エロですよー
でれでれ系?



















































大丈夫



古泉と付き合い始めて早くも三ヶ月ばかりが過ぎたが、古泉は何もしてきていなかった。
キスやハグは毎度のことだし、時にはそれ以上のことだってするのだが、精々そこまでだ。
俺のことを楽しませようとするように、気持ちよくしてくれる。
それでも、まだ最後までしてない。
絶対にしなくちゃならないというわけではないんだと、古泉と付き合い始めて、俺はやっと知った。
しなくても気持ちよくなれるし、何より、愛されてると感じられた。
それでも、と思ったのは、多分、悪いことじゃない。
過去のこととか一切関係なく、俺は、古泉が欲しくて仕方なかった。
ちゃんと、最後まで愛して欲しいし、俺のことを知って欲しくてならなかった。
古泉は、とても優しい。
優しすぎるほどに優しい。
そんな扱いに、俺もやっと慣れてきた。
古泉が俺だけに向けてくれる柔らかな眼差しにも、たとえば一緒に歩いていて、軒から垂れる雨垂れから俺をさり気なく庇うようなちょっとした仕草にも、愛情を感じた。
鬱陶しがられたり、拒まれたりしないと思うと、「好き」なんて言葉も言えた。
恥ずかしくて仕方なかったはずの言葉が、言わなければ息も出来なくなりそうなほどに胸にこみ上げ、溢れ出た。
古泉は、そんな風にして、俺の準備が整うのを待ってくれていたようだった。
いつものように訪ねて行った俺を快く迎え入れてくれた古泉と、しばらくの間一緒にテレビなんぞ見ながら過ごした日のことだった。
夕食も食べたし、このまま泊まろうかそれとも帰ろうかなどと考えていると、
「ねえ」
といつになく緊張の感じられる声をかけられた。
「な、んだ?」
いつもと違う調子に、俺まで緊張させられるが、振り返った先にあった古泉の熱っぽい瞳を見て、じわりと体の中の熱が疼くのを感じた。
「…今日、泊まっていかれませんか」
「お前がいいなら、泊まりたい、が……その、」
「勿論、ただ泊まっていって欲しいと言うわけじゃありませんよ。……ねえ、どうです? お嫌ですか?」
「嫌なわけないだろ」
俺は薄く笑って、自分から古泉に抱きつき、キスをする。
「やっと、して、くれるんだろ?」
「……いいですか?」
「ん…、して、欲しい…」
深い口付けを交わして、それでも今は体を離した。
「すぐ、メールしとく」
「はい」
嬉しそうに笑った古泉は、寝室の方に行った。
それがなんのためか考えるだけでも胸が熱くなる。
顔も当然赤くなりながら、俺は短いメールをお袋に送った。
短いそれを送るだけだってのに、やけに指が震えて時間がかかったからか、送り終えた時には、ソファの背を間に挟んで、背後から古泉に抱きしめられていた。
「もう、いいですか?」
「ああ」
答えた俺の顎を捕らえて、古泉が口付ける。
触れるだけのそれを繰り返しながら、体を反転させ、古泉に向き直ると、そのままいきなり抱き上げられた。
「うわっ!?」
驚きの声を上げた俺に、古泉は小さく声を立てて笑い、
「可愛いです」
と囁いた。
「う…」
口ごもったのは、あれだ。
ここで可愛くないとでも反論しようものなら、いくらでも同じ意味の言葉をさまざまな表現で並べ立てられ、非常に恥ずかしい思いをさせられると分かっていたからに他ならない。
黙った俺に、古泉は楽しげに笑ってキスをする。
「愛してます」
「ん、俺も、好きだ…」
キスをして、抱きしめあって、それでも早く欲しくて、足は勝手に寝室を目指す。
「シャワー、どうします?」
「…や、もう、我慢出来ん、から……」
羞恥を堪えて正直に言えば、
「同感ですね」
そう笑いながら、古泉が俺の首筋をきつく吸い上げた。
「ひっ、ぁ…」
それだけで腰が抜けそうになる俺を抱きしめて、優しくベッドに押し倒す。
「自分で脱ぎたいですか? それとも、脱がせて欲しい?」
