エロエロです
らぶらぶです















































とんでもないお土産

「ただいま帰りました」
といつもよりどこか感激しているような声で言って、一樹が一週間の出張から帰ってきたのは、金曜日の夜のことだった。
「お帰り」
と返した言葉は短いが、決して素っ気無くはなかったと思う。
俺だって、一週間ぶりに会えて嬉しいに決まってるからな。
「帰るのは明日じゃなかったのか?」
「急いだんですよ」
ちょっとやそっと急いでどうにかなるというものでもないと思うのだが、うまいことやっても不思議じゃないようなところがこいつにはある。
「…早く帰りたくて」
付け加えられた言葉が本当だと示すつもりではないのだろうが、一樹は俺を抱き締めた。
硬いスーツの生地越しに、一樹のどこか甘い匂いと、不快なものではないのだが、嗅いだことのないような匂いがした。
「……お帰り」
もう一度言ってやって抱き締め返せば、そっと顎を取られ、上向かされる。
素直に目を閉じ、唇を合わせると、久々に味わう柔らかな感触がくすぐったかった。
触れるだけで離れると名残惜しそうな顔をしたが、まずは旅の疲れを落とすのが先だと分かっているんだろう、大人しくしている。
「…和希は寝てますよね?」
「ああ、当然だろ」
「では、顔を見るのは明日にしておきましょう。起しても悪いですから」
「だな。…というか、お前も疲れてるだろ。荷物は俺に預けて、まずは風呂に入って来い。ちゃんと沸かしてあるから」
「はい」
嬉しそうに言って、一樹は俺にスーツケースを寄越した。
「白い袋にまとめてあるのがお土産ですから、開けていてください」
「それはいいが、晩飯は?」
「食べてきました」
まあそうか、と思いながら俺は時計を見た。
もう日付が変わる。
こんな時間によく帰ってきたもんだと半ば呆れながら一樹を風呂に送り出し、俺は荷解きを始める。
几帳面にきっちりと荷物を詰め込まれたスーツケースを開き、洗濯するものを取り出し、クリーニングに出すものは出すものと分ける。
出張用のシャンプーやなんかの残量も確かめて、買い足すものがないかを確認しつつ、次に備えてまとめておいた。
土産だという白い袋はなかなか大きい。
というか、一樹はいつもそうで、いくら言っても土産を買いこんで来る。
あいつに言わせると、
「出張の間、寂しさを紛らわせるにはあなたや有希や和希のことを思いながらお土産を選ぶのが一番なんですよ」
とのことだし、一度漏らしたことによると、愛する家族のためにとあれこれ本気で選んでいると、余計な虫が寄ってくるのを避けられるという面もあるようだ。
今回も土産物の傾向もいつもとそう変わらないようだった。
和希のためのお菓子やちょっとした玩具。
有希のための本がいくつか。
それから、俺と一緒にするためのボードゲームや珍しい食材が少し。
買い込みすぎなんだよと呆れるのは、これらのものを詰め込むために、本来出張に必要な物を詰め込める以上の大きさのスーツケースを愛用していることをよく知っているからだ。
くすぐったく思いつつも、なんとなく誰のためのものかと分かるものから分類している間に、風呂から上がってきた一樹がシャンプーの甘い匂いを漂わせながらやってきた。
「上がりましたよ」
「ん、ちゃんと浸かってきたか? シャワーだけで済ませたりしなかっただろうな?」
「ちゃんと浸かりましたよ。せっかくの、久しぶりのお風呂ですからね」
「で、北欧はどうだった?」
「いいところでしたよ」
本当にそう思っているのか怪しいほどあっさりと済ませ、一樹は俺の隣りに腰を下ろした。
俺は荷物の整理のため床に座り込んでいたんだが、一樹までそうすることはないだろう。
