全力でエロですよー
最初から最後まで完全にエロですよー

ちなみに、時系列順で行くとこの話は、
「アタック」と「熱の名残」の間の作品になります














































二度目の初めて



「僕も少しは、勉強したんですよ」
と悪戯っぽく笑いながら、古泉は俺の耳を軽く舐めた。
それだけでゾクリとしたものが背中を這う。
「…っん、勉強、って……」
「実地で、というわけじゃありませんから、ちゃんと出来るかは不安ですけどね。……あの時は、あなたにリードされましたけど、それではあなたは不安になるんでしょう? 僕からも態度で示したいと思いまして」
あの時、というのはなかったことになってしまったが、おそらく存在したのだろう何度目かの夏休みのことだろう。
タイムリミット寸前になってやっと、しかも俺一人だけがループに気がついたその時、俺が取った行動は古泉を襲うことで、俺は初めてのくせに自分から古泉に口付けたどころか、あまつさえ自ら跨って腰を振るなどという醜態をさらしちまったのだった。
それは見事になかったことになってしまったのだが、夢という形で、俺たちはそれがあったことを知っている。
だが間違いなく、今の俺の体は初めてだ。
初経験を二回もするというのも妙な話であるが。
「本当に……そんなこと、思ってたのか…?」
「そうですよ。…どうしてそう仰るんです?」
「…っあ、だ、って……」
お前、俺がどんなにアプローチしようと知らん顔してたじゃねぇか。
「あれはポーズだってことくらい、ちゃんとご存知なんでしょう? そう意地悪を言わないでください」
そう言った古泉の手の方がよっぽど意地悪だ。
服の上からあちこち撫で回してくるくせに、肝心の部分には触れもしない。
俺を焦らして楽しんでいるようにしか見えないぞ。
「でも……これだけの刺激でも、感じてらっしゃいますよね?」
そう指摘され、ぼっと顔が赤くなるのが分かった。
悔し紛れに顔を歪ませ、
「う、るさい! お前のせいだろうが! お前が……っ、焦らしたり、するから…」
じわりと涙が滲みそうになるのは、これまでの古泉の言動を思い出したせいだ。
俺のことを好きだと言ってくれるまでも苦労をさせてくれたが、その後もずっと俺を拒み続けてくれたからな。
今のこれもまた、俺の夢だったらと思うと怖いくらいになる。
「すみません。…これからは、――少なくともあなたには、自分の気持ちを隠さずにあなたを愛します。涼宮さんのことがなければ、堂々と宣言してしまいたいくらい、あなたが好きですよ」
そう言った唇が、優しく俺のそれに重なる。
それだけじゃ足りないと舌を差し出せば、苦笑する余裕もなく貪られる。
いくら若いとはいえ思いが通じたからと言って即これはどうなんだと思わないでもない。
だが、これこそ証明のように思えるんだから許してもらいたい。
間違いなく好きなんだと、嘘や誤魔化しでなく、愛し合っているんだと思いたいんだ。
たとえそれが、ただの思い違いや思い上がりだとしても。
「…ねえ、また悪い事を考えてるんでしょう?」
困ったように笑った古泉が俺の服をまくり上げながら言う。
「……っは…?」
「眉が寄ってますよ」
そう言いながら、古泉が俺の眉間にキスを落とす。
「…僕はそんなに信用のならない男ですか?」
「それ、は……」
「いえ、そうだということは分かってます。それだけのことをしてきたという自覚も。でも……信じては、もらえませんか? 僕は間違いなくあなたを愛してます」
「……っ、分かってる、つもり、なんだ…」
声が震えるのは泣いてるせいじゃない、古泉の手が胸に触れたせいだ、ということにしておいてくれ。
事実どうなのかは俺にも分からん。
ただ、体も声も自分じゃままならないほど震えていた。
「どうしたら、信じてもらえますか?」
「……この、まま、…抱いて、くれたら……それでいいっ…から…!」
「本当ですか? このままする方が、あなたを苦しませないかと思うんですが」
「…なんで、だよ……」
「体が目当てのように思われたりしないかと、不安になってるんですよ。これでも」
