エロです
単純にハッピーエンドとは言えないオチです
それでよろしければどうぞー













































逆様



夢を見る。
何度も繰り返し恐ろしい夢を見る。
まるでそれが事実であるかのように。
あるいはそれが警告であるかのように。
繰り返される夢はいつだって唐突に始まる。
それはたとえば、俺が目の前に立つ見慣れた男に対して、馬鹿げたことを言い出すことから始まる。
そうでなければ、そいつが俺に向かって、馬鹿げた台詞を口走って始まる。
夢は短い。
どうしようもないほど短い。
馬鹿げた言葉で始まった夢はすぐさまぐずぐずと崩れ落ち始める。
触れたいはずの手に触れられることもなく、抱きしめあえることもなく、ましてや、唇を触れ合わせられることなどありえない。
ガラガラと崩れ落ちていく世界。
灰色に染まっていく世界。
感じるのは世界が失われる恐怖ではなく、かけがえのない存在を失う恐怖。
絶望に満ちたそいつの顔が、焼きついて消えない。

目を覚ました時には、夏でもないってのにびっしょりと寝汗をかいていた。
そのくせ、体温は恐ろしく低い。
顔からは血の気すら失せているに違いない。
目元まで濡らす汗を袖で強引に拭って、俺はため息を吐いた。
「……なんで、なんだ…」
呟いた声はまるで必死に叫び続けていたかのように嗄れていた。
喉が痛い。
さっさと水でも飲みに行きたいくらいだ。
それでも俺は動けなかった。
動くことが怖かった。
足を床につけた途端、またこの世界が崩れ落ちてしまうのではないかと思えた。
何かにすがりたいと思うほどに、恐ろしかった。
しかし俺は、そのすがりたい何かにすがることを赦されやしないのだろう。
そうでなければ、あんな夢を見るわけがない。
だから俺はひたすら自分を抱きしめる。
そうして、何とか自分を落ち着けるしか、なかった。
ああいう夢を見るのは、一週間に一度あるかないか、というところだ。
それでも、古泉へのこの感情を自覚してからのことだから、全体の回数としてはそう多くない。
十回を超えたかどうかというところだろう。
だが、その程度の回数ですら、あの夢は恐ろしくてならず、俺にトラウマにも似たものを植え付けてくれた。
ほんの少し、古泉と触れることも怖い。
話すことも、出来れば避けたい。
自分があの夢のように、言ったって意味のないことを口走ってしまいそうで。
あるいは古泉が、それを口にしてしまいそうで。
だから俺は、徹底的に古泉を避ける。
近づかれても突っぱね、嫌がり、時には酷く傷つける言葉を選んで投げつける。
そうでもしなければ、古泉を失うのだろうと思えていた。
古泉を失うくらいなら、嫌われたかった。
憎まれたかった。
それで自分が苦しかろうがなんだろうが構わない。
ただ、古泉を見ていられれば、それでいい。
そう思ってきたのだから、古泉に、
「…僕はあなたに嫌われてしまうようなことをしたでしょうか?」
と言われた時には、心臓が止まるかと思った。
動揺を抑えたくて黙り込んでいる俺に、古泉はかすかに息を漏らした。
ため息、だろうか。
「いえ、ね。僕の気のせいかもしれないとは思っているんですが、どうにもあなたがよそよそしくなっているような気がしまして。…冬以来、あなたもいくらか僕に気を許してくれたように感じていたのですが、それは僕の勘違いだったのでしょうか」
勘違いなんかじゃないとも。
実際俺は、こいつのことを仲間だと思っていた。
あるいは、口に出して言いたくはないが、友人だと思っていたと言ったっていい。
だが、それがいつの間にか微妙に形を変えちまっただけだ。
そうして、あの夢が始まり、俺はこいつを突き放さなければどうにもならなくなったというだけで。
「ねぇ、どうなんです?」
「…別に、お前のことは好きでも嫌いでもない」
当然のことながら、そんな返事で古泉が満足するはずもなかった。
珍しくも不満げに顔をしかめ、軽く俺を睨むように見つめてくる。
そうすると、普段はにこやかであるがゆえにハンサムなどと言う軽い言葉で済む顔が、案外恐ろしげな薄ら寒い美貌であることが分かる。
