ご注意ください!
この作品はバンダイナムコゲームスより発売された
PSP専用ソフト「涼宮ハルヒの約束」
をもとに妄想された作品です
ネタバレは激しくありませんが、若干、プレイされないと分からない表現などが含まれます
ネタバレが嫌な方や未プレイの方はご注意くださいますようよろしくお願いします
またこの作品は朝比奈みくるの妄想の産物と言う設定であり、
一部キャラクターの性格および設定の捏造がありますので
それについてもご注意ください
更に言うと触手でエロですのでそういう意味でもご注意くださいませ
エスパー少年と俺 番外編
穢されてなお想うのは
Written by ミクル
俺は自分の部屋で、自分のベッドで、大人しく眠っていたはずだ。 間違っても、前人未到のジャングルに迷い込んだり、謎の生物がひしめく洞窟に入ったりしたんじゃない。 有名映画さながらの古代遺跡にもぐりこんだわけでもない。 それなのにどうして俺は、今、こんな目に遭っているんだ。 そんな風に考えたところで現状打破には繋がらないであろうことを考えるのはただの逃避だと、それくらいのことは分かる。 だが、逃避でもしてなければ心が壊れそうだった。 現実など見つめたくない。 こんなもの――! 「…っぐ、ぁ、…ひぃ…!」 俺が逃避していることに気が付きでもしたのか、俺の体を這い回る粘着質なそれが痛いほどに体の中心を巻き上げた。 細長いそれは粘液をまとい、見るからにみだらがましい。 これが人の手によって開発された物だとしたら間違いなくそういった用途に使うためだけに作られたに違いない。 百人いれば百人全員にまず確実に生理的な嫌悪感を催させるだろう姿は、何のせいだろうか。 植物めいた姿形だけでは足りない。 肉色めいたその色のせいだろうか。 所々赤黒いのが余計に気味が悪い。 加えて、ぬとぬとと糸を引く粘液に包まれて、自由自在に動いているのも原因のひとつなのだろう。 何よりおぞましいのは、それが俺の体中にまとわりつき、好き勝手なことをやらかしているということだった。 胸の突起と言わず、口の中と言わず、それこそ背中も、脚も、性感帯になり得そうなところは全て覆い尽くされ、しかも這い回られる。 生理的嫌悪感のみならず、物理的刺激と、どうやら口から摂取させられちまったらしい妙な液体のせいで、体はぞわぞわとした何かに捕われつつある。 そう思うだけで泣けて来た。 「…っ、ごめ………こい、ずみ…!」 謝罪の言葉を、むしろ許しを乞うように口にすれば、余計に泣けて来た。 ぼろぼろと、大粒の涙が伝い落ち、醜悪な生き物の上を流れていった。 「ひっ、ぅ……ぁ、いや…ぁあ…!」 一方的に高められ、白濁が零れ落ちる。 無理矢理イかされた回数を思えば、もうすっかり薄くなっていてもいいはずだと言うのに、そうならない。 おそらく、妙な成分があの液体に入っているんだろう。 だから、こんなに快感を得てしまう。 古泉じゃ、ないのに。 「…っく」 泣きながら、唇を出来るだけ噛み締めた。 すぐにそれはこじ開けられ、またあの嫌に甘ったるい液体を飲まされるのがオチなのだろうが、それでも嫌だった。 こんなものに感じる自分が許せなくて、古泉に申し訳なくて、解放されたらその時は、地面に頭を打ちつけてでも死んでしまいたいと思った。 古泉に見られでもしたら尚更だ。 しかし、こんな状況に陥っている俺を助けてくれる存在なんて、古泉以外にあり得るはずはなく、危惧していた事態がとうとう訪れた。 俺を隠すように辺りを覆っていた灰色の壁が叩き壊されたかのように破られる。 ぐしゃぐしゃに歪んだ視界の中にそれを見つけた時に、俺が感じたのは果たして希望だったのか絶望だったのか。 現れたのは赤い光を纏った古泉で、俺を見た途端、その目が驚きに見開かれ、ついで、これまで見たこともなかったような怒りに染まったことに、俺の方がよっぽど恐怖を感じた。 「み、るな…! 頼むから、見ないで、っふ、くれ…!」 嗚咽に塗れた声でなんとかそう訴えるが、古泉は首を振った。 そうして、 「あと少しだけ、辛抱してください」 と言ったその手に、見るからに高温を伴っていそうな赤い球体が現れた。 狙いを定め、それを放つ。 すると、あの嫌な触手はあっけないほど簡単に融け落ちた。 俺の体はどさりと床に落ちる。 灰色の壁も消え去り、元通りの俺の部屋になるが、俺の体までは元通りとは行かなかった。 古泉は触手が完全に動かなくなったのを確かめてから、俺に近づいてきた。 