エロですが鬼畜要素はありません
健全なエロです(?)
甘い+駆け足気味なので、警戒しつつどうぞ











































消え去っても残るもの



あの冬の日。
俺は今いるこの非日常を選び、積極的にそれに関わる道を選んだ。
そうして帰って来たその時、俺を真っ先に迎えてくれたのは、理由もなく胸を締め付けるような学ラン姿ではなく、いつも通りの、更に言うなら本来そうあるべきと言ってもいいような、ブレザー姿の古泉だった。
その古泉に対して、どうしていきなり、それまでには欠片も自覚していなかった想いを自覚し、そのまま勢いに任せるようにして告白していたのかなんてことは、俺にも分からん。
ただ、感じる愛しさは本物だと、そのことだけはよく分かっていた。
古泉が拒むはずなどないと、どこかで確信していた理由も、未だに分かっていないことのひとつだ。
古泉は、俺が覚えていないだけで本当は別に何かがあったのではないかと勘繰っているのだが、そんなものは今更関係ない。
あってもなくても同じことだ。
重要なのは、俺が古泉を恋愛感情で好きでいて、古泉もまた俺に対して同じような感情を持っていてくれていること、それがきちんと通じ合っているということくらいのものだろう。
「本来なら、拒むどころか、あなたに考え直すよう説得するべき立場にいるはずなんですけどね」
古泉はそう言って苦笑していたが、機関の都合なんか知るか、というのが俺の返答だ。
「ハルヒにばれて、それで世界が消えちまおうが知ったもんか。お前さえ無事なら俺はそれでいい」
吐き捨てるように言った俺に、古泉は意外そうに目を見開いた後、
「あなたは、案外情熱的な方だったんですね。驚きました」
とコメントしたが、俺だって驚いている。
自分にこんな一面があったとは思いもしなかったとも。
「嬉しいですよ」
そう言って古泉が俺を抱きしめる。
その抱きしめ方に、暖かさに、腕の強さに、……どうしてだろう、既視感を覚えた。
まるで、前にもそんな風に抱きしめられたことがあるような……。
首を傾げながら古泉を見上げれば、古泉も何か妙な違和感でも感じたような顔をしていた。
「古泉?」
「…いえ、何でもありません」
そう言いながらも釈然としていないようだった。
だが、俺もそれ以上は何も言えず、ただ古泉の肩に顔を埋めた。
不安に似た感覚に胸がざわつく。
そのくせ、この感覚は悪いものではないと感じている部分もある。
一体どういうことだろうと思いながら、それ以上考えるのはやめておいた。
その方がいい気がした。
告白して、付き合いはじめてから、俺たちはじれったいほどゆっくりと歩み寄って行った。
キスひとつするまでに、半月以上掛けるなんて、思い返すだけでも馬鹿みたいだが、必要な時間だった気がする。
重ね合わせるだけのそれを何度も交わした。
それが、気がつくと深いものに変わっていた。
少しずつ、少しずつ、歩み寄る。
距離が縮まっていく。
その間に、何度かあの既視感を感じた。
初めてのはずの行為に、覚えがあると感じた。
それでも、止まらなかった。
止められやしなかった。
既視感の理由は知らないし、知る必要もない。
ただ、俺は俺として、古泉が好きで、古泉に触れたいと思っていた。

古泉に誘われて、俺は古泉の部屋を訪れた。
初めて入るはずのその部屋が、何故だか妙に落ち着く場所に思えた。
帰って来た、とさえ思った自分に戸惑ったくらいだ。
「汚い部屋ですみません」
そう古泉は苦笑したが、
「別に汚くないだろ。……これくらいの方が、落ち着く」
と言ってやると、嬉しそうに笑った。
そんな風に素直に笑ってくれる、その笑顔が好きだと思う。
自然な仕草で抱きしめられて、キスされる。
何度繰り返しても、変わらず優しいキスだと思う。
何か怖がって、遠慮しているように思えなくもないほど、優しすぎるキスだが、嫌いではない。
自分から手を伸ばして、古泉の首に腕を絡める。
離れそうになる唇を留めて、深いキスへ繋げる。
「ん……っ、ふ、ぁ…!」
唇の隙間から、恥かしい声が出たのだが、古泉は柔らかく笑っただけだった。
「…愛してます」
触れ合ったままの唇を通して囁かれる甘ったるい言葉に、体が震える。
どうしてだ、と俺自身、戸惑うくらいだ。
「……ね、ぇ」
緊張にだろう、上擦った声で、古泉が言う。
「…いい、ですか……?」
「いい、って…?」
何がだよ、と問いながら、答えは既に分かっていた気がした。