それにぞっとしたのかそれともぞくりとしたのかよく分からない俺に、古泉は言った。
「そうは見えませんね。……少なくとも、どうでもいいとは思っていないでしょう?」
その言葉に、血の気が引きそうになった。
やめてくれ。
そこから、余計なことを言わないでくれ。
俺は、現実でお前が消えるところなんて見たくない。
世界の崩壊なんてどうでもいい。
壊れるなら壊れちまえばいい。
だが、それで古泉がいなくなるのは、あんな、絶望しかない顔を見るのは、絶対に嫌だ。
そんな風に、軽いパニック状態に陥ったからだろうか。
気がつけば俺は、
「――っ、お前なんか、大嫌いだ。憎らしいと言ってもいい」
と、とんでもないことを口走っていた。
酷い大嘘だ。
おまけに、相手を傷つけたことはまず間違いない。
実際、古泉の表情がかすかに揺らいだ。
それは逆に、その感情が大きく揺れたということなのだろう。
古泉を、傷つけてしまった。
それも軽口やなんかではなく、はっきりと、ざっくりとその心を裂いた。
そのことに、俺の胸がじくじくと痛む。
だがこれも、報いなんだろう。
俺が、よりにもよって、古泉を好きになっちまったことへの、報い。
……神様とやらを、好きにならなかった、報い。
うつむいた俺に、古泉は冷笑するように言葉を投げつけた。
「そうと聞いて、すっきりしましたよ。――僕も、あなたなんて嫌いです。あなたみたいな、無神経な人なんて」
ずきりと、今度ははっきりと胸が痛んだ。
それなのに俺は、嬉しかった。
古泉からそんなストレートな感情を向けられることが嬉しくて、酷いはずの言葉がまるで告白でもされているかのように聞こえた。
重症だ。
傷んだはずの胸が、浮ついた不整脈を起こす。
それほどまでに、古泉が好きだ。
それに、古泉の目もいけない。
言葉の冷たさに驚いて声を上げれば、意外にも優しい目を向けられた。
冗談だったと否定すれば、すぐに許してくれそうなほどに。
だが、俺にはそれは赦されないんだ。
すまん、古泉。
そう心の中で手をあわせて、俺は、
「嫌いなんだったら、近づいて来るな」
とダメ押しをして、顔を背ける。
古泉はといえば苦笑するように笑って、
「嫌いだからこその嫌がらせ、ですよ」
とうそぶくように口にする。
そんなやりとりすら、楽しくて、幸せで、それはいつしか常態化した。
二人きりの時に限ってとはいえ、お互いに悪口を言い合う。
時には本気にすら聞こえるし、軽口でしかない時もある。
どこか歪んで、寒々しくて、そのくせどこか特別な甘さを孕んだ関係に、俺は満足を覚えていた。
……のだが。
「…何がどうしてこうなっているのか、頼むから俺にも分かるよう簡単に説明してくれんもんだろうか」
「嫌がらせの一環ですよ」
その声がやけに近くから聞こえてくるのも当然で、俺は今現在、古泉に抱き締められていた。
「お前……俺のこと、嫌いなんだろ」
「嫌いですよ?」
と言いながらも、俺の背中を撫でる手は酷く優しい。
「だからこれは、ただの嫌がらせなんです。それ以上でも、それ以下でもありません」
……嘘吐きめ。
口の中だけで毒づく俺へ、
「あなたこそ、嫌なら抵抗くらいしたらどうなんです?」
「生憎、俺は無駄なことはしない主義でな。お前との体格差や力の差を計算すると、この状況で俺が傷一つ負うことなく逃げ切れる可能性は低いし、それならあくまで従順に振舞って、さっさと解放されるのを待った方が早いだろ」
「賢明ですね」
そう微笑んで、古泉は俺のブレザーを脱がせ、長机の上に投げた。
「…でも、その諦めのよさが、腹立たしくもあります」
そのくせ、腹立たしさとは違った柔らかさを持った声でそう告げた唇が、俺のそれに重なる。
男のくせに、柔らかい唇。
それに対して自分のがさついたそれを思い出し、なんとなく悪いような気になった。
それを潤すように、あるいは唇の形を確かめるように、古泉の舌がなぞってくると、それだけでぞくぞくとした後ろめたい気持ちよさが伝わった。
自分から求めるように唇を開く。
実際、俺は求めていたんだろう。
古泉の体さえ欲しくなるほど、古泉が好きになっていたんだろう。
認めるのは恥かしいが、認めてしまえば恥ずかしくなくなる。
