黒みくキョン的にはR15レベルですが、
ぶっちゃけR18オーバーだと思うので気をつけてください(ちょ





















































特別なお出かけ



今日は休日で、SOS団関係で呼び出されることもない。
完全な休日だ。
だから、俺はいつものように前日からご主人様の部屋を訪ねていたのだが、今日はまだ早い時間に出かけることになった。
わざわざ人が多く動きそうな時間帯を狙って、どこへ行くのかと言えば、遊びに行くのだ。
吹き抜ける風はまだいささか冷たく、薄着の俺は少々寒さに震えそうになるのだが、それ以上に体は熱く、別な意味で震えている。
「ぁ……ご主人、様……」
思わず呼ぶと、俺の隣りを歩いていたご主人様は柔らかな微笑を浮かべ、
「どうしたんですか? キョンくん。顔、真っ赤ですよ。震えてるし……熱でもあるの?」
その言葉と共に、つっと背筋を撫でられて、ぞくぞくした。
「ん…っ、ぅ……」
「じゃあ、お出かけはやめにします?」
俺は慌てて首を振った。
そんな勿体無いことはしたくない。
「じゃあ、行きましょうか」
そう言ったご主人様に引かれるように、どこか覚束ない足取りで、俺はご主人様の後を追った。
実際には、首輪にリードが付けられているわけでもないのだが、感覚的にはそんなものだった。
それが、嬉しい。
そう思うだけできゅうっと体の奥が震え、そのせいでまた足がふらついた。
ご主人様に置いていかれたくなくて、俺は必死に足を動かす。
ご主人様に追い縋る。
そんな俺を見つめて、ご主人様が微笑むと、それだけでもう、幸せな気持ちにだってなるくせに、同時に疼く体が憎らしくさえある。
ご主人様がそれでいいと仰ってくださるのでなければ、自分で自分が許せなくなるほどに俺の体はいやらしくて穢い。
そんな俺なのに、ご主人様が酷く優しくしてくださることが、信じられないような気持ちになる。
今日だって、この着せられているコートからしてご主人様の手作りなのだ。
「あたしのためでもあるんですから」
と仰って、手ずから俺に着せてさえくださった。
少しばかり寒くても、このコートだけで、ご主人様に包まれているようだと思えた。
つまり、俺は俺なりに、多少大変だろうともご主人様との珍しい散歩なんてものを楽しんでいたのだが、そこに闖入者が現れた。
「こんにちは」
駅まであと少し、というところで掛けられた声に、俺は反射的に眉を寄せたが、ご主人様は流石に落ち着いておられ、
「こんにちは。古泉くんもお出かけですか?」
とそいつにまで愛想笑いを振り撒いた。
「ええ。…お二人で出かけるなんて、随分と余裕ですね。あなたはきちんと立場というものを弁えておられると思っていたのですが、どうやら買いかぶりだったようだ。全く、残念なことです」
失礼なことを言う古泉を睨めば、薄く目を細められた。
何が言いたい。
「いえいえ、仔犬が吠え立ててくるのを見るようで微笑ましく思っただけですよ。…今日は、あなたにしては珍しい格好をしておられるんですね」
「うるさい」
「なるほど、これだけ可愛らしければ、連れまわしたくなっても仕方がないのかもしれませんね…」
訳の分からんことを呟く古泉に反論してやろうと口を開いた瞬間、体の中で震動が走った。
「っぁ…!」
ガクンと脚から力が抜け、へたりこみそうになるのを寸でのところで堪える。
「どうしたんです?」
と怪訝な顔をする古泉に、ご主人様は答える代わりに、
「このコート、あたしが作った特製のコートなんですよ」
と告げながら、ポケットの中に入っているリモコンを操作したのが、俺にもよく分かった。
古泉にもそれくらいのことは分かったのだろう。
むしろ、それを分からせるために、ご主人様がわざわざそうされたように見えた。
「これから、キョンくんと電車でお出かけするんです」
「電車で、ですか…。なるほど…」
ニヤリと笑った古泉が、その笑みを一応にこやかそうなものに変化させ、
「よろしければ、ご一緒させていただけますか? 二人より三人の方が楽しいことも出来るでしょう?」
「邪魔しないならいいですよ。あたしも……古泉くんと一緒にいる時のキョンくんを見るの、嫌いじゃないですから」
「あなたは?」
とわざわざ古泉が俺にまで話を振ったが、誰が答えてやるものか。
「キョンくん、お返事は?」
……ご主人様が言うなら仕方ない。
しかし、古泉に答えるのは癪で、
「…ご主人様が、そう、仰るなら」
と答えた。
ご主人様は困ったように、
「もう、キョンくんったら愛想がないんだから。古泉くん、気を悪くしたならごめんなさい」
「いえいえ、これくらいの方がいいのではないでしょうか? 主人以外の人間に軽々しく尻尾を振るような犬では、手を出すにしても楽しくありませんからね」
「うふふ、古泉くんも気をつけてくださいね? 飼い犬だと思って迂闊に手を出すと、噛み付かれちゃうことだってあるんですから」
刺々しいどころか、毒々しい会話を聞きながらも、俺はひたすらにご主人様の声が心地好くて、うっとりと聞き入る。
「さて、ではどちらまで?」
古泉が財布を引っ張り出しながらそう言ったということは、奢るってことなのかね?