「……ばか」
俺は腕を伸ばして古泉を抱きしめた。
「体目当てなら、もっと、以前に手を出してただろ…」
それに、と俺は口には出さずに付け足す。
たとえ体が目的でも、古泉に抱かれるならそれだけでもいいと思うくらいには、俺は古泉が好きなんだ。
それが痛かろうと苦しかろうと、関係ないほど。
しかし、それを言えばまた古泉を傷つけるだろうと、
「お前が、俺なんて抱きたくないんだったら、…無理はっ、言わない、が…」
と言ったのだが、案に相違して、その発言でも古泉の機嫌を損ねちまったようだった。
「またそんなことを言う」
くしゃりと古泉が顔を歪め、俺の額に自分の額をこつんとくっつけた。
「自分を貶めるようなことは言わないでください。あなたはとても魅力的で、素敵な人ですよ。そのことは、ちゃんと分かってください。……いえ、分からせてあげます」
そう言って古泉は俺に口付ける。
何度も繰り返し、繰り返し、くすぐったくなるほど優しく。
その手もまた、じれったくなるほど優しく俺の体を愛撫する。
触れるか触れないかというギリギリの近さで肌をなぞり、優しく胸の突起をこね、飽きもせずにまた肌を撫でるというように。
単純に触られているだけだとは言えないような感覚に、体がどうしようもなく震えた。
気持ちよくて怖いとか、そういうんじゃない。
これくらいなら経験したことはあった。
怖いのは、優しすぎる古泉の動きだ。
愛されていると、心も体も思い込んでしまいそうなほど優しい。
――そう思って気がついたのは、俺はやっぱりまだ古泉の言葉を信じきれずにいるんだなということだった。
ここまで本気で人を好きになったことがなかったせいかもしれないし、古泉の立場のせいかもしれない。
同時に、何度言葉で言われても信じられないままでいる自分が、古泉に対して申し訳なく思えた。
「…こ、いずみ…っ、も、焦らすな…ぁ…!」
「焦らしてなんていませんよ」
「…っそつけ…!」
「嘘じゃありませんよ。…もっと、あなたに触れていたいと思ってしまっているだけです。入れて出して終りなんて、勿体無いでしょう?」
「は…っずかしいこと言うなばか…!」
ぞわぞわし過ぎて鳥肌が立ちそうだ。
「すみません。…じゃあ、こうしましょうか?」
そう言った古泉が、俺の脚の間で存在を主張していたものに手を触れさせた。
「ぁ…っ!」
やっと与えられた直接的な刺激は、焦らしに焦らされたせいか、いきなり触られたりするよりもよっぽど強い快感を催させた。
「凄く、硬くなってるんですね」
興奮の滲んだ古泉の声に、更にそこが硬直する。
「お前の、せいだろ…!」
「責任はちゃんと取りますよ」
そう笑った息がそれに掛かったと思ったのは、ただの錯覚じゃなかったらしい。
ふわりと吐息が触れたかと思うとそれは古泉の口の中に含まれていた。「なっ……! お、まえ…っ、慣れない奴が、フェラなんて無茶…!」
「いけませんか?」
唇を亀頭に軽く触れさせながら、古泉は囁くように言った。
「ずっと、したかったんです。あなたが善くないのでしたら、止めますが……」
善くないどころか、そう言いながら髪をかきあげたその仕草だけでイくかと思ったくらいだ。
へたくそでもないのだが、決してうまくはない。
が、古泉にされてるということだけでおかしなくらい興奮して、気持ちよくて、どうにもならなくなる。
「も…っ、や、――イく、から…!」
「いいですよ」
そう言った古泉がそれを再び口に含み、軽く扱きながら強く吸い上げた。
「ひぅ…! ん、く――…!」
…ああ、イっちまった。
我ながら早すぎるだろう。
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す俺に、苦いキスを寄越した古泉は、
「大丈夫ですか?」
「ん……大丈夫、だから…」
と続きをねだると、
「本当は…ゴムもローションもあった方がいいんですけどね…」
ぼやくように呟いた唇が、割り開かれた脚の間の窄まりに触れた。
「っん…!」
「痛かったら、言ってくださいね。何か潤滑剤代わりになるものでも、探しに行きますから。今はちょっと……僕も、余裕がないんです…」