おまけに、俺は決してその言葉を言えないんだ。
それなら、態度でそれとなく示すしかない。
薄く開いた唇から、そろりと舌を差し出せば、古泉の舌が退く。
じれったい、駆け引きめいたそれに苛立ちながら、古泉の舌を追えば、古泉の口の中へと舌が引き込まれ、強く吸われた。
「んんっ…!」
初めての感覚に、電気ショック染みた快感が走る。
触れるだけのキスが、ふわふわしたおぼろげな夢みたいな快楽だとしたら、深みを増したそれはもっと深くて動物染みたところへと訴えかけてくるそれに違いない。
酸欠になりそうなそれに呼吸を荒げながら、俺は笑って呟いた。
「嫌がらせに、しては、キスがねちっこいぞ…」
「そうですか? …嫌がらせだから、ですよ。息が苦しくなったでしょう?」
「アホか」
いつものようにじゃれあううちに、唇を何度も重ねた俺たちは、いつの間にかほとんど何も身につけていない状態になった。
部室で一体何をやらかしてんだか、と思わないでもない。
だが、今更止められるはずもなかった。
俺は古泉にすがるように抱きつきながら、抑えきれない声を漏らすだけになり、古泉は更に熱心に俺の体に触れてくる。
「ぁ、…っ、や、め……」
「やめませんよ。ここがいいってことでしょう?」
そう言った古泉の手は俺の腰骨をなぞり、更に南下する。
「やめろ…っ、と、いうか、お前…っ、本気、で……?」
確かめたくてそう尋ねた俺の唇を強引に塞いで、古泉は薄く笑った。
「本気ですよ。…忘れられないくらい酷い嫌がらせにしてあげますから、覚悟して置いてください」
だからそんなセリフは、そんなにも優しい声で言うものじゃないだろう。
半ば呆れる俺の割れ目をたどるように古泉の指が下りていく。
それだけでもぞくぞくとした快感を拾う浅ましい体は、古泉の指が目的の場所にたどり着くと、一際大きく震えた。
「いやらしい」
ぽつりと呟かれた言葉に胸が痛む。
しかし、古泉はまるで慰めるように俺の瞼にキスをしてくれた。
優しすぎることに、絶望しそうになった。
このまま俺は黙っていられるんだろうか。
好きだなんて、言ってはならない言葉を言わずにいられるんだろうか。
それが何より怖くて、だから、俺は、その前にと、
「…お前なんか、嫌いだ……」
と呟いた。
泣きそうな声は情けなく響き、本気でそう言っているように聞こえはしなかっただろう。
実際古泉は小さく笑って、
「僕もですよ」
と優しく告げて、キスをくれた。
その指先が、何か滑ったものの力を借りて、俺の中へと入ってくる。
酷い異物感に吐き気が込み上げてくるのを耐えながら、古泉の体を抱き締める。
苦し紛れに、
「なんで、そんなに俺が嫌いなんだ?」
と逆様に尋ねて見た。
「……あなたが、あなただからというただそれだけで、あなたが憎らしいほどに嫌いなんですよ」
古泉の答えも逆様なのだろう。
愛しげに細められた瞳に、謝罪するような光がかすかに滲んで見えた。
今日はエイプリルフールだったか?
それとも逆さ言葉を使う日だろうか。
笑いたいような気持ちになりながら、俺は古泉の体にすがったのだが、流石に体勢がきついとみたのだろう。
古泉は俺を軽く抱え上げたかと思うと、そのまま床に押し倒した。
冷たい上に、多分ほこりで体が汚れた。
まあしかし、嫌がらせなんだそうだから、これくらい仕方がないのだろう。
大きく脚を割り開かれ、恥かしさに思わず声を上げた。
「っ、ちょ…!」
「我慢してください」
意地悪く笑った古泉が、もう一度指を侵入させてくる。
細い指から始まったそれを徐々に太いものに変えて、やがて一本から二本へと増やされていく。
その頃には、異物感にも慣れ、それどころか、古泉の指の感触を知ろうとでもするかのように、内壁はいやらしく指に絡みついた。
古泉に触れられると言うだけで、苦しさも快感に変わった。
ましてや、神様とやらが何を考えてそんな風に作ったのか分からんが、男はそんな場所ですら快感を得られるように作られている生き物だ。
異物感や痛みが薄れてしまえば、残るのは畜生染みていながらも、明らかに自然の摂理からは離れた快感だけだ。
「や…! …あ、も、ぅ、無理だって…! 嫌…ぁ……」
