エロです
微妙に「お母さんは休めない」とネタ被りしてますよ

誘い受けなキョンが好きな方のみどうぞー


















































条件反射



それは、和希が小学校に上がって初めて迎えた春休みのことだった。
有希は仕事先の同僚と研修旅行に出かけてしまったので、残念ながら家族旅行とはならなかったものの、使えずにいた有給を今年度中にいくらか使っておこうと考えた一樹が数日の休みを取ったので、和希と三人でのんびり過ごそうとしていた。
ちなみに俺は、既にありがたくも在宅ワークに従事している身であり、締め切りさえ守れば時間はあるという、ある意味優雅な身の上だったから、随分と余裕でもあった。
…その辺りまでは、よかったんだが、有希が出発した翌日、一樹が熱を出してダウンしちまったのが悪かった。
予想外としか言いようがない。
「お前が風邪引くなんて…珍しい」
言いながらも寄せた眉の間隔を離せないのは、俺の栄養管理がまずかったからじゃないのかとか、夜中に布団を剥ぎ取っちまったんだろうかとか、色々考えていたからだ。
一樹は赤い顔をして咳き込みながらも、
「すみ、ません。心配、掛けて…」
「ああ、いい。いいから寝てろ」
病人食は食べさせたし、薬も飲ませた。
温かい格好もさせて、加湿器もフル稼働させているんだ。
後は寝て、自力で治させるしかあるまい。
だから俺は、
「和希にうつしたくはないだろ? うるさくされて眠れなくても困るだろうし。だから、ちょっと実家に預けてくる。その間、大人しく寝てろよ? 何かあったら電話してくれ」
俺が言うと、古泉は無理に目を開けることもしないで、大人しく頷いた。
苦しそうだな。
「…心配だ、――って、顔に書いてあるみたいだよ」
と言ったのは和希で、場所は実家に向かおうとする車の中だった。
「…悪かったな。実際心配なんだからしょうがないだろうが」
「風邪こじらせてどうにかなるほど、父さんも軟弱じゃないはずだけどね」
そう生意気なことを言いながらも、和希は眉を寄せている。
心配そうな表情、と見るなら俺といい勝負だ。
素直じゃない辺りは、俺のガキの頃以上って気がするが。
「大丈夫だろ。ただ、普段あれだけ元気な奴があそこまで寝込むってことはかなり酷いウィルスだろうから、お前を安全な場所へ疎開させたいわけだ。分かるよな?」
「はいはい。…まあ、母さんがついてるなら大丈夫なんだろうけど…」
そう言った和希はふいっと目をそらしつつ、
「……早く元気になれよって伝えといて。匿名で」
「愛息が泣きそうな顔で言っていたと伝えといてやろう」
にやりと笑った俺に、和希がわーわー叫んだ言葉は省略させてもらおう。
かなりやかましかったからな。
そうして、ぶすったれた和希をお袋に預け、俺は自宅にとんぼ返りする。
結構な時間が経ったから、いい加減眠れているだろうと思ったのだが、一樹は咳が止まらず、ろくに眠れていないようだった。
「大丈夫か?」
と聞いても仕方ないと思いながらも条件反射のように聞き、横向きに寝転がった背中を軽くさすってやると、一樹が涙目で頷いた。
「咳止め、効いてないみたいだな…」
どうしたものか、と思いながらも、俺に出来ることはあまりない。
精々、汗を拭いてやったり、お粥を食べさせてやったり、薬を飲ませてやったりするくらいのものだ。
和希からの伝言を伝えてやると、咳き込みながらも、
「それは、本当に早く元気にならないと、叱られてしまいそうですね」
と表情を和らげたが、すぐに辛そうに顔が歪む。
そのくせ、
「そんな顔、しないでください」
と俺を見つめて、苦しいだろうに笑みを作るんだからな、この馬鹿は。
「アホか。……お前こそ、そんな風に表情を作るなよ」
「…すみません、つい、クセで」
「俺の前でまで、しかもこんな時に、表情を作る必要はないだろ」
拗ねたような口調になっちまったのは、そうでもなければ咎めるだけの言葉になってしまいそうだったからだ。
一樹は困ったように笑いながら手を伸ばし、熱を持った手で俺の頭を撫で、頬に触れた。
そうして、
「…いけませんね。風邪を引いているとキスも出来なくて」
「うん?」
「うつしてしまうでしょう?」
「…ばか」
そう言って俺は一樹を引き寄せ、軽く口付ける。
「うつるもんならとっくにうつってるだろうし、うつして早く治るならさっさとそんなもん俺に押し付けちまえ」
「それも、大変魅力的なお誘いなんですけどね」
言いながら一樹の手が俺の背を滑り、腰に掛かる。
ちょっと待て、俺はそこまでは言ってないぞ!?
