エロですよー
結構恥かしい感じ?
お狐様だけど女体化エロです















































お狐様の告白



幼い頃から、僕は守られてきた。
優しくて強く、厳しいが暖かな祖父と、時々からかってきたりもするけれど、とても優しいお兄さんに。
お兄さんは血縁でもなんでもない。
それどころか、人間ですらなかった。
どうやら不可思議な、人でないものを見る力のある人だったらしい祖父に使われてやっていた、狐なのだ。
その証拠のように、お兄さんは不可思議な力をいくつも見せてくれた。
僕は、それを不思議とも思わず、祖父とお兄さんに守られながら、楽しく暮らしていた。
それが終ったのは、祖父の死によるものであり、それからもう、十年近い時が過ぎている。
お兄さんとの記憶を封じられながらも、僕はずっとお兄さんに守られ続けていた。
一年前、その封印が解け、記憶が戻ってからは更に。
僕は幼い頃からずっと、お兄さんのことが好きだった。
今も、好きだ。
他の何者とも比べ難いほどに、愛している。
お兄さんは、昔と違い、僕に対する遠慮も労わりもろくになく、好き放題に僕を振り回してくれる。
楽しそうに笑うお兄さんの顔は、以前なら見られなかったほどだ。
それを僕も嬉しく思いながら、それでも僕は、このままじゃいけないんだと、薄々ながら感じていた。
いや、本当はもっと前から、はっきり分かっていたんだろう。
お兄さんは人じゃない。
だから、僕とお兄さんの価値観は、決して相容れない。
僕の思いがお兄さんに通じることはあり得ない。
通じないままに体を重ねる罪悪感をいくら言葉を尽くして説明したところで、お兄さんには決して分かってはもらえないだろう。
でも、このままではいけないと、このままでは嫌だと、僕は思った。
決心したのは、お兄さんと「再会」してから丁度一年経った日のことだった。
正確には、その前日だったかもしれないけれど、要は同じことだ。
12月31日の深夜、あるいは、1月1日の夜明け前、まだ真夜中のことだった。
僕が打った不恰好な年越しそばを、文句を言いつつも綺麗に食べてくれたお兄さんは、興味がないからという一言共にテレビを消し、それでもまだソファに座っていた僕の膝に跨るような格好で、僕を抱き締めた。
普段よりも、いくらか大きく裂けた口の端から、赤い舌がのぞく。
その顔がほんのり赤いのは、さっきまで御神酒と称して酒を飲んでいたからだろう。
ふわりと僕の顔にかかる吐息は熱く、少々酒臭いのに、どうしてか、とても甘いもののように思えた。
「一樹」
お兄さんが僕を呼ぶ。
細められた目が、艶かしい。
「するぞ」
いつものように告げられる言葉に、いつもなら僕は頷いていただろう。
でも、今夜は違った。
「なんのために、ですか?」
僕が問い返したことを不審に思ったのだろうか。
お兄さんは軽く首を傾げながら、
「なんのためにって、そんなもん、栄養補給に決まってんだろ…」
と言って目をそらす。
「…それなら、僕は嫌です」
「なっ!?」
そらされた目が、きつく僕を睨みつける。
それだけで、心臓が止まってしまいそうなほどの厳しい眼差しだ。
でも僕は、もう逃げたくなかった。
「もう、こんなことはよしましょう」
「…こんなことってのは、セックスのことか」
「そうです」
「…っ、なんでだよ!」
お兄さんはそう叫び様、僕の肩を掴んだ。
焼けるように熱く、痛む。
力加減すら忘れてしまったようなお兄さんの様子に、違和感めいたものを感じながらも、僕は答えた。
「力にせよ栄養にせよ、他のことでも補えるんでしょう? それなら、そちらで補給すればいいだけじゃありませんか。…好きあってもいないのに、こんなことをしてはいけません。少なくとも僕は、したくないと思います」
僕はお兄さんのことが好きだけれど、お兄さんは違う。