すすり泣くような声を上げても、古泉は許してくれなかった。
「無理じゃないでしょう? ほら、こんなにいっぱいに飲み込んでるのに、まだ足りないって震えてますよ」
あえて意地の悪い言葉を選びながら、古泉の指は俺の体の中を探り、開こうとする。
嫌がらせだと言うなら、自分だけが快楽を貪ればいいだろうに。
どろどろにとろかされた体内は、古泉の指を三本も飲み込んで、ひくついていた。
「気持ちよくなってますね。男にこんなことをされて気持ちいいなんて、あなたも相当おかしな人だ」
「う、るさ…っ! お前のせい、だろ…っひ、ぁ…」
「僕に責任を押し付けるつもりですか? それなら、ちゃんと責任をもって、最後までよくしてあげますよ」
微笑んだ古泉の唇が、また俺のそれに重なる。
どこもかしこも気持ちよくて、おかしくなっちまいそうで、俺は古泉にすがるしかない。
唇が離れていくのと共に指が引き抜かれ、
「ぁ……?」
と思わず声を上げたのは、引き抜かれるのに感じたとか、物足りないからとかではなく、単純に何事かと訝しんだだけだと言わせてもらう。
「今から、これを」
そう言いながら古泉は、熱く昂ぶったものをそこへと軽くすり寄せた。
指とは比べ物にならない熱と感触に、ひくりとそこが震えたのさえ、分かった。
それが古泉に伝わったのだろうか。
古泉は一層楽しげに目を細めながら、
「ここに入れますから、覚悟してくださいね?」
「そ…んな……の…無理、だろ…」
無理、と言いながらも、俺の体は期待に震えていた。
「無理だと思います?」
「絶対無理だ…っ……」
「…痛みでもしたら、ちゃんと看病してあげますよ」
そんなことはありえないとばかりに囁いて、古泉は俺の脚を一際大きく開かせ、腰を掴む。
ずぷりとそれが入り込んでくる感覚に、
「ひっ…!」
と喉が掠れた音を立てた。
そのくせ、俺の体は恥ずかしげもなく、悠々とそれを飲み込んでしまった。
痛みが全くないわけじゃない。
異物感だってある。
それなのに俺は、こんな風に、古泉とひとつになれたことが嬉しくて、乙女染みた自分の思考回路に泣けた。
「いっ……ぁ、抜け、抜けよ…っ…」
口走る言葉が逆さ言葉だと、古泉に通じるだろうか?
泣き濡れた目で見つめた古泉は、欲情しきった獣のような眼で俺を見ていた。
「いいですよ。抜いてあげます」
「あ…っ……」
通じなかったのか、と思う間もなく、一息に引き抜かれたそれが、すぐさま最奥を突いた。
その衝撃に、
「いぁああああ…!」
と悲鳴染みた声を上げれば、
「抜いて欲しい、と言ったのはあなたでしょう? いくらだって、引き抜いてあげますよ。その分、奥まで突いてあげます」
くすくすと笑って、古泉はその通りにした。
初めての体に過ぎるほどの激しさで抱かれながら、涙が止まらなくなった。
嬉しくて愛しくて、そして何よりも、酷く、絶望した。
こんなことをしたくなかった。
二度と出来やしないことを、したくなかった。
古泉の気持ちを確かめたくなんかなかった。
やがて、俺と共に白濁を吐き出した古泉が、ずるりと中から出て行って、何もかもが終ったような気持ちがした。
情けなくぼろぼろと涙をこぼし続ける俺に、古泉は優しいキスを寄越した。
「痛みます?」
「…っ、痛くないわけ、ないだろ……」
体はろくに痛んでやしなかった。
それほど優しく、丁寧に古泉が俺を愛してくれたと言うことなんだろう。
そう思うと、余計に胸が痛んで、このまま死んでしまえたらとさえ、思った。
これからどうしたらいいんだろうか。
そればっかり、俺は考えていた。
この関係を続けられるとは思わない。
でも、続けられるものなら続けたい。
だが、何も思いつかなかった。
手詰まりだ。
このまま何もなかったことにするしかないんだろう。
古泉と相談すら出来ないのだから。
そう思った時、古泉が唐突に携帯を取り出し、そのカメラを俺の方へと向けた。
「古泉……?」
訝しむ俺に向かって、デジタルな合成音ながらも、シャッターの下りる音が響く。
つまりは、俺のこのどろどろに汚れた、明らかに事後でございと言う状態が画像データとして保存されたと言うことで……。
「おい…一体何のつもりだ?」