「分かってます。それに、」
そう苦笑した一樹は腰から手を離し、一際激しく咳き込んだかと思うと、
「流石に無理です…」
「……なんというか、本当に重症だな」
「ええ、全くです。あなたと二人きりで家にいられるなんて、滅多にない機会だとは思うんですけどね」
そういう馬鹿なことを言うだけの元気はあるわけか。
俺は呆れつつももう一度一樹にキスをしてやると、
「ほら、もう寝ちまえ」
「あなた…は?」
不安そうに見つめてくる一樹に、俺は小さく笑って、
「心細いなら、隣りで寝てやるが?」
「…いて、ください」
熱い手で軽く手を握られ、俺は笑みを浮かべたまま頷いて、布団の中に潜り込んだ。
「…本当に、すみません……。こんなの、らしく、ない…」
「いいって言ってんだろ。お前がここまで苦しそうにしてるのを見捨てて他の部屋に行くのは俺の方も……その、なんだ、辛い、し…」
顔が熱くなってくるのを感じながら言えば、一樹は小さく声を立てて笑った。
「ありがとうございます。うつったら、ちゃんと看病しますからね」
「当たり前だろ。…まあ、うつったところで俺はどうせ在宅ワークだからな。気にするな」
俺としては本当に何気なく言った言葉だったのだが、古泉は申し訳なさそうに目を伏せ、
「…恨んでませんか?」
と聞いてきた。
「恨んでって……何をだよ」
「僕の、つまらない嫉妬なんかで、あなたにまともな就職活動をさせてあげなかったことを、です」
……病気に罹った人間というものは本当に気弱になるものであるらしく、一樹もどうやら例外ではなかったようだ。
「…ばか」
小さく毒づいて、俺は一樹を抱きしめる。
「俺は、お前のことを家で待ってられるのも結構嬉しいんだよ。和希の面倒を見て過ごせるのもな。それに、一応仕事にありつけただけ、俺は幸運だった。……もし、仕事もなしに家にいろってことになってたら、そりゃあ多少は恨んだかもしれないがな。それでも、お前のことを憎く思ったり、嫌ったりなんかするか。……出来るもんか、そんなこと……」
「…っ、」
嬉しそうに顔を歪めた一樹が俺をきつく抱きしめる。
「…愛してるからな」
「僕も、です…っ。あなたが、好きです。他の何よりも、あなたを愛しています…!」
「頼むから、俺より先に死んでくれるなよ。…早く、憎たらしいくらい元気になって、俺を振り回してくれ」
頷きながらも、一樹は俺を離さなかった。
そのため、俺は熱を持った一樹に抱きしめられたまま眠る破目になったのだが、不思議とその熱さが不快ではなかった。
いや、不思議と、なんて言う必要はないな。
理由は明々白々としているんだから。

ところが、夜半になって問題が生じた。
より正確に言うならば、夜中になって問題が抑えきれないまでになったということである。
ここで思い出してもらいたいのは、うちの普段のライフスタイルのあり方だ。
気の利き過ぎる優しい娘を持ち、その年でそんなんでどうするんだというくらい物分りのよ過ぎる息子を持った俺たちは、月に一度はあれこれ言いがかりのような理由をつけて二人きりにされている。
勿論、それが嫌なわけじゃない。
文句を垂れつつも嬉しがっているし、しっかり幸せを享受してもいる。
だがな、それがまさかこんな風に作用するなんて思わないだろ、普通。
家の中に一樹と二人きりでいる、しかもひとつ布団に寝てるんだということを改めて自覚するなり、催すなんて!
