ハルキョン(←間違ってない)で微エロです
読み飛ばしてもなんら支障のない話ですので、好きな方だけどうぞ
「お邪魔しまーす!」 一応そう言って、あたしは有希の部屋に上がりこんだ。 そこでは既に有希とキョンが寛いでて、有希はお裁縫の真っ最中。 キョンはワンピース姿で猫みたいに床に寝転がってたわ。 「あんた何やってんの?」 「んん……ちょっと、眠くてな…」 そう言ってあくびをすると、余計に猫みたいだった。 「あんた、猫耳とか似合いそうね」 あたしが言うとキョンはぎょっとした顔をして、 「んなもん似合って堪るか!」 「だって、あんた猫っぽいじゃない。猫耳メイドなんて在り来たりだけど似合いそうだし。…あ、それともいっそチャイナ服なんか似合うかも」 「勘弁してくれ…。大体、チャイナ服なんてぴったりした服は流石に無理だ」 「勿体無いわね」 「どこがだ。あんなもんはボンキュッボンみたいな体型じゃなきゃ似合わんもんだろうが」 ボンキュッボンってのも古いわね。 まあ、言いたいことはよく分かるけど。 「あんたが本当に女の子だったらねー…」 「そうしたら、かえっておしゃれなんかには少しも興味を持たなかったような気がするけどな」 「かもね」 なんて言ったって、キョンが女装するのは古泉くんの反応が面白かったからなんだし、おしゃれするのだって、古泉くんのためなんだもの。 古泉くん自身はキョンが着飾ったりしなくてもキョンが好きだろうし、むしろ、本当にキョンが女の子だったとしたら、悪い虫がつくのを心配して、地味な格好とかさせそうね。 「分かったら諦めてくれ」 そう言ってあたしから目をそらすように寝返りを打ったキョンは、有希が縫い続けているものを見つめて聞いた。 「なあ、この前から何作ってんだ?」 「……ドレス」 「ドレス? んなもん作ってどうするんだ? 着て歩いたり出来ないだろ?」 「…そのうち必要になるはずだから」 訳が分からん、って顔をしたキョンじゃなくて、はっきりそう言った有希にあたしは言ってあげたわ。 「心配しなくても、着る機会くらいあたしが作ってあげるわよ」 キョンは、げっと小さく声を上げて、 「要らん」 「何よ。着れたらいいんじゃないの? それに、せっかく有希が作ってくれたのに着ないのは勿体無いわよ」 「そういう問題じゃないだろ」 「ドレスを着るんだったら、やっぱりダンスくらい踊れないと格好がつかないわよね? あんた、やっぱり古泉くんと二人で社交ダンスの練習しない?」 「するわけないだろ! 大体、それ、俺が女役を覚えなきゃならんってことじゃないのか?」 「当たり前でしょ」 何今更馬鹿なこと聞いてんのよ。 「どの面下げて習いに行けって言うんだ!」 「ダンスくらい、ビデオでも見たら覚えられるでしょ」 「…そんな簡単なもんじゃないと思うぞ」 「じゃあ、ダンスはなしでもいいから、ドレスは着なさい。有希、古泉くんのために燕尾服でも作れる?」 有希は少し考えた後、 「…作ってもいい」 「じゃあ、頼むわね」 いつ着せてやろうかしら。 楽しみだわ。 そんな風に話してるうちに、みくるちゃんが来た。 「遅くなっちゃいました」 「いいわよ、別に。さっさと上がりなさい」 有希が黙ってるからあたしが代わりに言うと、キョンも、 「朝比奈さん、いらっしゃいませ」 なんて寝転がったまま言ってる。 みくるちゃんは、きょとんとした顔でキョンを見た後、楽しそうに笑って言ったわ。 「キョンくん、なんだか猫さんみたいですね」 「朝比奈さんまでそんなこと言うんですか?」 拗ねてるような顔をするキョンに、みくるちゃんは笑顔のままで、 「だって、そっくりだもの」 「そうですか? そんなことはないと思うんですが…」 なんて考えながら、ころりと寝返りを打つと、余計にそう思えたわ。 「これ、動画にでも撮って古泉くんに見せたらどうなるかしらね」 あたしが言うと、キョンは慌てて飛び起きた。 「冗談でも勘弁してくれ。古泉にこんなだらしないとこ見せて堪るか!」 そういう問題なの? 「あんた、普段はもっと凄いとこ見せてんじゃないの?」 「う……まあ、そう、かも知れんが……。