エロです
がっつりです
生です
みんなはちゃんとゴムを使おうね☆
男同士でもセーフティーセックスは大事だよ!


































































好きなんだから



怒りに任せて俺は資料室を飛び出し、そのまま学校をも飛び出した。
それくらい頭は熱くて、他の何もかもがどうでもよくなるくらい、俺は怒っていた。
そりゃあ、部長氏と仲が良いと言ってあいつが妬いてたことくらい知らなかったわけじゃない。
メールなんかで何度も言ってたからな。
だがまさか、あそこまで本気だとは思わなかったんだ。
自分は俺と一緒に過ごせないのにというちょっとしたやっかみというか、あるいはただちょっと拗ねて見せているだけだろうと思っていたのに、あんな風に本気で妬いてたなんて。
「ばっかじゃないのか」
八つ当たり代わりに坂を蹴り、駆け下りる。
胸が熱いのも苦しいのも、走ってるせいだと思いたかった。
目頭が熱いのも全部気のせいだ。
あの馬鹿のせいじゃない。
あんな馬鹿、もう知るもんか。
こんなに腹立たしくなるのも、信じてもらえてなかったというだけで苦しくなるのも、あいつだけなのに。
あいつが好きだから、本気で好きなのはあいつだけだから、なるってのに、なんて馬鹿な料簡を起こしやがる。
妹なんかの前では決して口に出来ないような類の悪口雑言を吐き出し、地面に足を叩き付けながら、俺は家へと帰った。
逃げ帰ったのではないと主張させてもらいたい。
何故なら、俺はそうやって一樹と距離を取ることで、あいつに散々な言葉やなんかをぶちまけるのを回避しようとしたからだ。
着替えもせず、床に座り込んだ俺は、そのままベッドに突っ伏し泣き出した。
声だけは殺したものの涙は止めようがなかったのだ。
「うー……っ、く、そ…!」
いくら悪口を叩き付けたって喚いたって何もすっきりしやしないだろう。
ぼろぼろ泣きながら、でも俺は、本当は何が一番悲しかったのかなんて分かっていなかった。
ただ、一樹のあの言動がどうしようもなくショックだった。
動揺しきった胸の内は抑えようもなく、ぐしゃぐしゃに乱れるばかりだ。
ぼろ泣きしていた時間がどれほどかは分からない。
ただ、その涙が止まらないほど短いうちに、その足音が聞こえた。
らしくなく慌てきったその足音に向かって、
「入ってくんな!」
と怒鳴ったが、残念ながら聞き苦しい涙声にしかならん。
「入ったら…っ、もっと、嫌いになる……」
「……それでも、聞けません」
そう言って強引に部屋に入ってきた一樹は、声もかけずに俺を抱き締めてきやがった。
「離せ…っ」
「聞けません」
「くっそ……」
疲れたせいか力が入らず、しばらくは手足をばたつかせたものの、しまいには諦めて脱力した。
一樹はきつく俺を抱き締めたまま、
「すみませんでした…。勢いでとはいえ、あんなことを言ってしまって、あなたを怒らせて……」
「うるさい。聞きたくないっ…!」
「ごめんなさい」
真剣な声でそう言って、一樹は俺の髪に口付ける。
「あなたを怒らせたかったんじゃないんです。ましてや、あなたを信用してないわけでもありません。あなたが僕を愛してくださっていることも、他の誰かによろめいたりしないということも、改めて確認するまでもなく分かっています」
それならなんで、と言うより早く、
「それでも、相手が男性の場合、力尽くでということだって、ないわけではないでしょう。だから…心配なんです」
深刻そうに一樹は言ったが、俺はぽかんとした間抜け面をさらした。
…何言ってんだお前。
「俺みたいな面白味のない平々凡々とした人間をどうこうしたいなんて思う稀有な人間はお前くらいなもんだろ。そりゃ、世界は広いんだから探せばほかにもいないとは限らんが、危険がどうのこうのと言うほど大量にいて堪るもんか」
そう言い切った俺に、一樹は何故だか嘆かわしげなため息を吐いた。
「本当にその通りであるならば、どんなに喜ばしいことか……」
「はぁ?」
「それは勿論、僕はあなたのことを愛してますからね。盲目的になっている部分もあるかも知れません。でも、それを差し引いたとしても、あなたは十分魅力のある人です。そうでなければ、そもそも好きになったりしません。あなたが気付いてないだけで、あなたを好きな人はいくらでもいますよ。それに、長門さんに告白されたことだってあるのに、何を仰るんです?」
