エロですよ
甘いですよ
古泉の部屋で、のんびりと過ごしていたのだが、なんとなく退屈しかかっていたのを見抜いたんだろう。 唐突に、 「ゲームでもする?」 と言われた。 「またボードゲームか?」 「しゃーねーじゃん。俺、コンピュータゲームとかテレビゲームとか苦手なんだからさ」 「何で苦手なんだ?」 「んー…なんか、テレビとか見てると目がチカチカすんだよな。んでもって、ゲームって割とひとりでやるのばっかじゃん? それに、誰かと一緒にしてても、それぞれテレビ見てたんじゃ、コミュニケーションも何もないし。だから、好きじゃねーの」 なるほど、分からんでもないな。 「というわけで、今日はいっそツイスターとかで体を密着させたいところなんだけど」 と不穏なことを言いながら擦り寄ってきた古泉に、 「却下」 と薄い将棋盤を叩き付けてやった。 「ちぇー」 とかなんとか言いながらも、古泉は楽しそうに駒を広げ始めた。 そうやって、だらだらと将棋をしていると、部室でしている時とは違って、案外古泉が勝つのである。 むしろ、古泉の方が勝率もいいし、いい手を打ってくる。 「なのになんで部室だと弱いんだ」 俺が睨みつけても、古泉は軽く肩を竦めるくらいだ。 「やっぱりあれか? キャラ作りのせいなのか?」 「いーや? そうじゃないけど」 じゃあなんだよ。 「んー…なんていうか……」 と考え込みながら、好位置に飛車をつけた古泉は、悪戯を白状させられそうな子供のような目で俺を見た。 ここで、咎めたっていいのだろうが、俺はどうにもこの上目遣いに弱いらしく、 「怒らないから」 と言ってやると、現金にも、途端に明るく笑った古泉は、 「いやぁ、部室だと理性との戦いがあって、ゲームに集中出来ないんだよね」 ……何? 「ついつい、あんたのこと見ちゃうだろ? 変に思われちゃまずいから抑えようとするとやっぱり気が散るし。我慢しなきゃって思うと余計に気になるし。…だから、結構苦労してんのよ、俺も」 何が苦労だ。 このド阿呆。 「えー? 大変なんだって。あんたのこと見てたら、もっと話したいなとか、触りたいなとか、舐めたいなとかって思うし」 「そんなこと言う割に、今日は少しも手出ししてこなかったな」 何気なく呟いたつもりだったのだが、どうやら古泉を刺激するにはそれだけでも余りあったらしい。 「ん? 出して欲しかった?」 にやけきった顔を近づけてくる古泉から思い切り顔を背け、 「違う」 と言ったのだが、古泉のニヤケは収まらず、 「手を出していいんだと思うとかえって我慢も出来たりするんだよな。まともにゲームしたいとも思うし」 そんなことを言いながら、古泉はそろりと油断ならない手を伸ばしてきた。 テーブル越しに将棋を指してはいたものの、そのテーブルというのは案外小さいもので。 よって、大した障害物にもならないらしい。 胡坐をかいた足先に、古泉の指が触れてくる。 「ちょっ……」 抵抗する間もなく、手を握りこまれる。 そのまま、軽いタッチで撫でられると、ぞくりとした後ろ暗いものが背筋を這うのが分かった。 「っ……お前、触り方エロいんだよ…!」 と文句を言ってみたところで古泉の顔から余裕は消えない。 「あんたに言われたくねーなぁ。エっロい顔しちゃって」 そう言いながら、古泉の爪先が俺の足をつつき、そのまますっとなぞっていく。 器用すぎるだろコノヤロウ! 「ああほら、好きこそ物の上手なれ、って言うじゃん?」 そんなところにまで適用しなくてよろしい! しかし古泉の手は遠慮の欠片もなく俺の体を撫で回す。 