自重しないでエロです
酔っ払いはタチが悪いよねって話でもあります
あと、言うまでもないことですが、未成年の飲酒は推奨されませんので真似しないように←










































ドランク



ハルヒは、あるいはお義姉さんは、ここに来たら酒盛りをしなくてはならないとでも思っているんだろうか。
去年確かに、もう酒は飲まないと誓ったはずだったのだが、夕食の席は気がつけば立派な酒宴に成り果てていた。
かく言う俺も既にワインをかなり飲まされて、頭が朦朧とし始めているところだ。
朝比奈さんは当然のように潰れ、テーブルに突っ伏してすやすやとお休み中だし、ハルヒは楽しそうにけらけら笑いながらお義姉さんに絡んでいる。
…どうやら俺の女装の話で盛り上がっているらしいが、細かくは聞こえないのをいいことに知らないフリをしたい。
長門はかぱかぱと杯を空け、古泉は古泉でまだ素面のようだった。
「お前、ちゃんと飲んでるのかぁ?」
呂律さえ怪しくなりながらもそう聞くと、古泉は苦笑しながら、
「飲んでますよ」
「なのになんで平気なんだよ」
「それは、強さが違うってことではないでしょうか。…あなたはそろそろよした方が良さそうですね」
「そうか…?」
「ええ。もう顔も真っ赤になってますよ」
揶揄するように笑った古泉に、しなだれかかるようにすると、古泉が一瞬身を竦ませたが、抵抗されないのをいいことに、俺は古泉の膝に腰を下ろした。
「あ、の…」
「飲むの止めたら、もう寝るのか?」
「そう…ですね、お休みになった方がいいかと……。部屋まで送りましょうか?」
俺はふるふると首を振ると、
「…お前は?」
「僕、ですか?」
ぽかんとする古泉に小さく頷き、
「お前がまだ残るんだったら、俺も残る」
「……えぇと…」
「だから、俺を寝させたいならお前も寝ろ」
「……あなた、見た目以上に酔ってるんですね」
困ったようにため息を吐いた古泉に、
「酔ってない」
「酔ってますよ。全く……」
続きは言わず、古泉はただ小さく笑った。
そうしておいてハルヒの方に向き直ると、
「すみません、この人がもう酔っ払ってしまっているようなので、部屋に連れていきますね」
ハルヒは上機嫌のまま、
「よろしくね、古泉くん。キョン! あんまりワガママ言って困らせるんじゃないわよ!」
うるさい。
というか、恋人にくらいワガママ言わせろ。
「ちょっ…」
隣りで絶句する古泉に、
「…何か違うか?」
「いや、あの……大丈夫、です、か?」
何がだ。
「…相当酔っ払っているように思いまして」
「酔ってないぃ…」
古泉は小さくため息を吐くと、
「ほら、部屋に行きますよ」
と立ち上がり、俺の手を取った。
「ん…」
すりっと顔を腕に摺り寄せると、気持ちよかった。
もっと体を近づけたら、もっと気持ちよくなると思った。
だから俺は、
「もっと、」
と体を摺り寄せた。
「お願いですから、真っ直ぐ歩いてください」
困ったように言われて、首を振る。
今どこを歩いているのかは分からない。
ただ、冷やかす声が聞こえないからもう食堂から離れたことだけは分かった。
べったり体をくっつけて、古泉の首筋に唇を近づける。
ふっと息を吹きかけると、
「くすぐったいですよ」
「じゃあ、これはどうだ?」
悪戯心が湧いてくるままにそこに口付ける。
「だめですよ。誰かに見られたいんですか?」
「見られたって、知ってる人間しかいないだろ…」
「それでもです。あなたのそんな顔、誰にも見せたくありません」
「そんな顔…?」
どんな顔だよ。
「そんな、男を誘うような顔、ですよ」
「…違う」
「違わないでしょう」
「違う。…男じゃなくて、お前、だ」
誰がほかの男なんて誘うかよ。
俺はお前じゃなきゃならないんだからな。
「……全くもう…」
呆れたように呟きながらも古泉は笑って、
「ほら、早く部屋に行きましょう」
「う…ん……」
答えながら古泉にキスをして、そのまま、体を突き離したりもせずに歩いた。
歩き辛いとか、そんなことはどうでもいいくらい、古泉に触れていたかった。
「着きましたよ」
と古泉が言い、部屋の電気が点いた。
「大人しく寝てくれます?」
さて、どうだろうな。
寝るというのが睡眠をとるという意味ならとりあえず却下だ。
「困った人ですね」
古泉はそう笑いながら、
「酔っ払ってる時は、無理しない方がいいんですよ?」
「人を心臓病持ちのおっさんみたいに言うな」
言いながら古泉をベッドに押し倒してやった。
唇を貪って、舌を絡める。
それだけで気持ちいいのに、更に欲しくなる。
「ぁ…っ、は……ぁ…」
息をすることさえままならなくて、苦しくなりながら古泉の手に触れる。
「こ、いずみ……触れ、って…ぇ……」
そう言うと、古泉の喉が鳴るのが分かった。
古泉もやっぱり興奮しているんだろうかと思うと、ぞくぞくする。
「気持ち悪くなったりしたら、ちゃんと言ってくださいね?」