「…あなたに、触れたいんです。あなたと……繋がりたい」
遠回しな、薄ら寒い言い回しに、ツッコミを入れる余裕なんぞあるはずもなかった。
びくんと体が竦み、動けなくなる。
感じているのは恐怖にも似た不安だ。
されることが怖いわけじゃない。
したくないわけでもない。
ただ、理由もなく、不安だった。
このまま、自分が自分でない何かになってしまいそうで、怖かった。
「…だめ、ですか……?」
縋るように見つめてくる古泉は、ここで俺がだめだと言えば間違いなく引き下がってくれただろう。
…今なら、まだ。
だが、それに甘えてはいけないという思いもあった。
自分の体も心も、雁字搦めになってしまったような感覚の中、俺は古泉の体をきつく抱きしめて、
「…したく、ないわけじゃ、ないんだ……。ただ……怖く、て…」
震える声でそう訴えると、
「怖い…ですか」
「お前に……嫌われそうで、怖い…」
古泉の腕を掴んで、それだけ言うともう、古泉の顔すら見ていられなくなった。
呆れられるのも怖い。
笑われるのも怖い。
怖いことばかりだと、臆病すぎる自分を笑った。
「……大丈夫ですよ」
優しく、古泉が囁いた。
「僕があなたを嫌うはずなんてありません。怖がらなくていいんですよ」
子供に言い聞かせるように優しくそう繰り返して、古泉はその言葉そのままのようなキスをくれる。
俺の頬に、額に、鼻に、唇に。
「古泉…っ……! 待て、って…」
「だめ、ですか?」
「……」
だめだともいいとも言えない俺に、古泉はもう一度言う。
「大丈夫です。…あなたが嫌がることはしたくありませんから、嫌ならすぐにやめます。でも……今はまだ、嫌がっては、いないでしょう…?」
びくっと震えた俺に、古泉は柔らかく微笑んだ。
「……ね」
俺が顎を引くと、古泉はその動きを頷きと取ったらしい。
「…ありがとうございます」
と囁いて、俺を抱き上げた。
「…っ、おい!」
「寝室に行くだけですよ」
その眩しいくらいの笑顔を見ると、それ以上俺は何も言えず、振り落とされないよう、大人しくその首にしがみつくことになった。
そうして、くすぐったいほど優しい動きでベッドに下ろされる。
「愛してます」
もう一度繰り返した古泉の唇が、甘ったるいキスをする。
「んっ……ぁ…! あ…」
「可愛いですね」
そう呟いた声にも笑みにも、揶揄の色はない。
ただ、愛おしげな熱っぽさがあるだけだ。
それを恥かしいと思う以上に、何故だか、感じていた不安をほぐされる思いがした。
「…こい、ずみ……」
「はい?」
俺のシャツを脱がせにかかっていた古泉が手を止め、俺を見つめる。
その真っ直ぐな眼差しを見つめ返しながら、
「…俺が……どうなっても、嫌ったり、しない…よな…?」
「当たり前でしょう。むしろ、もしもあなたがいつもと違う側面を見せてくださるとしたら、見てみたいと思います」
「俺も……同じ、だから…」
「……はい?」
戸惑う風な古泉に、俺は笑顔を作って、
「俺も、お前と同じだ。…お前が違う側面を見せてくれるなら見てみたいと思うから、だから、…お前のしたいようにして、いい。遠慮なんか、要らない…」
「……」
古泉は困ったように笑って、俺の耳に軽く唇を触れさせた。
そのくすぐったさに体を捩る俺に、
「…僕も、怖いのは同じなんです。止めると言っておいて止められなかったら、あなたに嫌われてしまうだろうと思いますし、そのくせあなたが欲しくてならないんです。…幻滅したでしょう?」
それくらいで幻滅するくらいなら最初から好きになんかなってねえよ。
「本当ですか?」
「嘘を吐いてどうする」
そう笑うと、古泉も泣きそうな顔で笑った。
「好きです。愛してます。…あなたが、好きなんです」
「ん…分かってる…」
もう一度キスをして、もう大丈夫だと思えた。
古泉の手が俺の服を脱がせていく。
肌を滑る手の感触に、衣擦れの音に、既視感が頭の中で囁きかける。
覚えていないのか、と。
本当は覚えているんだろう、と。
知るもんか、と俺は返す。
覚えていようがいまいが関係ない。
「あ…っ、ん、んん…っ…!」
胸のささやかな突起を押し潰され、抓られ、引っ張られて、体が震える。
「気持ちいい、ですか?」
「…っん、いい…」
半分くらい、イカレてしまったような脳が告げるままそう答えると、古泉は嬉しそうに笑った。
「そのようですね。気持ちよさそうな顔をしていらっしゃいますし」
「わ、悪いか…っ!?」
「悪くなんてありませんよ。…可愛くて、愛おしい気持ちでいっぱいになります」
そう言って、古泉はそれに舌を這わせ、軽く歯を立てる。