触れるか触れないかと言うようなぎりぎりのタッチを器用にも保ちながら、手と足の届く範囲を掠めていくそれに、ぞくぞくとしたものが走る。 これは、やばいんじゃないか? そう思いながらも、まるで根が生えたように体が動かせない。 ほんの少し下がれば、テーブル越しの手足なんて、簡単に離れられると分かっているのに。 逆に言えば、距離を詰めることだって簡単なはずだってのに、古泉はにやにや笑いながら、こいつにしては婉曲な、つまりは回りくどい刺激しか与えてこない。 その余裕ぶった様子が憎らしくなりながらも、 「…っ、古泉…」 と睨めば、 「んー? どうかした?」 と更に余裕の返事が返ってくる。 くっそ、忌々しい。 誰か俺に銃を寄越せ。 こいつを殺して俺も死ぬ。 うぐぐぐぐ、と奥歯を噛み締めたところで、後で痛むだけだと分かってはいる。 分かっちゃいるが、こうでもしなきゃ収まらん。 いや、それでもだめだった。 むず痒い興奮に、それだけじゃ済まなくなるのは古泉だけじゃないということなんだろう。 「…意地悪だ」 思わず小さく呟くと、思いがけないほど拗ねた声が出て、自分で自分に驚いた。 古泉はと言うと、俺以上に驚いた顔をしたが、すぐに笑って、 「嫌いんなった?」 と益体もないことを聞いてくる。 「…嫌いになりたいくらいだ」 「そう?」 「ああ」 「嫌いになられたくないから、もうやめとこっか?」 …この野郎。 「…そういうところが、嫌いなんだよ」 「ふふ、ごめんな? でも、あんたが可愛いから、つい」 「可愛くなんかない」 「可愛いよ」 「可愛くないって」 「可愛いんだってば。あんたにはそう思えなくても、俺には他の誰よりも可愛くて、見てるだけでもたまんねぇの」 そう言って古泉は笑い、 「…大好きだよ」 と囁いた。 それだけで、体温が二度も三度も上昇する気さえした。 話しながらもいやらしく触り続けてくる古泉の手足にも負けた俺は、 「…っ、だ、ったら、も、っと、ちゃんと、触れよ…っ!」 「ん、了解」 と古泉はこんな状況だってのに朗らかに笑い、 「恥かしがり屋のあんたがそれだけ言ってくれたんだから、もう意地悪はなしにしといてやるよ」 そう恩着せがましく言った古泉を精一杯に睨んで、 「ば、っか、やろ…!」 と唸ったところで、古泉は強引に机を押し退けた。 その拍子に、将棋盤も駒もばらばらと床にぶちまけられる。 「おいっ…!」 「あんたの勝ちでいーよ。後でちゃんと俺が片付けるし」 そう言いながら古泉は俺を床に押し倒した。 …なんだ。 「お前も、余裕なんてないんじゃないか」 「ないに決まってんだろ。あんなエロい顔見せられてさ」 何がどうエロいんだか、俺にはさっぱり理解出来ないことを言いながら、覆いかぶさってきた古泉が俺に口付ける。 そのキスさえ、熱っぽくて、お互いに待ち侘びていたんだなと思った。 「…ん……ふ…ぁ…」 息が上がるまで続いたキスが途切れたと思うと、その唇は首筋に触れ、きつく吸い上げて赤い痕を残していく。 見えるような位置につけるなと文句を言う余裕もなく、引きつった音を立てそうになった喉を理性で抑えれば、古泉が薄く笑った。 「なあ、いつもより感度よくねぇ?」 「し、るか…っ! ぁ、…くぅ…!」 「我慢しなくていいって。…ほら、やっぱりいつもより感じてるだろ?」 言いながら、古泉は俺の背中をやわやわと撫で回す。 反射的に腰が浮くと、そのまま古泉の体に中心が触れ、びくりと体が竦んだ。 「こんなに興奮して」 楽しむように笑って、古泉はそれをもやわやわと揉みしだく。 「やっぱり、今度からこうしよっかな?」 