エロですよ
あと、このシリーズにしては珍しく(?)べた甘


























愛してる



恥ずかしいくらいの愛を叫ぶ歌をテレビが繰り返し流している。
一体いつからこの国はここまで恥じらいを失ったのかね。
大体ストレートすぎるんだよ。
もう少しぼかしたっていいんじゃないのか?
パチンコの宣伝だかアニメの宣伝だか分からないCMを俺がそんな風に脳内で酷評していると、
「何か面白い番組でもしてますか?」
と古泉が声を掛けてきた。
「いや、別に」
答えながら、俺はソファにふんぞり返るようにして、古泉を振り返った。
「仕事、終ったのか?」
「ええ、とりあえず僕のすべきことはこれで終了です」
その言葉が嘘ではないと示すように、古泉はさっきまでずっと使っていたパソコンを終了させていた。
ディスプレイの光が目に悪いからと掛けていたパソコン用眼鏡を外し、俺の隣りにやってきた古泉が、すとんとソファに腰を下ろす。
俺はすかさずその膝に頭を載せると、
「全く…」
と愚痴る気満々の声を漏らした。
「せっかく会いに来たってのに、仕事ってのはどういうことだ?」
「すみません」
苦笑混じりに謝罪する古泉は、自分のせいじゃないとかなんとか言い訳をするつもりはないらしい。
「それも、2時間も3時間も放置して」
「すみません」
謝りながら、古泉の手が俺の額に触れ、前髪をかきあげる。
穏やかな、それでいてくすぐったいような気持ちよさに思わず目を細めながらも、俺は続ける。
「……寂しかったぞ」
「すみません」
「悪いと思うんだったら、」
俺は軽く体を起こし、古泉を睨みつけた。
「態度で示せ」
「…はい」
古泉がそう言って小さく笑ったのは、俺の行動パターンを把握しているからだろう。
弓なりになった唇が、俺の唇に重なる。
薄く唇を開いて舌を迎え入れると、触れ合った舌先がどうしようもなくくすぐったかった。
抱きしめられ、キスは深さを増す。
「古泉…」
「愛してます」
「俺も、愛してる」
抱き合うだけでも嬉しくてたまらないくらい、愛してる。
相手は年下の古泉で、俺が色々教えてやったような頼りない相手なのに、どうしようもなく愛してる。
自分がぐだぐだに蕩けてしまいそうなくらい。
みっともないほど執着して、束縛したくてたまらないのをぐっと抑えている。
支えあうのでもなく、労わりあうのでもない、貪り合うような愛し方しか出来ないんじゃないかと怖くなるくらい、好きで好きで好きで。
「もし、お前に何かあったら、俺もどうにかなるからな」
そうと考えるだけで、じわりと目尻に涙が滲みそうになるのを誤魔化しながらそう呟くと、古泉は首を傾げた。
「どういう意味ですか?」
「お前が大怪我しても、記憶喪失になったりしても、俺はどうにかなるってことだ。死んだりしたら、言うまでもない」
どうなるかは俺にも分からん。
取り乱すだけで済めばいいが、古泉を何とかしろとハルヒに食って掛かるかも知れんな。
「そうなったら大変ですね」
そう笑った唇へ、噛みつくようなキスをする。
ゆっくり服を脱がせていく指の動きが恐ろしく悠長なものに見えてもどかしい。
「古泉…ぃ、早く…」
普段なら絶対に出さないような甘えきった声を出すと、古泉が嬉しそうに笑ったのが見えた。
「今日は本当に待たせてしまいましたからね」
全くだ。
古泉のくせに、放置プレイとは生意気な。
その上、
「ここも、苦しそうですね」
と言いながら硬く張り詰めたそれをズボンの上から押さえられて、思わず息を詰めた。
「…っ、この、やろ…!」
涼しい顔しやがって、と怒鳴ってやりたいのだが、それを狭苦しい場所から解放され、ゆるやかにでも扱かれると声を押し殺すので精一杯になる。
「ねぇ…」
熱を持った声を吹き込まれるだけで、体がびくりと震える。
「本当に、僕だけ、なんですよね」
もう何度目とも分からない問いに、俺は盛大に顔を顰めた。
「そうだって、何度言えば分かるんだよ」
「すみません」
古泉はそう謝るのに、どこか優越感に染まった表情を浮かべていた。
「あなたの感じやすい体がこんなにも簡単に熱を持って、普段の様子からは考えられないほど積極的に動くのも、僕の前だけ…なんですよね」
「ああ」
言いながら古泉の頭を腕の中に抱え込むと、胸に吸い付かれ、悲鳴染みた声が勝手に口から飛び出していった。
「絶対……ん、お前、だけ…だから……いなく、なるなよ…っ」
「大丈夫ですよ。他ならぬ、あなたのためですからね」
そう言葉を紡ぐ舌が、敏感になった胸の突起を転がす。
「あ、…っ、ん……」
上げそうになる声はある程度押し殺せても、呼吸が荒くなることだけは抑え切れない。
