念願のエロです(ちょ
にょたとかノーマルとかダメな人はバックプリーズ







































































愛しい人



真夜中に訪ねて来た彼が女性になっていることの理由が分からず戸惑う間もなければ、それに驚く間もなく、僕は彼の行動に驚かされることとなった。
いきなり手の平に押し当てられた胸は柔らかく、それでいて弾力があり、他にはないような感触がした。
それが女性の胸であるということよりも、彼が自らそんな風に積極的な様を見せることが、僕の興奮を煽った。
だから、だ。
彼の挑発的な提案を受け入れてしまったのは。
そうして僕らは性急に寝室に入った。
シャワーを浴びる暇もない。
そんな余裕すらなかった。
彼が僕を欲してくれているということが、僕の劣情を彼のそれ以上に煽り立て、止め処なく燃え上がらせる。
気がつけば僕は、彼をベッドに横たえ、その服に手をかけようとしていた。
「……本当に、いいんですか?」
自分でも何度目か分からない問いかけを繰り返しても、彼はもはや諦めてしまったのか、怒りもしないで、
「いい、から……っ…」
と切羽詰ったような、艶めいた声を返してくれる。
いつもより高いそれは、それでも紛れもなく彼の声であり、その事実が僕をどうしようもなく煽る。
そのくせ、繰り返し何度も確かめてしまうのは、それくらい不安で怖くてならないからだ。
慎重に剥ぎ取ったTシャツの下には、何も身に着けていない素肌があった。
それまでだって、Tシャツ越しの感触に、それくらいのことは分かっていたはずなのに、実際目にするとどきりとさせられる。
「下着、つけてないんですね」
そう囁くと、彼はくすぐったそうに身をよじりながら、
「だ、から……っ、もう、そんな余裕もないんだって…!」
なんて可愛らしいことを言ってくれる。
「触ってもいい、ですか?」
「いっ、いちいち聞くなぁ…!」
真っ赤な顔をして泣きそうに叫ぶ彼に、僕は罪悪感に似たものさえ感じながら、
「すみません、……あなたの嫌がることは、したくなくて…」
「嫌だったら、抵抗するって言ってんだろ…」
そう言って恨みがましく僕を睨む。
その瞳の強さに惹かれた。
「……ありがとうございます」
言いながら、もう一度口付ける。
近づいた胸にそっと手を這わせると、柔らかかった。
たったそれだけのことで、びくんと大きく体を弾ませ、すがるように僕を抱きしめる彼が、呼吸を乱し、熱っぽい瞳で僕を見つめる彼が、愛しくて、愛しくて、胸苦しくなるほどだった。
本当にいいのだろうか。
彼がいいと言ってくれているのに、僕はまだ躊躇った。
こんなにも美しくて綺麗な人を、穢すような真似をしてしまっていいのだろうか。
そんなことを言えばまた彼に怒られると分かっていたから口にはしなかったけれど、疑問は胸の中で渦巻いている。
そのくせ、体は勝手に動くのだ。
僕の手は彼の胸の感触を味わうようにゆっくりとその上を這い回り、彼の呼吸を荒げさせる。
僕の口はその荒くなった呼吸全てを奪い取ろうとするかのように彼の唇を貪る。
疑問以上に強く激しく暴れまわっているのは、彼への愛しさだ。
「ふっ、ぁ、ぁ……こい、ずみ……」
とろりとどこか濁ったような瞳で、彼は僕を見つめてくる。
そこに渦巻くのは、僕に負けじと燃え滾る劣情であり、愛情なのだろう。
「……っん、も、いい、から……」
「いい、とは?」
思わず手を止めた僕に、彼はくしゃりと顔を歪め、もどかしげに身をよじった。
「ん、や、やめんな…ぁ……」
「え、でも…」
「いいってのは、……っその、同じことばっかじゃ嫌だって言ってんだ…!」
分かれよばか、と毒づきながらも、顔を羞恥に染めながらも、彼は言葉を紡いでくれる。
