エロですよー
キョンから誘ってるので苦手な人はバックプリーズ

別名、キョンデレのターン








































へたれな飼い主と猫 (後編)



彼はこのままソファでひとり眠ってしまうんだろう。
それなら、僕はこのままゆっくり食事を取り、それから片付けをしよう。
彼の邪魔にならないように、と思ったところで、
「古泉」
と呼ばれた。
「どうかしましたか?」
と聞くと、彼は軽く眉を寄せながら、
「食べ終わったんならこっちに来い」
「はぁ…」
どうやら、おかわりも許されないようだ。
今度は一体何を言いつけられるんだろうかと思いながら、僕は大人しく彼の命令に従い、ソファの方へ向かう。
すると彼は、
「撫でろ、古泉」
と僕に命じた。
「……はい」
僕は観念してそう答え、彼が手招きするままソファに腰を下ろした。
すかさず彼は僕の膝に、自分の頭から胸にかけてを預けるような形で伸し掛かってくる。
シャツがめくれて白いお尻が見えてるんですけど。
「なあ、早く撫でろよ」
上目遣いに言われて「ああ」とも「うう」ともつかない呻き声を上げながら、僕は手を伸ばした。
まずは彼の髪に触れる。
「んー…」
それだけでも気持ちいいのか、彼が小さく体を震わせながら声を上げる。
喉を鳴らせないのでその代わりなのかも知れないが、鼻に掛かった声が悩ましくて、非常に困る。
相手は猫、何も分かってないんだから堪えろ。
僕は自分にそう言い聞かせながら、彼を撫でる作業にのみ集中する。
そうして撫でていて思うのは、本当に彼は、僕の飼い猫のキョンくんなんだということだ。
指に触れる硬めの毛の感触も、撫でられて気持ちよさそうに目を細める様子も、撫でる手の平に頭をそっとすり寄せてかすかに甘えて見せるのも、変わっていない。
気持ちよさそうに仰向けになった彼が、ふっと眉を寄せたので、
「どうしました?」
と聞くと、
「…お前の膝が狭い」
「……それは、あなたが大きくなったから仕方がないんじゃ…」
「俺だって、なりたくて大きくなったわけじゃない」
さっきと似たような言って顔を背けられてしまった。
拗ねたような表情を覗き込むと、
「……俺だって……小さい、ままの方が…」
「…キョンくん?」
それは人間の姿になってしまったことが嫌なんだろうか。
単純にそうとも思えないほど、彼は辛そうで、別の何かがあるのかも知れないと思った。
訝りながら、
「…でも僕は、嬉しいですよ。あなたが大きくなってくれて」
「……嘘吐け」
「本当です」
そうでなければこんな風に言葉を交わすことなんて絶対に出来なかっただろうから。
「じゃあ、なんで…!」
顔を背けていたはずの彼が僕を睨みつける。
悔しそうに、悲しそうに、顔を歪めて。
「…なんで、俺が大きくなったら、一緒にいてくれなくなったんだよ……」
「…え……」
「俺が、大きくなったから、嫌いになったんだろ。だから、俺のこと、お、置いて出てったり、俺のこと、森さんに預けたり、するんだろ…」
泣き出さないのが不思議なくらい、言葉を詰まらせながら彼は言った。
その言葉に、声に、胸が締め付けられるように痛む。
では彼は、今の状況を嫌がっているのではなくて、自分が成長し、子猫ではなくなったことが嫌だったのか?
