エロ好きな方々おまちかねのエロです←
お察しの通り襲い受けなので苦手な方はバックプリーズ















































お狐様のお食事



お兄さんと二人、稲荷寿司だけの夕食をとった。
本当はもっと味噌汁なりお漬物なり添えるべきだったんだろうけど、お兄さんは稲荷寿司しか食べようとしないし、僕も大量の稲荷寿司を作ったせいで疲れていたから他に何か作る気力もなく、精々お茶で流し込むしかなかった。
お兄さんは本当にご機嫌で、
「やっぱり稲荷寿司は三角じゃなきゃな」
なんて言っているが、僕はいくつか食べた辺りでもう満腹になってしまい、お兄さんの隣りでその見事なまでの食べっぷりを眺めている他ない。
「僕が子供の頃もそう言ってましたよね」
「覚えてたのか」
声にかすかな驚きを滲ませたお兄さんに、僕は苦笑を返す。
大好きなお兄さんのことだから、覚えているに決まっている。
ましてや、一時記憶を封じられていたせいか、昔のことがとても鮮明に思い出せるのだから。
「覚えてますよ。狐の耳の形なんだぞって、お兄さんの耳を見せてくださったじゃないですか」
「ああ、そんなこともあったな」
そう柔らかく目を細めたお兄さんは、軽く頭を振ると共に三角形をした耳を出し、ぷるぷると耳を震わせた。
「それ、ジジィも聞いてただろ?」
「ええと…そうでしたっけ?」
よく覚えていない僕がそう聞き返すと、お兄さんは呆れたように僕を見て、
「…お前は俺のことしか覚えてないのか?」
指摘された僕は真っ赤になるしかない。
実際その通りだから反論出来ないのだけれど、当の本人にそんなことを言われるとくすぐったいのを通り越して羞恥で死にそうになる。
あんな小さな頃からお兄さんのことしか目に入っていなかったのかと思うと余計に恥かしい。
そんな僕の内心を分かっているのかいないのか、お兄さんは軽く首を傾げながら、
「まあ、とにかく、ジジィも聞いてたんだよ。それで、俺の耳に似せるんだったら黄金色じゃだめだからって、わざわざ薄口じゃなくて濃口醤油で油揚げを炊きやがって、やけに色が濃くて気分の悪い稲荷寿司を食わされちまったんだ」
「…ああ、色の濃い稲荷寿司は覚えてます」
思わず口元を緩めると、
「何がおかしい」
と睨まれてしまったので、理由を説明する。
「その時にも言ったと思いますけど、お兄さんの耳の色とそっくりで僕としては嬉しかったんですよ」
「……そう言えばそんなことも言ってたな」
懐かしそうに呟いたお兄さんは悪戯っぽく笑って、
「…お前、あんなちっさい頃から俺のことを食いたかったわけか」
「なっ…!?」
なんですかその誤解を招く表現は!