好きな人の体を抱いて、嬉しくないわけじゃない。
けれど、だからといってそれに甘えていてはいけないと感じていた。
体だけ手に入れても虚しいだけだという、陳腐なセリフが真実だと痛感していた。
お兄さんを抱くたび、お兄さんが僕の腕の中で喘ぐたび、その幸せに包まれるたび、僕は酷く胸が痛んで堪らなくなった。
自分が酷い男になったような気がした。
お兄さんの態度が一向に変わらないことも、僕が決意を固める理由になった。
お兄さんにとって、体を重ねるなんて行為がなんの意味も持たないと痛感したからだ。
お兄さんが僕を好きになることは決してない。
それなのに、お兄さんを抱き続けること、好きでい続けることに、僕は限界を感じていた。
だから、もう、諦めさせてもらいたい。
報われないのであれば、これ以上好きでい続けたくないとさえ思っての発言だった。
「約束ですから、あなたのことを神として祀ることは続けます。でも、普通のお供えで許してもらいたいんです。……お願いします」
そう、僕が言った時だった。
お兄さんの顔が真っ赤に染まり、くしゃりと顔が歪んだのは。
まるで今にも泣き出しそうな、それとも怒鳴り出しそうな顔に、僕が驚きに目を見開くと、
「なんでだよ…! 俺のこと、好きだって、言ったくせに…っ、もう、俺のことなんか好きじゃないのかよ!」
「え?」
じわりとその目に涙が滲む。
「な、なんでお兄さんが泣いたりするんですか!? だって、お兄さんこそ、僕のことなんてお好きじゃないでしょう?」
「――ッ、誰が、お前を好きじゃないって!?」
と耳が壊れそうな大音声で怒鳴られた。
「え」
戸惑う僕に、お兄さんはしがみつく。
「俺は…っ、お前、が、……好きなんだ…! それくらい、分かれよ…!」
泣きそうに震えた声で小さく叫ばれても、信じられなかった。
「ええええ!?」
なんですかそれ、分かれって、無理です。
なんでいきなりそんなこと言い出すんですか!?
僕はまたからかわれてるんですか!?
「違う! …っ、本当に、お前が、好きなんだよ…。……好きじゃなきゃ、気の交感なんて、出来るか……っ…」
唸るように言われても、僕はまだ半信半疑どころか、四分の一も信じられちゃいなかった。
「だって、お兄さん、これまで一言も……」
「言えるわけねぇだろ!」
と恨みがましく睨まれる。
「お前は俺が育てたようなもんだし、ジジィにもお前を託された。ただの保護者だったはずだ。そんな俺が、何より、神々にも近しいこの俺が、ただの人間に惚れちまったなんて…!」
羞恥に染まった顔に、人の形を保っているそれに、表情が明確に浮かび上がる。
いつもなら、狐の顔に戻って、表情を隠そうとするのに、そうじゃない。
僕に伝えようと、信じさせようとしているかのようだった。
「…本当に……?」
まだ疑う気持ちを捨てきれない僕を、潤んだ瞳で見つめて、お兄さんはぽつりと呟いた。
「…俺は、お前の子供なら、産んでもいいくらい、お前が好きなんだ…」
そう言って、僕に触れるだけのキスをくれる。
お兄さんからのキスが触れるだけで離れていくなんて、珍しい。
もしかしたら初めてじゃないだろうかと思えるほどに。
って、そうじゃなくて、
「う、産んで…って……」
かあっと赤くなる僕に、お兄さんは熱っぽい眼差しを向け、
「産ませろよ。お前の子供を、俺に、産ませてくれ」
あまりにも動物的であるが故にストレートで分かりやすく、それだけに、胸に来た。
「…産んで、くれるんですか……?」
「ん」
小さく頷いたお兄さんは、恥かしそうに目をそらしながら、
「お前がいいなら」
「…嬉しいですよ。そこまで、思ってくださってたんですか?」
僕が聞くと、お兄さんはさっきよりもかすかに頷いて、
「……このところずっと、それが言いたかったくらいだ」
「ええ!?」
そうだったんですか!?
