微エロ……というか自慰ネタです
品がなくてすみません
いつも以上に古泉が可哀想です
生温かい目で見てあげられる人だけどうぞー












































我慢。我慢。…我慢?



退屈な会議が終り、公道に出たので、僕はやっと携帯電話の電源を入れた。
するとすぐに着信音が大音量で鳴り響く。
それが涼宮さんからの着信だと分かった僕は慌てて通話ボタンを押した。
一体何事かと驚き、また戸惑いながらも、声だけは落ち着かせて、
「はい、古泉です」
『やっと繋がった! バイト終ったの?』
「ええ、おかげさまで、先ほど終ったところです」
僕が答えると、涼宮さんはわざわざ二言三言、労いの言葉を掛けてくれた上で、
『今、ちょっといい? キョンも関係することで』
彼のこと、と言われたら僕に断れるはずもない。
家へ帰るべく歩きだしながら、
「ええ、大丈夫です。何かあったんですか?」
と聞いたというのに、涼宮さんの返答は予想斜め上もいいところだった。
『古泉くんって、性欲ないの?』
思わず足が止まった。
動いていて、足音なんかがするせいで聞き違えたのかと思った。
「すみません、よく聞こえなかったんですが……」
『だから、性欲、ないの? キョンを見てて、こうっ、むらむらぁ〜っとするとか! あ、別に相手はキョンじゃなくてもいいわよ? キョンには内緒にしておいてあげるから。この際みくるちゃんでも有希でもいいわ。許してあげる。とにかく、そういうこと、ないの?』
懇切丁寧に言っていただかなくても、性欲の意味やそれによって起こる諸現象くらいについては僕もよく分かっているつもりだ。
「…い、一体何を言い出すんですか…?」
戸惑いながらそう問えば、彼女はけろっとした、つまりは悪びれもしない声で、あっさり答えた。
『だって、付き合いはじめてもう何ヶ月も経ってるのに何もないって言うから』
「何ヶ月もと言われましても……精々2、3ヶ月ですよ?」
それに、彼も一体どこまで話していて、これからも話すつもりでいるんだろうかと心配になってくる。
『十分過ぎるくらい長いわよ! 合鍵も渡したくせに、なんでそうスローペースなの!?』
そう言われても困るしかない。
「まだ高校生なんですし…」
と言い逃れようとすれば、
『高校生だからこそあれこれ持て余すってもんでしょ?』
と怒鳴られる。
『それで、古泉くんは性欲もないわけ?』
「そっ……」
そんなことは流石にありません、と言ってしまっていいんだろうかと戸惑う僕に、涼宮さんは厳しく、
『答えないと、ないと見なして、キョンには古泉くんが不能だって伝えるけど』
「それは勘弁してください!」
思わず泣きそうになりながら、
「僕だって、…その、性欲くらい、ありますけど……」
と答えさせられる。
何ですか、これ、拷問ですか。
『じゃあなんでキョンに何もしないの?』
「何もしてないというわけじゃないんですが…」
『そうなの? キスくらいしかしたことないんじゃないの?』
言わなきゃいけないんでしょうか。
『団長命令よ。副団長と言えども逆らうことは許さないわ!』
と言われてしまえば、立場的にも、また、そうでなくても勝てるはずもなく、
「キスはよくしますし…ハグもしょっちゅうしますよ。それから……その、ちょっと、ですが、彼がくすぐったがるようなところに触れたりも、しますし…」
恥かしくて赤くなりながら、彼に後でどんなに叱られるんだろうかと思いながらそう言った僕の耳に、涼宮さんの罵声が突き刺さる。
『それだけ!? そんなの、キスだけと同じようなもんじゃない!』
「すみません」