それも、僕が一緒にいないから。
……どうしよう、嬉しくて、泣きそうだ。
「違いますよ。あなたが大きくなったからでも、あなたを嫌いになったからでもありません。あなたを置いて出かけるのは、僕にも学校に通う義務があり、やることがあるからなんです。あなたが来たばかりの頃は夏休みでしたから、ずっと一緒にいられましたけど……」
「…そういう、もん、なのか…?」
彼の潤んだ瞳が僕を見つめてくる。
そこに浮かんだ不安を、これまで少しも汲み取れていなかった自分を殴ってやりたいくらいだ。
「寂しい思いをさせてしまってすみません。これからも……長期の休みでもなければやはりあなたをひとりで部屋に残すか、森さんに託すかすることになってしまうと思います。すみません」
「お前にも、仕方のないことなのか?」
「…ええ」
「……だったら、我慢する」
そう言って、彼は僕の服をきゅっと握り締めた。
小さく、でも確かに。
「俺が甘えても、俺のことを嫌いになったり、しないな?」
「しませんよ。いくらでも、甘えてください」
「……」
嬉しいともなんとも彼は言わなかった。
でも、その顔が喜色に染まり、僕をぎゅっと抱きしめる。
「ずっと、我慢してたんですか?」
彼はこくん、と愛らしく頷いて、
「……お前が忙しそうにしてるし、俺も、もう、大人だからと、思って……。いつか、お前に捨てられてもいいように、…お前に、甘えすぎないでいようとも、思って……」
「それで、あんなにつれなかったんですか」
「それでも、俺がある程度以上距離を取ったら、お前からはそれ以上寄って来ようとか、しなかったから…やっぱり、俺なんか嫌いになったんだと……思って…」
「違いますよ。僕は、てっきり……あなたに嫌われているんだとばかり…」
「嫌ってなんか、ない…」
抱きしめられた腕に力が込められる。
「時々は僕に近づいてくれたりしたのは…」
「…俺が、我慢出来なくなったんだ……」
それでだったのか、と納得するとともに、気付けずにいた自分が余計に腹立たしく思えた。
「お願いですから、遠慮なんてしないでください。あなたに甘えられることの方がずっと嬉しいですし、大人だからって意地を張る必要もないんですから」
「…古泉、」
恥かしそうに顔を赤らめながら僕を呼ぶ彼に、ついついだらしなく頬を緩めながら、
「はい?」
と応えると、
「……好きだぞ」
と言って頬を舐められた。
「キョンくん…っ…!」
感激の余りそれ以上、言葉も出ない。
ただ彼を抱きしめて、お返しにと頬にキスをする。
すべすべした頬の柔らかさが毒のようにも思えた。
「だから……な、」
もじもじと彼は恥らいながら、僕のズボンの前を押さえた。
ぎくりとしたのは、そこが既に反応しかかっているからに他ならない。
「…俺が、こんなんなってから、お前が発情した匂いしてる原因が、俺なら……何とかしてやっても、いい…ぞ……」
――すいません、これ、夢、ですよね?
夢なんですよね?
現実っぽく思えるだけの夢、あるいは僕の汚らわしい妄想ですよね?
「お、お前が嫌なら俺は別にいいっ」
ぷいっと顔を背けながらも、彼の体は震えている。
彼のそんな態度がただの強がりであり、不安のあらわれなんだということが、僕にもやっと分かってきていたので、僕は慌てて、
「い、嫌なんかじゃありませんよ! ただ、随分と自分に都合のいい夢を見てるなと思って…」
「夢ぇ?」
呆れたような声を出した彼は、そのまま吹き出し、明るい笑い声を立てる。
「夢なわけないだろ。夢だとしたら、俺とお前が一緒に夢を見てることになるぞ。そんなのはないだろ?」
「ええと…まあそうなのかも知れませんけど」
「少なくとも、俺にとっては現実だから、お前にとってもそうなんじゃないのか?」
「……そうですね」
「…で? 夢なら何だって言うんだ? 夢だったらしたくないなのか?」
「いえ、そうじゃありませんよ」
