エロですよー
導入ですが

あ、あとこういうのも3Pって言うんでしょうか?
別に古泉とキョン以外の誰かがいるわけじゃないんですが












































ハーフムーン
  第九話



次の半月がきても、俺の前には二つの懸案事項がぶら下がったままだった。
ひとつは当然、古泉とのこと。
未だにあいつが俺をどう思っているのか分からず、ぎくしゃくするばかりなのだ。
そんな状態なので、あいつと顔を合わせるのも嫌になるくらいだ。
なんとか表面上は変わらない風を装っているつもりだが、本当にハルヒをごまかせているのかは怪しいものがある。
いや、気付かれちゃまずいんだけどな。
それから、もうひとつの懸案事項は留学の話だった。
あの後お袋にも確かめたのだが、あれはおっさんのデマでもなんでもなく、本当の話らしい。
留学なんて考えてみたこともなかった俺はかなりうろたえたのだが、
「何か不都合でもあるの?」
とお袋に聞かれ、口ごもった。
SOS団の活動にも、勿論古泉にも未練がある以上、日本を離れたくない気持ちもある。
だが同時に、これで当分古泉の顔を見なくて済むならどんなに気が楽か、とも思える。
古泉の顔を見るだけで辛い。
無理してなんでもない顔をするのも苦しい。
だからいっそ、離れられたら…と思っちまうのは俺の弱さゆえだろうか。
実際、こんな状態で離れたらどうなるんだろうな。
かえってほっとするのか、それとも会えない苦しさに身悶えることになるのか、予想もつかない。
自分の気持ちさえ、分からなかった。
離れたいのか、離れたくないのか、それさえも掴めない。
平静を装えなくなる前に離れた方がいいようにも思う。
離れたら最後、狂いそうな思いをするかも知れないとも思う。
会いたいと身を焦がすほどに思う気持ちと、会って苦しむくらいなら、二度と会わずに忘れてしまいたいと思う気持ちとが混在していた。
これをどうにか出来たなら、と思ったのが間違いだったんだろうか。
このままだと、心さえ真っ二つに裂けてしまいそうだと思った瞬間、目眩がした。
「…う……」
ベッドに横たわったまま、目を閉じ、落ち着くのを待って目を開くと、目の前に「俺」がいた。
「なっ……」
驚いたのはそいつも同じだった。
しかし、同時に悟った。
「本当に分かれちまったのか…」
呆然と呟いた俺に、
「そうみたいだな」
と苦笑しておいて、そいつは起き上がり、
「じゃあ、俺は古泉のところに行ってくる」
「待て! 行ってどうする気だ!?」
驚く俺にも構わず、そいつは平然とした顔で、
「決まってるだろ。…問い詰めてやる」
「は…?」
「俺のことが好きか嫌いか、それだけでもはっきりさせんともう動けもしないだろうが」
そう言いきって、そいつはとっとと部屋を飛び出して行った。
直情的にもほどがある、と妙に冷静に考えているということは、俺は感情的な部分と、理性的と言えば聞こえがいいが、消極的な部分に分かれたようだ。
なんて、
「悠長なことを言ってる場合じゃないよな」
あいつを放っておいたらどうなるか分からん。
俺は慌てて部屋を飛び出した。
空を見上げて納得だ。
今夜は綺麗な半月だったらしい。
飛べないものか、と地面を蹴るが空を飛ぶような格好にはならない。
諦めて駆け出し、真っ直ぐに古泉の部屋を目指す。
エレベータを待つのももどかしく階段を駆け上がり、ドアを叩くのももどかしく、強引にドアを開いた。
鍵がかかってなくて助かった、と思いながら部屋に転がり込み、とにかく止めようと、
「待て…!」
と叫んだきり、俺は絶句することになった。
リビングのソファの上で、「俺」が古泉を押し倒していたせいで。
「なぁ!?」
何やってんだお前ら!!