「何…っ、が…?」 「や、焦らした方がいいなって」 「てめ…っ」 「だってあんた、あんまりしたがんないじゃん」 「俺は普通だ! おまえが盛ってるだけだろ!」 「えー? 俺のが普通だって。…好きな奴と一緒にいるんだから、盛って当然ってもんっしょ」 違うだろ。 「ま、今はそんなのどっちでもいーや」 古泉は唇で笑みの形を描きながら、俺をうつ伏せにし、腰を上げさせる。 無防備にさらされる場所に触れる指は、違和感だらけで、痛みさえあったはずだってのに、いつの間にか古泉によって変えられたとしか思えない。 ローションを纏った指が縁をなぞるように触れるだけで、ぞくぞくと体が震えた。 むず痒く震える背中を、古泉が舐めては口付け、赤い痕を痛いほどに残していく。 その間も指は間断なく動いているが、それは、準備を整えているだけと言うにはあまりにも楽しげだ。 「だって、楽しーかんな」 にへらっと笑って古泉は俺の肩に口付ける。 「あんたの背中が好きだし、ここをいじくるのだって、最高に楽しいんだって。…こうしてる間はまだ、あんたの可愛い顔、見てるだけの余裕があるし」 「ひぅ…っ、ぁ、おま、えは……」 「なに?」 「…っとに、趣味、悪ぃ……」 呻くように言えば、古泉は笑ってキスを寄越した。 「どうとでも。……大好きだよ」 「ん…」 俺もだ、と答える代わりに舌を出せば、優しく甘噛みされる。 むず痒さのフリをした快感に、腰が揺れると更にそれは強まった。 「あ…っ、ぁ、もう……いい、から…」 「大丈夫?」 「んん…」 早く、と辛うじて唇の動きだけでねだれば、古泉は本当に幸せそうに笑って、 「もうちょっと、だめ?」 「…は……?」 何言ってんだ、と見つめれば、古泉はにこにこと笑ったまま、 「もうちょっと、見てたい。あんたのその顔」 ……どんな顔だよ。 「可愛い顔。でもって、ちょっとやらしくて、見てるともう堪んなくなるようなの」 「…嘘吐け」 「ほんとだってば」 「たま、ん、なく、なるん、だった、ら、……っ、早く、したら、いいだろ…!」 古泉は目をぱちくりさせて俺を見た後、ふわりと微笑んだ。 「ほんとに、あんたは俺を煽んの、うまいよな」 ねちっこく内壁の感触を味わっていたらしい指が引き抜かれ、俺は仰向けにされる。 そうして、抱き締められるように、抱き締めるように、古泉を受け入れた。 「っ、ぁ、…んん…ん……っ!」 「声、我慢しなくていーのに」 「…でき、な…っ、あぁぁ…!」 「ほら、ちゃんと息して。…だいじょぶ?」 快楽と薄い膜一枚隔てたところにある痛みに体が痙攣する。 縋るところを求めた腕は、古泉の体をきつく抱き締めて、苦しさを逃そうとするが、それでも痛いもんは痛いし、苦しいもんは苦しい。 「は…っ、あ……ぁ……」 「慣れねーのな」 心配そうに俺の前髪をかきあげ、頭を撫でる古泉に、首を振って答えたつもりだったのだが、通じなかったらしい。 首を傾げる古泉に、俺は羞恥で死にそうになりながら、 「慣れて、ない、わけ、…ねぇ、だろ…」 「んでもさ……」 「っ、気持ち、いい、から…! ちゃんと、気持ちい、から…」 「……えぇと、それってつまり、」 これ以上言ってやるもんかとそっぽを向けば、古泉が優しくキスしてきた。 「痛くて苦しくても、こうやってさせてくれるくらい、よくなってるってこと?」 聞くな、と言ってやりたかったのだが、古泉の言葉の選び方に苛立った。 「させて、ってのは、なんだよ…」 「だって、そうじゃん。違うの?」 きょとんとした顔をする古泉を、いっそ殴りつけてやりたかった。 