「ひぁ…っ! ん、やぁ…ぁ」
「嫌ですか? これくらいでやめておきます?」
「違…! …おま、え、分かってて、言ってるくせに…!」
意地悪く、くすっと唇を歪めた古泉が、
「すみません。あなたがあまりにも可愛らしいものですから」
と返して、もう一度突起を舐め上げると、体が痙攣する。
ひくんと震えた喉にもキスをして、古泉の手は更に遠慮をなくしていく。
それでいいと思った。
本当に俺のことを好きでいてくれるんだったら、そのことを言葉だけでなく態度でも示して欲しいと、俺はきっとどこかで思っていたんだろう。
だから、さっきよりも不安が薄くなっている。
嬉しくて、幸せで、気持ちよくて、不安も恐怖も緊張も忘れたようになっている。
それくらい、古泉は必死で、分かりやすく、俺を求めてくれている。
「古泉…っ、好き、っ、好き、だから…!」
「ええ、僕も、あなたが好きですよ」
古泉の手が膝を割り、はしたなく脚を開かせる。
「っ、はず、かし……」
この上もなく真っ赤になって、呻くように言った俺の膝に唇を触れさせて、
「恥かしがらなくていいです。とても素敵な眺めです。少なくとも、僕にとってはですが」
その視線だけでもおかしくなってしまいそうだと思うくらいになっている俺に、古泉は遠慮なく触れていく。
触れられた場所はそれだけで融け出しそうに熱くなり、それと共に頭の中まで熱に侵されていくかのようですらあった。
古泉の名前をうわ言のように呼び、その腕に縋る。
そんな俺に、古泉は優しく、どこまでも優しくしてくれながら、そのくせ、退く気は少しも見せなかった。
俺が嫌がるなら、嫌がらなくなるまで、俺を宥め、あやしてでもコトに及ぼうとするような、優しさと強引さとの同居が、何故だか悲しくなるほど嬉しかった。
「も、いい…から…っ!」
「…本当に、大丈夫ですか?」
心配するような声と言葉とは裏腹に、その目は欲に満ちていた。
それへ、精一杯に笑い返しながら、
「平気だ…から……早く、」
続きを口にしようとした唇は塞がれた。
そのまま俺は大人しく目を閉じる。
大丈夫だ。
怖くはない。
それでも体が震え、わななくのはきっと、期待しているからだ。
知らないはずなのに、知っている。
古泉の優しさも激しさも、向けてくれる愛情の強さも全部分かってる。
この先の行為の甘さも、中毒性も。
それでも、俺は足を踏み出すのだ。
その先が奈落でも極楽でも構わない。
古泉と一緒なら、いい。
…ああ、だが、やっぱり奈落だの極楽だのわけの分からんところよりは現実のままがいいな。
夢や幻想よりも確かなものが欲しい。
だから、感じた痛みがむしろ嬉しかった。
本当に初めてなんだと、思えた。
「っ…ぁ、う……」
痛みに呻き、顔をしかめる俺の様子を伺いながら、古泉は時折動きを止め、俺が呼吸を整えるのを待って動く。
そうして、残酷なまでに優しくして、痛みも愛情も嫌というほど感じさせられる。
このままでもいい。
痛いままでも、古泉が気持ちいいならいいと、そう、馬鹿みたいなことを俺が思ったのを見透かしたわけでもないのだろうが、いきなり古泉が一点を掠め、俺の油断を突いた。
喉が震え、体が仰け反る。
「は……っ、ぅ……んぁ…っ!」
びくびくと暴れる体を押さえつけて、古泉がいくらか苦しげなものを滲ませながら囁く。
「ここが、いいんですか?」
「っ、ぅ、ん」
恥かしい声を上げたくなくて、頷きで答えると、古泉が嬉しそうに笑ったのが、かすかに見えた。
「よかった」
耳を掠める、柔らかな声に、余計に震えた。
ああもう、病気みたいだ。
体は言うことをきかないし、心だって似たようなもんだ。
古泉の一挙手一投足全てに、支配されるような思いさえする。
だがそれは、古泉も同じなんだろうか。
俺がいいと答えたその場所を執拗なまでに擦りあげながら、俺の唇から零れる聞き苦しいことこの上ない声にその笑みを深める。
「やっ…、も、やだ…ぁ…! はげし、い、って…!」
気持ちよくて、よくて、よ過ぎて、溢れた涙を優しく舐め取って、歓喜に震える声で、
「可愛いです」
と囁く。
更に激しさを増す動きも、次第に余裕を失うその表情も。
「っ……くぅ…」
苦しげに、達しそうになるのを堪えるその声も。
それら全てが、何もかも全部、俺のせいだとしたら。
――それだけで、嬉しすぎて死にそうだ。
これがきっと、本当の幸せというやつなんだろうな。

俺がずっと欲しかったものを抱きしめて、胸の内で誓った。
――もう二度と、手放したりはしない。