「もう来ちまったのか」
不満げに呟いたそいつに押し倒された状態で、古泉は目を白黒させている。
「なっ…、え、い、一体どういう…」
それはこっちの台詞だ。
「だから、」
ともうひとりの俺は、見てられないくらいの満面の笑みで、
「こいつが俺を好きってやっと答えたから、それを確かめてやろうと」
正直、勘弁してくれ。
奔放にもほどがある。
今頃気づいたが、今のこいつは俺の中の妖精らしい部分だけを集めたようなもんだってことじゃないか。
でもって俺は人間らしく、恥じらいも躊躇いもあるのだが、古泉が俺を好きだというのは素直に嬉しく思えた。
が、
「だからって見過ごせるか! 分かったならもういいだろ、帰るぞ!」
「嫌だ」
はっきり拒否した上、そいつは俺を無視するように古泉に口づける。
「好きだ」
と俺が言えないことを囁くそいつに、かっと頭に血が上る。
「あほか!」
思わずずかずかと近寄り、そいつの首を掴んでやろうとした途端、
「ひっかかったな」
にやりと笑ったそいつに腕を掴まれ、いきなりシャツのボタンをむしり取るような勢いで外された。
「うわ…っ!?」
それだけと言ってしまえばそれだけのことだってのに、古泉に素肌を見られていると思うだけで、羞恥に顔が熱くなる。
「当たりだな」
にまっと悪辣な笑みを浮かべ、そいつはパニック状態に陥った俺のシャツを簡単に剥ぎ取ってしまう。
「そうなってるだろうと思ってたんだ」
得意そうに笑うそいつを睨めば、
「どういうことか、知りたいか?」
「どうでもいいから、服、返せ…!」
上半身を裸にされただけとはいえ、情けなさに泣きそうだ。
「それは却下だな。……お前だって、古泉がほしいくせに」
そう言ったそいつは俺を逃がさないよう片手で捕らえたまま、未だ状況把握も出来ていない古泉にキスをして、
「続き、するぞ」
と興奮の熱に湿った声で誘う。
「ま、待ってください。一体どういうことなんです…!?」
「前に言っただろ? 俺は人間と妖精の間に生まれたハーフエルフなんだって」
「……あ…」
一応話として覚えていてくれたのか、古泉がかすかに声を上げる。
「だから、少しなら人間にない力も使える。こうして、体を二つに分けることも、な。……と言っても、今回は狙ってやった訳じゃないが」
と苦笑しておいて、そいつは古泉と深く唇を合わせる。
それを見ても、嫉妬めいた感情は抱かなかった。
何しろ、あれも俺だからな。
自分自身に対して妬くやつはそういやしないだろう。
だから俺はひたすらに、裸身をさらすことが恥ずかしくて、いたたまれない気持ちだった。
なんとか逃れようともがく俺を、古泉の上から一度退いたもうひとりの俺がぐいと強引に引き寄せ、
「こいつにもキスしてやってくれ。素直にほしいって言えない分、嫌がって見えるだけで、本当はこいつもお前がほしくて堪らないんだ」
「しかし…」
起き上がった古泉の不安げな視線がこちらに向けられ、体が震えた。
恥ずかしい。
くすぐったい。
そのくせ、ぞくりと来たそれが、悪寒であるはずがない。
「俺は俺の中の妖精の部分、こいつは人間の部分なんだ。だから俺が平気で出来ることをこいつは出来ないし、厄介なしがらみに囚われる。……好きならそう自分から言えばよかったのにな」
古泉に講義しながら、そいつは自分もシャツのボタンをすっかり外し、素肌をさらして俺を背後から抱きしめ、ソファに座り直した。
「キス、してくれないのか?」
そう古泉に囁くふりをして、俺を煽る。
ほしければそうねだれと手ほどきする。
不安に震えながら、俺は古泉を見つめた。
古泉は優しい。
俺を好きだと言ったなら、きっと、嫌がる俺に無理強いなんてしないだろう。
逆に言えば、嫌がればキスもしてくれないということだ。
してほしいと言う度胸はなく、しかしながらしてもらえないのは嫌だった俺は狡猾にも軽く顎を上げて、そっと目を閉じた。
「ほら、こいつも待ってるだろ?」
と背後で声がする。
ソファのきしむ音がして、触れてはいないものの、古泉の体温が感じられたと思ったら、唇に柔らかなものが触れた。
それだけでも歓喜に震えるのに、古泉は唇の間から舌を忍び入れ、口内をなぞる。
「ふ…っ、ぁ、んん……」
くすぐったい快感に震えながら目を開けると、ケモノじみた瞳に射抜かれ、蕩けた。
どうしようもなく鼓動が全身に伝わり、体温が跳ね上がる。
もはや逃げ出す力を失った俺を抱き抱えている背後の俺は、
「古泉、俺にも」
と舌を伸ばす。
すぐそばで絡まる舌を眺め、それが立てる淫らがましい水音をどこか夢見心地で聞きながら、俺は古泉を見つめた。
戸惑いはないのだろうか。
こんな異常な状況を受け入れられるのか?
