話したいでしょ? ジョンの話なんて後よ後!」 とハルヒらしい、実にハルヒらしい横暴さを発揮して長門に携帯を押し付けた。 長門は困ったような顔をしていたが、それでも電話の向こうに相手を待たせているからかそちらを優先させることにしたようだ。 ハルヒは俺を見ると、 「あんたも、あたしが興味を持つような話をするなら後にしなさいよ。そうじゃないと、同じ話を二回でも十回でも百回でも繰り返させるわよ」 と怒ったように眉を上げるので、俺は諦めて降参した。 それから、順々に、朝比奈さんも古泉もそれからキョンも長門と話した。 最後に俺に戻ってきた携帯に向かって、 「楽しかったか?」 と確認すると、長門ははっきりと、 『…楽しかった』 と答えた。 「そりゃよかったな」 それじゃ、と電話を切りかけて、止めた。 「…あー……長門、」 『…何?』 「その……古泉の、機嫌は?」 声を潜めたところで聞き耳を立てているハルヒやら近くにいる古泉、キョンには聞かれていることだろうと思いながら、小さな声で問うた。 『平常通り。ただ、』 ただ? 『心配しているように見える』 ……そうかい。 「分かった。心配要らないと伝えておいてくれ」 『代わらなくて、いい?』 「長くなるだろ。それじゃ、またな」 会話を終了させ、携帯をしまったところで、好奇心丸出しのハルヒの顔が目に入った。 「色々と、説明してもらわなきゃならないくらい、事態が変わったみたいね?」 ……楽しそうだな、こんちくしょー。 世界が変わったところでハルヒはハルヒであり、俺は俺である。 つまりは、俺がハルヒに勝てる可能性が爪の先ほどもあるわけがなく、俺は洗いざらいを白状させられた。 それこそ、洗いざらいだ。 途中、キョンと古泉が、「ジョンが来たことを団長に報告すると言う義務を怠った」ということでハルヒに締め上げられたが、俺の方がよっぽど大変な目に遭わされたことは言うまでもないだろう。 世界を渡るよりもよっぽど疲労させられた俺がぐったりと長机の上に身を投げ出しても、ハルヒは容赦せず、 「それはそうとして、他の世界に行ったりもしたんでしょ? その辺を詳しく教えなさいよ」 とあくまでも高圧的に言って来た。 「他の世界には、行ってない」 「はぁ? なんでよ」 なんでも何もあるか。 世界と言うものはそう簡単に渡れるようなものでもないし、大体、ここしばらくの俺がそんなことに積極的になれるような状況じゃなかったことくらい、さっきの話で分かるだろ。 「あんたが色ボケしてたってことは分かったわ。でも、それとこれとじゃ話が別じゃない。それにあんた、さっき有希にはどこかに行ったような話をしてたじゃないの」 「だから、他の世界じゃなくて、未来に行って来たんだよ。さっきも話しただろが」 正確に言えば、偶発的な事故で行っちまったようなものだったんだが。 俺が先ほど白状させられたあれこれを思い出したのか、ハルヒは不機嫌な面になり、 「何でもっと動き回らないのよ、勿体無い。あたしがあんたの立場だったら、たとえこの体がぼろぼろになったって、ありとあらゆる世界に行ってやるわ。あんた、ちょっと根性足りてないんじゃないの? そっちのあたしはよっぽど甘いのね。あたしがもっと鍛えてやろうかしら」 やめてくれ。 あいつが甘いとしたら世の中に辛く厳しいものは存在しないことになっちまうだろうが。 それに、と俺は反論を試みる。 「他の世界に行こうと思ったら、おぼろげでもいいから何かしらのイメージが必要なんだよ。ここに初めて来ちまった時には、お前らがどうなったのか考えてたから来たし、未来に行った時は将来のことを考えててそうなったんだ。予想もつかないような異世界にどうやって行けって言うんだ?」 「そんなの、どうとでもなるでしょ。SFっぽい世界に行ってみたいとか」 おぼろげでもいいと言いはしたがそこまでおぼろげでいいんだろうか。 むしろ実体が欠片も見えんぞ。 「やっぱりこう、もろに異世界っ! って感じのところに行った方が楽しそうよね…。みくるちゃん、何かある?」 