「疲れてるんじゃないのか? 寝るか、せめてソファに座れよ」
「あなたの側の方がいいです」
甘えたことを恥ずかしげもなく口にして、古泉は俺が仕分けした土産物の塊に手を伸ばした。
「これはあなたのためのお土産ですよ」
と言って和希のための山から移動させたのは、白い背景にポップな明るい緑色のスティック状の物体の写真がプリントされた箱だった。
そう大きくも小さくもない、靴の箱より少し小さいかどうかというサイズのそれは、おそらく玩具か何かだろうと思ったんだが、違ったんだろうか。
「ある意味当ってますけど、これはあなたのためのものです」
小さく笑って一樹が言っても俺は何も不思議に思わなかった。
どうせまた、ゲームか何かに誘われるだけだろうと思ったに過ぎない。
そんなのは甘い観測だったと、俺はその夜の内に知る破目になった。
今はまだそのことは置いておくとして、俺が仕分けしているのを横目に、一樹はその箱を開き、プリントされた写真そのままの物体を取り出している。
どうやら充電が必要らしく、コードを繋ぎ、充電を始めるとそのまま放っている。
「なんなんだ? あれ」
「後で教えてあげますよ」
「えらくもったいぶるな」
そう笑った俺の背に、一樹の手が回される。
「……まだ仕分け中なんだが」
抗議するように、しかしながら小さく呟けば、一樹は流し目をこちらに寄越しながら、意地悪く唇を歪めて、
「後でもいいじゃないですか。…一週間ぶりなんですよ?」
「お前もそろそろ一週間くらい我慢出来るような落ち着きが出来てもいいんじゃないか?」
「我慢したじゃないですか。だから、ご褒美をください。……ねえ」
その手の平が背中から腰へと滑り、甘い痺れが走る。
「あなただって、寂しかったでしょう?」
「……お前ほどじゃない」
強がるように言って、俺は仕分けの手を止めた。
そうしてようやく一樹に向き直り、待ち構えている腕の中に身を預けた。
俺だって、全く平気だった訳じゃない。
習慣として出張の荷物には滑り込ませてやることにしている避妊具の箱が封も切られていないのを見て安心する程度には心配もしちまうし、夜中にふと目を覚ましでもした時に一樹がいないと相変わらずどうしようもないような不安に襲われるほどだ。
だから、と俺は求められるまま服を脱がされ、それどころか一樹の股間に頭を突っ込んだり、自ら跨ったりするようなことまでやらかしちまったのだが、それについては細かく語りたくない。
俺としては満足して、汗でぐっしょりと濡れた体を床に投げ出したところで、一樹が思い出したように充電中の「お土産」に手を伸ばしたのを見た。
「…結局、それはなんなんだ?」
事後のちょっとした会話のつもりで問いかけると、一樹はにやにやしながらそれのコードを引き抜き、本体だけを俺の目の前に持ってくる。
「あちらなら、大人が一人ひとつは持っていてもいいようなアイテムですよ」
「……何か引っかかるのは俺の自意識が過剰ってことでいいよな?」
警戒を示しながらじりりと体を起こし、逃れようとした俺の脚をむんずと掴み、一樹は殊更にっこりと微笑した。
まずい、警戒警報の発令が遅すぎた。
「これはいわゆる性具というものです。ですから、あなたが思ったように玩具というのもあながち間違っていませんね。和希にはまだ早すぎますけど」
こら、最後の一言は冗談にしても品がなさすぎるぞ。
「すみません」
口先だけで謝って、一樹はさっきようやく封を切ったばかりのゴムをもうひとつ開けて、明るいグリーンのスティックに被せた。
その意図は明らか過ぎる。
「お、俺は嫌だぞ、そんなもん……」
「いいじゃないですか。こんなに小さなものですよ? 僕のだってあんなに簡単に飲み込めるんですから、これくらい簡単でしょう?」
「そういう問題じゃないだろ!」
