エロですよー
お待たせしました?



































































プレゼント



銀行で、真新しいカードを使って振込みを確認した俺は、安堵の息を漏らした。
社長が「弾んでもらった」と言っていただけあって、予想よりもずっと多い額が振り込まれている。
一日がかりの大仕事だったとはいえ、たった一日でこれだけもらっちまっていいんだろうかと戸惑いながらも、正当な仕事の正当な報酬なのだからと大人しく受け取るだけである。
それから、今度は振り込み作業を行った。
本当は、もう少し小額のはずだったから、もらえるバイト料の大部分をつぎ込むつもりでいたのだが、これなら十分余裕がある。
その余裕で何をしようかと考えながら、俺は振込先を間違えないよう気をつけながら、慎重に作業を済ませた。
そうして、数日で届いた荷物にほっとしながら、今度はまた慌しく作業に取り掛かる。
いくらか雑な包装を剥がし、余った予算で揃えたおしゃれな包装紙と麻紐で中身を包みなおす。
あまり器用ではない俺にはなかなか難しい作業だったのだが、何とか見れるようにしてから、俺は息つく暇もなく、古泉に電話をした。
『どうしました?』
という古泉の声を聞くだけで自然に笑みがこぼれるのを感じながら、
「今、家にいるか?」
と聞くと、
『いますよ。来てくださるんですか?』
その声に喜色の滲むのが嬉しい。
「構わんか?」
『ええ、あなたならいつだって歓迎しますよ』
「じゃあ、すぐにいく」
通話を終わらせた俺は、最近買ったばかりの白いボア付きのコートを羽織り、お気に入りのブーツを履く。
大分寒くなってきている中、寒がりの俺が出かけてくると言ったからか、悟りきった様子で顔を見合わせたお袋と妹には、
「帰りは明日?」
「古泉くんによろしくねー」
などと言われちまったが、今更だと開き直ることにするしかない。
俺は荷物を抱えて家を飛び出し、夜道を一目散に古泉の部屋へと向かった。
「寒かったでしょう?」
と俺を迎えてくれた古泉は、俺のためにと暖かいコーヒーを用意してくれていた。
「一体どうしたんです?」
と言いながらも心配している様子でないのは、俺の様子でなんとなく察してくれているからなんだろう。
そのことをむず痒くも嬉しく思いながら、俺はなんとかラッピングした箱を古泉に差し出した。
「これ、もらってくれるか?」
「これは……」
どうやら、プレゼントを渡されるとは思っていなかったらしい古泉が、驚きに目を見開く。
その反応に満足しながらも、くすぐったくて、
「その、いつも、お前の世話になってるだろ? 俺からも、何か返したいと思ってたんだよ。それで………初めてのバイト料は、お前のために使うと、決めてたんだ」
大体、バイトもお前がいたからうまくいったようなものだし、と言いながら古泉にプレゼントを差し出すと、古泉は感激した様子でそれを受け取ってくれた。
「…嬉しいです。本当はもっと言いたいことがあるんですけど、うまく、言えないくらい、嬉しいですよ…。本当に、ありがとうございます」
「ばか、喜ぶなら、開けてからにしてくれ」
ほっとしながらもそう言えば、古泉も笑った。
「そうでしたね。では、失礼して、」
古泉は、滑稽なまでに丁寧な手つきで麻紐を解き、
「これ、あなたがラッピングしてくださったんですか?」
「まあ、な。見苦しいだろ?」
「いいえ、とてもお上手だと思いますよ」
ニコニコと笑う古泉は本当に嬉しそうで、こっちまで嬉しくなる。
そっと包装紙を開き、中身を確認した古泉は、驚いたように目を見開いた。
「これ……」
「お前、欲しがってただろ?」
「ええ、でも、これは確か結構高くて……」
「だから、バイトでもしなきゃ買えないと思ってたんだ。…気に入ってもらえたようで何よりだ」
笑う俺の目の前で、古泉は恐る恐ると言った様子で中身を手に取る。
それは、少しばかりレアな、外国製のボードゲームだ。
以前、古泉と二人でネットサーフィンなどしていた時に見つけ、やってみたいと話したのだが、国内では販売されていなかった上、製造元がすでにないと言う有様だったので、手に入れられないと思っていた。
それを俺が購入出来たのは、幸運にも通販サイトで扱われているのを見つけることが出来たためであり、そうでなければ無理だっただろう。
「嬉しいです。これが手に入ったことよりも、何より、あなたがそうしてちょっとしたことまで覚えていてくださったり、僕のためにと選んでくださったことが、嬉しくて、なりません」
感激のあまり泣きそうな顔になっている古泉に俺は苦笑して、
「取説なんかも英語版しかないんだ。だから、一緒に遊びたかったら、ちゃんと俺にも分かるように説明してくれよ?」
「ええ、喜んで」
でも、と古泉は戸惑うように俺を見た。
「本当に、よかったんですか? せっかくのバイト料でしょう? 欲しい化粧品なんかもあったんじゃ…」
「そんなもんは別にいいんだ。…さっきも言っただろ? 初めてのバイト料はお前のために使うって、決めてたんだから、お前は今更四の五の言わずに、大人しく受け取れ」
「…嬉しいです」
大事そうにゲームをテーブルに置いた古泉が、俺をそろりと抱き締め、キスをする。
優しい、触れるだけのキスを繰り返されて、くすぐったさに身を捩ると、更に強く抱き締められた。
俺からもキスをして、それから、古泉を引き倒すようにしてソファに倒れこんだ俺は、じっと古泉を見つめて尋ねた。