……正直、今目の前に散弾銃を差し出されたら迷わず自分の頭を蜂の巣にしてやりたい気分だ。
至近距離で眠っているのは一応、「最愛の」と言って差し支えのない生涯の伴侶だ。
それも、かなりつらそうな風邪を患っている。
なんとか眠れたものの寝息は苦しそうだし、時折咳き込みもしている。
なのに、何で俺はこんな思春期真っ只中の高校男子みたいになってんだよ!
うう、一樹…すまん……。
かくなる上は、と俺はそっと一樹の腕の中から抜け出し風呂場に向かった。
冷水でも浴びて頭を冷やすかどうかするしかない。
繰り返し胸の内で詫びながら冷たい水を浴びても、体の熱は冷めてくれやしない。
むしろ、表面の熱が下がった分、内側が更に熱くなっていくようにすら思えた。
「くっそ……」
ちっとも大人しくなってくれやしねえ一心同体の方の息子さんを睨みすえた俺だったが、そんなことをしたって無駄なばかりか一層体温が上がっていくことは言うまでもない。
今だって、それを見ているだけで一樹の訝しいまでに巧みな口淫を思い出し、ぞくりと背中を這い上がる後ろめたい快感に体が震えた。
仕方ない、どうやら腹を決めるしかなさそうだ。
俺は春とはいえまだいくらか冷たい風呂場の床に腰をおろし、胡坐をかいた。
すまん、一樹。
もう一度繰り返してから、言うことを聞かない不肖の馬鹿息子に手を伸ばす。
いやらしく滑ったそれに指を絡め、強めに上下させると、荒くなった呼吸が唇の間から漏れた。
それに気をよくして、一樹の愛撫を思い出すように指で触れる。
敏感過ぎて痛いくらいになるような場所をこじ開けるように指の腹で引っ掻き、裏側まで丁寧に撫で上げる。
「っ、…ぁ、くぅ…」
風呂場の中に響く自分の声が嫌で、俺はシャワーから勢いよく湯を振り撒き、音を誤魔化そうと図った。
この調子なら、いけるはずだと思った。
――が、そうは行かなかったのは、はっきり言って一樹のせいだ。
俺は悪くない。
思えば一緒に暮らし始めてから早5年以上が過ぎ、付き合いはじめてからなら10年ほど過ぎたことになる。
それだけの間あれだけ色んな意味で熱心にあれこれされて来たんだ。
普通にイけなくなったって仕方ないってもんだろ、なぁ!?
というか、自慰自体いつ以来なんだ…?
考え出したら負ける気がして、それを思い出そうとするのは止めた。
代わりに、一樹のやり方を思い出す。
あの色の白さはそのままなくせに、実験なんかのせいで少しずつ荒れてしまっている手。
荒れていること自体を気にするというよりもそれで俺の肌を傷めないかと余計なことばかり考える一樹が、どんな風に俺に触れてくるか。
俺はそろりと指を胸へと滑らせる。
興奮にか、それとも肌寒さにか尖ったそれを指の腹で押し潰すと、ずくりと疼くように痛んだ。
「あっ……ん、ぅ…」
痛いと感じるのに、それ以上に気持ちいいと感じてしまうのは頭も体も作りかえられちまったせいだとしか思えない。
指に唾液を絡めて、それで尖りをゆるく押し潰しながら円を描くようにまさぐれば、体の中まで疼き始める。
こうなりゃヤケだ。
俺は手の平までデロデロになるくらい、自分の指を舐めると、胡坐をかいていた脚を崩し、その間に指を忍ばせた。
和希を別室に追い出して以来、研究だの仕事だので帰れない時期を除いて、三日と空けずに触れられ、開かれる体は浅ましいという言葉ですら言い表せないような様相を呈している。
そんなもん、自分の指で知りたくなかったがな!
