キョンは男に戻ってます
まだエロの続きです
デレデレのでろでろでよければどうぞ













































手に入れたもの



古泉は、不安がりながら俺を抱いた。
それこそ、抱かれる俺よりもよっぽど不安そうに、心配そうに。
ちょっと俺が口を滑らせて、否定めいた響きのある言葉を口走るだけでやめようとするほどだった。
それくらい、古泉は俺のことばかり見ていた。
俺の様子ばかりをうかがって、俺のことばかり考えて、自分のことなんて少しも考えてないようだった。
男だったら、もっと暴走したっておかしくないだろうし、慣れてないなら更に、独りよがりになったって仕方ないだろうに、古泉はひたすらに、俺が感じるように、俺が痛くないようにとそればかりを考えてくれていた。
だからか、俺は初めてで、それどころか女になってるんだから正真正銘のヴァージンだってのに、散々に喘がされ、悶えさせられた。
それこそ、痛い方がマシだというほどに。
焦らされた体は酷く熱くなっていたはずなのに、古泉のものの方がよっぽど熱くて、気持ちよかった。
どろどろになって、そのまま融けてしまいそうなほどに。
それが、あまりに善すぎて、気を失ってしまったんだと思う。
気がついた時には、俺は古泉のベッドに寝かされており、体は慣れ親しんだ男のそれに戻っていた。
それを自覚すると共に、どこか残念に思ったのはやはり、もう自分が女の子になることはないと感じていたからだろうか。
古泉が裸のままの俺の体を優しく抱きしめていてくれたのに、そう思った。
「大丈夫ですか?」
そろりと声をかけられ、俺は頷く。
気恥ずかしさだかなんだかよく分からないものに顔が熱くなる。
「よかったです」
心底ほっとした様子で呟いた古泉の手が伸び、俺を抱きしめる。
そうして、
「愛してます」
と囁かれた声の調子が、女の子の時と全く変わらないことに、泣きそうになった。
それほどまでに、嬉しい。
だが、泣いてしまうのは癪で、何よりも、それ以上に伝える術を持っているのだからと、俺はやはり裸のままでいた古泉の体を自分から抱きしめて、
「好きだ」
と告げた。
小さく古泉が息を呑む音が聞こえたかと思うと、じわりとした熱が俺の脚に触れた。
興奮しているんだろうか。
もう俺は女の子じゃないのに。
ただの男の、つまらない体なのに。
そんな体のつくりなんて無関係だとばかりに、煽られてくれるのだろうか。
疑っていたわけじゃないが、こうして実際に反応されると、どうしようもなく嬉しくなった。
それと共に、俺の方までぞくりとさせられる。
反応しそうなものを押しつけるように、更に強く抱きつきながら、
「…愛してる」
とらしくもなく囁いてみると、その熱が余計に昂ぶるのが感じられた。
古泉を見つめれば、その瞳は熱を帯び、それでも、躊躇うように俺を見つめていた。
へたれ、と罵ってやる気分にもならなかった。
古泉が本当に優しくて、俺のことを愛していること、慈しんでくれていることを痛感していたからな。
だから俺から誘ってやる。
「…抱ける、か?」
不安だか期待だかに震える声で小さく囁けば、古泉の体がぴくりと震えた。
その目は何か心の奥底まで探ろうとするかのように、俺の目を見つめてくる。
「…あなたがいいなら」
と言うのが古泉の返事だった。
俺が嫌だと言ったら、本気で我慢してくれるのだろう。
それが嬉しくて、俺の方が煽られる。
「したいから、言ってんだろ…」
「でも、…その、大丈夫ですか? もう、怖くありません…?」
心配そうに聞かれて、俺は考える。
怖いかどうかなんて、考えもしなかったのに、古泉はちゃんと俺の分まで考えをめぐらせてくれたらしい。
「…ああ、多分、大丈夫だ」
奇しくも、古泉が言ったことが本当になったらしい。
「変な感じだけどな、これについても、ちゃんと記憶が二重化してるらしい」
男の体で抱かれるのは初めてだってのに、初めてじゃないような気がしている。
あるいは、記憶のせいだけじゃないのかもしれない。
体の構造が変わっても、俺の体はちゃんと覚えている。
古泉のしつこいほどの優しさも、焼けるように熱い快感も、何一つ忘れていない。
抱かれるのは気持ちがいいことで、怖いことではないのだと分かる。
「だから、大丈夫だ」
「…それなら、したいです。…ちゃんと、男性のあなたを抱きたい……。僕が好きになった、あなたを」