お兄さんは深いため息を吐き、
「言おうと思っても、いざとなるとやっぱり言い辛くてな…。……言えるわけ、ないだろ。俺が、この俺が、多少力はあるとはいえ、それを使うこともしないような、つまりはただの人間でしかないお前の子供を産みたいなんて……」
むくれるように言いながらも、お兄さんはじっと僕を見つめ、
「…いいんだよな? お前の子供、産ませてくれるんだよな?」
「え、ええ、…あなたがよければ」
「産みたくなけりゃ、自分から言うかよ」
「でも…産めるんですか?」
だって、オスでしょう?
「孕めるし、産めるぞ? 多少無理はすることになるがな。……その無理をしてもいいと思うくらいには、お前のことをちゃんと気に入ってるんだ…」
そう薄く笑ったお兄さんの体がふるりと震え、その姿が変化した。
髪の長さはほとんど変わらず、ほんの少しだけ長くなる。
体は厚着した冬服の上からでも分かるほどに細さと華奢さとを増し、ラインは柔らか味を帯びる。
控え目な胸を両手で確かめるようにおし抱きながら、お兄さんはからかうように微笑んだ。
「お前の好みって、こんなもんだろ?」
その声も、少しだけ高くなっていた。
「それはそうですけど、僕は、お兄さんならどんな姿でも……」
と言いかけて、ちょっと躊躇ったのはお兄さんの冗談好きな性格を思い出したからだ。
「……よっぽどでなければ、いいです」
それこそ、人三化七みたいなのじゃなければ。
僕の言葉に噴き出したお兄さんは、
「この正直者め」
と笑いながら、僕の耳に噛み付いた。
「痛いですよ?」
「そんなに痛くないだろ。それより、ほら……」
お兄さんが僕の耳をもう一つ甘噛みして、
「…脱がせてくれよ」
と甘ったるく囁いた。
ごくりと喉を鳴らせば、お兄さんは満足気に微笑む。
「一樹」
とこれまでにない優しさのこもった声で僕を呼ぶ。
それともこめられているのは、愛情、なんだろうか。
「当然だろ、このばか。鈍感」
そう不貞腐れたように言うお兄さんの頭から、セーターを引き抜き、長袖のTシャツを脱がせる。
インナーも脱がせてしまえば、露わになるのはいくらか控え目ながらも形のいい、女性特有のふくらみだ。
見せつけるようにそれを寄せ、持ち上げながら、お兄さんは僕を見る。
「これまでだって何度も、遠回しに、お前のことが好きだって伝えようとしてたのに、全然気付かなかったよな」
「え? そ、そうだったんですか?」
「そうだったんですよー」
皮肉っぽく言いながら、お兄さんは僕を見つめ、それからふわりと苦笑した。
「まあ、それでこそお前らしいって気もするけどな。……素直で、頭をめぐらせて言葉の裏を探るなんて器用な真似が出来なくて、…可愛い」
そう笑って、お兄さんは僕の頬にキスをする。
「お前も脱げよ」
そう言った手が、僕のセーターにかかり、一息に脱がされた。
もどかしげにシャツのボタンを外し、インナーシャツを強引に脱がされると、二人して上半身裸で向き合うことになった。
真っ白な肌は見慣れたそれと変わらないはずなのに、胸の赤い突起もいつもと同じはずなのに、ふくらみや体のラインの違いだけで随分違って見える。
「だが、俺だぞ」
言いながら、お兄さんは僕の手を取り、そのふにゃりと柔らかな胸に僕の手を押し当てた。
「う、わ……」
「柔らかくて気持ちいいだろ」
「そう、ですね…」
いつもと勝手が違って、緊張しますけど。
「んなこと言いながら、手が止まらねぇくせに」