「ふ…ぁ、ぬ、がせて……」
意地悪くも思える質問が、自分を辱めるためのものではなく、俺への優しさなんだと思うと、恥ずかしくても答えられた。
首筋に触れる唇も、腕に触れる指先も、何もかもが気持ちよくて、融けてしまいそうだ。
一枚ずつ丁寧に俺の服を剥ぎ取りながら、古泉は自分の服も肌蹴る。
露になった肌にうっすらと浮かんだ汗に、古泉も興奮しているのだと知れて、それだけで、感じた。
古泉の指が、震える胸の先端に触れると、それだけで体が跳ねた。
「あっ…ぁ、古泉…」
「ここが好きなんですよね?」
「ん、好き、だ…から……」
「だから?」
「…さ、わって…くれ……」
そんな風に言うのは恥ずかしかった。
気持ちいいと言ってしまうのも。
抱かれるということに慣れている自分が汚れているようで嫌だった。
それを見せてしまうのは怖かった。
だが古泉はそれすら見透かして、
「ちゃんと、どこが気持ちいいのか教えてください。分からないと不安になるでしょう? …それとも……僕は下手ですか?」
「んなこと、ない…っ」
真っ赤になりながら答えれば、古泉は優しく笑った。
「それならいいのですが」
「…気持ち、いい、から、お前にされることなら、どんなことも、いい、から…っ……」
「嬉しいですよ」
その言葉の通りに輝いた目が、俺を映す。
そこには、快感に震える自分の姿が映っているのが分かったが、俺はそれを前のように、浅ましいとは思わなかった。
古泉が欲しいんだから、こうなって当然だと思えたし、それで古泉を誘えるなら嬉しいとさえ思えた。
古泉の手が、舌が、俺の体に触れてくる。
ただ楽しむためでなく、お互いの気持ちを確かめるように、愛し合うために。
優しく触れられるとそれだけで、体が震えるほどに感じられた。
「ぁ、あっ、古泉…っ、ひぁ、き、もち、いい……」
「ここですか?」
「んっ、ん、どこも……いい、から…」
甘ったれた声を出しても古泉は嫌がらない。
むしろ嬉しそうに、もっと俺が声を堪えられなくなるように、いいと言ったところに触ってくれる。
更にもっと別の場所を求めて這い回る指先さえ、気持ちよく思えた。
そんな風に、古泉の愛撫が気持ちいいのは、技術的なものだけじゃない。
本当に愛されるというのがどういうことか、俺は古泉と触れ合って、初めて解った。
古泉に教えてもらった。
だから、こんなに気持ちいいのもこれが初めてで。
「そりゃあ、心から愛してますから」
と恥ずかしがりもせず、照れもせず、真っ直ぐに言う古泉に、俺は抱きついた。
「これじゃ、出来ませんよ」
とからかわれてもよかった。
「だったら、俺がしてやろうか」
「あなたが?」
「ん、俺からも、したいから」
言いながら俺は少し体を離して、手探りで古泉のベルトのバックルを探し当てると、それを緩めた。
そのまま性急にズボンを緩め、目的のものを取り出す。
そうして古泉を見つめて、
「…舐めて、いいか?」
「どうぞ。…あなただけのものですから」
「ん…嬉しい」
らしくないと思いながらそんな言葉を呟いても、古泉は引いたり笑ったりするどころか、喜んでくれる。
「可愛いですね、本当に…」
余計なことを言うなと返す代わりに、俺は既に熱を持っていたそれを口にくわえた。
相変わらず立派なそれに頬擦りでもしてやりたくなったので、その通りしてやると、
「うわ」
と声を上げられた。
「なんだよ」
これくらいで引くはずないだろうに。
「あまりの光景に思わず……」
照れたように言う古泉へ、
「ばか」
笑いながら、それを横からくわえて舌を絡めると、
「く…っ……」
と古泉がかすかに声を上げる。
もっとそんな風に感じさせたくて、更に深くくわえようとしていると、いきなり引き剥がされた。
「なんだよ。させてくれるんじゃなかったのか?」
「してもらいたいですよ。でも、僕もしたいんです。だから、」
言いながら古泉は俺を体の上に乗せるような形で横になり、ついで、俺の頭を反対側に向けた。