「…それは……」
だが、俺にはどうしても一樹の言う通りだとは思えんのだ。
長門にせよ一樹にせよ、それぞれ少しばかり特殊な立場にあり、その上で俺が何かしらそれぞれの慰めだかなんだかになることをすることが出来たから好かれたんじゃないかと。
だからその他の連中に好かれる理由などないと思うのだが。
「あなたは本当に自分の価値を過小評価しすぎですよ。…だからこそ、あなたらしくていいのかも知れませんけどね」
そうまたしてもため息混じりの呟きを漏らし、
「あなたを誰かに奪われでもしたら、あなたが僕の側からいなくなってしまったら、と、そう思うだけで恐ろしさに体が震えそうになるほど、僕にはあなたが必要なんです」
情熱的な言葉とは裏腹に、その声はか細く震え、俺は痛いほどに抱き締めてくる腕に文句をつけることも出来やしない。
「……馬鹿だな」
「…はい」
「お前が必要としてくれるなら、俺を信じてくれるなら、俺はどこにも行かないから」
「…はい…っ、ありがと…ございます……」
泣きそうな声だと思った。
もしかしたら本当に泣いていたのかもしれない。
だとしても、一樹は俺にそれを見られたくないだろうと思い、俺は振り向かないまま、そっと一樹の手を撫でてやる。
ふわりと甘い匂いがして、いけないと思いながら体が熱を持つ。
「…なぁ……」
囁きかけると、びくりと一樹の体が震える。
「…なんですか」
素っ気無さを装っていても、返される声が熱っぽい。
「こうやって触れるのもいつ以来だ…?」
「そうですね……もう一ヶ月ほど…」
実際は一ヶ月にも満たないほどなのだが、それが恐ろしく長い間に思える。
「…玄関、鍵……閉めてきたか…?」
低く問えば、
「覚えてません…。でも……」
「…だよな」
我慢なんか出来るもんか。
せめて妹が帰って来ないことを祈ろう。
俺は一樹の腕をやんわりと解き、体を起こす。
しわの寄った服を躊躇いもなく脱ぎ捨てて、ベッドに横たわる。
早く、と求めるまでもなく覆い被さってきた一樹に唇を塞がれる。
「ふ……っ、ぁ……あ…」
舌を吸い上げ、唇を食むような性急なキスは息苦しいほどなのに、それさえも気持ちよさに変わる。
一樹に触れられるだけで嬉しいし気持ちいい。
「一樹…っ……一樹……」
「…もっと、一緒にいたいです…。いえ、そうしましょう。そうでないと僕はまた愚かしいことを言ってあなたを傷つけてしまいそうですし、何よりも、あなたに会うことも触れることもままならない生活なんてもう沢山です」
「俺もだ…」
ぎゅっと抱き締め、俺からも提案らしきものを口にする。
「校内だろうとなんだろうと、もう、いいよな…? どうせ俺とお前のことなんて周知の事実なんだし…だったら、休み時間にお前に会いに行ったりしても…いい……か…?」
「勿論ですよ。そうしていただけると嬉しいです。僕も、これからはもう少し時間を作れるようにします。一番嫌われたくないのはあなたであり、あなた以外の人に少々呆れられたり嫌われても構わないんですから、用事もこれからはもう少し断らせていただきますよ」
「いいのか?」
「いいんです。そもそも…そうですね、何か引っかかるものがあるんですよ。変に忙しくなったな、と」
「…そうなのか?」
「ええ。…もしかしたら、という心当たりはあるので、おそらくいくらか断っても何も問題はないでしょう。僕にとってはそれよりも、あなたと過ごせることの方が重要ですよ」
「……ありがとな」
嬉しい、と口付ければ、嬉しそうに笑ったのが見える。
その笑顔が好きだ。
思わずにやけながら見惚れていると、一樹のいやに器用な手が俺の素肌をなぞり始める。
それだけでぞくぞくとしてしまうのは、一樹に言わせると俺が敏感だからだそうだが、俺がこんなになるのは一樹だけなんだから、一樹の手が悪いんだと主張させてもらう。
俺のそれより大きくて分厚い手の平が、そのくせ器用に形をなぞる。
脇から腹に掛けての柔らかな皮膚だか肉だかを確かめるように軽く押し、また滑りあがってくる手の平に、ひくんと体が跳ねる。
「んぁ…っ、あっ…ひ……」
「気持ちいい…?」