くすくすと悪戯っぽく笑いながら、お兄さんは僕の首に腕を絡め、
「なぁ、一樹、キスしろ…」
とねだってくる。
「喜んで」
答えながら顔を近づけ、お兄さんの唇に自分のそれを重ねる。
いつもの、貪るようなキスではなく、ふざけあうような、それ自体を楽しむようなキスになる。
くすぐったくて、気持ちいい。
「はっ……ぁ、ん、…一樹……」
熱のこもった声で名前を呼ばれるだけで煽られる。
きつくお兄さんの体を抱きしめながら、
「本当に、僕のことを好きなんですよね…?」
「くどい」
そう怒ったように言いながらも、お兄さんは小さく微笑んで、
「好きだ…。……愛してる」
「…僕もです。お兄さんが好きです。ずっと、ずっと好きでした。愛してます。お兄さんだけです…」
そう、本当にお兄さんだけだ。
他の誰も好きにならなかった。
幼い頃から、お兄さんしか目に入らなかった。
そんな、重たくて、自分でも負いきれない思いも、
「受け止めて、もらえるんですね」
そう思うだけで、嬉しくて泣きそうだ。
「泣くなよ。…ったく、お前は相変わらず泣き虫だな」
お兄さんは優しくそう言いながら、僕の頬を撫でてくれた。
「いいから、ほら、……早くしろよ…。しないんなら、俺からするぞ?」
不穏なものを感じずにいられない言葉に僕がびくりと竦みあがれば、お兄さんは楽しげに笑った。
「そうだな。俺の決死の告白が信じられないって言うなら、やっぱり証拠を見せてやった方がいいよな」
「なっ…」
何をするつもりですか、と引きつる僕をソファに座らせたまま、お兄さんはするりと僕の膝から下り、僕の足元に膝をつく。
そしてやけに手馴れた仕草で僕のズボンを寛げると、半ば立ち上がっていたものを取り出して、狐らしく笑った。
「何をするつもりかくらい、分かるだろ?」
そう言った唇からのぞく、真っ赤な舌が、その先端をつつくと、とそれがいきなり硬さを増した。
「お、にいさん…っ…!」
「いいから、大人しくしてろ」
微笑んだ唇が開かれ、信じられないほど深くくわえられる。
その熱さと柔らかさと滑りに、目眩さえしそうに感じた。
「ぁ、…っ、く……」
「んんっ……、は…ふ……」
僕を高ぶらせるだけ高ぶらせて解放したお兄さんは、苦しさにか少しばかり潤んだ目で僕を見つめて、
「こんなことだって、他の誰にもしたことないんだからな」
と恨み言のように囁くけれど、それは睦言以外の何物でもない。
「ジジィにだって、他の、これまでに会った誰とも、それこそ狐だろうと人間だろうと全部ひっくるめて、こんなこと、してやったことなんてない…」
でも、とお兄さんは恥ずかしそうな顔をして目だけをそらしながら、
「…お前には、初めてシた時から、何度もしてやっただろ?」
「それは…僕が及び腰だったからじゃ……」
「ばか」
拗ねたようにお兄さんは言って、昂ぶったものの先端に軽く歯を立てた。
痛いですって。
「お前が鈍感だから悪いんだろ。……ヤる気にさせたきゃ、術だってなんだってあるんだ。わざわざ俺が手ずからこんなことをする必要はないんだって、気付けよ」
「え……」
「やろうと思えば、お前に幻覚を見せることだって出来たし、シたくてたまらない気持ちにすることだって簡単だった。でも、俺はそうはしなかっただろ?」
「そう…でしたね」
「……そんな風にお前の気持ちを曲げたりしないで、お前に抱かれたかったんだろうな」
そんな殺し文句を呟くお兄さんに、
「じゃあ、そんな前から僕のことを……?」
「んなもん、俺が知るか」
あれ?
