微エロです
っていうかテレフォン(ry ですので
苦手な人は引き返しましょう
何を言われても上機嫌でいられると思っていたのは、ほんのちょっと前の話だってのに、今では気がつくとため息が出る。 眉間のシワは妹に引っ張られても治らんし、食欲も落ちてくるし、本当に散々だ。 それもこれも、一樹に仕事を押し付けるやつらが悪い。 ただでさえ、機関に命令され、ハルヒにこき使われ、勉強に追われ、と忙しくしてるってのに、更に生徒会の仕事やら森さんからの頼まれ事やらクラスの仕事やらで息つく暇もない。 ろくに顔を合わせられないばかりか、メールや電話も難しい。 たまにメールが出来ても、寝落ちすることの方が多い。 何より俺が、俺まで余計な負担を掛けたくないのでメールなんかしてないで寝ちまえと言うことも多い。 そんな具合に、すれ違いがちと言えなくもない状況なのだが、だからと言って、あいつが俺に愛想を尽かすなんて無駄な心配は一切しないし、する必要もないのだが、とにかく会えないのが辛い。 「一樹……」 と名前を呟くだけで胸が軋む。 「…会いたい」 泣きそうな情けない声が出た。 何よりも、一樹のことが心配だった。 体を壊したりしないか、ちゃんと食べてるのか、寝てるのかとそればかりが心配になる。 そのくせ、言い知れない身勝手な不満が胸の内でわだかまりそうになる。 あいつと付き合い始めてから、初めてのことだと思った。 こんなにもやもやするのは。 九組まで会いに行くことも考えないわけじゃない。 そうしないのは、邪魔をして、俺まで一樹の負担になるのが嫌だったからだ。 一樹が嫌な顔をするなんて思っちゃいない。 むしろ喜んでくれるだろうと分かる。 だが、それで疲労を蓄積させたんじゃ、元も子もないだろ。 それに俺も、ちゃんと待っていられる。 ……待っていられると、思っていた。 それでも、会えない時間があまりに長くなると、それだけで苦しくなる。 他の何も手につかなくなりそうで、だから逆にやることを与えられた方が楽だと思えるほどになる。 そんな具合で、パソコンをいじりながらもどんよりしちまってたのか、 「なんだか元気がないね」 と部長氏に言われた。 思い返してみると、最近、部長氏との接触が多い気がする。 荷物運びやテストプレイなんかに呼ばれちゃ、ヒマを潰させてもらってるのは、もしかして、気を遣われているんだろうか。 部長氏がハルヒのいない時を見計らって、うちの部室に来ることも多いし。 というか、ハルヒが最近あまり部室に来ないのはまた何かろくでもないことを企んでるってことなのかね。 頼むから、これ以上一樹の負担を増やしてくれるなよ。 ちなみに、今日はテストプレイに呼ばれてる。 部長氏や長門に言わせると、開発に携わっていない人間にやってもらう方がいい作業なんだそうで、俺は好きに遊ばせてもらっちゃ、お礼を言われている。 バグ潰しのための作業らしいのだが、そこまで厳しくもなく、なんとなくで務まるのがありがたいのか物足りないのかよくわからん。 が、仕事があるのは助かる。 作業をしている間はとりあえず、余計なことを考えずに済むからな。 それにしても、そんなに酷い顔になっていたんだろうかと思いながら顔を上げ、 「部長さんこそ、疲れてますよね」 「まあ、これでも受験生だからね」 と部長氏は苦笑いを浮かべて頭を掻いた。 受験生と言いながら、頻繁に顔を出しているなんて、大変じゃないんだろうか。 「長門さんがどうしても、正式な兼部も部長も断るからね」 「両立は大変でしょう?」 「好きでしてることだから、それほどでもないよ。それに、受験勉強ばかりじゃやってられないからね」 つくづく、いい人だよな。 先輩らしくはするものの、威張ったところはないし。 ……ハルヒが絡むと我を忘れるのか、時々テンションがおかしくなるが、あれは仕方ないだろう。 いつかハルヒを不機嫌にしない程度に雪辱を果たしてもらいたいくらいだ。 しかし、こんないい人相手に、一樹はどうも妬いてるらしい。 一日何をしたか、なんて自己満足でしかない報告メールをしたら、一時間ほどしてから微妙な返事が来た。 『最近、コンピ研部長氏とよく過ごされるんですね』 簡潔過ぎるそれに、逆に、一樹の拗ねる顔が見えるようで、俺はつい、にやにやしながら、 「たまたまだ。俺がヒマしてるからだろ」 と返事をする。 ついでに、拗ねるような口調で、まだ忙しいのかと問えば、 『すみません。まだ当分は忙しそうです』 「生徒会長にでもなるのか?」 冗談めかして聞けば、 『それは避けたいですね。これ以上、あなたとの時間を邪魔されたくありませんから』 と言っておいて、 『でも、あなたが一緒なら、涼宮さんに生徒会を乗っ取るなんて提案をするのも悪くはありませんが』 「あほか。めんどくさいことを言い出すな」 『すみません。それにしても、早くあなたに会いたいものです』 全くだ。 そう思ったら、なんだかもう堪らない気持ちになって、 「今、少し時間取れるか? お前の声、聞きたい」 なんてメールを送っていた。 返事を待つ俺の携帯を震わせたのは、メールではなく電話の着信音だった。 「俺がかけるつもりだったんだが」 拗ねるように呟くと、 『僕が我慢出来なかったんですよ』 と一樹の優しくて柔らかな声が耳を震わせた。 