……また夢だと思われてたら嫌だな。
そう、思ったから、
「古泉、これは夢じゃないからな」
と囁いて、古泉の手を握り締めた。
「ええ、分かっています」
そんな言葉と共に向けられる柔らかな視線こそ、俺のほしかったもののように思えた。
事実、俺は満足していたのだと思う。
「嬉しい」
と呟いて、後はもう、積極的な方に任せようと思ったくらいだったからな。
しかし、
「これくらいで満足してどうする。これからだろ」
と言って、背後から伸びてきた指に、胸の突起をふたついっぺんに摘まれ、
「ひぃあ……っ!」
と悲鳴じみた声が上がる。
「やっ…、な、んで……」
お前でいいだろ、と逃れようとする俺に、
「思うんだが、せっかく肉体的にも分かれてるんだ。この機会に色々と矯正しておくべきだと思わんか?」
「はっ…ぁ…?」
「だから、その遠慮し過ぎるところを直すべく、少しは大胆になれ」
「むっ、り、言うな…! ひぁっ、やっ、やぁ…! 古泉っ、まで……」
遠慮なく、しかも的確に刺激を与えられたちっぽけな突起は、哀れなまでに赤くなり、びくついている。
そこを古泉に舐められたせいで、とぷりと先走りが溢れたのさえ分かった。
「すみません、あまりにも魅力的な光景に我慢出来なくなりました」
悪びれもせずにそんなことを言う古泉にも、背後からダメ出しが飛ぶ。
「謝るな」
「分かりました」
苦笑まじりに頷いた唇が、遠慮なく突起を食み、背筋を痛いくらいの快感が走った。
「ぃ…っ!」
「いい?」
甘い笑いを含んだ声で囁くのは古泉だ。
「ちがっ…、いた、ひっ、から……」
ぼろ、と涙を溢れさせる俺を宥めすかすように、背後からの手が俺の頭を撫でる。
「痛いのもいいんだよな」
「ふ…っ、ぅ、うぅ……」
「そんなに泣くなよ。古泉に誤解されるぞ」
言いながら、その手が俺の耳を撫で、首筋をたどって背筋をむず痒くなぞる。
「あっ…や、ぁ……」
「耳も弱くて、胸でも背中でも感じて。……お前、俺のこと呆れたりしないだろうな?」
問われた古泉は苦笑を浮かべ、
「どうしてです?」
「いや、分かってるならいいんだ。……俺がこんな風になるのは、お前だけだから、な」
と囁いて古泉にキスをする。
「あの時は本当に嫌だったんですよね?」
「あの時?」
「あなたの伯父、とやらにあなたが押し倒されていた時のことですよ」
と告げた古泉の目はどこか剣呑な色を帯び、直視された訳でもない俺の方がびくりと身を竦ませた。
しかし、妖精の部分の方がよっぽど図太く出来ているらしい。
「嫌だったに決まってるだろ」
「その割に、キスはさせてましたね」
「させてない。…いや、唇以外もだめだっていうなら、させたってなるのか?」
首を捻りながら、そいつは古泉に顔を近づけ、あの時されたのと同じ、唇を外した位置にキスをした。
「あの時キスされたのはその位置だ」
「…それでも、嫌ですね。あなたがほかの人とキスするなんて」
憎らしげに呟いた拍子に指にも力が入ったということか、俺の胸を弄んでいた指が、きつく爪を立て、
「ひあぁ…っ!」
と喉が震えた。
「いた…、痛い、のは……やだ…ぁ……」