そうしなければ僕が分からないから。
「……愛してます」
柔らかすぎ、細く頼りない体を抱きしめて、僕は彼に告げる。
「ん…俺も、好き……」
伸ばされた手が僕をなだめるように僕の背中へ回され、優しく撫でられる。
そうしてやっと、自分がまだ服を少しも乱していなかったことに気がついた。
「すみません、僕も脱いだ方がいいですよね」
僕が言うと、彼は一瞬目を見開いた後、それからくっくっと喉を鳴らして笑った。
「んなことも忘れてたな」
そう楽しげに言って、
「……脱がせてやるよ」
「……えええ!?」
遅れて声を上げた時にはもう、彼の手は僕のシャツにかかっていた。
「こんな時間だってのにかっちり着込んでるってことは、まだ起きてたのか?」
「え、いえ……あなたをお迎えするのに失礼な服装はどうかと思って、慌てて着替えたんですけど…」
「…んなもん、気にしなくていいってのに」
呆れたように言いながらも、彼は機嫌がいい。
僕のシャツを脱がせて、露になった鎖骨にキスをして、赤い印を残した。
「…ん、案外綺麗に出るんだな」
なんて楽しそうに言う。
おまけに、欲情の色を隠しもしない目で悪戯っぽく僕を見つめて、
「……俺にも、付けてくれるか…?」
「…本当に、あなたって人は……」
思わずため息を吐くと、彼が怯えるように震えた。
「……嫌か?」
「嫌なわけないでしょう? ……煽るのがお上手過ぎて、心配に思っただけですよ」
「お前にしかしないし、出来ないのに、何が心配なんだよ」
「そうやって、無自覚に煽るからですよ」
「へ?」
ほら、分かってない。
苦笑しながら僕は彼を抱きしめる。
柔らかな胸が僕の体の下で潰れて、それだけでも感じてしまえるらしい彼が、
「ひぁ…っ…」
と短い声を上げた。
その細く白い首筋に口付けて、お望み通りの赤い印を散らしてあげようと吸い上げれば、
「っんん…!」
と声が上がり、くっきりと綺麗なキスマークが残った。
「もっとして、いいですか?」
「んっ…、して…?」
とろんとした瞳も愛しくて、その目元にキスを落とす。
鎖骨のラインに、肩口に、赤くキスマークを残す数ほどに、彼が僕のものなんだと思えた。
そのおかげで、少しずつだけど、余裕が出来る。
それでも僕は根が臆病に出来ているようで、おっかなびっくり彼に触れるしか出来ない。
手触りのいい白い肌をなぞり、柔らかな乳房をそろりと揉みしだくと、
「んっ、ぁ、…ふ……」
と艶かしい声が彼の唇から漏れ聞こえてくる。
それに気をよくして、僕はもう少し力を込めて、彼の胸を揉み、赤味を増した先端をそっと抓んでみた。
「ひっ、ぁ、…っ」
「す、すみません、痛かったですか?」
慌てて離そうとした手を掴まれた。
…あれ。
「…い、痛かったんじゃなくて、」
真っ赤になった顔、潤んだ瞳で彼がこちらを見ている。
僕の手が、彼の柔らかな肉に沈み込む。
その手の平の下で、赤い部分だけが硬くなって、その存在を主張した。
「気持ち…いい、から……」
「…よかったん、ですか?」
「ん…、もう、だめだな、俺は」
と苦笑した彼は、僕の体をきつく抱きしめて、小さな声で恥ずかしそうに呟いた。
「……お前に触られるだけで、どこもかしこも気持ちよくて、おかしくなりそうだ…」
「…そんなこと言われたら、こっちの方がおかしくなりそうですよ」
僕まで酷く真っ赤になりながら、それを隠すように彼に口付ける。
これ以上はないと言う至近距離で見つめた彼の目は柔らかく細められ、とても愛らしい。
それを見つめながら、手の平で強めに胸を揉みしだくと、彼の体が大きく震えた。
お互いにまだ服を身に着けたままの下半身が酷く熱を持っているのが伝わってくる。
薄手の綿パン越しに絡められた脚が、もどかしげな主張を続けていた。
でもまだ、と僕は胸の突起を強めに押しつぶしてみた。
「ふぁっ、ぁ、……っん、や、ぁ……」