……おいこら。
「はい?」
「なんのつもりだ」
「だめですか? シックス・ナインってちょっと憧れてたんですけど」
「んなもんに憧れるな!」
「すみません」
と言いながらも古泉は少しも悪いと思ってない調子で、俺の尻を撫でた。
「っあ…!」
「お互い、されるばかりは嫌なら、これが丁度いいと思いませんか?」
「ひっ、ぁ、やぁ……」
吐息をかけられるだけで腰が揺れる。
それだけじゃ足りなくて触って欲しくなる。
早く、とねだりたくなる俺に、まるで悪魔の誘いのように、
「嫌ですか? 本当に?」
「うぅ……」
真っ赤になりながら、俺は黙って古泉のものをくわえ直した。
これで通じるだろ。
苦しくなるほど奥までくわえて、反射で勝手に締まる喉で締め上げると、古泉が小さく唸ったのが聞こえた。
ざまあみろ、と笑っていたのは一瞬で、滑ったものが窄まりに触れる感覚に、
「ふぐっ…」
とうめき声が漏れる。
このやろ。
苦しくなって口から出すと、
「嫌でした?」
と聞かれた。
「いっ………やじゃ、ない、が……」
「それならいいでしょう?」
薄く笑って、古泉はもう一度そこに口付ける。
「ひぁっ、あっ、あ…! んん…」
「可愛い」
「か、わいく、ね……!」
「可愛いですよ。あなたの声も、舌だけじゃ足りなくてひくついてるここも」
「あぁ、ん…っ」
「指、入れて欲しいですか?」
「んん…っ、入れて、欲しい……から、…早く……」
そんな風に恥ずかしいことを言えるのも、古泉を信じていられるからだ。
そうじゃなかったら、そういうプレイでもねえのに、こんなこと言えるか。
古泉は、おそらく笑ったんだと思う。
それは俺の恥ずかしい姿を見てというより、楽しくて、あるいは嬉しくての笑みだったんだろう。
それが嬉しくて、何か返したくて、夢中になって古泉のものを舐め、くわえ、味わった。
苦味とか塩味とか色々混ざったそれをすすりながら、もっとと求める代わりに腰を沈める。
奥深くまで入り込んだ指が内壁をかき回すだけで、暴れだしたくなるほど気持ちよくて堪らない。
「あっ、も、やだ……っ!」
声を上げる俺に、古泉は優しく、
「もう我慢出来ません?」
「んん…も、無理…ぃ……」
「…じゃあ、どうします?」
「どう、も、何も…っ、あるかぁ…!」
「あなたの好きにしたいんです。初めてするなら、これまでの嫌なことも全部忘れられるようにしたいじゃないですか。これまでならしなかったようなことをしてあげたいんです。…あなたの希望を優先したいんです。忌々しいことですが、それが、あなたにとって体験したことのないことでしょう?」
「あ……」
中から指を引き抜いて、古泉は俺を向き直らせた。
上体を起こして、俺を優しく抱きしめて、
「あなたの好きにしてください」
とこの上なく柔らかな声で囁かれ、ぞくんと体が震えた。
「……いい、のか?」
「はい。…どうしたいですか?」
「……お前が、欲しい。お前のこと、一番、奥で、感じたい。俺から、したいから、だから……っ…」
それ以上は言葉に出来なくて、そのまま俺は古泉を抱きしめ返し、腰を浮かした。
古泉は俺が何をするのかとじっと見守っている。
その視線に、どうしようもなく煽られた。
「…あっ、…は…こんな、の、……した、こと、ないんだからな…っ」
「ええ、僕にだけですよね」
「ん」
頷いて、俺は古泉に口付けながら、浮かせた腰を迷わず落とした。
古泉の形を刻み付けたくて、何より我慢が出来なくて、一息に奥まで飲み込んでも、俺の体は引き裂かれやしない。
いっそ裂けたってよかったくらいだってのに、しっかりと古泉をくわえ込んだ。
「か…っ、ぁ、はっ……」
「大丈夫、ですか…?」
心配そうに聞いてくる古泉の肩にすがって、こくこくと馬鹿みたいに頷いた。
熱い熱いそれが、古泉のだと思うだけで気持ちよくて、体の芯から表面まで残らず全部、融けてしまえるように思えた。
「奥まで…っ、来て…気持ち、いい……!」