そう来るんですか?
「知るわけないだろ」
そう言ってお兄さんは恥ずかしそうに赤くなった顔をそむけた。
「…自覚したのは、ついこの間だ。……死にかけてて苦しい中で無意識に、お前が好きだって口走っちまって、それで初めて、気の交感が出来て、そうして俺は、お前のことが好きだったんだって気付いたんだ。その前から好きだったのかもしれんし、あの時のお前の、予想を上回る潔さに惚れたのかもしれん。それは俺にも分からん。とにかく、」
とお兄さんは熱を持ったというよりもむしろ、発情しきったとでも言った方がいいような目で僕を見つめて、
「……今はお前が好きで、だから、こんなんなっちまってんだろ…?」
いつの間にか服を脱ぎ捨てて裸になっていたお兄さんは、そう言いながらそろりと立ち上がり、その細く長い脚の間に指を埋めた。
それだけでも分かるほどに、そこはしっとりと潤み、にちにちと艶かしい水音を立てている。
「こんな、ろくに触られてもないのに、ぐちゃぐちゃになって……」
恥ずかしそうに言っているのに、その言葉さえ自身を煽るためのように思えるほど、お兄さんは魅力的な淫らさをまとっていた。
生唾を飲み込みながら、僕は聞く。
「…舐めて、いいですか?」
「ん……して…」
珍しくも甘えるような言葉を呟いたお兄さんの柳腰を抱き寄せ、その丘に顔を埋め、谷間へと舌を伸ばすと、それだけでお兄さんの体が震えた。
「あっ…ぁ、ん、一樹……っ…」
「気持ちいいですか?」
「ん…、なん、で、だろうな…? これだけなのに…」
しとどに溢れてくる粘液を夢中になって貪りながら、僕は悪戯を仕掛けるように足の付け根や柔らかな下腹に赤い印をつける。
「愛し合ってるから、じゃないですか?」
「…生意気、だぞ…っ、ひ、ぁん!」
つんと立ち上がった尖りを舌先でつつき、そのまま唇と共にこねると、お兄さんの腰が抑えていられないほどにくねる。
「じっとしてないと、いいところに当たりませんよ?」
「やぁ…っ、も、どこも、ひっ、イイ、から…ぁ……!」
「どこも?」
「んん、一樹、に、されたら、どこだって、ぁ、あ…っ」
「……嬉しいです」
一際深く顔を埋めて、ずるりと音の立つほどに強くすすり上げると、
「ひあぁぁあ!」
とお兄さんが鋭い声を上げて脱力した。
その体を抱きとめて、
「イっちゃいました?」
「ん……。くそ…、へたれのくせに、うまいんだから……」
「お兄さんのご教授の賜物だと思いますけど」
「うるっさい」
噛み付くように言いながらも、お兄さんは僕を抱きしめる。
愛しげに、優しく。
その体をソファにそっと横たえ、覆い被されば、期待らしきものにお兄さんの体が打ち震えた。
「一樹……っ、早く…」
言いながら、お兄さんはこれ以上はないと言うほどに脚を大きく開く。
片方の脚をソファの背に掛け、もう片方は自分の手で支えて、何もかもをさらけ出す格好になる。
魅惑的にもほどがある光景に見惚れていると、お兄さんは自嘲するように笑った。
「…なんか、もう、本当に末期だな、俺……」
「え?」
「いや……、人じゃあるまいし、正常位にこだわるつもりなんてさらさらなかったんだが、……お前に抱かれるなら、顔を見たいなんて恥ずかしいことを考える俺の頭が末期だな、と」
「……嬉しいです」
感激しながら抱きしめれば、
「いいから、早く!」
と割と本気で怒鳴られてしまったけれど、それでも嬉しい。
これまで、体は繋げても心までは手に入れられないと思ってきた。
思い続けてきた。
でも今は、心も気持ちも体も、全部繋げられる。