「大丈夫ですか…?」 その顔を見ることも出来ない。 俺は、ただ俯いて震えていた。 レイプされた女の子って、こんな気持ちなんだろうか。 それとも、これよりはマシか? 逆に、これよりも辛いかもしれない。 俺は男だからな。 しかし、あんな得体の知れない触手なんぞに犯されることと人間に犯されることを比べるとどうなるんだろうか。 「あの、とりあえず、体を清めに…」 そう言った古泉の手が、俺の肩に触れる。 俺はそれを、反射的に振り払っていた。 「すみません」 と古泉が謝る。 どうして謝るんだ。 俺の方が、よっぽど、謝らなきゃならんのに……。 「ぅ…っ、ぁ…」 涙と共に聞き苦しい嗚咽が零れる。 咽び泣く俺に、古泉はおろおろと戸惑っている様子だったが、もう一度、 「…すみません」 と謝って、俺を一息に抱きしめた。 びくりと竦み、本能的に抗いたくなる俺を慰めるように、落ち着かせるように、古泉が抱きしめる。 それは暖かで、あのおぞましい化け物とは余りにも違っているのに、体は恐怖を叫ぶ。 「僕です…、古泉です……」 俺の耳元で、柔らかく囁く。 その声を確かに古泉のものだと分かっているのに、それでも体はガタガタと震え続けている。 「こ、いずみ……っ…」 「はい」 名前を呼ぶだけで精一杯で、口を開いているとそれだけで過呼吸に陥ってしまいそうなほどだ。 だから、それっきり何も言えなくなった俺に、 「もう、大丈夫ですから。言いたいことも、あなたが感じていることも、全て、分かりますから。だから、無理はしないでください」 と優しく話しかけ続ける。 「あなたを怖がらせているだけだと分かっているのに、抱きしめてしまってすみません。放せなくて、ごめんなさい。でも、今、放してしまったら、もう二度とあなたに触れることも出来なくなって、しまいそうで……」 怖いんです、という言葉が耳に落ちた。 気が付けば、古泉も泣きだしそうな顔をしていて、俺が自分を見つめていることに気が付いて、悲しそうな顔のまま微笑んだ。 「あなたを、愛しています。他の何よりも、愛しています。でも、それなのに、あなたを守れなくて、すみません」 何か嫌な予感がした。 言われたくない言葉を準備されているような、そんな予感だ。 さっきまでとは違う不安に震える俺の肩に触れて、古泉は言葉を続ける。 「あなたを守るなんて、僕には過ぎたことなのかも知れません。むしろ、いつだったかに現れたあの女性が言っていたように、僕が死ぬことが一番あなたを守ることなのではないかと、何度も思いました。でも、僕が死ぬことを、あなたは許してくださらないでしょう?」 当たり前だ、と頭の中でだけでも叫べば、古泉にははっきりと伝わったらしい。 笑みに困ったような色が混ざる。 「あの言葉の意味を、僕なりに考えて見たんです。彼女があなたの命を狙い、あるいは僕の命でも構わないと言ったのは、つまり、彼女にとって都合の悪いことは、僕とあなたが今のような関係にあるから発生するのではないか、と」 心のざわつきが全部古泉に伝わればいいと思った。 怒りとも不安とも分からないものが全部、古泉に伝わって、俺のうまく使えなくなっている口の代わりになればいいと。 実際、古泉には通じていたんだろうと思う。 辛そうに、その顔がどんどん歪んでいったから。 だが古泉は、それでもと言うように、言い切った。 「別れましょう」 「っ…!」 止まっていたはずの涙が、また零れ落ちた。 ずきずきと胸が痛む。 古泉の服を必死に掴み、役立たずの言葉ではなく、行動で何とか示そうとする俺に、古泉も泣きそうな声で言った。 「僕だって、嫌です。あなたを手放したくなんてないんです。…でも、それで、あなたが今日のような目に遭わされたり、あるいは命を奪われるようなことになるのなら、僕は、あなたが幸せに生きていてくれる方が、ずっと、いい…!」 「ば、かやろ…!」 やっとまともに声が出たと思ったが、それは酷く鼻にかかり、聞き取り辛いあり様だった。 「お前が、いて、くれなくて、……それで、俺が、幸せで、暮らせると…本気で、思ってんのか…!?」 だとしたらお前は大馬鹿だ。 「いいか? …よく、聞けよ…?」 その体を逃がさないよう、しがみつくようにしながら、俺は言葉を放つ。 「お前が、いなきゃ、嫌なんだ…! そうなるくらい、俺の生活に入ってきたのは、お前だろ!? だったら、責任持って、最後まで、一緒にいろ! …いや、いて、……くれ…」 あんなものに犯された俺を汚いと思うかも知れない。 