ご主人様は女神の如き微笑を湛えたまま、
「一番安い切符でいいですよ。電車に乗るのが目的ですから」
「ああ、なるほど」
言いながら古泉は券売機の前に立ち、三枚切符を買った。
「そういえば、朝比奈さんはご存知ですか?」
と、古泉は柱に貼り付けてあった路線図を指差しながら、
「この路線のこの区間って、ずっと同じ方向しかドアが開かないんですよ。そのせいか、痴漢被害も多いそうで、対策を迫られているのですが、なかなかうまくいかないらしいですよ」
「そうだったんですか」
ご主人様は初めて知ったというような顔をされたが、それは既知の事実だ。
それを聞いたから、と俺を連れて出かけたのだから。
しかし、そんなことは露とも見せず、
「古泉くんって本当に物知りなんですね」
「朝比奈さんも、痴漢には十分に気をつけてくださいね」
「そうですね」
そんな風に話す二人は、多分、傍目にはカップルか何かに見えているんだろう。
となると、その間で居心地悪そうにしている俺は、一体どう見えるんだろうな?
ただの空気が読めない野郎か、邪魔をしようとしている無粋な奴か。
寂しい、と思うのは、ご主人様に不釣合いな自分を知っているからで、そのくせそんなことを考えて悦んでいるのは、いやらしいどこかだ。
「キョンくん? どうしたの?」
心配そうに聞いてきてくださるご主人様を見つめて、
「…ちょっと、寂しくなった、だけ、です」
とご主人様だけに聞こえるよう、小さな声で答えると、ご主人様は優しく微笑んでくださった。
作り笑いでも愛想笑いでもない笑顔を向けられると、それだけで幸せだと感じられる。
「もう、キョンくんったら、わがままな甘えん坊さんですね」
「ごめんなさい…っ。いけない、俺に、お仕置きして、ください…」
「どうしましょうか?」
焦らすような言葉を告げられても、気持ちいい。
熱っぽく潤んでくる目でご主人様を見つめると、
「じゃあ、電車の中で、ね?」
と囁かれ、ぞくりと背中が震えた。
頷いたところで、
「密談はお済みですか?」
とどこか苦笑混じりの声で古泉に言われ、色々と台無しな気分になった。
苛立ちながら改札を抜け、階段を上る。
そうして、タイミングよくやってきた電車に乗り込むと、そこはかなりの人で溢れていた。
おそらく、どこかへ出かけるんだろう、少しばかりオシャレをした女の子や、子供連れの家族の姿が見える。
通勤ラッシュもかくやというような人混みに、思わずごくりと喉が鳴った。
ドアの側に立ちながら、ご主人様は小さな声で古泉に話しかけた。
「さっきも言いましたけど、キョンくんのコートはあたしの手作りで、今日の服装もあたしがコーディネートしてあげたんですよ。とっても可愛いでしょ?」
「そうですね。落ち着いた色は彼にぴったりかと。でも…」
古泉は唇を歪めながら声を潜めた。
「それだけじゃありませんよね、あのコートは」
びくりとしたのは俺だけで、ご主人様は楽しげに笑う。
「分かった? 流石は古泉くんですね」
そう言って勿体無くも、俺を強引に抱き寄せたかと思うと、指差しながら、
「このサイドのポケット、実は底がなくって、中に通じてるんです。胸ポケットも。脇のところも、身八ツ口みたいに、開けてあるんですよ」
言いながら、背後から手を伸ばしたご主人様がポケットをひとつひとつ指差し、時折悪戯でもするように実際にポケットの中に手を入れてくださると、素肌に直接触れる白魚の如き指の感触に、体が震えた。
「内側にもポケットがあって、そっちにはちゃんと底があるから、リモコンもクリップも、替えの電池だって入れておけるんです」
「器用ですね。その素材も、防水加工された物でしょう?」
「そう。だって、染みちゃったら可哀相でしょう? 裏地はちゃんと吸水性のいい布だから、大丈夫ですよ。でも一番の工夫は、」