「ひえっ! あ、あたしですか…?」 おろおろしながらも、朝比奈さんは真剣に考えてくれたらしく、 「えぇっと、あたしだったら、ファンタジーみたいな世界のお話を聞いてみたいです。妖精さんとかに会えるような…」 朝比奈さん、それはそれで非常にかわいらしいんですが、それはファンタジーと言うよりむしろメルヘンなんじゃあ…。 「なるほどね! それでもって、勇者が魔王を退治しに行くとか、盗賊だの魔法使いだのを仲間にしながらたびをするってやつね!」 ハルヒ、それはファンタジーじゃなくてRPGじゃないのか? 「有希はどう?」 聞けよ。 「えっと……」 長門はしばらく考え込んだ後、恥ずかしそうに視線を伏せ、 「…私は、話を聞かせてもらえるなら、どこでも……」 「もう、欲がないわね」 呆れたように言ったハルヒが次に矛先を向けたのは古泉だった。 別に何かしらの意図があったわけじゃない。 ただ、部屋の中をぐるっと反時計回りに見回しただけだ。 「そうですね、」 とそつのない作り笑いを見せた古泉だったが、その笑顔が俺のよく知るそれに似ているのに反して、発言はぶっ飛んでいた。 「他の世界でも僕たちが付き合っているのか、なんて、気になりません?」 あまりに酷い発言に俺が呆然としていると、顔を赤らめたキョンが遠慮の欠片もなく古泉を殴り飛ばした。 「お前はもういっそ喋るな」 と冷たく言っている。 古泉は大丈夫なのか、と心配するのは俺と朝比奈さんくらいで、少数派となっちまった。 ハルヒはと言うと呆れた顔で、 「全く…キョンってなんでこうなのかしら。この前も、古泉くんが顔にあざを作ってにたにたしてたし。こうなるともうツンデレ通り越してボコり愛よね。DVだわ、DV」 頼むから日本語で喋ってくれ。 「僕は別にこのままで構いませんけどね」 と古泉はさっきよりよっぽど自然な、つまりは作っていない笑顔で起き上がったが、お前も日本語で喋れ。 理解出来ん。 「しようとするだけ無駄だ」 キョンはそう言ってため息を吐き、古泉を軽く睨んでいた。 「で、キョンは?」 一応キョンにも意見を求めるつもりがあったらしい団長の言葉に、キョンはため息をもうひとつ追加しながら、 「…こいつが、」 と古泉を指差し、 「女の世界とかどうだ? もう少し鬱陶しさがマシになると思うんだが」 「僕が女性でも、あなたは側にいてくれるでしょうか」 にたにたしている古泉から目をそらし、俺は呟く。 「そういう世界が、どこかにはあるのかね」 「あるんじゃないの?」 無責任ながらもそんなことを言ったのは当然ハルヒだ。 「平行世界の理屈とか、人間の想像出来る世界はどこかにはあるんじゃないかって説からすると、あっても不思議じゃないわよ。実際、あんたはもう二つ以上の世界を知ってるわけでしょ? それなら、もっとあったって不思議はないわ。せっかくの力なんだし、試しなさいよ」 「…そうだな」 思えば俺は、自分が一般人であることにいくらかの安堵を覚えつつも、少々、そう、本当に少しの、疎外感らしきものを持っていたのだろう。 あの部室に集まる連中の中でただ一人、俺だけがただの一般人であり、人間的にも特に魅力があるとも思われない。 古泉や長門たちが俺を仲間はずれにするわけではないが、寂しさに似たものを抱いていたのは事実である。 俺一人だけが普通で、何かあっても役に立てないんじゃないのか、と。 もちろん、常にそんな風にひがんでいるつもりはないが、何も出来ない自分を自覚するたびに悔しさを味わってきた。 それなら、こうして一般人でなくなったことを嘆くよりむしろ、肯定的に受け止めてやりたいように思った。 だから俺は、 「今度、時間のある時にでも、試してみることにする」 と答えたのだが、 「異世界に行ったら忘れずあたしに報告するのよ!」 と理不尽にも命令を下され、強制的にメアド交換させられた。 …本当に、どこでもハルヒはこうなんだろうか。 それを確かめたいような、確かめるまでもないからやめておいた方がいいような、複雑な心境に陥った。 |