ご注意ください!

この作品はバンダイナムコゲームスより発売された
PSP専用ソフト「涼宮ハルヒの約束」
をもとに妄想された作品です
ネタバレは激しくありませんが、若干、プレイされないと分からない表現などが含まれます
ネタバレが嫌な方や未プレイの方はご注意くださいますようよろしくお願いします


またこの作品は鶴屋さんの妄想の産物と言う設定であり、
一部キャラクターの性格などの捏造
がありますので
それについてもご注意ください


更に言うとエロですのでそういう意味でもご注意くださいませ










シャワールームの秘め事
    Written by ツルヤ



シャワーに誘ったのは確かに俺の方だ。
しかしながら、その後のことについては、俺のせいではないと言い切っておく。

俺が古泉をシャワーに誘った理由として、人気のない校内を一人横切り、体育館にまで出向くのが少々心許なかったからだと真っ正直に言ってしまうと、俺が非常に情けない人間のようだが、事実そうなのだから反論は諦めよう。
だが、言わせてもらえるなら、夜の学校というものは誰だって薄気味悪いと感じてしかるべき場所であり、人気が少なくなってきてしまっている現状においては更にそれが強まっているのだった。
不気味な怪談だの、サスペンス映画のワンシーンを思い出してしまったところで咎められるいわれはないはずだ。
そんなわけで、俺は、クラスの準備を終えたのか薄情にも登校してこなかったクラスメイトではなく、同じSOS団に所属する唯一の男子生徒であるところの古泉を、シャワーに誘ったのだった。
部室のある旧館から体育館まではそう遠くはない。
だが、タオルを取りに行く必要もあったので、古泉共々本館にまで戻ることになった。
階段の上り下りは疲れた体にはなかなか億劫なものだったので、
「僕があなたの分も取ってきましょうか?」
という古泉の言葉に一瞬頷きかけたのも事実だ。
それに頷かなかったのは、流石にそれは申し訳ないと思ったためでもあるし、こんな状況で一人ほっぽりだされたくなかったためでもある。
文化祭前日とはいえ、夜ともなれば大抵の生徒は家に帰るのだろう。
校内はひっそりと静まり、申し訳程度に付けられた廊下の電気が非経済的かつ非エコロジカルだと思いもするのだが、それ以上にありがたい。
こんなちょっとした灯でも十分安心感を与えるものなんだな。
その反面、余計に濃く見える外の闇に、俺は眉を寄せた。
「そんなに、心細いんですか?」
窓ガラスとは反対側にいた古泉にそう言われ、驚いて振り向くと、
「ガラスに映ってましたよ」
と苦笑混じりに指摘された。
「あなたはもっと気丈な方かと思っていたんですが、意外とそんな風に闇に怯えたりするんですね」
「……悪いかよ」
「いいえ、むしろ好ましいと思いますよ」
言いながら、古泉は俺の手を握った。
おい、一応まだ他にも人間がいるんだぞ。
「見ている人はいませんよ。…こうしていた方が、平気でしょう?」
俺はかっと顔を赤く染め、顔を背けた。
くそ、腹立たしい。
それでも、振り解くにはその手は暖かく、優しすぎた。
誰にも見られないように祈りながら古泉の手を握り返すと、古泉が小さく笑ったのが分かった。
だがそれは、忌々しいと言ってしまうにはあまりにも嬉しそうで、無邪気なものだったせいで、俺は何も言えず、そのまま歩き続けた。
……思えば、その辺りで思い止まるか、古泉に釘を刺していればよかったんだろうな。
そうやって油断したせいで、あんなことになっちまったんだから。
体育館に入っても、辺りは静まり返っていた。
他にシャワールームを使う人間もいないらしい。
まあ、そうだろうな。
シャワーを浴びるくらい余裕のある奴なら家に帰って風呂に入るだろうし、家に帰れないくらい余裕がない人間はそもそもシャワーを浴びようなんてことは考えないだろう。
俺もそうすればよかったか、と思いながら電気のスイッチに手をやり、灯りをつける。
ちかちかと瞬きながら点灯した蛍光灯に、無機質なシャワールームが照らし出される。
無人ってだけで妙に不気味に見えるもんだな。
「怖いですか?」
という古泉の問いには、俺ははっきりと、
「いや」
と首を振ったのだが。
「本当ですか? 少しくらいなら、怖いと思ってるんでしょう?」
しつこいぞ。
そういうお前は怖くないのか?
「そうですね……。少しばかり怖気づくには十分な舞台環境ではないかと思いますが」
ストレートに怖いと言え。
「怖い、と言えば一緒にいてくださいますか?」
「現に一緒にいるだろうが」
答えながら俺は古泉に背を向け、服を脱ぎにかかったのだが、
「いえ、そうではなくてですね、」
と言った古泉にいきなり腰を抱きしめられた。
「おいっ!?」
「一緒にシャワーを浴びませんか?」
「なんでそうなるんだよ!」