「違うのか?」
そう言いながらお兄さんは稲荷寿司で汚れた指先を舐め、扇情的なまでに艶かしい仕草で指先をちゅっと吸い上げて指を離した。
「…とりあえず、これくらいでいいかな」
独り言のように呟いて、お兄さんは僕に聞く。
「お前ももう満腹なんだよな?」
不必要なほどの笑顔がいっそ怖い。
「え、ええ…そう、ですね。…あの、稲荷寿司はどうぞ好きなだけ食べてください」
「ああ、残りは後にする。先にお前を食わせろ」
「――はっ!?」
「いいんだな」
僕が驚きのあまり上げてしまった声を、どうやら了解と取ったらしい。
お兄さんはにんまりと笑って僕を押し倒した。
「ちょっ…!」
慌てる僕の唇をまず塞ぎ、口の中に残っている稲荷寿司のかすかな味さえ奪い取ろうとするように舌を絡められ、舐め上げられる。
「っ……ふ、ぅ…!」
くらくらする、何も考えられなくなる。
体から力が抜けてしまい、抵抗なんて少しも出来ない。
それに、正直なところ、全く嬉しくないかと言えばそういうわけでもないのだ。
お兄さんだと分かる前、まだ、『彼』をただの一般人だとばかり思っていた頃から、あるいは小さな子供の頃から好きな相手なんだから、こんな風にされて嫌なばかりであるはずがない。
しばらくして僕を解放したお兄さんは、今度は僕の指を舐め始める。
先ほどと同じように、やはり味わおうとしているかのように。
「お兄さん…っ、どういうつもりなんですか…!?」
「分かってるくせに」
にやりと笑った口元が、一瞬人のものから狐のものに変わる。
「いいだろ、少しくらい。口からだけじゃお前が枯れて死んじまいそうなんだから」
「だ、だからってこんな……。こんなことは、好きな人とじゃないとしちゃダメですよ…!」
訴えるように言ってもお兄さんには通用しなかった。
「お前は俺が好きなんだろ。だったら問題はないはずだ。それに、そもそも俺は人じゃないし」
さらりと言ったお兄さんが僕の服を脱がせにかかり、ついでとばかりに、僕が逃げ出したりしないよう動きを封じた。
「お前は大人しくしてればいいからな」
満面の笑みで言って、お兄さんは自分の服も脱ぎ始める。
いっそ清々しいほど潔い脱ぎっぷりを見つめているしかない僕に、お兄さんは楽しげに笑ったかと思うと、目線を下に下ろし、
「これくらいのことで興奮するのか? 相変わらず可愛いっつうか何つうか…」
と囁いた。
僕はこれ以上はないというくらいに赤くなり、
「っ、わ、悪いですか…!?」
と言い返すのがやっとだ。
お兄さんはまだ笑みを引っ込めないまま、
「いや、別に悪くはないな。可愛いだけだ」
と言いながら緩く勃ちあがって来ているそれへ手を触れさせた。
「っ…!」
「ん、また硬くなった」
せせら笑うとまでは言わないがそれに似た笑みを向けられ、今度こそ憤死するかと思った。
お兄さんはにやにやとそれを指先で嬲っていたのだが、やがて飽きたように手を離すと、今度はそこへ顔を寄せ、
「…初物は、寿命が三年延びる…ってな」
などと不穏なことを呟き、僕が何か言うより早くそれを口に含んでしまった。
「っ、ちょ、っと……お、兄さん…! やめて、くださ…っ……」
「ん…っ、ぅ、……やら」
横たえられたまま動けない僕には見えないけれど、ぴちゃぴちゃと舐め上げる音が耳に痛いほど聞こえてくる。
包み込まれる温かい感覚といつ噛み切られるかという恐怖とが混ざり合って気持ちいいんだか怖いんだか分からない。
…いえ、お兄さんが噛み切ったりするとは思ってないんですけど、食うとかなんとか言われたせいでつい、そんなことを思ってしまうんです。
「気持ちいい…か?」
一度唇を離したお兄さんがわざわざ聞いてくるのへ、自棄になりながら、
「気持ちいいに、決まってますよ! わざわざ聞かないでください…っ」
と答えると、涙目になりそうになった。
「聞かなきゃ分からんだろ」
当然のようにお兄さんはそう言い返し、
