ご注意ください!

この作品はバンダイナムコゲームスより発売された
PSP専用ソフト「涼宮ハルヒの約束」
をもとに妄想された作品です
ネタバレは激しくありませんが、若干、プレイされないと分からない表現などが含まれます
ネタバレが嫌な方や未プレイの方はご注意くださいますようよろしくお願いします


またこの作品は長門有希と朝比奈みくるの妄想の産物と言う設定であり、
一部キャラクターの性格および設定の捏造
がありますので
それについてもご注意ください


更に言うと一応エロですのでそういう意味でもご注意くださいませ































蠢くもの
  Written by ユキ



抗う体を絡めとられ、引きずり込まれる先は闇だ。
底も見えず、得体の知れない闇。
呼吸すら自分ではどうにも出来ず、人工呼吸めいた動きでやっとそれを思い出す。
体の中が熱い。
俺はきっと、どうにかなってしまったのだ。
抗うこともすでに出来ない。
熱い奔流に飲み込まれ、上へ下へと持ち上げられ落とされる。
翻弄される俺の内部さえ、混沌としてつかみきれない。
何がどうなっているのか分からない。
気持ちいいのか悪いのか。
愉しんでいるのか恐れているのか。
泣いているのか笑っているのか。
怒っているのか嘆いているのか。
何もかも、分からない。
ただ分かるのは、俺は闇色をした何か猥らがましいものに掴まり、もう逃げ出せないということだった。
逃げ出したいと思いながら、このまま囚われていたいとも思った。
そうして意識を手放し、俺は祈った。
目が覚めたら元に戻れているようにと。