「一緒にいたいからですよ? それに、正直、このところ忙しくてする暇もなかったでしょう? あなたに寂しい思いをさせてしまったのではないかと案じていたんですよ」
「さ、びしいって…おま…」
思わず絶句したね。
それじゃあまるで俺が色情魔かなにかのようじゃねぇか。
俺はむしろ淡白な方であって、お前みたいな万年発情期男とは違う。
「おや、そうですか? しかしながら、あなただって積極的に求めてくることもあったではありませんか」
「それ、は……」
一時の気の迷いだと言ってしまうには、古泉の目が怖かった。
咎めるような、責め立てるような厳しい視線は、それでいて熱っぽさを帯びていて、止めようがないことを俺に知らしめようとしているかのようだ。
「ねぇ…」
鼓膜を震わせる声は湿り気を帯び、頭の中まで犯されているような気分になる。
「寂しく、ありませんでした?」
「……」
「答えてくださいよ」
俺を抱きしめていた手が、不穏な動きを見せ始める。
ネクタイを外し、シャツをはだけ、熱を煽られかけている体を暴かれる。
「僕は、寂しかったですよ。あなたに触れられなくて、あなたが僕の愛しい、大切な人だと確認することが出来なくて、寂しかったんです」
「…お前、馬鹿だろ」
やらなきゃ、そんなことも確認できないのかよ。
「馬鹿ですよ。あなたに触れていなければ、あなたに見つめられていなければ、あなたと付き合っているということも、あなたが僕を好きだと言ってくださることも、何もかも僕にとって都合のいいことは全て、夢か幻のように思えてしまうんですから」
俺は、どうして古泉がそこまで悲観主義なのか、その理由を知らない。
過去に何かあったんだろうと思いながらも、聞くことが出来ないままでいるのは、古泉がそこまで踏み込むことを許してくれないからだ。
それに、付き合っていることを公けにしたり、それと知られたりするのは嫌だと言ったのは俺の方だという引け目もあった。
だが、それ以上に感じるのは、過去なんてものを知らなくても俺は今の古泉が好きで、わざわざ古泉に辛いことを言わせたくないということだ。
だから俺は、体を捩って古泉に向き直ると、その唇に自分からキスをした。
嬉しそうに顔を輝かせる古泉には、
「…人が来たら絶対すぐ止めろよ」
と釘を刺したが、ちゃんと聞くかどうかは分からん。
俺に出来るのは人が来ないようにと祈ることくらいだ。
「約束します。…あなたの艶かしい声を人に聞かれるのも勿体無いですしね」
どの口でそんなむず痒い台詞を抜かすんだろうね、こいつは。
その羞恥心など持ち合わせていないらしい唇が、俺の首筋に吸い付く。
「おま…っ、痕残すなって、ン、いっつも、言ってんだろうが…!」
「でも、好きですよね? 痛いくらいに吸い付かれるの」
「ひっ、んあ…!」
喉が勝手に引き攣った声を立てると、古泉が楽しげに笑うのが分かった。
その喉にも吸い付かれる。
濡れない場所に服を放り出した古泉はほとんど抱え上げるようにして、俺をシャワーの下に引っ張り込んだ。
ノズルから最初に噴出したのは冷たい水だったが、その冷たさにさえ体が過敏に反応するのが分かって余計に羞恥を煽った。
いやらしく勃ち上がった乳首に歯を立てられ、びくんと体が震える。
「あっ、い、やぁ…!」
「あなたの嫌はイイってことだということくらいは、僕もよく分かってますからどうぞご存分に啼いてください」
「ちが…っ」
「何が違うんです? こんなに悦んでるじゃありませんか」
そう言った古泉が膝で俺の股間を押し上げると、更に体が制御を失う。
倒れこみそうな体を古泉に支えられ、俺は姿勢を維持するために古泉の体に縋った。
古泉は更に大胆に手を動かし、濡れた体をくすぐるように探るように手を滑らせる。
それだけで肌が粟立つほど感じる自分の浅ましさに死ねそうだ。
「恥ずかしがらなくていいんですよ?」
「う、るさい…っ!」
そんなことを言われても恥ずかしいものは恥ずかしいんだ。
「いつまで経っても初心なんですね。そういうところも可愛らしくて、好きですよ」
言いながら古泉は俺の体を反転させると、
「壁に手をついてください」
それの意味することは嫌でも分かる。
自分から腰を上げて尻を突き出せということだ。
そんな恥ずかしいことが出来るか、と首を振る俺に、
「でも、今のままじゃ苦しいのはあなたも同じでしょう? 立ったまま、向き合った状態で、というのも試してみたい体位ではありますが、安定性に欠きますからね。ここでもし、うっかり転びでもしたら大変でしょう? ですから、お願いします」
そう言ってくる古泉はずるいとしか言いようがない。
実際には俺に恥ずかしいポーズを取らせるのが目的なんだろうに、さも俺のためだとか、状況のせいで仕方ないとばかりに言うのだ。
それを分かっていながら従う俺もどうかと思うのだが、俺は唇を噛みながら古泉の言葉に従い、壁に手をついた。