「ま、気持ちいいならいい」
と笑って僕の体を跨ぐような姿勢になった。
「お…兄さん……?」
にやっと笑ったお兄さんは、まるで独り言か、あるいは独白の台詞を読み上げるように、
「ちっさい頃からよく知ってて、俺が育てたようなもんだってのに、まさかこういうことになるとは思わなかったな。ジジィはここまで見通してたのかね。……というか、お兄さんなんて呼ばれると余計にくすぐったいというか、柄にもなく背徳感が湧いてきてむしろそそるんだが、どうにかならんか?」
「な…っ、何言ってんですか!?」
驚く僕に軽く口付けて、お兄さんは腰を下ろす。
それと共に、きつくて暖かな感覚が伝わってきて、僕は目を見開いた。
「んっ……は、ぁ、……苦し…っ……」
そう言いながら眉を寄せたお兄さんはぞくぞくするほど綺麗に見えた。
これまでに一度も見たことがないような、艶かしい表情だ。
それに見ほれている間に、お兄さんは完全に腰を下ろし、いっそ快くすらあるその体重が僕にかかった。
息を乱したお兄さんなんて滅多に見ないものだから、
「大丈夫ですか?」
と声を掛けると、
「あ……ああ、大丈夫だ…が、ちょっと待て…流石に動けん…」
「はぁ…」
お兄さんは床に手を付いて体を支えながら僕を見つめ、それから、思い出したように言った。
「…ああ、そうか、まだ金縛りにしたままだったか。…もう逃げられねえし、俺も余計な力は使ってたくないから、解いてやるよ」
その言葉と共に体が自由を取り戻す。
僕は何とか上体を起こし、
「っ、動くな馬鹿…!」
と唸るお兄さんを支えた。
「本当に、大丈夫何ですか?」
「平気だって、言ってんだろうが…。ただの人間でも出来ることで俺がどうにかなるとでも思ってんのか?」
そう睨みあげてくるけれど、その目に宿る光はいくらか弱いものに思えた。
「……僕が動きましょうか」
つい、そう言ってしまったのは、お兄さんが余りにも弱々しく、儚げに見えたからだ。
「…は…? 動くって…お前……」
「お兄さんは僕の…その、精、が、必要なんでしょう? こうしてじっとしているだけじゃ苦しいと思いますし、それならいっそ、と、思ったん、です…けど……」
まじまじと見つめてくるお兄さんの視線に圧されて、段々と声が小さくなってしまったが、お兄さんは突っ込みもいれずに、こてんと僕の肩に頭を預けた。
「あっ……あの……っ!?」
戸惑う僕に、一言、
「…任せる」
とだけ言うのは、はっきり言って恐ろしいまでの破壊力を伴った。
それだけで達してしまいそうになり、それはそれでいいはずなのにそれでは勿体無いと思うのはやっぱり、男のサガか矜持というものだろう。
「このままの体勢で…構いませんか? それとも、お兄さんが横になります?」
「任せるって言っただろ…。正直、へばりかけてんだ…」
そんな相手にこのまま行為を続けるというのは気が退けないでもないのだけれど、これがお兄さんの糧になるなら仕方がないと言い訳めいたことを考えながら、
「…それじゃ、一度抜きますから、横になってください」
「ん……」
本当に脱力しているお兄さんを支えながらその体を浮かせ、中から退くと、
「っふ……ぅ…」
という酷く蠱惑的な声が鼓膜を震わせた。
お兄さんのことを労わるならベッドに移動した方がいいのだろうけれど、お兄さんがいっそ切なげにすら聞こえるような声で、
「…一樹…っ、早く…」
と求められては、紙のように薄っぺらな理性なんて、ないものも同然だった。
「……辛かったら、ごめんなさい…っ」
謝りながら狭いそこへと自分の硬くなったままのものを押し当てると、ひくんとお兄さんの体が震えた。
まるで期待でもしているみたいだと思うと、酷く胸がざわついた。
それを振り捨てるように腰を進めると、お兄さんがきつく僕の背中に爪を立て、
「っ、ぁ、ぅ、…っんんぁ…!」
と声を上げる。
「大丈夫…ですか…?」
「あ、ぁ、……っ、そこ…ぉ…!」
「……え」