子供みたいに声を上げる俺をなだめるように、
「すみません、つい…」
と言った唇が、詫びるようにして、しかしながら全然詫びになどなっていないことに、充血した突起を舐める。
「ひぅ…っ、ぁっ、…ふあぁ…!」
びくんと体を震わせる俺を、二人いっぺんに古泉は抱きしめた。
「愛してます」
囁かれる言葉に感じた。
体だけでなく、心もが震える。
その背に腕を回して、答えにかえようとする俺と、
「俺も、愛してる。お前だけだ…古泉……」
と熱っぽく囁くもうひとりの俺、両方にキスをして、古泉はどこか意地の悪い笑みを見せた。
「どうします? あなたのことは、」
と背後の俺を見て、
「触れなくていいんですか?」
「俺はこれで十分だから、気にすんな。足りなきゃ後で好きにする。…それに、こいつはこうやって手伝ってやらんとな」
にやっと笑ったそいつは、俺の脚をいきなり大きく開かせ、抱え上げた。
「ひっ、い、やぁ……っ!」
恥ずかしくてならないポーズに、顔どころか全身が赤く染まる気がする。
「まだ平気だろ? ズボンははいてるんだし」
「いやっ、は、離せ…!」
ばたつかせようとした俺の脚を押さえたのは古泉だった。
「嫌ですか?」
「っ……」
そんな風に見つめてくるのは狡い。
思わず言葉を詰まらせた俺に、古泉はにっこりと微笑んで、
「服を身につけたままでは嫌、ということなら、脱がせなくてはなりませんよね?」
本気で、何を言われたのかと思った。
呆然とする俺とは逆に、背後からは笑い声が上がる。
「古泉っ、お前って、むっつり? だとしたら最高なんだが」
「そうかも知れません。でも、あなただからですよ」
と囁いた古泉の手が、ズボンのベルトにかかる。
「いっ…!」
「本当に嫌なら、あなたの後ろにいるあなたも止めるはずですよね? でもそうではないということは、あなたも望んでくれているということでしょう?」
そう笑って、古泉はいとも簡単にベルトを外すと、あっという間にズボンを寛げ、はしたなくも半ば勃ち上がって震えている浅ましいものを引っ張り出した。
「ぃ、や…! 許して…」
恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうだってのに、古泉は更に、
「ズボンが汚れたら困るでしょう?」
と親切ごかしに囁いて、それを脚から引き抜いた。
残るのは靴下だけで、そんなものは防衛線においてなんの役にも立ちやしねぇ。
「うぅ……」
もはや罵りの文句も出ず、ただ唸りながら睨むので精一杯だってのに、
「そんなに煽らないでくださいよ」
と熱っぽく囁かれる。
「煽って、なんか……」
「僕は煽られるんです。……あなたが好きなんですから、当然でしょう?」
その言葉に涙ばかりが溢れてくる。
勿論、嬉し涙だ。
前の時より、もっとずっと嬉しかった。
だから俺は、
「もっと、」
言ってほしい、とねだったはずだったのに、背後から、
「気持ち良くしてほしいって」
と余計なことを付け加えられて、
「んなぁ!?」
と奇声を発した俺に、古泉は楽しげに笑って、
「喜んで」
なんて答えやがった。