シャワーから降り注ぐお湯をもろに被ることになるが、本来の目的がシャワーを浴びることであったことを考えると丁度いいだろう。
「もう少し腰を上げてください。……そう、それでいいですよ」
古泉の声が俺を煽るように響く。
というかどうして風呂場とかシャワールームと言うものはこうも音が響くんだろうな。
そんな音響効果が必要な場所でもあるまいに。
くだらないことを考えて気を紛らわそうとした俺だったのだが、下半身に感じた感覚に思考を奪われた。
「い、やだ…っ、古泉、お前、何して…!」
「何って、解しているだけですよ?」
あらぬ場所から聞こえる声と感じる吐息に背筋をぞくぞくしたものが走る。
「止めろ…、汚いから、止めて……」
半ば哀願するような口調になりながら言うと、古泉は、
「困りましたね」
と少しも困った様子もなく言った上、
「ああそうだ。それではこうしましょうか」
さもその時思い付いたとばかりに言って、その場から少し動いた。
と、同時に俺の頭に注いでいたシャワーがなくなった。
「待て…!」
と止める間もなかったね。
はしたなくも古泉との行為を期待して敏感になっていた箇所に勢いよく噴出すシャワーのお湯を掛けられて、そこが更にひくつくのが見なくても分かった。
「やだ…ぁ…」
すすり泣くような状態になりながらそう言うと、
「あれも嫌、これも嫌なんですね。しかしながら、あなたの発する嫌という言葉のニュアンスからすると、あなたが感じやすいということなのでしょうか」
そんなんじゃない、と言うより早く、古泉がシャワーをどけた。
「どちらがいいか、あなたが選んでください。僕に舐められるのと、シャワーで中まで綺麗にするのとでは、どちらがいいですか?」
ひっく、としゃくり上げ、震えた横隔膜のあたりをなで上げられる。
「ねえ、どちらです?」
「……お前が…いい…」
辛うじてそれだけ口にすると、
「それだけでは分かりませんよ? どうして欲しいのか、はっきり言ってください」
このサディスト、と罵る気力など残っていない。
俺は羞恥にうち震えながらシャワーの音に紛れて消えてしまいそうな小さな声で、
「舐めて、くれ…」
と言った。
本当にもう死にたい。
どうして人間は恥で死ねないんだ。
そうすりゃ俺だってもっと以前に、更に言うならいとも簡単に死んでいただろうに。
「畏まりました」
嬉々として古泉はシャワーのノズルを元の位置に戻し、俺の尻を両手で掴んだ。
ぬめったものが入り込んでくる感覚に腰が逃げようとしても、古泉の手がそれを許さない。
わざとらしく音を立てながら舐められて感じることも、それだけでは足りないと収縮するその場所も、憎らしい。
そうさせた古泉への感情はもはや、憎しみなのか愛なのかすら分からなくなりそうだ。
混乱する感情とは裏腹に、体は真っ直ぐに古泉を求める。
「もういいですか?」
舌どころか指を三本も押し入れて俺を散々に喘がせていた古泉がそう俺の耳元で囁いた。
その声が熱を帯び、余裕を失っているのをザマぁ見やがれと嘲笑うことさえ、俺には出来ず、こくこくと頷くしかなかった。
押し当てられる熱い塊だけで腰が揺れた。
「ん、っふ、ぁ、あぁあ…!」
しつこく焦らされ、慣らされたそこはほとんど痛みを感じさせないまま古泉を飲み込んだ。
それだけじゃ足りず、更なる刺激を求めて震える体が、古泉を締め付ける体が、憎い。
セックスのたびに体と心が真っ二つに裂ける気がする。
それが嫌なんだと言えば、何か変わるんだろうか。
そんなことを朧気に思いながら俺は喉が嗄れそうなほど声を上げ、腰はそれこそ壊れそうなほどにされた。
「あなたが好きですよ」
恍惚とした声で古泉が囁いたのは、後始末も終って俺がぐったりと座り込んだところでだった。
胡乱に思って目線だけを上げた俺に古泉はにっこりと微笑みながら、
「口では嫌だと言って、心でも本当にそう思っているように見受けられるのに、体はあんなにも快楽に弱くて素直なあなたが好きです」
「なっ…!」
殴るぞお前。
「もちろん、僕はあなたの体目当てであなたを好きになったわけではありませんから、それはおまけのようなものではあるのですが、嬉しい誤算だとはずっと思ってますよ。だから、そんなに恥ずかしがらなくてもいいんです。どんなあなたでも、僕は好きです。どうせするのであれば、お互いに気持ちいい方がいいですしね」
「……古泉、まさかとは思うんだが」
「はい?」
「…俺、もしかしてずっと口に出してたか?」
俺が聞くと古泉は困ったように笑って、
「ずっとではありませんけど、割と口に出てましたね。考えていることをそのままぶつぶつと…」
ふっと意識が遠のくのを感じ、俺はそのまま意識を失うに任せた。
今度こそ羞恥で死ねると思ったのだが、残念ながらそれは叶わず、目を覚ますと古泉の心配そうな顔が見えたので、とりあえず軽く殴っておいた。

(「エスパー少年と俺 Vol.3」に寄稿)