はしたない声を上げても、古泉は嫌悪なんて少しも見せなかった。
むしろ愛しげに笑って、
「それは何よりですね…。僕、も…気持ちいいですよ……」
「んと、に…?」
「ええ、本当に」
「……嬉しい」
呟いたら、涙が出た。
ただ繋がってるだけで、こんなに気持ちいいなんて俺は知らなかった。
涙を舐め取ってもらうだけで、こんな気持ちになるなんて、知りもしなかった。
知ろうとも、しなかった。
高望みだと諦めていた俺は、有名な寓話の狐よりももっとずっと愚かだ。
でも、もう違う。
俺は知ったし、求めれば与えてくれるパートナーがいてくれる。
だから、俺は古泉にキスをねだる。
自分からもキスをして、そうして、
「あっ、も、動いて、いいよな……?」
「好きにしてください。僕も何かしたいんですけど…何かありません?」
「んん……」
ずるりと音を立てながら腰を上げて、俺は古泉を見つめる。
「…だったら、乳首、触って……」
「喜んで」
微笑んだ古泉の指先が乳首を押しつぶすと、それだけでしびれるような快感が走り、腰の力が抜けた。
そのまま重力に負けて沈み込む。
「ひっぁああ!」
「くっ……」
「あっ、ああっ、あ!」
あまりの気持ちよさに腰を止められなくなりながら、普通そうなるのはタチの方じゃないのかなんて思ったのは一瞬で、気持ちよくて、愛し合ってるなら、これでもいいんじゃないかと笑えた。
「愛してる…」
「僕も、愛してます、あなたが、好きです…」
「好き、だ…。愛してる。もっと、…っ、こい、ずみ…っ」
馬鹿みたいに繰り返しながら、古泉の手をきつく握り締めて、達した。

古泉は、後始末が終わってからも、まだ熱い体を宥めるように撫でてくれる。
そんな優しさなんて、これまで無縁だっただけに嬉しいのだがくすぐったい。
それでも、甘えるように古泉の体に擦り寄りながら、
「好きだ」
と小さな声で囁くと、
「僕も好きですよ」
と囁き返された。
幸せだと思いながらも、それでもひとつだけ気になって、怒られる覚悟で尋ねてみた。
「…いやらしくて、嫌いになったり、」
「するわけありませんよ」
古泉は最後まで言わせもしなかった。
強い口調で遮ったばかりか、意地の悪い顔をして、
「…まだそんな心配をするってことは、愛され足りない、ってことですか?」
等と言うので、
「…それ、頷いたらどうなるんだ?」
と薄ら寒いものを感じながら問えば、古泉はこの上なく嫣然たる笑みを見せ、
「頷くまでもなく、腰が立たなくなるほどしてあげますよ」
「いっ!?」
反論するまでもなく、まるで布団に縫い付けられるように押し倒される。
待て待て待て、何だこの展開は。
さっきので満足して、だから片付けたんじゃなかったのか!?
「ずっと飢えてたんでしょう? 三ヶ月前に仰られましたよね? それからだって随分とお待たせしたんです。あれくらいじゃ足りないんじゃないんですか?」
「んな…っ!」
「その分も、出なくなるほどしてさしあげますよ」
「っ、な、何言って…!?」
驚き、戸惑う俺に、古泉は困ったように笑って、
「と言いますか、いっそ正直に言いましょうか?」
「は…?」
正直にってのはなんだ、さっきまでのはやっぱり冗談なのか、と困惑する俺の耳元に唇を寄せ、
「…あなたに、どうしようもないほど夢中なんです」
と、とんでもなくいい声を響かせた古泉は、それだけで俺がぞくりとしているのをわかっているのかいないのか、
「こんなことを言って、また体目当ての輩と同一視されると非常に困るのですが、あなたにばかり正直になることを要求しておいて、黙っているのもアンフェアかと思いまして。……あなたの表情も体も、とても綺麗で、行為は気持ちよくて、どうにかなるかと思いましたよ」
そう言って古泉は俺を心配そうに見つめた。
だが、心配なんて要らん。
「…大丈夫だ。ちゃんと、解ってるからな」
だから、と俺は自分から古泉を抱きしめる。
「もっと、愛して」