潤滑剤として大して役に立つと思えないような唾液を絡めただけの指が、一本とはいえあっという間に飲み込まれるのはある意味壮観だった。
体の中の柔らかさも、熱さも、初めて知った。
一樹があんな猥らがましい顔をして、歯が浮くような恥かしい台詞で褒めたりからかったりするからどんなもんかと思ってはいたが、なんというか……うまく、言えん。
ただ、そんな指一本だけじゃ足りないと内部が訴えているのは、初接触の俺にも分かった。
だから、と俺は二本目を押し入れる。
少しだけ増した圧迫感と、さっきよりもう少し奥まで進んだ指に、ぞくぞくと体が震える。
もう少し奥に届けば、もっと気持ちよくなれると知っている体は、それが自分の指だってのに更に奥へと誘い込もうとする。
それでも、三本目にはまだ早いからと俺は入り口の辺りで抜き差しを繰り返し、一樹がするように指を開いてみたりなんぞして宥めすかす。
「ぁ、あっ…ん、…ぁん…っ…!」
零れる声ははしたなく、そのくせ切なげに響いた。
実際、切なくてならない。
自分の指なんかじゃ満足出来ない。
一樹が欲しい。
今すぐにでも眠ってる一樹の腹の上に跨ってやりたいくらい、欲しい。
それを、相手は病人だと理性が制止するが、それもいつまで持つだろう。
せめて、このまま一度イけたら、大人しく寝れることだけを願って、三本目の指を挿入しようとしたところで、不意にドアが開き、赤い顔をした一樹が顔をのぞかせた。
「な……何、してるんですか…」
「な、に……って…」
俺は一樹以上に顔を真っ赤に染め、見っとも無いことになっている部位を慌てて手で覆い隠した。
恥かしさと申し訳なさで死ねそうだ。
というか、本気で言う。
いっそ殺してくれ。
「だめですよ」
薄く笑った一樹が、躊躇いもなしに風呂場に足を踏み入れた。
まだシャワーは雨のように注いでいて、そのまま入ってくると濡れるのは目に見えている。
「ばかっ! 濡れたら風邪が悪化するだろうが!」
怒鳴りながら、反射的にシャワーを止めたものの、それでも一樹はいくらか濡れた。
「構いませんよ。それより、」
ニヤッと笑った一樹が俺を抱きしめながら言う。
「…何をなさってたんです?」
「き…っ、聞くなよ…!」
見たんだから分かるだろうが!
「見間違いか、風邪による幻覚症状かと思ったんですけど、違うようですね」
囁きが、かすかな笑い声が、耳に触れる。
それだけで、さっきまでどうしようもなかったはずのものが白濁を吐き出しそうになるのを感じた。
笑えない。
本気で笑えないぞこの事態は。
「シたく、なったんですか?」
喜色の滲んだ声で囁かれて、涙が出てきた。
「…そう、だよ…! 悪いか…っ!」
だが、全部お前のせいだ。
何もかも、お前が悪い。
「では、責任を取らせてください」
嘲笑を浴びせられたって不思議じゃない状況だってのに、一樹がくれるのはどこまでも優しい笑みだ。
ほんの少し含まれた揶揄の色だって、愛しさに滲んで見える。
伸ばされた手に抱きしめられるだけで歓喜に震えそうになりながら、
「待てって…」
と制止する」
「このままじゃ、お前の風邪が酷くなるだろ。頼むから、ここではやめろよ」
「…そうですね。では、早く寝室へ行きましょう」
そう言って一樹は俺を抱き上げた。
「ばかっ! 濡れたやつ抱えあげたらお前まで…」
「濡れても平気な気分ですよ。まさかあなたがあんなことをするなんて、夢にも思わなかったものですから」
「…軽蔑したけりゃしろよ」
そんなことを一樹がするなんて欠片も思わないで俺は唇を尖らせた。
それへ優しく唇を触れさせながら、一樹は笑う。
「するわけないでしょう? そんな勿体無いこと」
「勿体無いって…」
お前な。
「だって、そうでしょう」
そう言って一樹は意地悪く目を細めた。
わざとらしく声を潜めて囁くのは、
「ねえ、こんなことを前からしてらしたんですか?」
「なっ……!? す、するわけないだろ!?」
「それを聞いて安心しました」
クスッと笑って、一樹は俺をベッドに下ろした。
濡れた体のままだから、当然布団が濡れる。
後でどう始末をつけようかと思案しかかるのを遮るように、一樹は俺の指を恭しく取った。
それが何に使われた指なのかは言うまでもない。
「やっ…」
反射的にそれを引っ込めようとする俺にも構わず、一樹はそれに舌を這わせた。