言いながら、ご主人様は指を滑らせ、腰よりさらに下へと手をやると、そこに隠してあったファスナーを下ろした。
すっと風が入ってくると、それだけでぞくぞくする。
煽られた羞恥に顔までもが赤く染まった。
「ここからなんだって出来るんです」
「コーディネートについても是非お聞きしたいですね」
古泉がそんなことを聞くと、ご主人様は笑って、
「いいですよ。今日はあたしが楽しみたかったから、あんまりたくさんじゃないんですけど、リングを付けてあげて、中には小さめのローターが入ってるんです。クリップはしてないけど、ポケットには入れてありますから」
「それは楽しそうですね」
やる気満々かと言いたくなるような言葉に、不覚にもぞくりとした。
我ながら、自分の無節操な淫乱ぶりに泣きたくなるな。
潤んだ目でご主人様を振り返れば、ご主人様は優しく微笑んでくださった。
「いいんですよ、キョンくんはそこが可愛いんだもの」
「ありがとうございます」
うっとりとご主人様を見つめてたってのに、古泉が手を伸ばしてきて、強引に俺の顎を掴み、
「それに、体はともかく気持ちの上では、あなたは本当に身持ちも堅いし、忠誠心も強くて、征服欲を刺激されますからね」
「要らん!」
唸りながら睨んでも、古泉の鉄面皮には蚊ほども堪えんらしいのが忌々しい。
「本当に、可愛らしい仔犬のようですね」
と言いながら人の頭に触れてこようとするのを振り払ってやろうとしたのだが、
「キョンくん」
とご主人様に止められた。
くそ、古泉、人の頭を無遠慮に撫で回すなよ。
「羨ましいですね。僕も、彼のようなパートナーが欲しくなりますよ」
「古泉くんは、誰もいないんですか?」
「特定の相手はいませんね」
不特定ならいるのかよ、爛れてんな。
「ああ、ご心配なく。安全は心がけていますから」
誰がそんな心配をするか。
と思ったら、ご主人様は心配してくださったらしい。
「それならよかったです。キョンくんに何かうつされでもしたら、古泉くんでも許せないところでしたから」
そんな情け深いお言葉に感激したところで、電車がいくつめかの駅に止まった。
そうして、古泉が意地の悪い笑みを浮かべる。
「さて、お楽しみの時間が来たようですよ?」
その言葉を待っていたわけではないだろうが、ご主人様の手が、開いたファスナーから入って来て、俺の腿に触れた。
「っ…!?」
いきなりのことにびくつくと、
「大丈夫ですよ。あたしですから。…あ、それともあたしじゃないって言った方がいいですか? 誰かあたしじゃない人かもって思った方が、キョンくんは楽しい?」
「そ、んな…」
「冗談ですよ。ほら、それより、集中して…」
「ぁ……」
ご主人様の手が、大きく脚を撫で回し、時々腰の辺りまで触れてくださる。
内腿をくすぐって、へそを撫でて、焦らすように、それすら楽しめるようにと優しく。
「僕はどうしましょうかね」
そう独り言のように呟いた古泉は、胸のポケットから手を突っ込んできたかと思うと、いきなり爪を立てて乳首を抓んだ。
「ぃ…――っ!?」
くすりと笑う古泉を睨めば、
「してほしいことがあったら、言った方がいいですよ?」
などと言ってきたが、そんなもん、断固拒否だ。
しかし、黙っていれば黙っていたで、好き勝手するのが古泉であるらしい。
「朝比奈さん、このポケットの角度だと触り辛いですよ」
と図々しくも文句を言いつつ、腰の辺りのポケットに手を突っ込んでくると、既に緩く反応していたペニスをいきなり握った。
「いっ…!」
それこそ握り潰されるかと体を竦ませる俺に、
「可愛らしいですね」
と二重三重に屈辱的な言葉を投げつける。
悪いが、お前の言葉責めなんか楽しくもなんともねーんだよ。
そうこうするうちに、内ポケットにあったクリップを探り当てた古泉がそれできついほどに乳首を抓んだりしてくる。
というか、お前はほんとに遠慮しろ!!