いつもあいつの世話になってばっかだし……」 「それでどうして、今の可愛いのを見せるのが嫌なんだか」 呆れるあたしに、キョンは真顔で、 「可愛くなんかないだろうが」 「…あんた、本気?」 「はぁ?」 …本気で言ってるわけね。 「……ねえ、頼むから、変質者にストーキングされてそのまま暴行されてお陀仏なんてやめてよ?」 「んなことになるわけないだろうが」 「その危機感のなさが心配なのよ!」 はっきり言ってやると、ぽかんとするキョンとは裏腹に、有希もみくるちゃんも頷いてた。 やっぱり、あたしだけじゃないのね、心配してるのは。 首を傾げてたキョンだったけど、分からないことを考えるのはやめたとばかりに放り出して、 「それよりハルヒ、お前、何かあって俺たちに召集を掛けたんじゃなかったのか?」 「……ああ、そうだったわね」 思い出すのに時間が掛かっちゃったわ。 あたしもまだまだね。 「面白いものが手に入ったからみんなで試してみようと思って」 あたしがバッグの中から取り出したのは、日本酒の一升瓶で、キョンがぎょっとした顔をしたのが見えたわ。 「お前、何考えてんだ?」 「いいじゃない、これくらい。これ、面白いのよ。花から採った酵母で作ったお酒なんですって。凄くいい匂いで飲みやすいっていうから、わざわざ通販したんじゃない。感謝して飲みなさい」 「まだ未成年だろ」 「あんただって前に飲んだでしょうが。一回飲んだら同じことよ」 あたしは有希に、 「有希、グラス借りるわね」 と一応断ってから台所に行って、適当なグラスを四つ取ってきた。 「じゃ、開けるわよ」 キョンはため息を吐くだけでとめようとしない。 あんなこと言ってたけど、多分、あいつも興味があるのよね。 薄い不織布の包みを破くように開けて、瓶の口を出す。 そうして貼られた封印に切り目を入れて、ふたを引くと、ぽんと気持ちのいい音がして、ふわりと果物みたいな匂いが漂った。 「ふわぁ…いい匂いですね…」 みくるちゃんがびっくりした声を出している横で、キョンも鼻を鳴らした。 「…本当だ」 「予想以上ね。味もいいと嬉しいんだけど」 とくとくっとグラスについで、皆に回す。 有希の裁縫も一時中断。 それぞれグラスを手にとって、乾杯の声を上げた。 一口舐めるように飲んで、口々に呟く。 「…わ」 「……」 「…うまい」 「本当に美味しいわね」 キョンも頷いて、 「そうだな。ジュースか何かみたいだ」 こくんともう一口飲んだみくるちゃんは、早くも顔を赤くして、 「そうですね…でも、やっぱり、お酒です…」 なんてふにゃふにゃ言ってる。 本当に弱いわ。 キョンは意外と平気な顔でくいくい飲んでる。 有希は……ちゃんと味わってくれてるのかしら。 まあ、とにかくそんな風にして飲み始めたのはよかったんだけど、その後がまずかった。 みくるちゃんは少なめに注いで上げたのに飲み干す前に寝ちゃうし、キョンも二杯目の途中から焦点が怪しくなってきた。 あたしもついつい飲みすぎちゃって、平然と飲む有希にギブアップ。 飲みやすくてもやっぱり日本酒だったってことね。 赤い顔して座ってる間に、有希は一度客間の方に行っちゃった。 少しして戻ってきて、 「…布団、敷いたから」 と言ってまた飲み始める。 つまり、あたしに運べってこと? ……しょうがないわね。 団長として、責任くらいとってやろうじゃないの。 「ほら、キョン、寝るんだったら布団に行きなさい」 言いながらぺちぺちとダウンしてるキョンの頬っぺたを叩く。 「ん……運んで…」 「無理言うんじゃないわよ」 古泉くんじゃないんだから。 むにゃむにゃ何か言ってるキョンを、無理矢理引っ張り起こして肩を貸すと、 「んぅ…」 とかなんとか言いながら、あたしに体重かけてきた。 「古泉…お前、縮んだ…?」 「古泉くんじゃないって言ってんでしょ」 「…そっか」 ぼうっとしてるキョンを連れて、客間に入る。 なかなか歩いてくれないくせに、キョンはどういうつもりか後ろ手に襖を綺麗に閉めた。 そのまま、ぽすんと布団に倒れこむ。 「こら、布団の上に寝たら掛けられないでしょうが」 「んん……ぅ…」 動かないキョンに、 「動かないと……こうよ!」 って言って横腹をくすぐると、 「や、ぁ、…っん、くすぐ、った……!」 とやけに色っぽい声を上げた。 ドキドキするのは多分、お酒のせいだけじゃない。 