あほか、と罵っても、一樹は涼しい顔で、
「あまり大きな声を出すと和希が起きちゃいますよ?」
「っ、そ、そういう状況でこれ以上の暴挙はやめろ…」
「あなただって、留守の間は寂しかったんじゃないですか? これくらいじゃまだ足りませんよね。それに、出張はこれからもあるんですから、そのためにもいいお土産を選べたと思いません?」
「思えるか、この変態っ…!」
「そんなことを言いながら…」
くすりと意地悪く笑って見せた一樹は、いやらしい手つきで俺の脚の間を撫で、
「……ここ、期待してひくついてますよ」
「ち、が……っ…」
上がりそうになる嬌声を堪えて睨み上げても、ちらとも堪えないらしい。
楽しげにそこをくすぐり、俺の体を痙攣させる。
「やっ……、い、一樹……それ、やだ……」
「それ? …ああ、僕の指では嫌ですか? ではやっぱりこれですよね」
勝手な解釈を展開しながら、一樹はひやりとしたスティックを押し当て、入り口をくすぐるようにやわやわと動かす。
「ちが…っ! んなもん、入れるなって、や、やだ……っ」
泣きそうな声になりながら訴えても、やめるつもりのない一樹には効果がまるでない。
「本気で嫌でもないのに……素直じゃありませんね」
そう呟くなり、それを遠慮なくずぷりと差し込んだ。
「いあぁっ…!」
慣れない異物感に声をあげ、体を竦ませれば、
「大丈夫ですから」
と優しい声を掛けるくせに、更に奥へと押し込んでくる。
「なっ…にがっ……、抜けっ! この馬鹿野郎!」
「涙目になっても強がるあなたも、可愛くて愛しくて堪りませんね…」
「人の話を聞けと、俺はお前に何度言った…ら……っ、ひあぁ!?」
予告なく体の中でスティックが震えはじめ、文句も止まった。
「いっ…あ、や、だ……! な…んだこれ、中、と、入り口と、別々に震えて…っ、ひぃあ……っ!」
「気持ちいいですか?」
「あっ…あ、あぁっ……ん、ぃ、あぁ……!」
自分が何を口走っているのかさえ分からなくなるほど強烈な刺激だった。
すがるところを求めて、手をさまよわせれば、優しく抱き締められた。
「い、いつき、いつき……っ…!」
「…可愛い……」
人の気も知らないで悠長なことを呟く馬鹿の体にきつく爪を立てて、
「これ、やだ…っ、怖い…から、止めろ……!」
「いいですよ、壊れそうなほど乱れてください」
にやにやしながらそんなことを言って、一樹は脚の間に手を滑り込ませ、何かしら操作したようだった。
その途端、震動が不規則になり、動きがまるで予測出来なくなる。
「ひっ、い、やぁあ…っ! ふあっ、あっ、う………、ん、んん…、んっ…! あああ…っ!」
びくんと一際大きく体が震えたことしか分からなかったのだが、一樹は楽しげに、
「ああ、もう出ちゃいましたね。やっぱりあなたも一週間放っておかれると溜まります?」
「っ、なんでもいいから、これ、も、止めて、抜けって…!」
まだ強引に快感を引き摺りだされるような感覚に震えつつもそう訴えると、一樹はようやくその震動を止めてくれた。
ずるりとそれを引き抜かれ、心底ほっとしたところに、ひたと押し当てられた熱にぎょっとした。
「ちょ……っ…、い、一樹…?」
「あなたはこれで楽しまれたでしょうけど、僕はまだ足りませんし、そもそも、一週間振りなのにあれくらいで足りるわけないでしょう?」
威張れたことでもないと思うのに、恥ずかしげもなくそんなことを言ってのけるなり、本当にこいつは変態だ。
「……俺はもう疲れたのに…」
「ふふ、少しいじめ過ぎました?」
「…だから、これで今夜は終われよ」
と言って俺はそろりと脚を開き、迎え入れる用意をする。
一樹は嬉しそうに微笑して、
「……愛してます」
とそれこそこれまで数え切れないほど口にしてきた決まり文句を律儀に呟くのだった。