元ネタはラブプラスの愛花さん
どこがどうそうなのか分かったら多分凄い←
久しぶりに朝比奈さんに新しいコスプレさせたい、とかいう理由で、俺と古泉は部室から追い出された。 俺で代わりになれなくてすみません、と朝比奈さんに手を合わせたが、あんなどぎつい露出度の高い服じゃ俺には着たくても着れないからな。 …流石に着たいとも思わんが。 ともあれそんな理由で、珍しくも古泉と二人で、校内を散歩などすることになった訳だ。 それくらい長くかかりそうだったんでな。 古泉と二人でそぞろ歩き、というのは決して珍しくもないのだが、場所が校内の上、俺も古泉も制服姿である。 未だに男の格好でこいつと並ぶのが少しばかり苦手な俺としては少なからず緊張する。 だが、古泉は朗らかに、 「あなたと校内デートというのも悪くありませんね」 などと言いやがる。 「お前な…」 俺が呆れているということくらいは分かったんだろう。 古泉は軽く小首を傾げて、 「何かおかしいことでも言いましたか?」 と聞いてくる。 「おかしいだろうが。何でそんな楽しそうなんだ」 「今更そんなことを聞くんですか」 一転して苦笑を浮かべた古泉は、俺の肩を抱くようにして耳元に唇を寄せ、 「あなたと二人でいて、楽しくないことがあると思いますか?」 と恥かしいことを恥ずかしげもなく言ってのけた。 俺は慌ててその腕を振り解き、 「…っ、やめんか! 誰かに見られたらどうする!」 「僕は別に、見られてもいいですけどね」 「…だめだろ。お前にはちゃんと彼女がいることになってんだから」 そう呟いた俺に、古泉は軽く目を見開いた。 ……一体なんだよ。 「いえ……もしかして、不満なんですか?」 俺は常々、機関の人間としてでなく、おれの恋人としてのこいつは常識的だと思っていた。 しかしどうも、その認識は違っていたらしい。 古泉にかわって目を見開いた俺は、 「不満ってのはなんだよ?」 「いえ…そう聞こえたものですから」 「…不満なわけ、ないだろ。俺がお前と付き合ってる、なんて噂になるよりはずっといいに決まってる。なんと言ってもお前の彼女は美人だからな」 つらつらと喋っておいて、ふと俺は言葉を垂れ流すのを止めた。 …なんだ今の発言は。 いや、発言だけならともかく、なんだあの声。 はっきり言って、不満があってちくちくイヤミを言ってるようにしか聞こえないだろ。 古泉もそう思ったのだろう。 困ったように眉を寄せながらも笑って、 「本当に?」 と聞く。 …ああ、本当だとも。 その美人な彼女ってのが他人ならともかく、俺自身のことなのだから、不満を抱くだけ馬鹿馬鹿しい。 そんな、自分自身に妬くような真似が出来るほど、俺は脳内人格会議を進化させちゃいないぞ。 ただ最近、脳内でも女口調で喋りそうなのが出だしているのは危ない気がするが。 「いえ僕も、そんな危惧は抱いてないのですけれども、」 言い辛そうに一瞬言葉を途切れさせた古泉だったが、俺の反応をうかがうように俺の目を覗きこみ、 「…実は、女装してなくてもデートをしたかったりするのではないか、と思ったのですが……」 「……え…」 どうだろうか。 そんなことは考えてみた覚えもない。 俺は、女装して可愛い格好が出来て、しかもそれで古泉にちやほやされるのが嬉しい。 だから、デートしたいなんて戯けたことを思う。 男の格好でデートなんてするくらいなら、無謀な薄着で町に出ることの方を選んだこともあるくらいだ。 だから、そんなことはないと思うのに、 「せっかくですから、」 と古泉に抱き締められて、心臓が跳ねた。 「ちょ…っ……」 「今日は涼宮さんたちに呼ばれるまで、デートしましょうか」 校内だけですけどね、と悪戯っぽく笑う瞳に魅せられる。 「デート、しましょう」 こくん、と長門みたいに頷いた俺に、古泉は花のように笑った。 しかし、校内でデートってどうするんだ。 首を捻る俺に、古泉はにこやかに、 「普通のデートとあまり変わらないと思いますよ。歩いて、疲れたらちょっと休んで、お茶でもして」 「見るもんが大してないのが問題だけどな」 と俺が可愛げのないことを言っても、古泉は怯みやしねえ。 「いいじゃないですか。