ご注意ください!

この作品はバンダイナムコゲームスより発売された
PSP専用ソフト「涼宮ハルヒの約束」
をもとに妄想された作品です
ネタバレは激しくありませんが、若干、プレイされないと分からない表現などが含まれます
ネタバレが嫌な方や未プレイの方はご注意くださいますようよろしくお願いします


またこの作品には一部キャラクターの性格の捏造がありますので
それについてもご注意ください

腐女子たちの相談



ああ、いい天気。
文化祭が終ってから寒くなってきたけど、でもやっぱり、まだ日差しはあったかくて気持ちいいから、あたしは窓を開けて窓枠にもたれて外を見てました。
外を走り回ってるのは一年生かな。
次の時間が体育なのか、もう既に体操服に着替えてるみたいです。
昇降口を出て、中庭を歩いていくのが見えます。
……この学校の体操服ってどうしてあんなデザインなんでしょう。
女子は未だにブルマだし、男子は男子であんなに短い短パンで、時々見てるだけで恥ずかしくなっちゃいます。
あんなのじゃ、何かあったら困らないのかな…っていえその。
体操服だったらやっぱり体育倉庫に連れ込まれて、とかかしら。
それとも体育祭の時にこっそり空き教室で、とか?
古泉くんだったらどんな風に持ちかけるかなぁ、なんて、もやもやと妄想しながら過ごしていると、
「みっくるー!」
鶴屋さんがあたしを呼ぶのが聞こえたので振り向くと、思いっきり抱きしめられました。
「どうしたんですか?」
「ちょろんと相談があるんだけどちょっと付き合ってくれるかなっ?」
「いいですけど」
なんだろう、と思いながら連れていかれたのはSOS団の部室でした。
お昼休みだったから、いたのは長門さんだけで、鶴屋さんは長門さんに、
「やぁやぁゆきっこ! 今日も元気そうだねっ。悪いんだけどさー、ちょーっとだけ、パソコン借りてもいいかな?」
「いい」
「さんきゅっ。助かるよ!」
と言ってパソコンに電源を入れました。
それからポケットから取り出したのは、USBメモリで、それをパソコンに差し込むと、出てきたファイルをあたしに見せてくれました。
ただの文書ファイルだと思ったのに、中身は普通じゃなかったの。
「つつつ、鶴屋さん、これ…っ!」
興奮に声を上擦らせながらあたしが聞くと、鶴屋さんは悪戯っぽく笑って、
「そっ。いやー、みくるがこの前、今度出す本の原稿見せてくれただろっ? それに、文化祭前のあのことがあったからさ。あたしも書きたくなっちゃったんだよねー」
そう鶴屋さんが言った通り、それはあたしが書いてるキョンくんと古泉くんに関する妄想文と同じように名前は変えてあるものの、あたしにはキョンくんと古泉くんだと分かるような書き方で書かれた、小説でした。
それも、十八禁ものです。
まさか鶴屋さんが書いてくれるなんて、と感激するあたしに、鶴屋さんは笑いながら、
「みくるがよかったらなんだけど、これ貰ってくれないかな?」
「ええっ!? いいんですか!?」
「いっつも楽しませてもらってるお礼さっ」
「じゃ、じゃあ、」
とあたしは興奮を抑えきれないまま言いました。
「よかったら、今度合同誌出しませんかっ?」
「合同誌? いいよっ」
二つ返事でOKだなんて、鶴屋さん、凄い。
「それなら挿絵も要るよね。あたしでよかったらなんか描くけど?」
「いいんですか!?」
「みくるが喜んでくれるんならなんだってするよっ?」
嬉しいです。
あたしは思わず鶴屋さんに抱きついて、
「もういっそお嫁にしてください…っ!」
「あっはっは、それもいいねぇ! ……お?」
鶴屋さんが変な声を上げたので、あたしも釣られて顔を上げたんです。
そしたらそこには長門さんが立っていて、じっとディスプレイを見ています。
っていうか、本気で長門さんの存在を忘れちゃってたけどこれってまずいんじゃ…。
思わず青褪めたあたしの手を、長門さんがキュッと握りました。