「き、穢いからやめろ…っ!」
「穢くなんてありませんよ。…あんなことをするくらい、シたくなってたんですね。初めて、ですか?」
「ん…」
指先を舐められるだけでぞくりとした。
体から力が抜けて、ちゃんと考えることも出来なくなってくる。
「初めて、だよ…。大体、んなことしなくったって…」
「ええ、する必要もないくらい、愛してますからね?」
楽しげに笑いながら、一樹は俺の胸へキスを落とす。
「んんっ…!」
「ここも、触ったんですか?」
「さわ…った……」
「一度くらい、イきました?」
ふるふると俺は首を振った。
隠したって仕方ない。
それよりは正直に言って、早く体の熱を静めてもらいたかった。
「な……一樹…」
俺は手を伸ばして一樹の頭をかき抱いた。
「…早く…、欲しいんだ…。風邪引いて、調子悪いお前に、こんなこと言うの、は、悪いと思うんだが……でも…」
「我慢出来ない?」
「…ん」
頷けば、柔らかくキスをされた。
「本当に、可愛い人だ」
そう微笑んで、口付ける。
深く、強く。
それだけで、イけそうなのに堪えるのは、一樹が欲しくてならないからだ。
「頼む…から…ぁ…」
「そんな風に可愛くねだられては仕方ありませんね」
「いい、か?」
「ええ」
「……じゃあ、」
俺は腹筋に力を入れて起き上がると、一樹と体勢を逆転させた。
「え…」
驚いている一樹に、
「お前、やっぱりまだ調子悪いんだろ? 体は熱いし、目も潤んでる。だったら、無理せず寝ててくれ」
後は俺がするから。
「それは……」
「言わなくても、分かるだろ」
俺は一樹に出来るだけ布団を掛けた。
腰から下は掛けるに掛けられないが、上体だけでも温かくしておいた方がいいだろう。
そうしておいて、ズボンを軽くズリ下げて、目的のものを引っ張り出すと、それは緩く勃ち上がっているだけだった。
やっぱり、体調が悪いからだろうか。
それなのに止められない。
「ごめんな」
と謝って、俺はそれに唇をつける。
「っ…、謝らなくて、いいですよ…。全部、僕のせい、なんでしょう?」
笑いを含んだ声に、俺も笑みを返す。
「ああ、全部お前のせいだ。お前じゃないと俺はこうならないし、お前じゃないともう、満足にイけもしないんだからな」
指を絡め、舌を這わせ、手で扱きあげる。
苦しいほどに頬張っても、放したくなかった。
「上手に、なりましたよね…」
「それも、…っお前のせい、だろ…」
こんなことを他の誰かにするはずがない。
俺は間違いなく、一生こいつしか知らないし、こいつ以外欲しくない。
完全に勃ち上がったそれの上へと跨ると、さっきまでよく見えなかった一樹の顔がよく見えた。
熱のせいだけじゃなく、赤くなった顔。
欲情した、驚くほど艶かしい顔。
この顔を知っているのは、一樹の言葉を信じるなら、俺だけらしい。
そして俺は当然のように一樹を信じている。
だから、この顔は俺だけのものだ。
そう思うと、それだけで笑みが浮かんだ。
いやらしく揺れる腰を押し当てると、いつも以上に熱いそれに、目眩すら感じた。
「大丈夫ですか…?」
「んっ…平気、だ…。…入れる、からな…?」
そう予告して、俺は腰を沈めた。
欲しくてならなかったくせに、じわりじわりと進めるのは、その熱さに焼かれるような思いがするからだ。
「あっ、ぁ、んんっ…! あっつ、い…。なんだ、これ…」
「苦しくない、ですか?」
「んっ…! すげっ…イイ…」
熱くて蕩けそうだと口走ると、一樹も嫣然と微笑んだ。
納めきったまま、軽く前後に腰を揺すると、それだけでも達せそうなほど感じた。
熱さに焼かれ、融かされるようにさえ感じた。
「クセになったら、どうする…?」
囁くように尋ねれば、一樹はニヤリと笑って、
「あなたになら、抱き壊されたって本望ですけどね」
「それは俺が、…っん、やだ…」
「分かってます。…愛してますよ」
「あぁ…俺も、愛してる…」
もう一度キスをした後は、体が求めるまま上下に体を動かすだけだ。
深いところまで突き上げて欲しいと思っているのか、それとも一樹の高すぎる熱を奪い去ってしまいたいのか、自分でもよく分からなくなるほど、強く締め付けた。

翌日、案の定風邪を更に悪化させた一樹に俺が出来たことは、今度こそちゃんと看病をすることだけだった。