否定の言葉に反応して、反射的に彼の顔を見れば、彼はふるふると首を振った。
えっと、これは…。
「…さ、されるのが、嫌、なんじゃ、ない、から…」
と言うか俺は何でこんなことまで言わねばならんのだ、とのた打ち回りそうい唸る彼に、僕は小さく笑ってキスをする。
「僕のため、ですよね? …ありがとうございます」
「…お前がもうちょっとヘタレじゃなかったらいいのに」
「すみません」
苦笑した僕に、彼は優しく微笑み、
「…嫌いじゃないけどな。…そんなお前」
「…僕は、そうやって僕を煽ってくれるあなたが好きですよ」
キスをしながら、くりくりと乳首を抓んでみたり、押しつぶしてみたりしていると、
「んっ、んぅ、や、ぁん…!」
と甘ったるい声が聞こえてくるのも愛しくて、
「ねえ、されるのが嫌じゃないのなら、何が嫌なんです?」
と、少しばかり意地が悪いかなと思いながら聞いてみると、
「わ、かる、だろ…っ?」
「分からないから聞いたんですけど…」
これは本当ですよ?
「……もう、この、ばか…っ」
怒ったように言いながらも、彼は羞恥に耐えるように、
「…きっ、気持ち、よ、過ぎるのが、嫌なんだよ…っ」
と答えてくれた。
でも、
「どうして嫌なんですか?」
気持ちいいならそれでいいと思うのに。
「……っ、気持ちよ過ぎて、おかしくなりそうだから…ぁ! それ、に、俺だけ気持ちよく、なる、なんて…っ……」
「おかしくなっていいですよ。…そんなあなたも見てみたいです。それに、あなたが気持ちよくなってくれたら、僕も楽しいですし」
第一、これはまだ途中なんだって分かってますよね?
そっと囁くと、彼はぴくりと体を震わせ、戸惑うように僕を見た。
「わ、かって、る……」
恥ずかしそうに目を伏せるのも愛らしくて愛しくて、
「…僕は、いいんですよ? 急がなくても」
「やっ…! だから、なんでそうやって焦らそうとするんだよ!?」
……は?
焦らすって……ええと、なんでそんなことになるんでしょうか。
「だ、って、そう、だろうが…! お前のことが欲しくて、こんな、なっちまって、ん、のに、いつまで経っても、して、くんなく、って、俺ばっか、欲しがって、る、みたいで、悲しく、なる…っ!」
そう言って彼はぽろりと涙をこぼす。
「な、泣かないでください…!」
「な、泣かれ、たく、ない、なら、……っ、早く、しろよ…!」
「早く、って…」
「…脱がせて、どこもかしこも、触って、最後まで、しろよ…っ。そうして、お前が本当に俺のこと好きで、俺と同じくらい、お前も、俺のこと、欲しいって思ってるんだって、教えてくれ…! それ、とも、」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、彼はじっと僕を見詰めた。
「…お前は、違う、のか? …したく、ない、か……?」
「そんなこと、思うわけないでしょう」
我慢出来なくなって彼を抱きしめた。
「あなた以上に、僕の方があなたを欲してますよ」
「嘘、つけ……っ」
「本当ですよ」
彼をなだめたくて背中を撫でると、
「ひ、ぁあ…!」
と彼が声を上げる。
「もう、苦しい、から……」
「苦しい?」
「…っ、い、イけないのに、煽られるだけ煽られたら苦しいだろ!?」
と怒鳴られて、合点が行った。
「す、すみません。つい…」
「ついじゃない! なんの拷問だ!」
真っ赤な顔で怒る彼にキスをひとつ落として、
「…じゃあ、下、も、脱がせますね…?」
と声を掛けると、そっぽを向かれた。
「さっさとしろ」
「すみません」
謝りながらも嬉しくて、くすぐったくて、僕はそろりと彼の綿パンの上から撫で付けると、
「んあぁ…っ」
と彼が声を上げる。
「あ、はや、く……」
切なげな声に押されるように、僕はパンツのボタンを外し、チャックを下ろした。
