エロですよ
若干無理矢理?
縄?
みたいな感じで、
序盤はちょっと優しさがないというかなんというかですが、
最終的にはゲロ甘ですので安心してください
































無我夢中



今日はキョンがバイトの日で、僕は先に部屋に帰って、夕食の支度を整えていた。
キョンと暮らし始めてもう三年。
そろそろ就活だなんだと忙しくなりそうなキョンに無理はさせたくないから、忙しくなったら大人しくすると誓って、でもその分くらいとこのところ一緒に過ごすことも多くしていた。
やることだって、濃密になってきている。
三年間、ほとんどいつも側にいて、それで飽きないっていうのが不思議がられたりもするけれど、飽きるはずがないと僕は思う。
だって、キョンは本当に可愛くて愛しくて、いつだって何か新鮮なものを感じるのだ。
それに、新鮮さがなくたって、キョンを愛しく思う気持ちに変わりはない。
いつもと同じであること。
それだけでも僕にとっては大変な価値があるものなのだ。
キョンも同じ気持ちでいてくれてると信じてる。
こんな暮らしがこの先もずっと続くのだと。
上機嫌で支度を整え、早くキョンが帰ってこないかな、今日は少し遅いなぁなんて思っていると、不意にドアが開いた。
キョンだろうと思って、
「お帰り」
と声を掛けたけれど返事がない。
よっぽど疲れたんだろうか。
それともまさか別の人じゃないだろうな。
そう思って確かめれば、やっぱりキョンだ。
「お疲れ様。もうすぐご飯出来るから、その間にお風呂でも入っておいでよ。沸かしてあるからさ」
「いや、いい。他所で食べてきた」
「え?」
他所でって、どういうことだろう?
バイト先で何かもらったってことかな?
いつもならそういうことがあっても断って、お腹空かせて帰ってくるはずなのに…よっぽどお腹が空いたんだろうか。
「…兄ちゃん、話があるんだ」
そう言ったキョンの顔がいやに真剣で、不安ばかりが妙に募った。
でも僕は努めてそれを顔に出さないようにして、
「うん、いいよ。何?」
と明るく応じて、キョンと差し向かいになるように座った。
キョンはしばらくと言うには随分長い間、言い辛そうにじっと視線を伏せていたけれど、やがて覚悟を決めるみたいに顔を上げると、僕の目を見つめて言った。
「…別れたいんだ」
「……え?」
何を言われたのか、一瞬本当に理解出来なかった。
「別れ…って、え……何……」
「本当はもっと早く言おうと思ってたんだけどな。…実は、少し前に彼女が出来たんだ」
彼女。
「俺も兄ちゃんもいい歳だろ。だから……こんなの、止めにしよう」
「…冗談……だよ、ね…? また僕をからかおうとして……」
信じられない言葉の羅列にうろたえながらそう言っても、キョンは頷いてくれなかった。
「本当なんだ。…俺、もう…兄ちゃんのこと、そういう意味で、好きじゃない…。もしかしたら、そうだと思ったのも気のせいだったのかも知れない……」
僕の信頼の一片までも打ち砕くようなその言葉を聞いて、僕の中で何かが壊れた気がした。
「…何、言ってんの…?」
「兄ちゃん…?」
「今更そんなこと言って、はいそうですかって離せると思うの?」
「…ごめん」
そう謝ろうとしたキョンの体を強引に床の上に押し倒す。
ごんとかなんとか鈍い音がしたような気もするけど、確かめるような余裕は僕にはない。
「にっ…!?」
「許さない」
はっきり告げると、キョンの顔には絶望染みたものが浮かんだ。
どうしてそんな顔をするんだろう。
いつもだったら喜んでくれるのに。
「キョン」
「兄ちゃん……っ、やだ…!」
暴れようとするなんていけない子だな。
僕は出来るだけ優しく笑って、傍らのロープに手を伸ばした。
それでキョンを縛り上げる。
服を脱がせて、僕のつけた痕が残っている、だからこそ綺麗な肌に縄を這わせる。
「いや…っ、兄ちゃん…! やめろって…!!」
「嫌? もっとしてってことかな」
微笑みながら、小さくて真っ赤な突起に歯を立てると、
「ぃあぁ……!」
とキョンが声を上げる。
ああ、気持ちよさそうだね。
可愛い。
「キョン、好きだよ。大好き。…愛してる」
繰り返し囁く睦言に、キョンの顔が歪む。
ねえ、どうして笑ってくれないの?