「そうじゃないなら、俺の気が変わる前に……な」
誘う言葉を口にしながら、彼はあくまでも恥かしそうに顔を赤らめている。
大胆なのかそれとも慎ましやかなのかさえ、分からなくなってくるほどだ。
「本当に、いいんですか?」
いつもと違い、僕のそれと同じような形をした、しかし薄っすらと赤味を帯びている、愛らしい耳に唇を寄せて囁けば、小さな頷きを返された。
「どんなことをするのか、分かってるんですか?」
「え、う、その……」
ぼっと赤くなったところからして、分かっているらしい。
それにしても可愛らしい反応だ。
「嫌だと思ったら、言ってくださいね」
「……分かった。爪立てて、噛み付いて、抵抗してやる…」
「そうしてください」
小さく笑いながら言って、彼の唇に自分のそれを近づける。
彼は目を開いたまま、僕が何をするのかと息を詰めて見つめているようだった。
構わず口付けると、きょとんとした顔をされた。
「…人間って、変なことするんだな」
「変…ですか?」
「変だろ。口なんかくっつけてどうするんだ? 餌をもらうんでもないのに」
その言い分がなんだかおかしくて、つい小さく声を立てて笑ってしまう。
「なるほど、猫であったあなたならば、そう思うのかもしれませんね。…でも、これも……キスも、気持ちがいいものなんですよ」
「キス…っていうのか」
「そうです」
言いながら、もう一度唇を触れさせる。
行為の一環だと理解したからか、彼が照れくさそうに身を捩る。
それでも逃げ出そうとされないのをいいことに、もう一度と唇を重ね、その次にはその唇に舌を這わせた。
「っ、ん……」
ぴくん、と彼が身動ぎする。
その体を抱きしめながら、口腔に舌を忍び込ませると、彼の滑らかなそれが触れた。
「…に……ぁ」
唇の隙間から、彼の声がかすかに上がる。
薄目を開けてうかがえば、興奮にだろうか、目が潤んでいるのが分かった。
甘い蜜のような唾液をすすり、彼の舌を吸う。
彼も応えるように僕の動きを懸命に真似ようとするのが可愛らしくて、長い間そうしてしまったけれど、どうやら彼には辛かったらしい。
名残惜しいながらも解放すると、はぁはぁと苦しげな呼吸を繰り返しながら、
「……お前…しつ、こい…」
「すみません。嬉しくて、つい…」
忍び笑いを漏らすと、彼は恥かしそうに視線を外しながら、
「…けど、気持ちいいってのは、なんとなくだけど…分かった気が…する…」
なんてことを言うものだから、僕はいよいよ欲望が暴走してしまいそうになるのを堪えつつ、
「もっとして、いいですか?」
彼は躊躇うように少しの間黙り込んだけれど、それはどうやら気持ちよくなることへの抵抗感のあらわれだったらしい。
その目は獣らしい欲望の色を滲ませている。
ややあって、
「……ん、いいぞ」
「ありがとうございます」
落ち着かせるために、額や頬にそっと口付けながら、僕は彼のシャツのボタンをひとつずつ外しにかかった。
そうしてすっかり露わになった彼の肌に指を這わせ、口付けると、
「にゃ……や、ぁ…なんか…変…っ…」
と彼が嬌声を漏らした。
それは以前、幼い頃の彼が聞かせてくれたような、甘ったれた高い声に似ていて、耳に心地好く響く。
「変じゃなくて、気持ちいいんでしょう?」
「わら、うな…っ! ぁ、んん…!」
「すみません、嬉しくて、つい」
「…変な、やつ……」
「声、出した方がいいですよ。その方が苦しくありませんから」
「…そしたら、笑うんだろ」
「笑いませんよ」
「…約束しろよ」
「ええ、約束します」
僕が請負うと、一応信じてくれたらしく、彼の唇から愛らしい声が零れ落ち始める。
隠されないそれは愉悦に滲み、とても綺麗な音に聞こえた。
彼の薄桃色に色付く胸の突起が真っ赤に染まるまで弄び、白い肌に赤い印を散らしても、彼は嫌がるのではなく艶かしく体をくねらせるばかりだった。