そう念を押す古泉に、
「ん…。ゲロ塗れのキスなんて嫌だからな」
「そういう意味で言ったわけじゃないのですが」
苦笑しながら古泉は慎重に背中のチャックを下ろすと、俺より一回りは大きい手を服の中へ滑り込ませた。
毎度思うのだが、どうして女物の服って奴はこうも頼りないんだろうな。
普通、こう簡単に侵入を許すようじゃまずい気がするのだが。
俺の場合は別にそれで構わないとはいえ、若干気になる。
「あぁ…ん、古泉…っ……」
「ずっと思ってたんですけど、今日のこの服は誰が用意したんです?」
「ふ、ぁ……? 似合わん、か…?」
「いえ、とってもよくお似合いですよ。…淡い薔薇色のドレスなんて、予想もしていなかったので驚かされましたけど、あなたにぴったりで。……ぴったりだからこそ、誰が用意したのか気になったんですが」
なるほど、そういうことか。
「これは、お義姉さんが用意してくれたんだ。…ハルヒたちも同じデザインで色違いのを着てただろ?」
上着のデザインだけ少しずつ変えて、ぱっと見そう見えないようにしていたあたり、お義姉さんは本当にセンスがいいと、俺としては思ったのだが。
「やっぱりあの人でしたか」
そう言った古泉が、イラついたかのように強く俺の胸の突起を抓んだ。
「んっ……!」
「本当にどうしてあなたは僕からの贈り物は受け取ってくださらないのに、ほかの人からだと簡単に受け取るんですか?」
「やっ…、だ、って、お義姉さんから、だし……」
「ほかの人でもそうでしょう? それに下心があるかもしれないとは、少しも思わないんですか?」
「あるわけ、な…っ、ひ、ぁう……」
「あなたは普段忘れがちなご様子ですけど、あなたは男性で、彼女らは女性なんですよ?」
お前はそんなことを思ってたのか、と全く予想してなかったわけでもないのにそう明言されると驚く。
こいつもこう見えて酔っ払ってるんだろうか。
そんなことを思うと共に、そうでもなければ言ってくれない古泉に少しばかり呆れ、ついでになんだか嬉しくなった。
古泉がそんな風に妬いてたことがくすぐったくなる。
俺が堪えきれずに笑うと、古泉は眉を寄せて、
「なんですか?」
「いや、お前がそんなことを言うとは、思わなかったんでな」
古泉は耐えかねたように顔を赤くして、
「……っ、僕だって、聖人君子じゃないんです。あなたがどんなに僕を愛してくださっていると分かっていても、それでも、いつかあなたの目が覚めて、僕ではなく、あなたに相応しい女性の下へ行くのではないかと思わずにはいられません…!」
「分かってる」
そう言って古泉に口付ける。
あやすように、落ち着かせるように。
「お前が聖人君子じゃないってことくらい、ちゃんと分かってる」
そうじゃなかったらこんなことだって出来ないだろ。
ただ、
「お前が、そんな風にストレートに言うなんて、思わなかったんだ。聖人とまではいかないにしても、かなり真面目だろ、お前」
「そうでもないと…思いますけど……」
「十分そうだろ。…俺だけかと、思っちまいそうになるんだよ。妬いたりしてるのは」
「そんな、」
「分かってる」
まだぐだぐだ言い出しそうになる古泉を制して言う。
「分かってても、思いそうになる時だってあるだろ。やっぱりお前の邪魔になってるんじゃないのかとか、色々と…。だから、」
俺は至近距離にある古泉の目から視線を出来うる限りそらしながら言った。
「……嬉しかったんだ。ああ言われて」
古泉は一瞬ぽかんとして俺を見た後、小さく笑った。
「僕の気持ちも知らずに、酷いですね」
「お前のがよっぽど酷いだろ?」
「どうしてです?」
「……口ばっかり動かしてんじゃねぇってことだ」
古泉は軽く声を立てて笑った後、
「すみません」
と謝って、俺の体に触れたままじっとしていた手を動かし始めた。
「…ぁ、ん…っ! 誰に、服をもらおうが…こんな風に脱がさせてやったり、体、にっ…触れ、させたり、すんのは、……お前、だけなんだから…な…」
「ええ。……僕も、ですよ。あなただけです」
囁かれる言葉だけで熱がどうしようもなく跳ね上がる。
嬉しいのか何なのかさえ分からない。
硬くなったものに触れられ、軽く舐められると、抑えきれない声が上がった。
「あまり声を上げない方がいいですよ。…防音までは行き届いてない部屋ですから」
「…っん、ら、って、無理…っ!」
頭どころか視界までぐるぐる回ってる。
ふわふわ気持ちいいのは古泉との行為なのかそれとも酒のせいなのかさえ分からない。
「気持ち、よくて……あっ、声っ、抑えらんな…っ、ひう、ぁ、ああ…!」
「まだ指も入れてないんですよ?」
揶揄するように囁かれても、その言葉自体、快感に変換される。
「廊下にまで響き渡っても知りませんからね」
そう言うってことは、それを理由に止めないってことだな。
それにほっとしているのか、喜んでいるのかもよく分からないまま、俺は頷いて、続きを求めた。