気持ちいいならそういう顔をして見せてよ。
そんな怖い顔は見たくないよ。
「キョン」
「いや…、もう、嫌なんだ…っ…! 兄ちゃん、も、許して…! 離して……!」
キョンの目から涙が零れる。
どうして泣くの?
泣くには早いよ。
「もっともっと気持ちよくしてあげる…」
そう囁いて涙を舐め取ってあげると、余計に涙が溢れてくる。
だめだよ。
「泣いてるキョンも好きだよ」
でも、どうしてだろうね。
こんなにも胸の中が寒いなんて。

俺がバイトから帰ると、兄ちゃんは待ちくたびれたのか机に突っ伏して眠っていた。
どうせなら布団に入ればいいのにな。
呆れながらもそんな兄ちゃんの油断したところが可愛くて、俺はそっと近づいて揺り起こす。
「兄ちゃん、風邪引くぞ。それに、腹減った」
ワガママかつ傍若無人に思われるかもしれないが、これくらい甘えた方が兄ちゃんが喜ぶのだから仕方ない。
そう言い訳しながら、兄ちゃんを起こすと、兄ちゃんはぼんやりと俺を見て、
「…ん……あれ…? いつの間に…」
「さっき帰っ…」
「縄抜けなんてしたの? 困った子だなぁ…」
――は?
なんだって、と問い返す暇もなかった。
たった今目を覚ましたばかりとは思えないような俊敏さで兄ちゃんは俺を押し倒し、手際よく俺の両腕を纏め上げたばかりか、それでは飽き足らず、その辺に転がっていた自分のシャツで俺の腕を縛り上げちまった。
「なっ、兄ちゃん!?」
「離してなんてあげない。逃がしたりなんてしないから。……だって、キョンは僕のものだろ…?」
「…兄ちゃん、もしかして寝ぼけ…っひ、あぁ…!」
いきなりシャツをめくり上げられたばかりか、そのまま胸の突起に噛み付かれ、痛みに体が跳ねる。
「やっ…ひ、に、いちゃ…! 落ち着いて……!」
「キョン、」
止めようとしたってのに、酷く愛しげに呼ばれて言葉に詰まる。
「好きだよ」
そう笑ってくれると、それだけでどうしようもなく俺は嬉しくて。
「……兄ちゃんの馬鹿」
「…愛してる」
「……俺の方が、もっとずっと好きなんだからな」
不貞腐れるように言って、体の力を抜く。
何か変な夢でも見たんだろう。
全く…夢と現実をごっちゃにするなよ。
まだ寝ぼけているのか、兄ちゃんは俺の体をいやらしく撫で回す。
それだけでぞくぞくと体が震え、熱を持つような触り方だ。
おまけに兄ちゃんは俺よりもよっぽど俺の体の弱いところに詳しいときた。
脇腹や背筋を羽の触れるように撫でられて、ざわざわとくすぐったい快感が走る。
「ふぁ……あっ…兄ちゃん……」
バイトで疲れて帰ったくせに、と呆れもするが、疲れてるからこそ余計に気持ちいいのかもしれないとも思う。
「好きだよ」
呪文か何かのように繰り返して、兄ちゃんは俺の胸に触れ、きゅっときつめに抓む。
「ひぁん…っ!」
「キョンはここを乱暴にされるの、好きだよね。強めに引っ張ってあげようか?」
その声が、どうしようもなくエロい。
俺はそれにさえ感じながら、
「ん…っ……して…」
とねだる。
逆らわない方がいいからというより、そうされたくて。
嬉しそうに笑った兄ちゃんがそれをきつく引っ張り、限界と言うほどに引き伸ばす。
「くぅ…っ!」
呻くほど痛いのに、ひりひりびりびりするそれが気持ちよくもあって、ああもう本当に変態だなぁなんて思う。
後悔なんてしないが、呆れはする。
こんなにしたのは兄ちゃんなんだから、今更離すはずがないだろ。