そうして引っ張れば、するりと簡単に脱げ、意外な手ごたえの軽さに首を傾げるまでもなく、彼が腰を浮かしてくれたことに気付いた。
そんな、些細なことさえ嬉しい。
思わず細めた目を見開いたのは、彼の素足が本当に白くて綺麗で、おまけにその小さくシンプルな白い下着が湿っていたからだ。
「……感じてくれたんですね」
嬉しくて呟くと、
「いっ…言うなぁ…!」
と睨まれた。
羞恥で赤く染まった彼の顔に、また言ってはいけないことを言ってしまったらしいと悟る。
「す、すみません」
「も、いいから、触れ、よ…!」
泣きそうに顔を歪めての言葉に、僕は躊躇った。
「嫌、じゃ、ない、ですか……?」
「は…っ?」
「だって、そんな、泣きそうな顔をして……」
「……っ、この、ばか!」
ばかばかばか、と早口に罵られても、可愛いだけなんだけれど、彼は本気でそう言っているらしかった。
「ご、ごめんなさい…」
「おま、えがっ、」
ぼろ、と涙がこぼれ落ちる。
「あんま、じ、焦らすから…っ!」
……え。
「だから、こ、んな、なって、ん、のに…っ、なんで、まだ、躊躇うんだよ…! やっぱり、し、たく、な、…っく、い、のか…?」
泣きじゃくりながらの言葉なのに、どうしようもなく嬉しかった。
愛しくて、愛しくて、それ以外の何もなくなってしまいそうなほどだ。
「したくないわけ、ないでしょう?」
「だったら……」
「…すみません。僕も、不安なんです。怖いんですよ。……あなたを傷つけてしまわないか、あなたに無理をさせてしまっているのではないか、そうして、あなたに嫌われてしまうのが、何よりも怖いんです」
「んなの…っ、俺の方が、よっぽどだ…」
泣き濡れた瞳で、彼は僕を睨みつけた。
濡れてなお、強い眼差しに僕は射抜かれる。
「俺の方が、よっぽど、怖いんだからな! 怖い、から、……こんな、体にまで、なったんだから……」
「…ええと、どういうことでしょうか…?」
首を傾げる僕に向かって彼は手を伸ばした。
それに呼び寄せられるように僕は彼を抱き締める。
僕の耳元で、彼は小さな声で囁いた。
「この体なら、怖くない…。だって、そうだろ? 抱かれるための形なんだから」
「…そんなに、怖かったんですか?」
こくんと、彼はいくらか幼い動作で頷いてくれた。
「怖くて、仕方なかった…。今だって、まだ、多少は怖い。…っ、た、多少だからな?」
そう念押ししなくても、
「分かってます。…止めたくないんですよね?」
「う………、ぁ、ああ、そうだ!」
やけになったように頷いた彼は、僕の肩にわざときつく爪を立てながら、
「…お前の手で変えられるのも、怖かったし、かといって、受け入れられないのも怖かった。…それで、お前に嫌われたくなかった」
「それくらいで嫌ったりなんて、」
「しないって、分かってるさ。だがな、俺だったら、嫌だぞ。いつまで経ってもただの友達みたいな状態なんて、生殺しもいいところだ。……お前は俺にそれをしやがったけどな」
……ええと、それってつまり、
「…手、出して、欲しかったんですか……?」
「……」
むっつりと黙り込んだまま、彼は頷いた。
「なのにお前はヘタレ過ぎて、俺から誘わなきゃどうにも動きそうになかったし、だがそれは恥かしすぎて、なかなか出来なかったし…」
ぶちぶちと文句を言う彼に僕はそっと口付けた。
「不甲斐無くてすみません」
「……」
「…頑張ってくださって、ありがとうございます」
「なっ…!」
彼の真っ赤な頬にキスを繰り返し落としながら、僕はくすぐったそうに身を捩る彼に尋ねた。
「ねえ、記憶は二重化するんでしたよね?」
「え? あ、ああ、そうだが……」
「では、この体で覚えたことは、いつもの姿に戻っても忘れないんですよね? それどころか、ちゃんと適切な形に書き換えられる可能性さえある…」
「そうだとは思うが……何が言いたいんだ?」