僕の方は問題ありません。…あなたといられれば、ね」 「……あほか」 毒づいた顔が赤くては無意味だ。 くすりと笑った古泉は、 「さて、ではどちらに参りましょうか」 とさり気なく俺の手を取る。 「よせって…」 と解こうとしても許さない。 「大丈夫ですよ。そもそも今日は試験前ですから、活動してるのは我々くらいのものでしょう?」 「それはそうかも知れんが……」 まだ渋る俺に、古泉はしょげたような顔をして、 「それとも、嫌ですか?」 …そういう聞き方はずるいだろう。 俺は古泉を傷つけない程度の小ささで、そっとため息を吐き出し、 「嫌なわけないだろ」 とその手を握り締めた。 嬉しそうに微笑んだ古泉に連れられて、中庭に出る。 「お茶でもどうです?」 自販機だけどな。 しかし、今日は朝比奈さんのお茶をいただく間もなかったからな。 「もらうか」 「はい」 何がそんなに嬉しいんだか、 「ここで待っててくださいね」 と俺を屋外テーブルにつかせ、古泉は小走りで自販機へ向かう。 そういえば、古泉から初めて超能力者がどうのって話を聞かされたのもここだったな、と妙に感慨深く思いながら、待つことしばし。 「お待たせしました」 と古泉は律儀に言う。 「大して待ってない」 と返す俺はというと、飲む前から、古泉の運んできたコーヒーが、あの時とは違って俺好みに減糖されていることを知っている。 それを嬉しく思いながら、小さく笑うと、 「どうしましたか?」 と聞かれたので、 「いや…こういうデートも悪くはないかと思ってな」 と返した。 嘘ではない。 ただそれは、今日がとても人気のない日だから言えることだ。 街中でこいつと二人、男の格好で並んで歩くなんてことはしたくない。 たとえ古泉が俺の格好に関わりなく、今日のように女の子扱いめいたエスコートをしてくれるとしても、だ。 そんな調子で、俺はどこか開き直りつつあったのだが、それにしても古泉の言葉には驚いた。 いきなり、 「…ねえ、あなたに触れてもいいですか?」 なんて言い出したんだからな。 「は…?」 驚いて見つめ返した瞳はどこか熱っぽく光っていた。 「触れたいです。デートなんだから、いいでしょう?」 いやいやいや、よくないだろう。 常識で考えてくれ古泉くん。 無茶にもほどがあるとは思わないかね? 「人目もないですし、いいじゃないですか」 「…校内でそういうのはよくないと思うんだが…」 「校則には書いてありませんよ?」 「そういう問題じゃないだろ」 「いいでしょう? …ねえ」 「……全くもう…」 品行方正に見えて案外ずるいんだから、手に負えない。 俺の呟きに妥協の色を見て取ったのだろう。 古泉が嬉しそうに笑うのがどこかしゃくで、俺は顔が赤くなるのを感じながら、 「…俺から、そっちに行くから」 と立ち上がった。 そうして古泉のすぐ側の椅子に座ってやる。 古泉がすぐさま向き直ったせいで、膝が触れんばかりに近い。 「…したかったん、だろ。好きにしろよ……」 「そうですね」 嬉しそうと言うべきか、好色そうと言うべきか迷うような目の細め方をした古泉が手を伸ばし、俺の頭に触れてくる。 ウィッグも何もつけていない、俺の短い地毛を古泉の手が優しく撫でると、それだけでくすぐったくなる。 「ん……っ」 思わず身を捩った俺に、古泉の笑みも深まった。 「可愛いです」 「は…恥かしいって……」 文句を言っても、勝手に声が甘くなっていては意味がない。 気をよくした古泉は、俺の頭から更に手を滑らせ、耳にも触れてくる。 その形を確かめるように指先でそっとなぞられ、くにくにと軽く揉まれると、それだけで背筋が震えるのは、こいつがそこを散々に弄ぶせいだ。 「ふぁ……っ…ぁ…」 耳を滑り降りた手は、顎のラインを撫でる。 ぞくんと体が震えたのに気付かれはしなかっただろうか。 びくつく俺に、古泉は殊更甘く、 「…好きですよ」 と囁いて余計に俺の心臓に負担を掛けようとする。 悪戯でもするように、指先がちょっと唇を掠めたかと思うと、指先で押された。 ふにふにと押されるのが少しだけ誇らしいのは、そこの手入れにも力を入れてるせいだ。 