それが嬉しくて、
「…愛してます」
と囁けば、お兄さんはこれまでのように茶化しもしなければ、軽くいなしたりもせず、控えめに頷いてくれた。
それこそが、本気で受け止めてくれている証のように思えて、胸が震えた。
とろとろにとろけた場所に指を埋めると、そこは熱くうねって、指程度じゃ足りないとばかりだった。
「すぐに入れても大丈夫ですかね…」
独り言半分、質問半分で呟くと、
「いい、から……!」
と上ずった声で求められた。
それで我慢出来るほど、僕は大人じゃない。
お兄さんが言うほど子供でもないつもりだけれど、これには我慢ならなかった。
僕はお兄さんによって昂ぶらされたものを、とろけたそこに押し当てた。
それだけで、ひくつく入り口が、僕を飲み込もうとするかのようだ。
「あっ……ぁ、はや、く…ぅ……」
くねるお兄さんの腰も、汗で額に張り付く乱れた髪も、熱っぽい瞳も、何もかもが美しく思えた。
愛しい。
愛しい。
それだけに思いが凝縮される。
優しくしようとか労わりたいとかいう思いは掻き消され、まるで僕の方が獣のように、お兄さんの中へ強引に押し入る。
濡れていたとはいえ狭隘な場所を裂くような動きに、
「ぃ、ぁ、ああぁぁぁ……っ!」
とお兄さんが長く尾を引く声を上げる。
でもその顔は歓喜に染まっていて、手どころか脚まで使って、僕の体をきつく抱きしめる。
まるで離し難いとでも言うように。
「はっ、ぁ、あっ…」
僕が動くのに合わせて、吐息とも嬌声ともつかない短い声が上がり、それにまた煽られる。
抱きしめあった体を包み込むのは、行為そのものの気持ちよさもあったし、それ以上に暖かな、気の交感によるそれもあった。
愛しさをそのまま体感に変えたようなそれに包まれながら、お兄さんの最奥をごつごつと突き上げる。
「ひはっ、は、深い…っ、んぁっ、いぃ…!」
半分トリップしたような声を上げながら、お兄さんは僕にすがる。
「…っ、もう、イきます、よ……」
きつく絞り上げられるような感覚に、僕が射精感を堪えながら声をかけると、お兄さんは僕の肩にきつく爪を立てて、
「奥に…っ、出して、孕ませて…っ!」
その言葉がとどめになったことは言うまでもなく、僕は一番奥の更に奥に届けとばかりに吐精した。
お兄さんの体が二度三度と痙攣するように大きく震え、やがて落ち着いた。
それでもお兄さんは僕を離そうとしない。
「…大丈夫ですか……?」
僕が聞くと、お兄さんは小さく頷き、
「まだ、抜くな…よ……」
「え?」
聞き返しても返事はない。
というか、これだけがっちりしがみつかれてたら抜きたくても抜けませんけど。
そのまま、どれくらいの間じっとしてただろうか。
お兄さんは諦めるように頭を振り、
「くそっ」
と吐き捨てて僕の体に絡み付いていた腕と脚を離した。
そうして、この上なく不満そうな顔で、
「…今回は孕めなかったから、また今度な」
と言う。
そんなにも孕みたかったのかと思うと感動のあまり涙すら溢れそうな気持ちになるんですけど、さっきよりもいくらか冷えた頭で考えると、気になることがひとつ。
「えぇと……まだ当分あなたも学生をしなきゃならないのに、妊娠なんてして大丈夫なんですか?」
「心配するな」
お兄さんはあっさり答えてくれた。
「見た目だけ男に戻すことは出来るし、腹が目立つようになるまでには卒業することになるからな」
「そうなんですか?」
「ああ。…神仙の妊娠期間ってのは長くて、三年くらいはかかるんだからな」
「……神仙?」