「いえ、それなら、この体で気持ちよくさせてあげられたら、恐怖もなくなるのではないかと思いまして」
「……っ、な、に、言って…」
恥かしそうに絶句する彼に、僕は微笑み、
「そういうこと、ですよね? あなたがしたかったのは」
「な…だ、れが、んなこと……」
「違うんですか?」
「……知るか」
そう言って彼は顔を背けてしまった。
ということは、そういうことなんだろう。
僕は彼の柔らかすぎる体を抱き締めて、
「…愛してます」
と囁いた。
愛してます。
幸せ過ぎて泣きたくなるくらい、
「あなたが好きです」
好きなんです。
「…直接触っても、いいですか?」
恥かしがりな彼のことを思って、あえてどこかは明言せずに聞いたけれど、それでも十分恥かしそうに彼は視線をさ迷わせ、かすかに頷くに留めた。
それで十分です。
僕は薄く頼りない下着をそろりと引き下ろした。
引きつれるようにそれはころころと丸まり、足首にひっかかる。
でも僕はそれよりも、露わにされた部分に興味を引かれた。
なだらかな稜線を描く丘は薄い茂みに隠されているのに、その先では露が光って見えるほどに濡れそぼっている。
それを確かめるように、そっと指を這わせると、
「ひっぁ…!」
とそれだけで彼の喉が震え、こぷんと雫が溢れ出た。
「…凄いですね」
極力小さい声で呟いたつもりだったのに、彼の耳にはちゃんと届いてしまったらしい。
かぁっと顔を赤く染め、そればかりか耳まで赤くなって、
「だっ、誰のせいだと…!」
「すみません、僕のせいですよね? 分かってます。……でも、本当に凄いですよ。…こんなに感じてもらえて、嬉しいです」
「……本当に?」
「ええ。嘘を言ってどうするんです?」
「…やらしくて、恥かしいやつとか思ってないだろうな?」
「思いませんよ」
なんでそんなことを思わなきゃいけないんです?
なんて言ったらいいんでしょうか。
「…なんて言うか、あなたも同じなんだと思えて、嬉しいです」
「……は?」
「やっと分かったってことですよ。……穢してはいけない人でもなく、僕が何かしてはいけない人でもなく、ちゃんと触れて、愛し合っていい人だということが」
「遅いんだよ、ばか」
そう言いながらも、彼は笑ってくれた。
泣きそうに、あるいは、嬉しそうに。
「すみません。……ねえ、好きにして、いいですか?」
「ん…しろよ……。…俺としても、一々言わされるより、その方がずっとマシだ」
「ふふ、…後で怒らないでくださいね?」
「は? ……っひぁあ! やっ、そこ…っ……」
硬くなっていた小さな突起を指先でつまむと、それだけで彼の体が跳ねる。
溢れる愛液はシーツをも濡らし、てらてらと艶かしく光っている。
それを塗り広げるように、僕は彼の谷間に指を這わせた。
深くはせず、浅く、その形を確かめ、彼の感じやすい場所を確かめるように。
「ぁっ、あ、ぁ、やぁ……! 古泉…っ」
悲しみのせいではないのだろう涙を溢れさせながら彼が僕を呼ぶ。
それだけで、胸が熱くなる。
「愛してます」
熱くなったものを吐き出すように、僕は言葉を紡いだ。
「あなただけです。…あなたが好きです」
「ひ、ぁ、あぁ、んっ…! く、すぐった…ぁ……」
甘い声を聞きながら、僕は次第に指先を彼の谷間へと潜らせていく。
とろとろに蕩けたそこは熱く、僕の指まで融けてしまいそうなほどだ。
溢れる粘着質な水音は、くちゅくちゅなんて可愛らしいものではなく、ごぷんとでも表現したらいいくらいの生々しさと猥らさを持っていた。
「痛みません…?」
「ふっ、ぁ、だ、だいじょ、ぶ…だから……っ、ぁ!」
指一本を奥まで潜らせ、ぐるりと中をかき回すと、
「いぁあ!!」
と彼の体が一際強く痙攣した。
「…ねえ、もしかして、今、軽くイきました?」
「っ、だ、から、言うなって…!」
羞恥に染まった顔で言う彼が可愛らしくて、