離さないなんてのはこっちの台詞だ。
手が使えない俺は、言葉でねだるしかない。
「にいちゃ…っ…キス、して……」
「いいよ」
うっそりと笑った兄ちゃんがキスをくれる。
触れるだけなんてものじゃない。
苦しいほどに濃厚な口付けだ。
舌を吸われ、息すら吸い上げられる。
軽く唇を食まれても感じた。
仕返しに、と唇に噛みついてやると、兄ちゃんが嬉しそうに笑ってくれた。
「好きだよ、キョン」
「ん…俺も、好き……」
キスに夢中になっている間に、兄ちゃんは俺の下肢を剥いていく。
すっかり露わにされたそれは緩く勃ち上がり、期待に震えていた。
でも兄ちゃんはそこには触れず、足を開かせる。
「女の子は、ここはしてくれないよね」
なんて意味不明の呟きを漏らしながら、ぬとついた先走りをすくった指でそこをくすぐり始める。
このところ兄ちゃんといちゃつく頻度が上がっているからか、そこはすんなりと指を飲み込み、もっともっととねだろうとする。
むず痒い快感がもどかしくて、
「ふ…ん、ぁ……兄ちゃん……っ、もっと、して……ぇ…」
と甘ったれた声を上げれば、兄ちゃんは微笑んでくれた。
「ん、いいよ。もっとさせて…」
二本、三本と指が埋められて、痛いくらいに俺の中を開く。
でもその痛みも気持ちよくて、嬉しい。
「あ…っぁ、もっと…なぁ、兄ちゃん……もっと…!」
「キョン…好きだよ、大好き…。愛してる…」
会話ですらない呟きの応酬すら嬉しい。
押し当てられた熱の高さも、硬さも。
「んん…っ、ん、ふぁっ…あっ…ぁん……!」
体を揺さぶられるたび、抑えきれない声が上がる。
気持ちよくて、そればかりになる。
縛られたままの腕は痛むが、それさえ兄ちゃんの執着のしるしだと思うと嬉しくて、気持ちよさに変わる。
「にいちゃ…っあ…っ、もっと、して…! 無茶苦茶に、して、いいから…ぁ……!」
「いっぱいいっぱいしてあげる」
誓うように口付けて、兄ちゃんはその言葉通り、それこそ泣くほど気持ちよくしてくれたのだった。
そうしてようやく落ち着いたのか、
「…やっぱり、僕が一番だよね…?」
なんて縋るように見つめてくるから、
「やっぱりも何も、前から今までずっと、兄ちゃんが一番に決まってるだろ。一体どんな夢を見たんだ?」
と呆れを隠さず言ってやると、
「…え? 夢?」
と本気で首を傾げられた。
「……まさか、どこまで夢か分かってないとか言うのか?」
「えっ? ゆ、夢だったの…?」
……だめだこりゃ。
「起きるなりいきなり襲い掛かっておいてそれはないだろ。腹空かせて帰ったってのに、食事の支度も出来てないし……」
「あー…じゃあ、支度したってところから夢…だったのかな……」
おいおい。
「…兄ちゃん、」
「ご、ごめん。本当にごめん。なんかキョンに…」
謝って、何かごにょごにょ話し始める兄ちゃんに抱きついて言葉を遮る。
「腹減った」
「あっ、うん、どうしようか。今から作ると遅くなるから、お寿司の出前でも取る?」
「やだ」
「じゃあ、どこか食べに行く?」
「兄ちゃんの料理が食べたい」
拗ねた声で言えば、兄ちゃんは一瞬ぽかんとしておいて、幸せそうに笑ってくれた。
「うん、急ぐけどちょっと時間掛かっちゃうから、出来るまで待っててね」
と俺の背中を一撫でし、
「大好きだよ」
と今日だけで何百回となく囁いた言葉を繰り返してくれる。
「俺も、大好きだからな」
変な夢なんて見なくていいんだぞと笑ってやった。