「くすぐったい? 気持ちいいんじゃないの?」 キョンは笑って、 「半分くらい?」 「もう」 あたしは諦めてキョンの隣りに寝転がって、 「…ねえ、キョン、古泉くんにもくすぐられたりするの?」 「するぞ…。あいつ、結構すけべだし…」 むっつりすけべって奴? 「だな」 「ふぅん…。どういうことされるの?」 前にも聞いたけど、お酒が入ってる今だったら前よりもっと赤裸々に教えてくれるかもしれないと思って聞いたのに、キョンはくふくふ笑いながら、 「んん…ないしょ…」 「何よ、もう!」 もう一回くすぐってやるんだから。 「ひゃっ、あ、…っや、あぁ…ん」 文句ともなんとも言えないような声を上げるキョンの体に、調子に乗ってぺたぺた触る。 横腹だけじゃなくて、胸や肩、首筋、背中なんかも触ると、キョンが恥かしいくらいの声を上げる。 それが面白くて、あたしは悪戯を続けてしまった。 有希に聞こえるかもしれないと思いながらも止められないくらい、楽しかった。 後ろめたくて、楽しくて、止められない。 ニヤッと笑って、 「気持ちいいの?」 って聞けば、キョンはとろんとして、 「ん…イイ……。もっと、触って…」 なんて言う。 だからあたしはみくるちゃんにするみたいに、耳を甘噛みしたり胸を触ったりした。 もちろん、キョンとみくるちゃんじゃ体型が違いすぎて、同じように胸を揉んだりは出来なかったけど。 それでも、ぷっくり立ち上がった乳首とかを押し潰すだけで、 「あん…っ、ん、そこ、もっと…して…」 なんて、甘い声を上げるキョンが面白くて止められない。 いけないって思うのに、そう思うほど止められない感じは、麻薬と同じなのかもしれないなんて思ったくらいだった。 でも流石にまずいと思って、あたしが体を離そうとした時だった。 キョンの手があたしの背中に回って、ぐいっと引き寄せられる。 綺麗に唇が重なって、戸惑うあたしの唇をキョンの舌がくすぐる。 「…あ、ん……っ…」 さっきまでキョンの口から飛び出していたような声が、あたしの口から漏れる。 キョンのがうつったみたいだって思った。 びっくりして何も出来ないあたしの舌をキョンがからめとる。 軽く音を立てて吸い上げたり、ぺろぺろ子猫か何かみたいに舐めたりしてる、その動きにあたしは翻弄されるしかない。 「ん……は…ふ」 満足気に唇を離したキョンは、確かにあたしを見たはずだった。 でも、キョンは言ったの。 「…古泉……好き、だぞ…」 って。 本当に幸せそうに。 そのまま、ゆっくり目を閉じて、キョンは眠っちゃった。 残されたあたしは、ずきずきと胸が痛んでどうしようもなくなっていた。 なんてことをしちゃったんだろう。 完璧に酔っ払ってるキョンに、古泉くんとの見分けがついてないことも分かってたのに、あんなことしちゃって。 古泉くんに知られたら……ううん、そうじゃなくても、申し訳ない。 どうしたらいいのかも分からない。 隠すのがいいのか、正直に謝った方がいいのか、それさえも。 ただ、苦しくて、辛くて、今のことは全部忘れたいって思った。 なかったことにしたい。 そうなればいいのに。 まだ体は熱いのに、痛いくらい冷たい涙が、頬を伝い落ちた。 「おはよ…」 頭がガンガンするわ。 やっぱりお酒なんてよせばよかった。 そう思ったのはあたしだけじゃなかったみたいで、キョンも眉を寄せながら、 「もう酒なんか飲まんぞ…」 って唸ってる。 「そうね。多分、その方がいいわ」 言いながら、ちょっと違和感を感じた。 なんだろう。 何か忘れてるような、変な気持ち。 「ねえ有希、あたし、酔っ払ってまた変なことしちゃったりした?」 あたしが聞くと、有希はしばらくじっとあたしとキョンを見つめた後、ふるふると首を振った。 「本当に?」 「本当。…何もなかった。大人しく寝ただけ」 「そう。…有希に迷惑掛けなかったんだったらいいわ」 有希が言うなら本当にそうなんだろうし。 でも、どうしてだろう。 猛烈に、古泉くんとキョンに謝りたいなって思った。 でも、何もなかったのに、理由もなくそんなことしたら驚かれるだけだろうから、しないでおいた。 もやもやも、少しすると消えてしまった。 きっとそれで、よかった……のよね? |