余裕があったら殴ってたな。 「…俺がっ、したく、なかったら、させねぇんだから、分かれよ、ばか!」 大分支離滅裂な発言になったがしょうがないと諦めてもらいたい。 「……大好き」 ぎゅうっと力を込めて抱き締められた。 古泉には通じたんだろうか。 恐る恐る見つめれば、古泉は幸せ過ぎてとろけそうな顔をしながら、熱烈なキスを寄越す。 「愛してる。…あんたも、愛してくれてるんだよな?」 「あ、当たり前だろ…!?」 じゃなかったらこんなこと、 「させるわけないし、本当に嫌だったら本気で抵抗してくれるもんな。…でも、いいわけ? そんなこと言っちまって。俺、調子に乗るよ? あんたが本気で抵抗しないんだったら、口で嫌とか言ってても、強引に押し倒しちまうかも」 「……分かる、だろ? お前なら」 呟くように言うだけで、顔が熱くなる。 「うん、多分、だけどな」 嬉しそうな顔で、古泉はキスをする。 「でも、自信がない時もあるから、ちょっと確かめさせてよ」 そう言って、古泉はまるで内緒話でもするように唇を寄せてきたかと思うと、 「…今日は、したい気分だった?」 それに答えろと。 それこそ後で首を吊るかどうかしたくなると思うんだが、それなのに答えろというんだなこいつは。 おまけにこんな状況下で。 ……畜生、もう、どうにでもなれだ。 「した、かった…」 「大好き」 間髪いれずにそう言って、古泉は俺を抱き締める。 「ごめんな? ちゃんと読み取れなくて。あんたが恥かしがりだってことくらい分かってるんだから、あんたが言わなくていいくらいにしてやれたら一番いいんだろうけどさ」 「べ、つに、そこまでしなくても、いい、から…」 「そう?」 「…ああ」 「……ありがとな」 「……っ、もう、いいから、さっさと動けよ…! じっとされてる方が苦しいんだからな!?」 逆切れみたいに叫んでも、古泉の笑みは崩れない。 「俺が、だよな? あんたはじっとされてる方が楽だってことくらい、俺にも分かるもん」 と見透かすように言う。 くそ、もういっそ黙れ。 「愛してるよ。ほんっと、大好きだ。あんたが、何よりも、好き」 そんなことを言いながら、古泉は少しだけ腰を使う。 引き抜かれる感覚に、ぞくりとしたかと思うと、またゆっくりと埋められる。 その、あまりに緩やかな感覚は、うっかりするとまどろんでしまいそうな心地好さで、 「こういうののが、好き?」 と聞かれて反射的に頷いた。 「なるほど。…俺も、結構好き」 そう笑ったが、んなわけないだろ。 「…お前は、動物みたいに腰を使ってる方が、いつも通りでお似合いだ…っ」 と吐き捨てるように言ってやれば、古泉は笑った。 「そこまで言う?」 言ってやるさ。 気を遣われるばかりじゃ面白くないからな。 だから、 「動けって…」 「……ん、さんきゅ。……愛してるよ」 落とされるキスが、嬉しい。 それすら愛しいなんて思っちまってることを口にしたら、古泉は喜ぶんだろうか。 しかしそれは、俺にはあまりに恥ずかしすぎて、ただ、古泉の動きにあわせて腰を揺らすのが精一杯だ。 「あっ、ぁ、やぁ…っ」 激しく揺さぶられて、苦しくないわけじゃない。 強すぎる快感には、息さえ詰まりそうな気持ちがする。 それでも、これだって、嫌いなはずがないのだ。 古泉が真っ直ぐに、真っ直ぐ過ぎるくらいに、俺に向けてくれる愛情を、嫌だなんて思うはずがない。 だから、過ぎるそれをなんとか、嫌という叫び以外の方法で逃したくて、必死になって古泉にすがりついた。 