だというのに、ご主人様は止めて下さらず、むしろ面白がって、
「じゃあ、あたしはそろそろスイッチ入れちゃいますね」
と言ってローターのスイッチを入れてしまわれたので、俺は声を堪えるのに必死になる。
それどころか、体を支えるのも辛くて、ふらつき始める。
「キョンくん、立ってられないんですか?」
心配そうに声を掛けてくださったご主人様に頷くと、
「だったら、古泉くんに『お願い』して、支えてもらったら?」
お願いなんて、したくないです。
古泉相手にお願いなんて、したくない。
しかし、このままだと立っていることさえ難しくなる。
…仕方ない。
背に腹は替えられないしご主人様が仰ったことだから、と俺は古泉を見つめ、必死に声を絞り出した。
「お手を……お借りしても、よろしい、でしょ、う、か…?」
「え? …ええ」
らしくもなく戸惑ったらしい古泉に何か言ってやることも出来ないまま、俺は、
「ありが、と、う、ございます…っ」
となんとか言って、古泉の腕にすがりついた。
がくがく震える体が、少しばかり楽になる。
しかし、そうやって体勢を整えれば、もう遠慮は要らないとばかりにご主人様の指が中へと入ってきて、いよいよ声が抑えられなくなる。
ご主人様の指が、と思うだけで堪らないのに、震えっぱなしのローターをこつこつと指先で叩かれ、敏感な場所へと押し上げられると、堪えきれない呻きが漏れる。
「ぁっ、ぅ、…ひっ…ぃぃ……」
「だめよ、キョンくん」
二本の指で中を開きながら、ご主人様が後ろから囁く。
「声なんか出しちゃ、気付かれちゃいますよ?」
「はっ……、だ、ぁって……」
「我慢してください」
そう言われても、堪えきれない。
せめて何かで口を塞ぎたいと思った時、古泉のネクタイが目に入った。
「こぃ、ずみ……」
「はい? どうかしましたか?」
「…っ、ネクタイ、貸し、て、ください…っ! お願いしま、す…ぅ…」
「……いいですけど、後でちゃんと綺麗にしてくださいよ?」
こくこくと頷いて、ネクタイを噛み締めて耐えた。
古泉の手でぐちゅぐちゅと音を立てるほどにペニスを扱かれ、弄ばれ、ご主人様の手でアヌスをいっぱいにされる。
目の前がチカチカと明滅して、そのまま気をやってしまいそうなほどの刺激なのに達せないのは、ペニスリングがキツく装着されたままのせいだ。
痛いほどに昂ぶっているそれの鈴口から、酷く熱くなった睾丸までねちっこく刺激され、ご主人様には前立腺を執拗に押されて、吐き出せない精が体の中に溜まっていくように思えた。
それが限界に達した時、多分、感覚だけでイッたんだと思う。
一瞬気を失ったせいでよく分からないが、
「キョンくん、ドライでイッちゃいましたね」
とご主人様が嬉しそうな声で仰ったから、きっとそうなのだろう。
荒い呼吸のまま、古泉の肩に頭を載せて、まだ止まない快感の余波をやり過ごそうとしていると、気色悪くも、古泉に優しく背中を撫でられた。
何のつもりだコノヤロウ。
「……いけませんね」
という古泉の呟きは、一体何に対して発せられたものなのかよく分からなかったが、どうでもよかった。
それ以上に、一体いつになったら、ちゃんとお仕置きして、気持ちよくさせてもらえるのかと言うことの方が、ずっと気になった。