珍しいほどに熱っぽい声に、ぞくぞくとした快楽が背筋を這い登る。
「俺も、……して、欲しい、から……」
羞恥を堪えながらそう訴えれば、優しくキスされた。
ねだるまでもなく深くなるキスに、それだけでもとろかされそうになる。
頭がぼうっとしそうなほど、気持ちよくて、優しい。
唇を離した古泉は、舌先でなぞるように俺のあごを辿り、首筋をなぞって、小さく笑った。
なんだよ。
「いえ、ちゃんとキスマークが残っているのが嬉しくて……」
言いながら、指先で赤い痕を押さえていく。
「ここも、ここも……ほら、ちゃんと僕がつけた通り、残っているでしょう?」
「当たり前だろ…。同じ、俺の体なんだからな」
そう言いながらも、俺も嬉しかった。
他の誰かの体を借りたりしたわけでもなければ、体全てが作り変えられ、別のものになったりしたのでなく、本当に俺として古泉に抱かれたのだという証明がされたようで。
古泉はキスマークを辿りながら胸に至ると、その赤くなったままの突起を手の平で押さえた。
「ぁ……」
「ここも、あんまり変わりないですね」
「そう、か……?」
ふくらみのあるのとないのとじゃ随分違うと思うが。
「変わりないですよ。…こうして押さえるだけでも気持ちよさそうに硬くなって…」
「ふ、ぁ……」
「抓んでいいですか?」
「いい、から、好きにしろよ…!」
一々聞かれる方が恥ずかしいんだからな。
くすくす笑いながら、古泉は少し痛みを感じるほどにその突起を抓んだ。
それだけで、鋭い電流のような快感が走り、腰が揺れる。
「ぃあ…っ!」
「ほら、やっぱり変わりないですよ。こんなに感じてくれて、嬉しいです」
「あっ、ぁ、んんっ…ん!」
「…可愛い」
そんな呟きひとつで、心臓が跳ねる。
それどころか、胸への刺激とそれだけで達してしまいそうになり、
「やっ、ちょ、待て…っ!」
と叫んでいた。
「どうかしましたか?」
途中で中断されたってのに、古泉は怒ったり不満を見せたりもせず、本気で心配そうに俺を見た。
勿論、手はさっさと離して、だ。
そうしたくて声を上げたはずだってのに、あまりにもあっさりと離されて、不満に体が揺れるなんて、どれだけ俺は身勝手に出来てるんだろうな。
「い、イきそうだから、……その、早く、してくれ…」
「…ええと、胸ばっかり触るなってことですよね?」
うぅと唸りながら頷けば、古泉は困ったように笑って、
「分かりました」
と言ったその手が、脚の間で昂ぶったものに触れてくる。
「なぁっ…!?」
「イきそうなんでしょう? 一度、イってください。せっかく男性に戻ってくださったんですから、ね」
そう言いながら体を起こした古泉が、俺の脚を開かせた上で、頭を埋めてくる。
口の中で熱く包まみこまれる感覚は初めてのはずなのに、そうじゃないように感じられたのは、女の子になってる時に、同じようなことをされたからだろう。
違うのは、俺の身体構造だけだ。
「あっ、や、古泉…っ、もたない、から……」
射精感を必死に堪えながら訴えても、古泉は俺を離してくれない。
「出して、いいですよ」
ねっとりと舌を這わせながら、そんなことを言う。
「僕にも、あなたの味を教えてください」
というのは、前に俺が古泉の手が自身の出したもので汚れた時に舐め取ったことについての意趣返しを含んでいるのだろう。
だからと言って、一人だけイかされるのは癪で、必死に堪えようとするのに、強く吸い上げられて負けた。
「ぁっ、――く、ぅ…!」
びゅくんと吐き出したものを、古泉は直接飲みやがった。
おまけに、飲みきれずにこぼれた分まで舐め取って。
そのあまりにもいやらしい光景にうっかり見惚れていると、俺の視線に気付いたらしい古泉は、ことさらににっこりと微笑み、
「これで綺麗になりました?」
と嫌がらせのような一言を告げた。
「っ、やめろよ、そういう真似は…!」
「すみません、悪趣味すぎましたかね? でも、あなたの方が先にしたんですよ?」
「煩いっ、余計なことを思い出してる暇があったら、」
「早く、ですよね」
笑いながら頷いた古泉の指が、ぬるりと俺の中に入ってくる。
「あ…っ」
「柔らかいですね。…さっきしたばかりだから、ということでしょうか」
考察するように呟くが、俺が同意を示せる状況だと思っているのだろうか。
「ぃ、あ、ぁ…っ、あ! だめ、……っくぅ…」
ぞくぞくなんてもんじゃない、強すぎてどうにかなりそうな快感に悶える俺を見つめて、
「可愛いですね」
なんて囁くな!