「…可愛いです」
と言えば、
「うるっさい!」
と言うくせに、中にもう一本指をもぐりこませるとそれはまた嬌声にかき消された。
「っ、ふ、ぁ、んんっ、だめ…っ、強い…って……!」
「でも、痛くはないんですよね?」
頷きながらも、彼の薄く開かれたままの唇からは喘ぎ声が溢れてくる。
苦しそうな切なそうな、そのくせとても気持ちよさそうな声。
もっと気持ちよくさせたくて、彼の脚を大きく割り開き、そこに頭を潜らせた。
舌先で突起の形をなぞれば、
「やっ、め、やだぁ…!」
と泣きそうな声を上げられるけれど、その声を聞けば、やめて欲しいようには思えなかった。
それでも念のため、と、
「やめて欲しいですか?」
と聞けば、髪の毛をきつく引っ張られた。
「ばかぁ!!」
「すみません、意地悪が過ぎましたね。お詫びに、」
もっと気持ちよくしますから、と溢れる愛液を音を立ててすすると、
「ひぁあっ! ひっ、ぁ、んんん…!」
両脚できつく頭を挟まれた。
その締め付けの強さに、彼の感じてくれている快感の強さを類推しつつ、僕は更に舌を熱く柔らかな谷間へと滑り込ませた。
指と一緒に中を刺激すると、充血しきって真っ赤になったそこは、痙攣のような収縮を繰り返す。
ひくつくそこに、三本目の指を押し入れると、流石にいくらかきつかったものの、思ったよりは容易く飲み込んでくれた。
「はっ……ぁ、…あ……」
彼の声にもいくらか苦しげなものが混ざっているのに、それが分かっているのに、僕は止められなかった。
恐る恐る顔を上げて、
「……あなたが欲しいです」
「古泉……?」
「…入れて、も、いい、ですか……?」
そう懇願するように申し出ると、彼は一瞬驚いた顔をした後、柔らかく微笑んでくれた。
「しなきゃ、殴る」
「…愛してます」
「ん…、俺も……」
名残惜しいものを感じながら、彼の中から指を引き抜いた。
そうして、慌ただしく、窮屈なズボンから取り出した己を押し当てようとして、止めた。
「ぁ……? 古泉? なんで、止めんだよ…。やっぱり…」
なんて悲しげな顔をする彼に、僕は慌てて首を振った。
「違いますよ! ただ、そのですね……、ええと……」
「なんだよ」
「……生はまずいでしょう」
僕が小さな声で答えると、彼は軽く目を見張った後、うぅんと唸った。
そうして首を傾げ、
「…大丈夫じゃないか?」
「いけませんよ」
「つっても、今からゴム買いに行くとか言ったら殴るくらいじゃ済まさんぞ」
と睨みつけられ、僕は動けなくなりかけたが、
「えっと、か、買いに行かなくても、あります、よ?」
「……はぁ?」
「…あなたと付き合いはじめてすぐくらいでしたか、いただいたんです」
「いただいたって誰に」
ぽかんとしている彼に、僕はかなり恥かしいものを感じながら、正直に答える。
「機関の関係者の方ですよ。…お祝いと称して、セーフティセックスについて一通り講義を受けさせられました……」
「そりゃ……なんつうか…」
「とにかく、その時避妊具等を押し付けられたので、ありますよ」
僕はそう言ってサイドボードに這い寄ると、その真ん中の段の奥に手を突っ込んだ。
「というか、あなた、前に探し回った時に見つけなかったんですか?」
「ああ。……あの時は、その、……何かを隠すとしたら、って目で見てたからかも知れんが」
気まずそうにもごもごと口ごもる彼に、僕は苦笑しつつ、
「別にいいですよ。探していいと言ったのは僕ですからね。気にしないでください。…ね?」
「……ん…」
頷く彼の目の前で僕は目的のものを引っ張り出した。
未開封の箱を開き、中から取り出した小さな袋を破く。
そうして、講義された通りに――というのもかなり情けないものがあるんだけれど――ちゃんと装着したところで、彼がポツリと、
「……手慣れてるな」
手慣れてないですよ!