古泉はにっこりと微笑んで答えた。
「この写真をばら撒かれたくなかったら、言うことを聞いてください。――というのはどうでしょう?」
……それを俺に聞くのか。
なるほどそれはいい手のように思えないでもなかった。
これからこの関係を続けていくために、恋愛以外の関係性でつなぐ建て前としてはなかなかの名案かもしれない。
だが、いつかもし、このことが他の誰かに知られた時、古泉が俺を脅したのだという証拠としてその写真が使われるのは嫌だ。
それで古泉に消えられたりしたら、俺は耐えられない。
だから、と俺は古泉を手招きで呼んだ。
「なんです?」
のこのこと近づいてきた顔を引き寄せるようにして抱き締め、そのまま床へと引き倒す。
「ちょっ…!?」
驚く古泉の上に馬乗りになって、俺は言った。
「大人しくしてろよ」
「何を……」
全く予想だにしてなかったのだろう。
古泉が完全に戸惑っているのをいいことに、俺は先ほどまで古泉を受け入れていた場所に指をやった。
ぬるりと滑るその場所を指で開くと、中からどろりとした白濁が溢れてくる。
「ん……っ、く…」
これなら大丈夫だと確かめて、俺は古泉の方の準備を整えることにしようとしたのだが、
「……若いな」
確かに大人しくなっていたはずのそれは、いつの間にやら半ば勃ち上がっていた。
顔を赤らめた古泉は、
「っ、し、仕方ないでしょう!? あなたのそんな姿を見せられたら……」
じゃあ、こういうことをしたらどうなるのかね。
「う、わ…っ!?」
古泉が驚きの声を上げるのを聞きながら、俺はその先端を口に含んだ。
飲み込めるだけ飲み込むと、喉の奥を押されて軽くえづいた。
が、それがどうやらよかったらしい。
えづいた弾みに顎の筋肉が収縮し、口内に含んだ古泉のものを締め付けると、古泉のそれがまた大きくなった。
顎が疲れそうだと判断して、俺は口の中からそれを出した。
唾液で濡れ光るのがまた卑猥な光景だ。
その茎を舐めて、下へとたどっていくと、重たげな袋に行き着いた。
それを口に含み、甘噛みすると、古泉の口からかすかな声が漏れる。
いかん、これは楽しいかも知れん。
だが、今の目的は古泉を喘がせることではない。
俺は程ほどのところで古泉を解放してやると、改めてその上に跨った。
ここまですれば、何をするつもりか予想がつくだろうに、古泉は信じられないとばかりに俺を見つめた。
俺はニヤリと意地の悪い笑みを返し、緩みきった場所へあてがったそれを一息に飲み込むべく、腰を落とした。
「ひっ、ぁ、あ、んんん……っ!」
最奥を突き上げられる感覚に、目の前が白く明滅する。
「だ、大丈夫ですか?」
「う、るさ…っ、お前は、黙ってろ…」
古泉を睨みつけ、俺はじわじわと腰を上下させ始める。
気持ちよくて、おかしくなりそうで、何より、さっきはよく見えなかった、古泉の感じている顔を見ると、体の熱が余計に煽られた。
俺は手を伸ばしてカバンを掴み寄せると、中から携帯を引っ張り出した。
自慰を覚えたばかりみたいに、腰の動きは止められないまま、古泉にカメラを向ける。
はい、男に逆レイプされてる現場の証拠写真完成っと。
「ざまぁみろ」
そう笑いながら、俺は言った。
「お前なんか、大っ嫌いだ。他の何よりも、っ、この、世界よりも、お前が、憎くて、嫌いで、ぁ、お前なんか、お前なんか、いなくなれば、いい……っ」

そうして、脅し合いが始まった。
俺が古泉を呼び出す日もあるし、逆に俺が呼び出される日もある。
場所もまちまちで、怪しげなラブホやただのビジネスホテル、校内のどこか、夜の公園、古泉の家と実に多彩だ。
しかし、場所が変わってもすることは変わり映えしない。
嫌いだなんだと言いながら、体を重ねるだけだ。
時には、
「今日は随分と長門さんと仲良くなさってましたね」
なんて嫉妬染みたセリフが聞けて嬉しい。
どこか狂ったような関係に見えるかもしれないが、言葉に頼らない分、固い信頼を感じられる。
だから俺は今日も古泉を抱き締めて、
「大嫌いだ…っ、お前が一番、憎らしい…」
と叫ぶのだ。
もう、悪夢は見ない。
見るはずがない。
俺はもう、あんな馬鹿げたセリフを古泉に言ったりしないのだから。