舐め上げるように、唾液をまぶすように触れる舌に、体がまるで逃げを打つように跳ねる。
「き、たない…だろ…?」
無理するな、と声を掛ければ、
「わざわざお風呂に入ってまで、綺麗にしてきてくれたんでしょう? いい匂いがしますよ、ここも」
「ぁっ……ん、ふ…」
くちゅりと湿った音が響き、耳をくすぐる。
古泉は悪戯でもするように俺の脚を撫で上げながら、そこへ舌を這わせる。
古泉にそんなことをされている、というだけで背徳感に快楽を煽られる。
もっと欲しい、とただの性欲のせいだけでなく思った。
「指、入れますね」
「い、いちいち言うなっ…!」
真っ赤になりながらそう言えば、
「驚かせたくないものですから」
と微笑まれた。
白くて綺麗な、だが俺よりも少し大きな指がそこへと入り込んで来る。
思ったほど痛まないのは、その指も古泉が丹念に舐め、滑りやすくしてくれたからだろう。
「大丈夫ですか…?」
「ああ…」
異物感はあるし、快感というには程遠い感覚しかないが、痛みはしない。
「もう少し…奥、だ……」
何が、とは流石に言わんぞ。
古泉は一瞬呆けたような顔をした後、ぱっと顔を赤くして、
「あ、ああ…そう、ですよ…ね」
「……すまんな。黙ってお前に任せりゃいいかとも思ったんだが」
そう呟いておきながら、可愛げのない自分に嫌気がさした。
だが古泉は柔らかく笑って、
「いえ、ありがたいですよ。…勉強したとは言っても、先ほど申し上げた通り、実地でというわけではありませんからね」
「ん…」
「この辺り…ですか?」
「んあ…っ! そ、こ…!」
「ああ、分かりました。これですね」
そう言って古泉はそこを痛いくらいに押し上げた。
「ひあっ…! や、強すぎる…!」
「え、あ、すみません。…これくらいなら、大丈夫ですか…?」
「ん…」
「…本当に、気持ちよさそうですね」
「そりゃ…ぁ…気持ち、いい、からな……」
難ならお前にもしてやろうか?
「それは謹んで辞退させていただきます」
苦笑混じりに言った古泉が指を増やす。
痛みはなく、ただ快感と興奮が強まるのだけが分かった。
早く欲しい、もっと欲しいと体の力を抜く。
そうして、古泉を迎える準備を整えることだけでも嬉しくて堪らなく思えた。
「もう、大丈夫ですか…?」
「ん…大丈夫、だろ…多分」
俺も最後までスるのは初めてなんだ、一応。
消えちまった夏の経験だけじゃよく分からん。
それに、あの時は結構苦しかった気もする。
今回ほど準備に時間を掛けなかったからだろうか。
だからまあ、大丈夫だろう。
「痛かったら、言ってくださいね」
「ああ…」
俺が頷いたのを確認してもまだ不安なのか、古泉は躊躇う様子を見せたが、それでもここで放り出すほど鬼畜でもへたれでもなかったらしい。
俺のと同じくらいか、それ以上に硬くなったそれをだらしなく口を開いた場所に押し当てた。
「ぁ……」
「怖い、ですか…?」
「いや…大丈夫だ、から…早く……」
小さく、古泉が頷くのが見えた。
ぐちりと食い込む音を聞いた気がしたのは気のせいだろうか。
熱くて、痛くて、それ以上に嬉しくて、気持ちいい。
「ぁっ…は……古泉…!」
「大丈夫…ですか?」
「んっ…気持ち、いい…」
俺の体を思ってだろう。
ゆっくりと休み休み、行きつ戻りつしながら腰を進められるのがいっそもどかしいくらいだ。
「平気、だから、っ、奥まで…!」
「……止まれなくても、知りませんからね」
ああ、責任も何もかも全部、俺が引き受けてやるよ。
俺はそう言う代わりに、古泉にキスをした。
最奥まで貫かれ、体が反り返る。
「か…っは…」
口から零れたのは苦しげな声だったが、実際に感じた苦しさなんて、ほとんどなかった。
「古泉…お前、すげぇ…イイ…」
脚まで絡めてその体を抱きしめる。
逃がしたくない。
手放したくない。
手に入れたばかりなのにそう思うのは俺が浅ましいからだろうか。
それとも、手に入れたばかりだからこそ、そんなことを思うのだろうか。
いつかこの思いは冷めてしまうのか?
だとしたらその方がまだいいと思えるくらい、古泉が愛しい。
「愛してますよ」
そう囁かれて、俺はやっと胸の内まで全て古泉に満たされた気がした。