「…っ、だめ、だ」 『どうかしましたか?』 「……お前の声、聞けるだけで嬉しい」 恥ずかしい台詞だが、本心だ。 声だけでドキドキする。 泣きそうに嬉しい。 「こんなにも、お前に飢えてたんだな…」 恥ずかしさで少しばかり小さくなった声は吐息と混ざり、雑音まじりの囁きになったが、それに続いて聞こえたのは何故か、息を飲むような声だった。 「一樹? どうかしたか?」 『…反則ですよ。そんな殺し文句』 そう言った一樹の低い声こそ、よっぽど反則だ。 電話越しですら、背筋が震えるような囁きに、不満の形を借りた熱がもぞりと込み上げてくる。 「へ…変な声出すな!」 『変ですか?』 くすりと意地悪に笑って、一樹は更に、 『僕の声が変なんじゃなくて、あなたが変になってしまうような声の間違いでは?』 「ううぅ……」 『…ねえ、もっと聞かせてくださいよ。あなたの声、僕も聞きたいです』 「俺の声、って……」 『僕にとっては、あなたの声こそ、欲求を掻き立てられる声なんですよ』 「っ、は、恥ずかしいこと言うなって…!」 『すみません』 と笑う声にも興奮する。 ああ、もうダメだ。 「……お前も共犯だからな…」 唸るように呟いて、俺は部屋の戸締まりなんかを確かめ、どっかとベッドに腰を下ろした。 『それは…期待していいってことでしょうか』 「期待だか逃げる準備だか知らんがな」 『嬉しいですよ。…正直、溜まってるんです』 「ばか。んなこと、無駄にいい声で言ってる暇があったら、早くしろよ」 『…今、あなたの部屋ですよね?』 「そりゃな。……ベッドに座って、待ってる」 『押し倒していいですか?』 「好きにしろよ」 『では、遠慮なくそうさせてもらいますね』 ぽすんとベッドに横たわりながら、一樹の手の感覚を思い出す。 「お前、もう着替えたか?」 『お恥ずかしながら、まだです』 「じゃあ、俺が脱がせてやるよ」 笑いながら、制服姿の一樹を思い描く。 「お前は俺のこと脱がせてくれ」 『…見えないのが残念ですね。せっかくあなたが積極的になってくださってるのに』 「残念がらなくても、次に会えた時はちょっとやそっとじゃ離してやれないから、覚悟しとけ」 『それはこちらの台詞ですよ』 笑いながら、一樹は熱っぽく低い声で、 『……脱がせてしまうのは勿体ないので、いっそめくりあげてもらえますか? あなたの手で』 「別にいいが……どこまでだ…?」 『あなたがどうしてほしいかによりますね』 んなもん、決まってるだろ。 俺はそろりと手を滑らせ、スウェットスーツを鎖骨が見えるほどにまくりあげる。 「ちゃんと見えるようにしたから、……ち、くび、…触れよ……」 『畏まりました』 軽く笑っておいて、 『久しぶりですからね。最初は優しく撫でるだけにしておきましょうか』 その囁きだけで、びくんと体が震えた。 何しろ一樹と来たら、そうして撫でるだけでも堪らなくなるくらいそういうことが巧いのだ。 「あっ……」 『可愛いですね…』 熱を増した声に、余計にぞくぞくする。 「んん…っ、一樹……」 『あなたも我慢してました?』 「あ、たりまえだろ…!」 『自分でもせずに?』 「してないっ!」 『僕はしましたよ』 さらりと言われて、これほど違和感のある言葉もないだろう。 思わず唖然とする俺に、一樹は多少恥ずかしそうに、 『あなたに会えないと不満も溜まりますし、他の仕事でストレスはいくらだって溜まるのに、僕の場合、それを顔に出す訳にもいかないでしょう? 吐き出すには最適なんです、…と言うと失礼ですかね』 「……」 『……あの、流石に嫌でした?』 俺が黙りこくっているからだろう。 不安げにそう言った一樹に、 「…そ……うじゃ、なくて……」 俺はかぁっと真っ赤になって血の気が引く気配のない顔に手を当てながら、 「…嬉しく、て、と、言うか……」 これはなんと言えば伝わるんだ? 「む、ムラムラして……?」 『…では、お望み通りにしましょうか』 そう笑いの混じった、そのくせ余裕のあまり感じられない声で言って一樹はどこか性急に、 『もう我慢出来ないんでしょう? ズボンも下着も下ろして……』 「んっ……」 ドキドキしながら、言われるままにずり下ろし、膝を立てる。 『あなたのと合わせて擦り合わせていいですか…?』 「して、くれ…」 言いながら、片手を絡める。 一樹の手を、熱を思い出しながら動かすと、ただひとりでしてる時以上の快感に、体が跳ねる。 「あっ…、あ、いつ、き…、あんま、持たない、から……!」 『嬉しいですね。…僕も同じですよ。…一緒に、いきましょう……?』 囁きはあまりに悩ましく、熱を煽るのに十分過ぎる。 「はっ…、っあ、んん……! 一樹……!」 夢中になって快感を追う俺の耳に、ノイズめいた一樹の吐息が届く。 一樹も興奮していると思うと、それだけで堪らなくなる。 「っあ、もう……っ…!!」 びゅくんと勢いよく溢れた白濁が俺の腹を汚す。 たっぷりと出たそれにも体が震えるのを感じながら、耳を澄ます。 『くっ――ぅ』 という小さな呻きも、荒い呼吸も聞き逃したくない。 一応満足したはずだってのに、足りない。 「…早く、会いたい」 『僕もです……』 お互いのため息が虚しく重なった。 ……会いたい。 |