勿論、頬だって手入れしているし、少しでも顔が小さくなるようにと顎のラインをマッサージすることも忘れていない。 ただ唇というのはやはりよく触れられる場所だからな。 そうして感触を楽しまれるのも、 「気持ちいいですね」 と褒められるのも嬉しくてならない。 それもあって、 「ん…もっと……」 と求めたのに、古泉はくすりと笑って、今度はその指先を頬に滑らせる。 「意地悪……」 と上目遣いに毒づくと、前髪をかきあげるように額を撫でられた。 「は……ぁ…」 くすぐったさに震えているのか、それとも違うのかということも分からない。 ぼうっとしてきて、もう古泉以外何も視界に入らなくなる。 いや、とっくにそうなっていたのだろう。 俺は自分から身を乗り出して、 「もっと…触れよ……」 と恥ずかしげもなく求めていた。 古泉以外の何も分からない。 「嬉しいです」 微笑した古泉の両手が俺の両の肩に触れ、すっと腕を撫で下ろす。 それだけでも感じた。 「んぁ……あ…」 びくびくと体を震わせる俺を嘲笑うでなく、古泉はどこまでも優しく触れてくる。 その手がブレザーの中に入り込んできてさえ、俺は抵抗しようとも思えなかった。 ブラウス越しに肌の感触でも確かめるように撫でられ、俺は必死で姿勢を保つ。 そうでもしなければ、倒れるかどうかしそうだった。 倒れて、それで終りになるのが嫌だとさえ思っていたのが恐ろしい。 そうして力を込めて体を支えている腹筋を撫で上げられ、 「ひぁ…っ」 と喉が震えた。 それでもなんとか耐え切ったが、別のところが耐えられなくなった。 どこって…なけなしの理性が。 「古泉…っ、もっと近づいて、いい…よな……?」 熱を帯びた声で訴えると、古泉は頷いてくれた。 その肩に手を掛け、それで体を支えるようにして立ち上がると、そのまま引き寄せられ、古泉の膝に座らされる。 「…どうしたいんですか?」 「ん……分かってるくせに……」 今日のお前は本当に意地悪だ。 だが、そんなのも嫌いじゃない。 俺はそっと顔を近づけて、 「…キスして……」 と囁いた。 「喜んで」 と頷いて、俺の唇のすぐ側にキスを落とす。 俺は驚きに目を見開いて、 「んっ…ぁ… なんで、分かった…?」 そこにキスしてほしかったなんて、言ってもないのに。 「なんとなく、ですよ」 それなら、と俺は黙ってうつむく。 古泉は迷いもせず、額にキスをくれた。 簡単すぎただろうか。 じゃあこれは、と目を開いたまま向き直ると、古泉の唇が俺のそれに重ねられた。 そのまま入り込んできた舌が、俺の口内をくすぐり、舌を絡め取る。 「ふ…っ、ん、ふぁ……」 深いキスだが、俺が名残惜しく感じるほどあっさり離れた。 「ぁ…これだけ……?」 恨めしく見つめれば、今度こそ苦しくなるほどのキスをくれた。 最後に、ちゅっと唇に触れるだけのキスをされて、俺はもうどろどろに融けていたんだと思う。 自分から古泉の首に腕を回して、 「…大好き……」 なんて普段ならありえないほど甘ったるく囁き、自分からキスするなんて。 「僕もです」 嬉しそうに言った古泉が、雨のようにキスを降らせるのを心地好く感じながら俺はその体を抱き締める。 そうしてやっと体を離して、俺は真っ赤な顔のままで文句を言った。 「…やっぱり、校内でこういうことはもうやめよう。な…?」 「どうしてですか?」 と言う古泉は不満そうだが、分かれ、ばか。 「分かりません。どうしてですか?」 「…んなもん、決まってるだろ……」 俺はもじもじと――ああ、女装もしてないのにそんなことをしたって可愛くないってことは誰よりも俺が知っているから何も言ってくれるなよ――、 「…キスだけじゃ、足りなくなるから、だよ」 と答えて、おまけのようにキスをした。 これは余談になるのだが、実際この時の俺はさっぱり周りが見えていなかったらしい。 後で聞いた話によると、いつまで経っても戻ってこないばかりか携帯をいくら鳴らしても出ない俺たちを心配して、ハルヒたちが探しに来てくれたらしいのだが、そんなことにさえ気付けなかったんだからな。 やはり、男の格好のまま公衆の場で古泉といちゃつくのは、未来永劫封印するしかないようである。 |