「な……んだこれ」
目を覚ました俺の第一声はそれだった。
全身ぐちゃぐちゃのどろどろだ。
キスマークはあちこちに残っているし、拭うことさえしなかったらしい白濁はぱりぱりに乾いて気持ち悪い。
背中にまでべったりってのはどういうことだ。
どこかのエロゲか電波ソングの如く「いいから早く掛けて」なんて俺が言ったんじゃないことを祈りたい。
とりあえずシャワーだ。
……俺の案内された部屋にシャワーがついてたってことは、お義姉さんには全て予想の範囲内だったと言うことなのだろうか。
それはそれで恐ろしい。
のそりとベッドから起きだそうとしたところで、ずきんと腰が痛んだ。
本当に何だこれは。
初めてした時だってここまでじゃなかっただろ。
古泉も酔ってたのか?
そうなのか?
というか、俺が酔っ払いやすいってことくらい、どうせ分かってるんだから無茶させるなよ。
腹いせ、とばかりに古泉を叩き起こし、
「シャワー浴びさせろ…っ」
と唸ると、まだ寝ぼけたような顔をした古泉は、
「シャワー……ですか…?」
「お前……今何時か分かってんのか?」
朝と言うより昼と言った方が近いような時間だぞ。
「えぇ!?」
やっと目が覚めたらしい古泉はがばっと起き上がったが、どこかが痛むように顔をしかめた。
「どうかしたのか?」
「ええ…まあ、ちょっと……」
ちょっと何だよ。
「……筋肉痛、ですかね。昨夜は少々酷使してしまいましたから…」
そう笑った古泉のにやけた面といったらなかったな。
俺は顔を真っ赤にしながら、昨夜の自分を呪い、ついでに全て記憶しちまっているらしい野郎の腹をぶん殴ってやったのだった。

余りにも多くて隠し切れないキスマークのせいで、お義姉さんが用意してくれた水着を着れなかったことは言うまでもない。
加えて、常識的な人々にはばつの悪そうな態度を取られ、自重しない人々には興味津々の眼差しを向けられたことも。


……二度と酒なんて飲むものか…!