微エロです
ていうか私の大好物自慰ネタです←
苦手な人はバックプリーズ
毎日毎日、見世の時間には俺は自分の部屋でぼんやりすることになった。 古泉がその分も花代を払っているなら、その間だけは俺は古泉だけのものなんだと言い聞かせて、じっと部屋に座っている。 ハルヒが前に語って聞かせた、仕事をする上での心意気を思い返すまでもなく、その間はひたすら古泉のことだけを考えた。 そうでなくても、俺の頭の中は古泉のことばかりになっちまっている。 文箱から引っ張り出した古泉からの手紙を広げて、その汚い字を見つめるだけでも嬉しいし、切ない。 古泉の声を思い出し、その言葉を思うだけで胸が震える。 「好きです」 と、応えられない俺にも構わず、いくらだって囁かれる甘い言葉。 俺からそれに応えられたら、それに古泉が怖気たりしないなら、と想像するだけでも顔が緩む。 想像するだけなら勝手だし、現実には不可能なことだって可能になるはずだろう? だから、と俺は古泉からのたくさんの手紙に顔を埋めて、そっと囁く。 「…俺も、好きだ……」 嬉しいです、と古泉が答えてくれたら。 あるいは、黙って抱き締めてくれたら。 …それだけでも、俺は幸せなのに。 本当の意味で通じてなくてもいい。 手練手管の一部だと見られたって構わない。 古泉が逃げずに、他の客が女の子にそうするように、惚れたという言葉さえ嘘だと分かっていて受け入れる度量のある男だったらよかったのに。 「好き……、好きだ…。古泉……」 呟いただけ楽になるのか、それとも呟くほどに苦しさが増すのか分からないほどに、胸の中は熱くて息苦しい。 『あなたが好きです』 俺の返事がないと分かっていて囁いてくれる声の優しさを思うだけで、泣きそうになる。 涙が零れそうになるのを堪えながら、昼見世の終るのを待っていると、不意にどかどかといくらか荒い足音がした。 この足音は……。 俺は慌てて飛び起き、手紙の束を文箱に押し込んだ。 間一髪、蓋をしたところで襖が開き、 「うぃーっす!」 とアホの谷口が顔を出した。 「何の用だ」 「いや、それがな、昨日艶本を何冊かまとめ買いしたらまけてくれるって言うからよ、言われるまま買ったらこれが酷くてな。こんなのが混ざってた」 そう言って俺の前にぽんと放り出したのは、…なんと言ったらいいんだろうな。 …その、あれだ。 男色の指南書みたいな…とにかく、そっちで有名な一冊だった。 「…お前な、いくらアホでバカでも中身くらい確かめて買えよ」 「放っとけ。それに、そいつ以外は当たりだったんだからいいんだよ」 「で、なんでわざわざ俺のところに笑われに来たりしたんだ?」 「違うっつうの。そんなもん、うちで用がありそうなのはお前だけだろ? だから、タダでくれてやろうと思ってだな、」 ただ単に、自分の手元に置いておくのが嫌なだけだろ。 「とにかく、やるからそれでも読んで元気出せよ」 「出るか!」 怒鳴ったところで谷口はとっとと逃げ出しており、俺の手元には怪しげな本が一冊残っちまった。 ……どうすんだ、これ。 とりあえず、下手なところにおいておいてハルヒに見つかったりするのはまずいだろう。 俺はそれをひとまず文箱の一番下に隠し込み、そして、そのまましばらく忘れちまったのだ。 そいつの存在を思い出したのは、その次の日の夜、夜見世の賑やかな音を聞きながら布団に潜り、手紙を広げた時のことだった。 「…あー……そういや、こんなもん押し付けられたな」 独り言を虚しく部屋に響かせながら、ぱらぱらとめくる。 ……うん、正直しんどいな、これ。 事細かに交接の手順やなんかが書いてあるのがまた辛いんだが。 しかし、ある意味では吉原の解説書の類と似てなくもない。 どこがいいとか、誰が評判だとかそういうところは特にな。 だが、決定的に違うのは、具体的にどういった行為をするのか、なんてことが絵付で解説されてることだろう。 正直えぐい。 そう思いながら、なんで俺はこんなもんを見てるんだろうな? 「…古泉も、こんなことがしたいのかね」 ぽつりと呟いた声音がどうにもまずかった。 どうにも情けない、今にも泣き出しそうな声。 ああ、分かってるとも。 