それなら、もう触って欲しいとも言わない。 まだ、俺を愛してると言ってくれるなら、頼むから、 「捨て、ないで……」 自分の声を情けないとか見っとも無いとか思うより早く、古泉が俺の目元を舐めて、涙を拭い取った。 その舌が、唇に触れ、唇が重なる。 素直に、愛しいと感じられることにほっとした。 俺は古泉を抱きしめる。 古泉は俺に深く口づける。 離してしまうのが惜しいかのように唇を触れ合わせたまま、古泉は穏やかな声で聞いてきた。 「本当に、いいんですか…?」 一緒にいても、という意味なら答えはさっき言った通りだ。 繰り返させるな。 「……愛してます。それさえも、あなたが僕を愛してくださるのには足りないのではないかと思い、それを悔しくさえ感じるくらい、あなたを愛してます。僕を…そこまで、愛してくださって、ありがとうございます…」 強く抱きしめられて、一瞬息が止まるかと思った。 その言葉のくすぐったさにも、憤死するかと。 だが、俺はおそらくあの恐怖体験でいささかネジが吹っ飛んでしまったに違いない。 自らの舌で古泉を誘うと、乱れた息の下から、 「愛してる、から、頼むから、この体…なんとかしてくれ…」 なんてことを言っちまったんだからな。 どろどろになったままの汚れた体を綺麗にして欲しいというのも勿論あった。 それだけなら大したことじゃないだろう。 やらされる方としては大変だろうがな。 だが、俺の意図したのはそちらの意味ではなく、古泉にもちゃんとそれが通じたらしい。 「それ、は…」 と呟いた喉がごくりと鳴る。 頷いて、俺は説明してやる。 「……さっきの、あの、化け物な。変なもん飲ませやがったんだよ」 「ああ…はあ、なるほど…。所謂お約束ってやつですね…」 視線を泳がせながら古泉が言う。 「そう、まさにお約束という奴だが、抗い難いものは仕方がないだろ? だから、……頼むから…」 その続きである、三文字からなる言葉を古泉の耳に囁くと、古泉が小さく頷いた。 「あなたがそんな風に誘ってくださるなんて、もう二度となさそうですね」 あって堪るか。 正気に返ったら真っ先に頭をかち割りたくなることだろうよ。 「お願いですから、それは止めてくださいね」 くすくすと笑いながら言った古泉の指が、触手に蹂躙された場所に入り込む。 そんな性急なやり方は古泉らしくない、と気色ばむ俺に、古泉はそっと囁いた。 「考え方を、変えられませんか? あれは、あなたを犯したのではなくて、僕があなたを抱くための準備をしただけに過ぎないのだと」 「…ばか」 そんなこと言ったら、あれはお前が用意したってことになるだろうが。 「ああ、そうですね。でも、それではダメですか?」 意地悪に笑いながら、古泉はまだ粘液で滑ったそこを指でぐちゅりと掻き混ぜた。 「ひっ…、ん…!」 古泉の指だというだけで先程よりもよっぽど感じている俺に、更なる悪戯を仕掛けるように、 「鬼畜な僕はお嫌いですか?」 と囁いた。 嫌いなわけ、あるか。 「も、なんでも、いい、から…!」 「そうですね…。随分と、前戯に時間を掛けてしまったことでもありますし、」 とあくまでもさっきの説を取るつもりらしく、言葉遊びのようなことを言い、 「あなたも我慢が出来ないでしょう?」 「お、まえ、だって…」 「ええ、当然です。粘つく液体でぬるぬるになっているばかりか、艶かしく上気した肌を惜しげもなくさらしているあなたを前にして、それどころか自分の腕の中に抱きしめていて、僕が平気でいられると思いますか?」 真顔で言った古泉に、俺は笑うしかない。 「…無理、なんだろうな」 古泉は頷いて、 「だから、…いい、ですか?」 「ん…」 古泉の膝に抱かれるような形のまま、俺は古泉を受け入れる。 きつさも、苦しささえも、愛おしく思える。 「古泉…っ、あ、ん…!」 「素敵ですよ。あなたは、とても綺麗です。……愛してます…」 繰言のように何度も囁く。 その優しさに、涙が零れた。 古泉が言った通り、またこんな目に遭わされるかも知れん。 もっと酷いことになるかも知れない。 それでも、もう大丈夫だと思えた。 無根拠だと思われるかも知れないが、俺には十分根拠はある。 古泉が、あれだけのことを言った上で、俺の側にいてくれることを選んでくれた。 それなら、もう決して、酷いことにならないよう、俺をしっかり守ってくれるに違いない。 だから、もう大丈夫だと分かった。 …古泉はそういう奴だからな。 |
(「触手本」より)