何言い出すんですか!?
「慣れてるように見える」
「ですから、講義されたせいですよ。恥かしいから黙ってましたけど、僕はあなた以前に誰とも付き合ったりしてませんからね!」
「そうなのか?」
「そうです。……だから、ヘタでも文句言わないでくださいね?」
「その前に、経験もないくせになんであれだけうまいのか聞きたいくらいだ」
えええ。
「……ああもう、そんな話はいいから、」
そう言って彼は彼は熱っぽく僕を見つめた。
「…早く、しろよ。もう、我慢出来ん。これ以上待たせると……」
待たせると?
「……襲うぞ」
「……」
彼はくすりと笑って、呆然とする僕を見た。
「冗談だから、……早く。お前も限界、だろ?」
「……そうですよ。…いいん、ですよね?」
「くどい」
「…すみません」
笑いながら僕は彼を抱き締めた。
いつもと違う感触、でも確かに、彼の匂いのする体だ。
彼の脚を割り開き、今度こそ先端を食い込ませると、
「っ、く、ぁ……」
と彼が呻くような声を上げた。
「ゆっくりします、から…」
「ん……」
じわじわと彼の中に己を埋め込ませていく。
他の誰も知らない谷間は狭く、きつく、僕のことを絞り上げるようですらあった。
「く……っ」
思わず呻く僕の吐息に、彼の苦しげな喘ぎが重なる。
「はっ……ぁ、ぁ……あ…」
「だ、いじょうぶ、ですか…?」
「んっ……、へ、いき…だから……」
その言葉に押されるように、僕は彼の中を己で埋め尽くした。
熱い谷間に融かされそうで、いっそ融けて、彼の一部になってしまいたいと思った。
「痛く、ありません…?」
「やっ、それ、より……」
かすかに震える彼の腕が僕の背中に回され、縋るように爪を立てられる。
彼の不安を和らげたくて彼を抱きしめ返せば、
「ひぁん…!」
と声を上げられた。
……あれ?
「だ、め……っ、おま、え、は、余計なこと、すんな…っ!」
そう訴える彼の声は頼りなく、痛がっているにしてはやけに艶かしかった。
……ええともしかして。
「…気持ちいい、ん、ですか」
「っ!」
当たりだったようだ。
ほっとした僕に気付かれたと彼も分かったのだろう。
羞恥に打ち震えながら、
「お前のせいだからな…!」
と唸る。
「はい、僕のせい、ですね」
他の誰のせいでもなく。
そのことが、酷く嬉しい。
彼を傷つけたりせずに済んだことも。
そして、嫌われていないことも。
「愛してます」
囁いて、そろりと体を引くと、
「ふあぁっ!」
という愛らしい声が耳に触れる。
もう一度、と少し強引に押し戻せば、
「ぁっ、ひぃっ……!」
少しだけ獣染みた熱っぽい声を聞かせてくれる。
「愛してます。あなたが好きです」
囁き続けながら、僕は彼の中を掻き乱す。
彼の感じる場所を求めて、彼の最奥を求めて、そうするうちに自分も気持ちよくなって。

熱を放つ瞬間、薄っぺらな障害を酷く憎らしく思ったほどだった。