「い、いい……っ…けど、もどかしいって…!」
「もどかしいって言うほどにも見えないけど」
苦笑混じりに呟いて、一樹は腹の上にくるりと円を描くように指を滑らせる。
ゆっくりとした動きが、性感帯でもなんでもないはずの場所をふるわせる。
「やぁ…っ…! ふ、んん…!」
「真っ赤になってる……可愛い…」
低く囁いた声にも体が震えてどうしようもない。
「馬鹿…っ、いつ、帰ってくるか分からんのだから、早くっ……やっちまえ……!」
罵るようにねだると、一樹の唇が意地悪く弧を描く。
「大胆ですね…」
「お前にだからだ…っ、ばか…」
ばかばかと何度も繰り返す俺の脚をそろりと開き、そのついでに内腿をぞくりと来るような独特のやり方で撫でた一樹は、
「凄いね…、もうこんなに硬くなってる…」
と独り言のように言ったが、
「お、まえは違うのかよ…!」
と唸ると、
「同じだよ」
そう言って布越しにも分かる熱を押し当てられ、ぞくりとしたものが走った。
「だ、ったら、早く…しろって……」
「ん…」
内腿や膝頭に口付けを落としながら、一樹は更に俺の脚を上げさせる。
開いた脚の間に顔を埋められて、羞恥を覚えても止めようがなかった。
それくらいほしくて堪らない。
「一樹…っ、もっと……会いたい…」
手を伸ばして肩を掴んでそう訴えると、
「僕も、です…。ほんの少しでもいい。それで睡眠時間が削られても、余計に疲れさせることになるかもしれないと思っても、もう我慢なんて出来ません…」
その言葉に、一樹も我慢してたんだと知った。
「ばっか…! 俺はどうせ暇なんだから、遠慮なんかしなくていいんだ…っ」
「ありがとうございます。…好きです、愛してます……」
繰り返し囁いて、一樹は指を動かす。
一樹の好む、俺の弱いところばかりを狙ってくるやり方ではなく、そこを解そうとするだけの動きだが、それでも感じてしまえる。
「あっ…あ、んん……っ」
と上擦った声を上げながら一樹に縋り付けば、
「もういい…かな……」
と独り言めいた呟きと共に熱を押し当てられる。
「は…っ……、ゃ、く……」
「ん…すみません……」
ぐっと力を込めて押し入って来るそれは、酷く熱くて痛いほどに体を開いて行くのに、それ以上に嬉しくてならないのだ。
「あ…、いつ…き……が……」
「ええ、僕ですから…もう、考えるのはやめて……」
「んん…っ、ひ、ぁう…っ、ふぁ…! あぁ……っ、く…」
ゆっくりとした動きが少しずつ激しくなり、息をするのも苦しいほどになる。
変な風に折り曲げた体が軋み、それ以上の負荷にベッドもぎしぎしと音を立てる。
「ひぅ…っ、ぁ、もう…っ、無理だ…っ!」
「いいですよ、出して…。僕も、もう……」
言いながら一樹が俺のものに手を伸ばし、何度か擦りたてたせいで、俺は自分の腹を汚すことになった。
「……――っ、く…ぁ………はぁ…」
「んっ……、う……」
少し遅れて一樹も俺の中にそれを吐き出し、腹の中を熱いものが広がる……って、
「馬鹿っ! ゴムしてなかったのか!」
「す、すみません、探す余裕もなくって……」
「……っ、も、馬鹿…! お前の部屋じゃないってのに……」
罵りながらも、顔が緩んでいけない。
それを一樹も気付いたのだろう。
にこりと微笑んで、
「すみません。濡れタオルでも用意してきましょうか。それとも、シャワーを浴びに行きます?」
「…両方」
ぶっきらぼうな風を装って返した俺にも、一樹はにこにこと笑ってくれる。
「はい、では少し待っていてくださいね」
そう言って手早く服を見につけ、部屋から出て行こうとした一樹を呼び止める。
「ちょっと、」
「はい?」
振り返った一樹を来い来いと手で招いて、汚れた腹の辺りはひっつかないよう気をつけながら、一樹の頭を抱き寄せ、口付ける。
「好きだ」
「…僕も、愛してます」
ちゅっと恥かしい音を立てての口付けが、くすぐったいのに嬉しい。
「待ってるからな」
「はい」
俺はにやにやしながら、一樹の楽しそうな後姿を見送った。
それにしても今回のあれをケンカなどと呼んでいいのかどうか迷うところなのだが、一応初の痴話喧嘩としてカウントしておこうか。
ああ、それにしても、あんなに怒ってたし悲しかったのが嘘みたいだ。
仲直りなんて単純なものなんだな。

……それとも俺たちが単純すぎるんだろうか。