そこ、って、あの、もしかして……。
「そこ、イイ、から…っ、もっとしろって、言ってんだろうが馬鹿…!」
顔を赤くしながら言ったお兄さんが、軽く僕の頭を殴ったけれど、ほとんど力も入っていない。
「す、すいません、慣れないものですから…」
「いいから、動けって…っ、早く、よこせ…」
「あの……ひとつだけ、いい、ですか?」
「…なんだよ」
あからさまに不満そうな顔をしたお兄さんに、
「…もしかして、人の姿になっているだけじゃなくて、その、性感とかも…人と同じなんですか?」
「………黙秘だ」
そう来るんですか。
というか、
「…赤くなってそう言われたら、答えてくださっているも同じだと思うんですけど……」
「煩い」
言いながら顔を背けるお兄さんが、酷く可愛く思えたのは、僕の方に少しだけ余裕が出来たからだろうか。
それともお兄さんから余裕がなくなったからだろうか。
「…人と同じなら、ここも、気持ちいいんですか?」
聞きながら、僕はお兄さんの裸の胸へと手を伸ばし、薄桃色の突起に指をかけた。
「そんなとこ、気持ちよくなんか…っ…」
「そうですか? 段々硬くなってきましたけど」
「…くっそ……ムカつく…。おろおろしてる方が可愛いのに…」
唸るように言ったお兄さんに、僕は苦笑して、
「すみません。でも、僕だってもうこれだけ成長してるんですから」
言いながら執拗に突起を弄んでいると、段々とそこが赤味を増し、潰したり弾いたりするのに合わせるように、中がひくひくと締まり始める。
「よくなって、来ました?」
「黙秘だって言ってんだろうが! いいから、早くイけよ…!」
「そう…ですね」
正直、どんなに気をそらそうとしたところでもう耐えられないほどになっているのは僕も同じだった。
「もう、痛くはありませんよね」
そう言って、腰を使い始めると、それにあわせてお兄さんの声が零れる。
その声さえ、伏せられた耳さえもが愛しくて、お兄さんの体を強く抱きしめるようにして中に逐情すると、通常よりも力が抜けていくのが分かった。
お兄さんに精を吸われたということなんだろう。
今度はこっちが倒れてしまいそうで、僕は早々に腰を引き、そのまま床に寝転がった。
それくらい、疲労が著しい。
「大丈夫か…?」
心配そうに聞いてくるお兄さんに、
「大丈夫です……。お兄さんこそ…大丈夫何ですか?」
あまり変わっていないように見えるのでそう聞くと、お兄さんは笑って、
「あのな、俺の力ってのは体力とは違うんだ。だから、体力は消耗したままだが、欲しかった霊力は大分回復した。お前のおかげだ。…ありがとな」
そう言って、お兄さんは起き上がると、テーブルの上で生乾きになっていた稲荷寿司に手を伸ばし、僕の口元に持ってきた。
「これでも食って元気になれよ」
それだけで元気になると思うのだろうかとか、そもそもそれは僕が作ったものだとか、色々と言いたいことはあるのだけれど、もはや言い返す気力もなく、僕は諦めて稲荷寿司を食べた。
のそのそと体を起こした僕に、お兄さんは気のせいかほっとした様子を見せたかと思うと、僕に服を着せてくれる。
そんな風にされると、本当に、昔と変わらずに大事にしてくれていることが分かって、泣きそうになった。
嬉しくて、そのくせ切ないのは、お兄さんにとって僕はまだ小さな子供でしかないのだろうなと思えたからだろう。
「お疲れさん」
と僕を抱きしめてくれるお兄さんに体を預けながら、僕は独り言のように呟いた。
「お兄さん…、好きです…」
「知ってるって言っただろ」
その返事があまりにも遠い隔たりを感じさせ、僕はそれ以上何も言えず黙り込んだ。

好きな相手と体を繋げられたことを喜ぶ以上に、絶対に心までは通じ合えないと断言されたような感覚に、絶望を感じた。
それでも僕は……お兄さんを好きなままなんだろう。
理由なんてもう分からない。
ただ、お兄さんが愛しいことだけは、悲しいほどに確かだった。