反射的に謝ってしまうのは、僕が涼宮さんのような押しの強い女性に押さえつけられることになれてしまっているからに相違ない。
…主な原因が誰かは、あえて言わないでおきますけど。
『それで古泉くんは平気なの?』
「え…」
それは一体どういう、
『欲求不満になったりしないの、って聞いてんのよ!』
「それ、は……」
『キョンのこと、好きなんでしょ?』
「それは、勿論そうです」
『なのに、何もしないって、……何でよ』
涼宮さんが納得いかないとばかりに唸るのへ、僕はもう正直に答えるしかなかった。
「彼のことが好きだからこそ、大事にしたいんです。彼を傷つけたり、彼に無理をさせてしまうようなことは、したくないんです。僕が我慢して済むことなら、そうしたいと…」
『ばっかじゃないの!?』
すみません。
『それでキョンを不安がらせてどうすんのよ。全く、本末転倒もいいところだわ。……今日、キョンがあたしに言ってきたことを教えてあげるから、その意味をよおっく考えなさいよ』
「はい」
一体何を言われるんだろうかと耳を澄ませる僕に、彼女は小さな声で囁いた。
『古泉が手出ししてこないのは何でだろう……って、本当に不安がってたんだからね。あたしからすると、またこのお花畑頭が何か言い出したって呆れるしかないようなことなんだけど、本人としては大真面目なんでしょうね』
「彼が……そんなことを…?」
本当だろうかと、信じられない気持ちのまま問い返せば、
『そうよ。待ってるんだから、古泉くんのすることはもう分かってるでしょうね?』
「え」
思わずそう声を上げた僕に、彼女はもう一度怒鳴る。
『だからっ、さっさとあの馬鹿を部屋に連れ込むかどうかして押し倒してやんなさいって言ってんのよ!! 言っとくけど、その時は朝まで寝かせるんじゃないわよ!? 眠い目擦って夜明けのコーヒーでも飲みなさいっ!!』
……今の、絶対回りにも響いた気がする。
近くを歩いていた人の視線が僕に集中したから間違いない。
ついでに言うと、僕はあまりの発言にフリーズ状態に陥った。
その間に電話は切れてしまい、僕はため息を吐きながら携帯を仕舞うことになった。
それでもなんとか再び歩きだしつつ、僕は考える。
涼宮さんにあんなことを彼が言ったのなら、本当にそうしていいということなんだろうか。
むしろ、して欲しいということなのかもしれない、と、それくらいは鈍い鈍いと罵られまくっている僕でも分かる。
…でも、違う可能性だってないとは言えない。
彼がどんなことをするのかよく分かっていない可能性だってある。
何より、…涼宮さんにも言った通り、僕は彼を傷つけてしまうのが、何より怖いのだ。
そうして、嫌われてしまうのが。
やっと、好きだと分かった。
好きだと言ってもらえた。
お互いに気持ちが通じた。
それなのに、また、一人に戻ってしまうのは、考えるだけでも悲しくて、切ない。
かと言って、僕だって正常な男子高校生ですから、したくないと言うわけなどあろうはずもない。
むしろしたい。
したいに決まってるじゃないですか。
彼のことが好きで、しかも彼はあんなにも無防備で可愛らしくて、おまけに時々は女性にすらなってしまうような人で。
……自分でもよく理性が持つものだと感心するくらいですよ、ええ。
それだって、涼宮さんにあんなことを言われた今ではどれほど持つか分からない。
これまでだって、色々と理由をつけて、いっそ押し倒してしまいたいとか思ってしまうのをなんとかギリギリのところで押し留めてきたのに。
…全く。
「人の気も知らないで…」
思わずため息を吐きながら、ドアを開けた僕は、彼の靴があることに気がついてぎょっとした。
来てるんですか。
涼宮さんのことからしてああいう話をしたのは今日のことですよね?