「ゲーム、しないのか…?」
「そんな声と顔で何を言ってるんです?」
くすくすと、少しばかり意地が悪く響くのに、だらしないほどに蕩けた幸せそうな顔のせいで台無しな笑いを漏らした古泉に、俺もいくらか偽悪的に笑った。
「まあ、確かに、ここで放り出されたら殴るくらいじゃ済まさんが」
「ゲームはまた後でゆっくりしましょう。今はあなたしか見えませんから」
「…ばか」
じゃれるように毒づきながら、キスをする。
息が苦しくなりそうなほど、深く口付けて、舌を絡めると、それだけで体温が上がる。
くすぐったくて、気持ちよくて、他の何も考えられなくなる。
「んっ……ぁ、古泉…」
名前を呼べば、キスをされる。
脱がされたワンピースが床に落ち、そこへブラもキャミソールも、パットさえも重ねられる。
残るのは、男の平坦な体だってのに、古泉は酷く優しくそこに触れる。
「あなたが好きです」
呪文のように、うわ言のように繰り返しながら、まだ時々疑ってしまう俺を責めるのではなく、俺のために優しく言葉を尽くそうとしてくれる。
そんな優しさを、男として苛立たしく思ったっていいはずだってのに、俺にとっては、ひたすらに嬉しいだけなのだ。
女の子扱いも、丁寧すぎて優しすぎる動作も、何もかもが俺への好意のあらわれだと思うと、くすぐったさも矜持も忘れて、ただただ嬉しくなってしまうのはもう病気のようなものだろう。
病気だとしても、ちっとも嫌じゃないのが、困ると言えば困るのか。
確かめるように、味わうように、古泉の唇が触れる。
指先がなぞる。
むず痒さに似た快感に体を震わせれば、古泉は嬉しそうな顔をして、さらに執拗にそこを刺激してくる。
今だって、恥かしいほどに赤くなった突起がいやらしく濡れ光るほどに舐めて、尚も弄んでいる。
「っ、古泉…っ」
抗議するつもりで上げた声も、甘ったれた嬌声にしかならない。
「これだけじゃ、足りませんか?」
意地悪く聞いてくる声すら、愛しくて、俺の病気は悪化の一途をたどっているらしいと分かる。
「もど、かしい…っ、ひ、ぅ…」
喉が鳴ったのは、古泉がいきなり俺の腰を撫でたからだ。
油断していたところに、柔らかな羽が触れるようにかすかに触れる動きに翻弄される。
「可愛いですよ」
睦言を囁く声に、少しずつ熱が増していく。
次第に呼吸が荒くなるのにつれて、古泉の動きから余裕が消え、いくらか激しさが増す。
その激しさすら、嬉しくなる。
愛しくて堪らなくなる。
「もう…いいですか?」
熱に掠れた声で囁かれて、そのまま首肯したくなるのを堪えて、俺は言った。
「ちょ…っと、待て…」
「はい?」
怪訝な顔をする古泉に、別にここでオアズケなんて言うつもりはないとキスをして、
「…俺が、したいから……」
と言うと、今度こそ古泉が目を見開いた。
呆然としている古泉に、ついつい笑ってしまいながら、俺は体を起こし、古泉をソファに座りなおさせる。
そうして、膝を跨ぐと、古泉にもようやく通じたらしい。
「いいんですか?」
「したいって、言ったろ…?」
熱に浮かされたような声で返しながら、古泉が指で散々に弄んだ場所へ、ズボンから取り出した古泉のものを押し当てると、それだけでぞくりとした快感が背筋を這った。
腰が抜けそうになるのをなんとか堪えながら、ゆっくりと腰を下ろすと、圧迫感に息が詰まりそうになる。
それでも、気持ちいいという感覚も確かにあって、体が震えた。
「あっ……ぅ、くぅ……ん…!」
息を吐き、声を出した方が苦しくないと分かっていて上げる声に、一々反応しているらしい古泉が、愛しい。
それをじっくり見たくて、腰を下ろしきったところで古泉に体重を預け、その顔を見つめると、
「大丈夫ですか?」
と聞かれた。
「大丈夫だって…。初めてでもないことくらい、分かってるだろ…?」
「それでも、負担が大きいでしょう?」
「分かってたが、それでもしたかったんだよ」
こっちの方が、いくらか快感をコントロールも出来る分、それだけ古泉を気持ちよくさせたいとか考えるだけの余裕が生まれるから、嫌いじゃない。
深く抉られるのは、苦しいけど気持ちいいし。
そんなことを考えながら、俺は古泉の肩に手を掛けて、重い腰を持ち上げる。
ずるりと抜けていく感覚に、寂しさにも似たものを感じながらも、同時にそれすら気持ちよくて、
「ひぁっ…あ…」
とみっともなく声を上げる。
自分が主導しているのにこれだけ気持ちよくなって声を上げるなんて、恥ずかしいったらないのだが、仕方ない。
余裕ぶった古泉の顔を見るといくらか悔しさが込み上げてきたので、思い切り締め付けてやると、
「っく、わざと、締めたりしないでくださいよ…」
文句を言われた。
「ざまあみろ」
とせせら笑うように言いながら、腰を揺らす。
女の子の格好をするのは好きだ。
古泉に――ってのが重要なわけだが――、女の子扱いされるのも、好きだ。
でも、俺にもやっぱり男としての矜持はまだ残っているらしく、一方的にされるくらいなら、俺からも気持ちよくしてやりたいなんて思う時もあるわけだ。
羞恥心が邪魔をして、滅多に出来やしないがな。
「はっ……あ、イイ、か…?」
古泉にすがり、腰を動かし続けることをやめられもしないまま聞けば、古泉はニヤリと笑って囁いた。
「ヤラシイ顔して……」
その声の響きだけで達してしまいそうになった俺は、悔し紛れに、
「っ、うる、っさい…! お前のが、よっぽどだ…ぁ…!!」
怒鳴りながら、古泉の肩に噛み付いてやった。