余計なことはもうするんじゃない!!
「では、どうしましょうか」
意地の悪いことを呟く古泉を睨めば、優しくまぶたにキスされた。
「すみません、いじめすぎましたか?」
「…っ、そう思うなら、も、早くなんとかしろよ…!」
「なんとか、ですか」
そう言いながらも古泉の指は動き続けている。
俺の中の感触を確かめるように動き、時折俺の感じすぎる場所を押し上げては、俺の体が痙攣するのを楽しむように。
そうして俺は、二重化した記憶で、あるいは体に刻まれた記憶で、知っているそれを求める。
少しの痛みと計り知れないほどの熱さと何よりも激しい快感を。
「古泉…っ、もう、ほし、い、からぁ……」
甘ったれた声が泣き濡れているように響いたのは気のせいだということにしておこう。
「…生でして、いいですか?」
「は……?」
意外な発言に古泉を仰ぎ見れば、古泉は苦笑を浮かべつつ、
「いえ、ね。…先ほど、たとえ薄いものであってもあなたの間に邪魔なものがあるのは好ましくないように感じられたものですから」
「…そう、だろうな」
「ですから……いい、ですか? 後始末とか、大変になるだろうとは思うんですけど、出来るだけのことはしますから」
「…ん、いい。と言うかお前は、俺が嫌がると思うのか?」
「えぇと、嫌がられる可能性もあるかとは思ってたんですけど……」
「ばか」
そう言いながら俺は笑って古泉のことを軽く小突いた。
「んなわけないだろ。……俺だって、お前のことをはっきり感じたい。中で、…出される、感覚とかも、な…」
羞恥を堪えて、そんな恥ずかしいことを言えば、古泉は引くどころか喜色に顔を輝かせた。
「嬉しいです。……愛してます」
「俺も……愛してる、から…」
そう告げると、俺の中を開いてみたりかき混ぜてみたりしていた指が抜け出ていった。
開いた空隙の物足りなさを埋めるように、古泉の熱が押し当てられ、期待に体が打ち震えた。
「あっ、ぁ、古泉…っ、早く…! ――っ、ひ、あぁ!」
ずんと突き立てられた熱に、喉が悲鳴染みた声を上げたが、それが悲鳴や痛みを訴える声でないことは、他でもない俺が言うのだから間違いない。
「あっ、ん、…はぁっ、ぁっ、やっ、そこ……っ!」
「ここが、いいんですよね」
そう言って微笑みながら、古泉はそこばかりを突き上げてくる。
やめてくれ、そんなに激しくされたら、頭がおかしくなる。
「おかしくなって、いいですよ」
そう言いながら、古泉は俺を抱きしめる。
「あなたを抱けて、嬉しいです。あなたとひとつになれて、本当に、本当に、嬉しいんです…」
知ってるよ、そんなこと、とっくの昔に。
「好きです。愛してます」
そう囁きながら、その言葉一つ一つを刻みつけようとでもするように、俺の中を穿つ古泉に、何かしてやりたいと思った。
仕返しだか、お返しだか分からん。
ただ、一方的に煽られるばかりなのが癪だと感じたことは間違いない。
だから俺は、
「い、っ、つき…!」
と声を上げた。
「……え…」
驚いたように、古泉の腰が止まる。
「やっ、じ、焦らすなよ、一樹…!」
「今、なんて……」
嬉しがっているくせに、まだ自分の耳の不調を疑うように聞いてくる古泉を抱きしめて、
「一樹…っ!」
と叫ぶ。
感激したように顔を歪めた古泉が、俺を抱きしめた。
「愛してます。愛してます…っ」
それと共に、俺の名前を叫ぶ。
ああ、名前を呼ばれるのってこんなに嬉しいものだったのか。
だったら、これからは一樹と呼んでやることにしよう。
そう思いながら俺は意識を手放したが、それは本当に短い間だった。
すぐに目を覚まし、後始末をしようとしていた一樹にすがりついたからだ。
それこそ、体力の続く限り体を繋げていたように思う。
自分が、もう女にならないだろうということを残念に思ったことさえ忘れて、男のまま、ひたすら快楽を貪った。
もはや記憶すら曖昧で、気がつけば体はどろどろのでろでろで腰もろくに立たず、授業には思いっきり遅刻した。

このまま病み付きになったらどうしたらいいんだろうな。
…いや、既に手遅れ…か?
……背筋が寒くなった気がする。