「あ、あの、長門さん…?」
「3巻の発刊予定が知りたい」
……もしかして、読んでくれてるんですか?
「もしかしてゆきっこもみくるのファンなのかいっ?」
という鶴屋さんの言葉に長門さんはこっくりと、いつもよりはっきり頷いて、
「1巻から愛読している。SOS団をモデルとしながらその枠にとらわれない発想が好み。彼らの思考のトレースも秀逸」
褒めてくれてるん…ですよね、これは。
「あ、ありがとうございます…」
「ただ、ひとつだけ聞きたい」
長門さんはきらんと目を輝かせてあたしに言いました。
「あえてリアリティを捨てるのは何故?」
「リアリティ……ですか?」
それって、あたしがどうせ妄想なんだからって現実じゃ出来ないようなことをさせてることについてでしょうか。
ちゃんと考えたらローションなしでするのはいけないとか、膀胱炎予防のためにもコンドームが必要だとか、そういうことを知ってるのにそうさせないことについて?
そんな感じのことをしどろもどろになりながら聞いたら、長門さんは、
「それ」
「えっと、じゃあ、お答えしますけど、それはですね、」
やおいはファンタジーだからです。
「……ファンタジー?」
「そうです。だって、本当にそんなことが出来るなんて思えませんもん。実際にアナルセックスなんてしたら吐くくらいのショックがあってまともに出来やしないってことも聞きますし。でも、そんなんじゃ萌えないでしょう? 勝手な妄想なんだから、現実を無視してもいいんですよ。多分」
「……了解した」
「ところで長門さんは、その、やおいとか好きなんですか?」
「……好き」
「どんなシチュエーションが好きですか?」
「…この場合のシチュエーションとは具体的にどのようなものを指すもの?」
「えっとぉ……年下攻めがいいとか敬語攻めがいいとかそういう傾向も含みますし、どんなプレイがいいとか場所や関係性についても含みます」
「……」
考え込む長門さんの参考にと思ったのか、鶴屋さんが、
「ちなみにあたしは基本的に腹黒攻めが好きかな。だからみくるの書く話はちょろんと黒さが足りないかなーって思いはするんだけど、読むだけならそういうのもいいよね。ピュアホモは萌だよ萌! ゆきっこはどう思った?」
「…彼女の作品は彼のツンデレ属性がややデレに傾きがちではあるものの、遺憾なく発揮されていて好ましいと感じる」
「そっか。ゆきっこはツンデレ萌えなんだねっ! いいねいいね! キョンくんは三次元なのに最高のツンデレキャラだしっ」
「……むしろデレは要らない?」
「うんっ? ツンツンがいいってことかい? ゆきっこもなかなかいい趣味だねー」
あたしを置いて二人で盛り上がる鶴屋さんと長門さんの間に割って入り、
「ツンツンだったら、本人は本気で好きじゃないと思ってるのに実際は無意識的に好きだったりすると萌えませんかっ?」
「…!」
長門さんは目を大きく開いてあたしの手を握り込みました。
「最高」
「ですよね!」
「それを攻めが把握していると更に」
「萌えますね!」
そんな風にして三人できゃわきゃわ言ってるうちに昼休みは終っちゃいました。
教室に戻る途中、長門さんが、
「有益な情報の提供に感謝する。参考にさせてもらう」
「えっ? 参考って……」
私が聞き返すと、長門さんは少しだけ目をそらしながら、
「…私も、書いてみたい」
恥ずかしがってる長門さんには親近感が湧くとか、仲間が増えて嬉しいとか、色々思いはしたんですよ?
でもあたしが真っ先に口にした言葉は、
「書き上がったら是非読ませてくださいね!」
というものでした。
勢い込んで言った後、物凄く恥ずかしくなりましたけど、いいですよね?
長門さんも頷いてくれましたし、鶴屋さんも、
「あたしにも是非読ませてほしいにょろっ」
って言ってましたし、それに何より、仕方ないことだと思うから。

だって、腐女子なんだもの。