それは古泉も同じなのか、表情や仕草に焦りは見えないくせに、息の音がらしくもなく大きく聞こえた。
それにしても、だめだな、俺は。
会う度毎に体を求めてしまうせいで古泉が不安に思っていることを知っているくせに止められない。
ただ、ひとつだけ自己弁護させてもらうと、それは別に自分の快楽を追ってばかりいるせいじゃないのだ。
独占したくても出来ない古泉を、短い時間だけでも独占したくて仕方がないから、間違いなく古泉が俺のことだけを考えるように、翻弄して、甚振って、余裕ぶった表情を消してしまおうとする結果として、こうなっているだけだ。
もし、古泉が本当に俺だけのものなんだと言えたなら、ここまではしないだろう。
もっと話もしたい。
一緒に出かけることもしてみたい。
人前で抱きしめてキスをして、恥ずかしくて見ていられないくらいの醜態をさらしてやりたい。
見せ付けて、見せびらかして、こいつは俺のものなんだと主張してやりたい。
――そんなことが出来るわけがない。
それはよく分かっている。
だから俺は、こうして古泉の体を求めてしまうんだろう。
せめて、それだけでも、俺だけのものにしておきたくて、他に目を向ける余裕が出て来ないようにと搾り尽くすほどに体を繋ぐんだろう。
「古泉…早く、後ろも、触れって…」
胸や腹、首筋ばかりを刺激されるのも悪くはないが、どこか間接的な快感は熱を煽るばかりで鎮めてはくれない。
だから俺がそうねだると、古泉は小さく笑った。
憎たらしいほど余裕の笑みだ。
「あなたって、お尻の方が好きですよね」
お尻とか言うな、恥ずかしい。
「悪い、か…っぁ…」
「いいえ」
「……お前にも、味わわせてやろうか」
「え」
と声を上げた古泉を、逆に組み伏してやる。
そうして服を脱がせてやろうとしたところで、
「い、いいですっ!」
と慌てて古泉は逃げ出した。
勢い余ってソファから落ちそうだったくらいだ。
「逃げるな」
本気じゃないことくらい分かってるくせに。
「いや、だって……いきなりそんなことを言われたら誰だって慌てますよ…」
ふん、と鼻を鳴らした俺は古泉を抱きしめ、
「嫌なら、ちゃんと俺を満足させろよ」
焦らしたりせず、さっさと俺の望むものを寄越せ。
「なんだか、全部食べられちゃいそうですね、僕」
「…食べてやろうか?」
胡乱なことを言いながら、驚く古泉の鼻先に、軽く歯を立ててやる。
耳朶を食み、怯えるようにビクッと震えた肩に口付ける。
それから唇にキスをして、弾力のある舌に少しだけ噛み付いてやった。
やられっ放しじゃまずいと思ったのか、その間に古泉の指は俺の望む場所へと入り込み、ぐちぐちと淫らがましい音を立て始めていた。
息を荒げながらも、俺は口を開き、
「…はっ…キスってのは、味見…なんだとさ……」
「味見……ですか」
「んん…っ」
古泉の指がイイところをかすめ、体が震える。
「食べたく、…ん、なるほど愛してるって、…言う、だろ…? 愛の究極の形って、やっぱ、それなんじゃねぇの…?」
「あなたがカニバリズムに傾倒していたなんて知りませんでしたが、それはどうでしょうね?」
別に傾倒しているわけじゃない。
ただ、古泉を独占したいと思っちまっているだけだ。
食べてしまえば、全部俺のものだろ?
そんなことを思いながら、先を促す。
「今の僕たちのように、一緒にいて、思い合うことこそ、究極だと思いますよ」
恥ずかしげもなく、よくそんなことを言えるな。
「でも、悪くはないでしょう?」
「……だな」
くすくすと小さく声を立てて笑った俺の頬へ、古泉が軽くキスを寄越す。
「愛してますよ」
と囁きながら。
「俺も愛してる」
何度繰り返しても飽きないし、慣れることもない言葉を返すと、古泉は本当に幸せそうに笑った。
「全部、俺にくれるか? お前の何もかも、全て」
「いくらでもどうぞ。僕はきっともう、あなたの全てをいただいてしまってますから」
ね、と笑った古泉に、ああそれでこいつにこれだけ余裕が生まれたのかと半ば呆れながら、俺は先をねだって腰を揺らした。
「本当に……困った人ですね」
苦笑していても、その顔はどこか嬉しそうだ。
「褒め言葉に聞こえるな」
そう言ってやると、古泉は笑って答えず、態度で返事を寄越した。
「あ、んんっ、古泉…っ」
甘ったるくてべたつくような声を上げながら、古泉の首に腕を絡める。
「あなたの全てを愛してますよ。…困ったところも、酷いところも、全部」
そんな言葉に飛びそうになる意識が留められる。
古泉が後で困ろうが知るものか。
搾り取れるだけ搾り取ってやりたい。
嫉妬心や独占欲のためでなく、単純な愛しさゆえに、そう思った。