本当は、そんなことがしたいのはあいつじゃなくて、俺の方なんだろ。 あいつはこちらが嫌になるほど理性的で、俺を押し倒しておいて引けるような奴だからな。 …俺のことなんて、本気じゃないんだろ。 そう思うだけで、ずくりと胸が痛いほど、俺はこんなにも好きなのに。 「……ばか…。古泉の、ばか……」 罵りながら、涙は堪える。 泣くことさえ、苦しく思えた。 そうしてしばらく歯を食いしばって耐えていると、なんだかもう色んなことがどうでもよくなってくる。 古泉にどう思われてるかなんて、知るか。 どう思われてたって関係ない。 どうしたって、俺はあいつに本気で好きだなんて言えやしないんだからな。 だったらもう……あいつに、どう思われたっていいだろ? 俺は冊子をぺらぺらとめくり、目当ての項目を見つけた。 どういうところかと言えば、決まってる。 どうやったら出来るかという、その手順が嫌というほど詳しく書いてあるところだ。 凝視したら萎えそうな絵からは目をそらしつつ、必要なところだけを読み取る。 そうして、意を決しておもむろに布団を跳ね除けると、三枚も重ねているせいで高さのある敷布団の上で、襦袢を肌蹴た。 大きく裾を割り、脚を開く。 行灯に手を伸ばせば、その油は簡単にすくえた。 てらてらと妖しく光る指先を小さな窄まりへ持って行き、そろりと撫でてみる。 きゅうと締まったそこに、男のものが入るなんて思えないのだが、入るようにしたらいいということならそうするしかない。 嫌悪感に耐えて、ぐっと指を押し込んでも、気持ちよくなんかない。 ただ義務的に指を動かし、少しずつそこを和らげる。 …だから、本当にそれは予想外だったんだ。 「…は……っ、ぅ……」 苦しく息を吐き出しながら、唇が勝手に動き、 「…こ、いずみ……」 と呟くなんて。 それだけで、ぞくんと体が震えるなんてことも、予想外だった。 「な…っ、ぁ……」 くちゅと油が音を立てるのが、女の子の立てるその音のように思えて、羞恥に顔が熱くなる。 音を立てて指を動かして、その合間に、 「…古泉……っ…」 とその名を呟くだけで、体が歓喜に震える。 「……ほしい…ん、だ…」 こんなにも、古泉のことが。 「…ばかは……俺か…」 はは、と乾いた笑いを立てながら、布団の上で体をくねらせる。 古泉が、してくれたら。 ほかの客が女の子とするみたいにしたんでいい。 だから、古泉にこんな準備からしてほしいなんてワガママは言わない。 それは女の子みたいにちゃんと自分でする。 古泉の準備だって、する。 見様見真似でも、俺も同じ男だから、どこをどうすりゃいいかくらい分かるだろ。 そうして、準備の整った俺の中で、古泉が出してくれたら。 俺の中が気持ちいいと言ってくれたら。 それだけでも、俺はきっと幸せな気持ちになれるだろう。 たとえ、本当のことが言えないままでも。 「……手練手管なんて…俺にちゃんと使えるのかね……」 呟きながら、古泉の姿を思い描く。 「古泉…っ、こい、ずみ……、あ…っ、ん、して……」 女の子が誘うみたいに声を上げて。 古泉の背中に腕を回して。 そうして、体の一番深いところで古泉を受け止めたい。 ぐちゃぐちゃと体の中を掻き混ぜられたら、痛いだろうか。 …痛くても、いい。 古泉がするなら、それだってきっと気持ちよくなる。 今だって、古泉のためだと思うだけで、痛みも苦しさも平気になるんだ。 それなら、古泉に見られながらこうして用意なんてしたら、きっと気持ちよくさえなれるに決まってる。 「……はぁ…」 疲れて指を引き抜き、中途半端に勃ち上がった自分のそれに指を絡ませる。 醜悪なそれ。 邪魔にすら思えるそれ。 これがなければ、もっとうまく隠せるだろう。 この恋情も、情欲も。 古泉に押し倒された時さえ、それが嬉しくて反応しちまったそれを、もう少し大人しくさせられたらいい。 そうしたらきっと、古泉に隠し通せるはずだ。 何があっても隠したいものが、増えて行くような気がしながら、俺は短く息を吐き出して、自分のそれをいささか乱暴に擦りたてる。 「は…っ、ぁ、古泉…! 古泉……ぃ……!」 名前を呼んで、俺は自分の手の中に穢いものを吐き出した。 |