何かとんでもない発言を聞いた気がするんですけど…。
首を傾げる僕に、お兄さんはにやりと笑って、
「気にするな」
「いやいや、気になるでしょう。お兄さんって、実は結構凄かったりするんですか?」
「さて、どうだろうね」
はぐらかすように呟いて、お兄さんはいつもの、男性の姿に戻る。
「力はそこそこあるが、燃費は恐ろしく悪いし、位も低いからな。凄いとは言いかねるんじゃないか?」
そんなことより、とお兄さんは僕を軽く睨みつけ、
「ここまでしてやったんだからな。もう疑うなよ」
と拗ねるように言われ、僕はニヤケそうになるのを必死に抑えながら、
「すみません」
と頭を下げる。
こういう時は平謝りするしかない。
何度も謝るうちに機嫌を直してくれるだろう。
そう思ったのに、お兄さんは意外にもあっさりと、
「…稲荷寿司作ってくれるんなら、許してやる」
「え? それくらいでいいんですか?」
「わ、悪かったな!」
逆上したように叫んだけれど、お兄さんの顔は羞恥で赤くなっているだけだ。
「そんなに無茶を言われたいなら、言ってやったっていいんだぞ!?」
「ええ、言ってください」
へらりと笑ってしまうのを抑えられず、僕は笑って答えた。
「僕に出来ることならなんだってしますから」
「…罪滅ぼしに、か?」
疑うように、そうでなければ、不審がるように言ったお兄さんに、僕は首を振る。
「違いますよ。…お兄さんが好きだからです」
「……なら、いい」
ふわりと柔らかく微笑んだお兄さんは、それから何か思い出したようにちょっと眉を寄せた。
「というか、お前、いつまで俺をお兄さんなんて呼ぶつもりだ?」
「そう言われましても……他になんと呼んだらいいんですか?」
「…そう、か。お前には真名も伝えてなかったんだったか」
お兄さんは苦笑して僕を呼び寄せると、小さな、本当にかすかにしか聞き取れないほどの小さな声で、ひとつの名前を囁いた。
人として名乗っている名前とも、勿論あだ名とも違う、どこか不思議な響きの名前を。
お兄さんはくすぐったそうに微笑んで、
「お前にだけ、教えてやる。今、生きてる奴で、これを知ってるのは他にいない。お前だけ、だ」
「…嬉しいです」
「他の誰かに教えたりするなよ? 真名を握られたら、俺はそいつに従わなきゃならなくなるんだからな」
「誰にも教えません。…教えるわけ、ないでしょう?」
僕だけの特権をむざむざと人に明け渡すような真似をするはずがない。
僕はお兄さんを抱きしめて、
「愛してます」
と告げ、お兄さんの名前を呼んだ。
お兄さんは幸せそうに僕を抱きしめ返してくれた。
僕も、幸せで幸せで、死にそうなほどに幸せだ。
でも、いつかきっと、これ以上に幸せな日がやってくる。
お兄さんと二人で暮らす日。
二人が三人に増える日。
あるいは、もっと増えるかもしれない。
お兄さんと思いが通じ合っても、障害が何もないわけじゃない。
ただの人間に過ぎない僕と、どうやら結構凄い存在であるらしいお兄さんとでは寿命も違うだろうし、価値観の違いはどうしようもないほどだろう。
それでも僕は、自分の短い一生の間だけでも、お兄さんを独り占め出来たらいいと思う。
確実に、僕の方が先にこの世を去るのだろうけれど、僕はきっと寂しくも悲しくもない。
最期の時に、お兄さんが、あるいはお兄さんだけでなく、僕の子供や孫が、僕を見送ってくれるなら、それ以上の幸せはきっとない。
「ずっと側にいてくださいね」
「側にいさせろよ」
重ねた唇は優しく甘く、幸せそのもののようだった。