そうやって、なんとか古泉がイくまで耐えられた俺だったが、古泉が達してしまうと役目を終えたとばかりに力なくベッドに身を投げ出した。 「…疲れた……」 「えー。もう?」 もうってのはなんだ。 十分だろうが。 「えーと……俺としては、もいっかいくらいしたいんだけど、なー?」 可愛子ぶるな。 「だめぇ?」 「…疲れた、って言ったんだが……」 「後で精のつくもんでもなんでも食わせてやるからさー」 「お前な…」 そう言う問題じゃないと思うんだが、と渋る俺に、古泉は両手を合わせ、 「お願いっ!」 ……仕方ない、と頷いちまうのはあれだ。 俺は古泉のこの「お願い」というやつに弱いのに加え、今日はあれだけ焦らされたりした分、そんな風にストレートに求められると、許してもいいかなんて気持ちになっちまうというやつだ。 …まさかこれも作戦だったなんて言わないだろうな。 怪訝な顔をする俺の脚を開かせて、古泉のまだまだ元気なそれが入ってくる。 「ぅ……ん……」 「大丈夫?」 「ん……」 まあ、一度受け入れた後だからな。 苦しさは少なくて済むし、痛みもないようなもんだ。 ただ問題は、疲れてる分、快感も拾い辛いということで。 「あー……もう、いいから、好きに動けよ…」 と言ったのだが、 「やだ」 やだって……お前はどこの駄々っ子だ。 「嫌に決まってんだろ。俺は、自分だけ気持ちよくなれりゃそれでいいってんじゃなくて、あんたと気持ちよくなりてぇの」 と、そんなことをやけに真剣な目で言われ、どきりとした。 くそ、こいつ、口がうますぎるだろ。 そう思いはしても、どきどきと浮ついたような感覚は収まらない。 むしろ、見つめられているだけで強まるようで、戸惑うしかない俺に、古泉は小さく眉を上げ、 「なあ、もしかして、言葉責めとかに弱い?」 「んなっ…!?」 よりによって言葉責めとはなんだよ!! 「あ、言葉責めとは言わないのか。んじゃ、リップサービス?」 「…それもなんか違うだろ……」 「でも、まあ、言わんとすることは通じてるよな?」 「し、るか…っ……」 ふふ、と笑った古泉は、俺の耳に唇を寄せ、 「愛してる」 と囁いた。 それだけで、びくんと体が震える。 「あんたが好きだよ」 そう言いながら、古泉の手が優しく俺の髪をかきあげる。 触れるだけのキスをされ、あごを撫でられる。 手や腕をそうっとなぞられると、それだけのはずなのに、興奮してくるのが分かった。 「や…っ、こい、ずみ……」 「やっぱりそうみたいだな?」 ニヤニヤと笑う古泉を、 「うるっさい…!」 と怒鳴ったが、聞きやしねぇ。 「恥ずかしがっててよ。その方がいいんだろ?」 そう言いながら、じわりと腰を使われると、突然のことに反射的に古泉を締め付けた。 「ひあぁ…っ」 一瞬、目の前が明滅する。 興奮を煽られた体は、疲れてるくせに貪欲に快楽を求めに走るものらしい。 「すっげ…、締まって、気持ちいいよ…」 「やっ、あ、ああ…っ!」 じわじわと押し寄せる快感の波にさらわれるように、俺は意識を手放したようだった。 ぐったり疲れきって眠った俺が目を覚ましたのは、なんとも食欲を誘ういい匂いが漂ってきたからだった。 疲れたせいもあって、酷く空腹でもあったせいもあるのだが、それにしてもいい匂いだ。 ふらふらと体を起こし、なんとかキッチンにたどりついた俺が見たものは、にんにくとかにらとか肉とかがふんだんに使われた、要するに、分かりやすい感じの食事だった。 ……いくらなんでもあからさま過ぎるだろ、と呆れ果てる俺に、古泉は満面の笑みで、 「今度スッポン鍋でも食いに行こっか?」 なんて言いやがったが、死んでも断る! |