囚われたもの
  Written by ミクル



虚ろな瞳をした彼の体を、僕はそっと抱きしめた。
先ほどまであんなにも乱暴にして、彼を喘がせ、泣かせ、咽ばせたというのに、そして、そうしたくてそうしたはずだというのに、僕の中は後悔で一杯だった。
どうしてそんなことをしてしまったんだろうと自分に問えば、返事は簡単に返ってきた。
そうしたかったからだ。
ずっと、浅ましい欲に塗れた目で彼を見てきた。
すぐ傍に立ち、彼に信頼してもらえるように振舞いながら。
振舞う、ということはつまり、それが真実の姿ではないということだ。
僕はそんな風に大人しく優しく、慈しむような愛し方なんて出来ない。
いつもいつも、そうだ。
欲しいものがあるとそれを手に入れるために躍起になるくせに、それを手に入れると途端に興味を失うか、欲しいという衝動に任せて壊してしまうのだ。
壊れてしまってもなお愛することなど出来ないくせに。
おそらく僕は、ある種の異常を抱えているのだろう。
だからと言ってそれを治すことも出来ずに、人に迷惑ばかり掛けている。
なんて、厄介な存在なんだろう。
それでもまだ、彼のことを僕は好きだ。
僕のことを映してくれない瞳が、愛しい。
これが僕のことだけを見つめるようになってしまったら、と思うと恐ろしい。
そう思った僕の腕の中で、彼が身動ぎした。
その目が一度閉じ、そうして開かれるとそこには既に意思の光があった。
壊れたと思った彼はまだ壊れていなかったらしい。
そのことに歓喜しながらも、きっと彼はもう僕の望む彼ではなくなってしまっているのだろうと思うと絶望した。
だが彼は、僕の存在を認めるなり、嫌悪感丸出しの顔で僕を睨んだ。
強く厳しい眼差しに心臓が跳ねる。
「何か、」
と言った彼の声は掠れており、彼自身苦しかったのだろう。
乾いた咳を何度か繰り返す彼の背中を擦ろうとすると、その手をパシッと弾かれた。
「要らん。それより、何か言うことはないのか?」
「え……」
「え、じゃないだろう」
顔を顰めながら体を起こした彼は、
「30秒だけ待ってやる。謝罪、釈明、弁解、その他やるべきこと、やりたいことがあるならさっさとしろ」
「え、あ、あの、それは……」
「内容によっては前と同じように友人として付き合ってやる可能性もないわけではないが、場合によったらこのまま警察に駆け込まれると思えよ」
はっきりとそう言った彼の目には既に、ほんの数時間前までには確かに見え隠れしていたはずの僕への恋慕の情など欠片もなく、敵意にも似た思いだけがあった。
彼のその強さに、ぞくぞくする。
「すいません」
僕がそう深く頭を下げても、彼の視線は揺らがなかった。
変わらず冷静で、容赦がない。
「なんで、こんなことしたんだ。嫌がらせか?」
「そんなまさか。あなたが……好きだからです」
好きだったから、と過去形で言わなくていいことが嬉しかった。
だから、思わず笑みを浮かべた僕に、彼は今度こそ胡乱な顔になり、
「嘘吐け」
「天地神明に懸けてもいいです。…嘘じゃありませんよ」
「嘘に決まってる。好きだからって何でこんなことすんだよ」
「おや、自然なことではありませんか? 好きだからセックスしたい、と思うことは」
「男女なら自然かもな。だが、俺は男でお前も男だろ。強姦罪すら成立しやがらねぇ。それに、あんなもんがセックスって言えるのか?」
「言えないと思いますか?」
「言えんな」
「じゃあ、」
と僕は彼の手を握った。
振りほどかれないように、強く。
「どんなものがセックスと言えるものなのか、僕に教えてください」
彼は僕の手を振り解こうと悪戦苦闘しながら、
「…そんなもんは経験豊富そうなお姉さんにでも聞け。俺が知るか」
「それではあなたは正確に何を指してセックスと言えるのか知らないまま僕の意見を否定したことになりますよ。それではおかしくありませんか?」
「ああ、おかしくなんかない。違うってことだけは分かるからな」
「どうしてです?」
「どうしても」
いつも比較的冷静で、理論立てて話す彼にしては感情が先立った発言に僕が笑うと、
「笑うな、暴行犯」
と頭を叩かれた。
その気安さから見て取れるのは、彼が既に僕を許してしまっているということだ。
だが、それと同時に分かるのは、彼がまだ、僕のところまで堕ちて来てくれてはいないということ。
そのどちらもが、僕は嬉しくてならない。
だから僕は、
「あなたが好きです。愛してるんです。…お願いですから、僕に教えてください。どうやって愛せばいいのかということを」
「だから、嫌だと言ってるだろうが」
「どうしてです」
「どうしても何も、当たり前だろう。どこの世界に乱暴を働いてきた人間に対してそんなことが出来る人間がいると思うんだ? いや、探せばいるかも知れんが、俺は違う。無理だ。というわけで諦めろ」
「嫌です」
「お前なぁ……」
普段の物分りのよさはどこにやったんだ、とぶつぶつ言う彼に僕は笑みを浮かべて、
「物分りのいい僕の方が好きですか?」
「どちらにしろ好きじゃないから安心しろ」
「酷いですね」
「そうやって笑いながら言うから余計に信憑性がなくなるんだろうが。分かってんのか?」
「真剣に言ったら、聞いてくださるってことですよね?」
「いや、無理」
「何にせよだめなんですか」
「当たり前だろう。それより、俺の服どこにやったんだ?」
「そのあたりに落ちてると思いますけど……」
「というか、服を着る前に風呂だな。借りるぞ」
「どうぞ。背中でも流しましょうか?」
「蹴っ飛ばすぞ」
肩越しに睨みつけてくる彼が愛しい。
抱きしめてしまいたい。
そのまま床に押し倒して、もう一度と言わず何度でも体を繋げてしまいたい。
一度のセックスで我慢できずにそんなことを思うのは生まれて初めてで、僕はやっと出会うべき人に出会えたのだと思った。

(「触手本」より)