それなのになんで来てるんですか。
こっちにも心の準備ってものがあるんですけど。
どこから何が飛び出すのかとびくつきながら僕は足音を殺して彼の姿を探し始める。
キッチンにはいない。
リビングにもいない。
まさかと思いながらバスルームをのぞいたけれど、使用した形跡もなくて、とりあえず安心した。
そうして、怖々寝室に足を踏み入れると、僕のベッドで彼がすやすやと眠っていて、安堵するより先に気が抜けた。
男性のまま、女性にすらなってない。
びくついた自分が馬鹿みたいだなと笑いながら、彼の眠りを妨げないよう、僕はそっとベッドの側に座り込み、彼の寝顔を覗き込む。
難しそうに寄せられた眉。
案外長い睫毛。
見た目以上に柔らかくて綺麗な頬。
薄く開かれた桜色の唇。
それに触れたことのある自分の手や指や唇。
……不思議なくらい、うん、自分でも馬鹿だなと思うくらい、ドキドキする。
何度も触れたし、数えられないくらい見つめてきた。
それなのに、やっぱり慣れたり飽きたりすることはなくて、変わらずドキドキさせられる。
彼が愛しい。
触れたい。
全部、欲しい。
僕は慎重に手を伸ばし、一度だけ彼の頭を撫で、そっとキスをした。
それでも彼は目を開けない。
でも、少しだけ、眉間の皺が緩んだ気がして、自然に笑みが零れた。
愛しい人。
「……愛してますよ」
そう囁くと、まるでそれがくすぐったかったかのように彼が身動ぎし、寝返りを打って向こうを向いてしまった。
僕も、これ以上彼を見つめているのは危険な気がして、彼に背を向けるように、ベッドにもたれかかる形で座りなおす。
でも、直接見ていなくても、僕は彼のあらゆる姿を思い出してしまう。
キスした時の、どぎまぎさせられるほどうっとりした顔を思い出すだけで、体が熱くなってしまうくらい、僕はやっぱり彼のことが好きで、つまりは彼以上に、何かしたいと望んでいるんだろう。
危ないと思いながら、思い出すことをやめられない。
触れた肌のなめらかさ。
潤んだ瞳の危うさ。
キスの後、濡れて赤味を増した唇の艶かしさ。
緊張や興奮でかすかに震える体はいつも以上に華奢に思えるし、だからこそ大事にしたいとも思う。
その温もりの心地好さに囚われているのは間違いなく僕の方だ。
髪のちょっとした乱れすらこの上なく魅力的で、熱を煽られる。
唇を合わせれば、吐息すら甘く思える。
唾液は蜜のよう。
舌の柔らかさ、弾力。
かすかに上げる、彼自身気付いていないほどの小さな喘ぎ。
恥かしそうに、でもはっきり囁かれる、愛しさを伝える言葉。
熱っぽく、掠れた声。
僕の服を不安そうに、あるいは縋るように、握り締める指先。
赤味の差した爪はいくらか角張っているのに、女性の丸いそれよりもよっぽど綺麗に思える。
目の毒なまでに白い首筋。
…何もかも全部、愛しくて、愛しくて、苦しくなってしまいそうなほどだ。
そんな何もかもに耐えて耐えてここまで我慢し続けてきたのに、涼宮さんにあんなことを言うなんて、酷い人だ。
おまけに、こんな風に無防備に寝て。
そこ、僕のベッドなんですよ?
ちゃんと分かってます?
振り返って見ても、彼はまだ穏やかな夢の中にいるようで、すぐ側で悶々とした熱を燻らせている人間がいるなんてことには少しも気付いていない。
「…あなたが悪いんですからね」
こんなケダモノみたいな男のベッドで無防備に寝姿をさらしたりするから。
そう言いながらも、
「すみません…。……お願いですから、起きないでくださいね…」
と言い添えてしまう小心者さ加減に笑いながら、そのくせ僕は大胆な行動に出た。
彼の寝息を聞きながら、窮屈なズボンを寛げる。
既に熱を持ち、硬くなり始めてるそれに苦笑しながら、直接手で触れる。
すみませんすみませんと胸の中で百万回繰り返すくらいの勢いで謝りながらも止められない。
彼がいけない。
あんなことを言ったから。
涼宮さんもいけない。
僕にそれを教えたから。
でも一番いけないのは僕だ。
「…っ、すみ、ません……」
小さく声に出して謝って、僕は彼の方へと目を向ける。
まだ眠っているらしい彼は、目覚めが近いのか、いつの間にか聞こえていたはずの寝息もよく聞こえなくなってきていた。
それなのに、僕は止められない。
そればかりか、つい、口走ってしまっていた。
彼の名前を。
普段、恥かしくて、照れ臭くて、何よりそれが愛の言葉なんかよりももっとずっと大切で重要なものに思えて口に出来ないそれを。
白く濁ったものをティッシュに吐き出して、ゴミ箱に放り込んだ。
すぐにでも、きちんとビニール袋に入れて、口をきつく縛っておかなければと思うのに、気だるさに支配された頭は怠惰に流される。
手を洗わなければ、と思いながら、もう一度だけ、と彼を見つめたところで、彼の顔が真っ赤になっていることに気がついた。
……ええと。
あの。
…まさかとは……思うんです。
思うんですけど……。
「……起きて、ました?」
彼の顔が余計に赤く染まり……ええと。
つまり…。
……それって…。
じわりと目を開けた彼が、直視出来ないとばかりに目をそらす。
その唇が開かれる。
「す、まん…悪気はなかったんだ、が……」
…………。

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