彼の雄の証も硬く勃ち上がり、震えている。
僕はその滑った先走りを指先で掬い取り、窄まりに触れた。
「あ……?」
不審そうな声を上げた彼に、
「少し、我慢していただけますか? そうしたら、気持ちよくしてさしあげられるはずですから」
「分かったが……なんか、俺ばっかりで、いいのか…?」
とろんとした顔で彼が言うのへ、
「ええ。後で僕もちゃんと気持ちよくしてくださいね」
「ん…」
「力を出来るだけ抜いてくださいね」
僕が言うと素直に従う彼の膝に口付けて、僕は指をそっと押し入れる。一番きつくて狭いところを抜けると、柔らかな感触に指先が包まれた。
「なんか……変な感じだ…」
「すみません、もう少しですから」
言いながら、そこに舌を這わせ、唾液をひだに絡めるようにして解していく。
指をある程度自由に動かせるようになったところで、柔らかな中を探り始めると、ひくんと彼の体が痙攣した。
「っあ…!?」
「ここ、気持ちいいですか?」
こくん、と彼が頷く。
ぎゅっと閉じられた目は、それが耐えられないものであると示すかのようだ。
「大丈夫ですから、ね」
言い聞かせながら更にそのしこりを押し上げると、
「やっ、……ひ、ぅ…! こわ、い…!」
「大丈夫です。…僕が信じられませんか?」
意地の悪いことを言うと、彼は困ったように僕を見つめて、それからふるふると首を振った。
我ながらやることが小狡い、と自嘲しながら彼をぐずぐずに融かしていく。
その腕が僕の背中に回され、縋るように力を込められるのを感じながら、彼の中へ早く押し入ってしまいたくなるのを堪える。
痛みを味わわせたいわけじゃない。
どうせなら一緒に気持ちよくなりたい。
そんなことを思ってしまうくらいには、この、ほんの少しの間に、彼に夢中になってしまっていた。
あるいは僕が自覚していなかっただけで、猫である彼に既に惹かれていたのかも知れないと思うほど。
準備が整ったと思える頃には、彼の息はすっかり上がってしまい、意識も朦朧としているように見えていた。
その彼の耳にもう一度唇を寄せて、
「入れて、いいですか…?」
と余裕の欠片も感じられない切羽詰った声で問えば、
「は…やく……」
と魅力的な言葉を返された。
彼の体に自分を繋げながら、
「愛してます…、あなたが、好きです…」
そう囁くと、彼の目が驚愕に開かれる。
それから、笑みの形に目が細められ、それからその目が閉じられる。
同時に彼の手が僕の頭を引き寄せ、唇を重ね合わせられる。
それこそが、何よりの答えだと解った。
「愛してます」
繰り返し囁きながら彼の体を揺さぶれば、
「んにっ、ぁ、俺、も……っ、ひあ…、ぁあ…!」
と嬌声に塗れた言葉を返される。
彼の言葉を聞きたいのか、それとも喘ぎ声が聞きたいのかさえ分からなくなりながら、僕たちは何度も繰り返し求め合った。
休む間もなく、彼が意識を手放すまでそうしてしまったのは、どこかでこの変化が一時的なものだと感じていたからかも知れない。

目を覚ますと、胸の上に僕の愛猫が乗っかっていた。
焦げ茶色の瞳が恨みがましく僕を睨んでいる。
その鼻先には買ってあげたばかりのマタタビボールがあるけれど、それで遊んで暇をつぶしていたと言うよりはむしろ、それに鬱憤をぶつけていたかのように見える。
「やっぱり……全部…夢……だったんですね…」
あんなにリアルだったのに、と思う反面、あれが現実のはずがないと分かっていた自分が冷めた反応を返す。
愛しい人を失ってしまったような感覚にため息を吐くと、くん、と鼻を鳴らすかすかな音がしたかと思うと、
「…おい、古泉、腹が減ったぞ」
と目の前の猫が喋った。
「……え」
「ほぼ一日飯抜きとか、酷すぎないか」
そう言った猫が顔を背け、尻尾を不満そうに揺らす。
「…俺のこと、愛してるって言ったくせに」
「……ええええええ…!?」

僕たち、これから一体どうなっちゃうんですか!?