エロですよー
妙な感じに不健全でけしからん感じです、すみませんw






















戯れ事



兄ちゃんの部屋にいて、兄ちゃんの体温が感じられるくらい側にいる。
それを嬉しいと感じていることを、隠さなくていいことが何より嬉しい。
そんなことを思いながら、にこにことテレビを見ている兄ちゃんにもたれかかった。
「兄ちゃん」
「うん? どうかした?」
「なんでもない」
呼んでみただけだ。
「…そう」
薄く笑いながら、伸ばされた兄ちゃんの手が俺の頭を撫でる。
猫みたいに目を細めつつ、それを享受した俺は、湧き上がる悪戯心のままに行動してみることにした。
いつものように、カーペットの上に胡坐をかいている兄ちゃんの膝に腹を乗せるようにうつ伏せになり、
「にゃあ」
と啼いてみたのだ。
兄ちゃんをちらりと窺い見ると、兄ちゃんは、驚いたように目を見開いた後、くすくすと楽しげに笑った。
「キョンは猫に似てると思ってたけど、そうされると余計にそう思えるね」
そうかい。
兄ちゃんのためなら猫耳くらい装備しても構わんが、それを言うのは止めておこう。
流石に変態染みてるからな。
俺は軽く兄ちゃんの足を引っかきながら、
「にゃー…」
と甘えるように啼いた。
「可愛いなぁ、もう」
笑いながら、兄ちゃんの手が俺の髪を撫で、耳をくすぐった。
「うにゃっ…」
くすぐったい、と抗議すると、
「気持ちいい?」
と問われた。
今のが気持ちいいとするとそれは、頭を撫でられたりした時の気持ちよさとは別の気持ちよさだ。
ああ、いっそねだってしまおうか。
そっちの方がよっぽどいいかも知れない。
今なら、そうしたって怒られやしない。
それがまた嬉しくて、俺は体を起こして兄ちゃんに抱きついた。
「キョン?」
「兄ちゃん、大好き」
ぎゅ、と抱きしめながら言うと、背中に回された手に力が込められた。
「僕も、大好きだよ」
「兄ちゃんが、そう言ってくれるだけで幸せになれるくらい、兄ちゃんが好きだ」
「ありがとう」
そう笑った兄ちゃんの手が、つぅっと背筋をなぞる。
くすぐったさだか快感だか分からないものに体を震わせる俺へ、
「でも、それだけでいいの?」
とからかうように言う兄ちゃんは、結構意地悪だと思う。
それでも、嫌いになるはずがない。
不快にさえ、ならない。
俺は首を振り、
「それだけってのは嫌だな」
と兄ちゃんにキスした。
触れるだけのキスを何度も繰り返す。
誘うように口付ける俺を焦らすように、兄ちゃんは唇をすぐに離してしまう。
それが嫌で、俺は兄ちゃんの唇を追う。
最終的に兄ちゃんを床に押し倒して、やっと深いキスになった。
「困った子だね」
揶揄するように言いながら、兄ちゃんは俺を撫でる。
「もう猫にはならないの?」
「猫、好きなのか?」
質問に質問で返すと、苦笑が返ってきた。
「キョンなら何でも好きだけど、ああいう風に甘えてくるキョンも可愛いなと思っただけだよ」
そう言われたら、リクエストに答えなきゃな。
俺は、
「なぁん」
と甘ったるく啼きながら、兄ちゃんの唇をぺろりと舐めた。
兄ちゃんは両手で俺の両耳をくすぐりながら、
「本当に、可愛いなぁ。キョンが猫なら、絶対室内飼いにするんだけど」
「にゃ?」
室内飼いって、家から出さないってことかよ。
病気をもらったりしないし、怪我もしないから、その方が猫は長生きするらしいが、猫としてはどうなんだろうな。
閉じ込められて、寂しくはないんだろうか。
「そうしたら、本当に僕だけのキョンだろ?」
「……」
そんなことを笑顔で言う兄ちゃんも結構アブナイ、と思いながら、俺は兄ちゃんを抱きしめた。
そんなことしなくても、俺は兄ちゃんだけのものだ、と。
顔を近づけると、すりっと鼻を軽く触れ合わされた。
くすぐったいのに、なんとなく落ち着く。
「愛してるよ、キョン」
「…俺も」
「あれ、猫はもう終り?」
そう言われたって、愛してると言われたらちゃんと言葉で答えたいだろ。
「言葉じゃなくてもいいよ。態度で十分分かるからね」
そうかい。
それじゃあこれも分かってくれ。
「にゃぁん」
とひとつ啼いて、俺は兄ちゃんの体へ、昂ぶってきた自身をすり寄せた。
「しょうがないね」
困ったように兄ちゃんはそう言ったが、その股間も大分硬くなってるのはバレバレなんだぞ。
指摘する代わりに、ズボン越しに軽く爪を立てて引っかいてやると、
「こら」
と笑いながら、柔らかく叱られた。
「にー……」
恨みがましい目を送ってやると、喉をくすぐられた。
普通ならくすぐったいだけのはずのそれが、妙に熱を煽るのはやっぱり、相手が兄ちゃんだからなんだろうか。
兄ちゃんの手が、俺のシャツにかかる。
忘れていたが今日は平日で、つまり俺は学校帰りに兄ちゃんの部屋にあがりこんだわけだが、風呂にまだ入っていなかったこともあり、服装は制服のままだ。
ブレザーとネクタイはとっくに脱ぎ捨ててあったが、シャツが皺になるのも困るだろう。
明日も学校があることを考えれば余計に。
兄ちゃんを手伝おうとボタンに手を掛けようとしたら、やんわりと止められた。
「僕が脱がせるから」
そう言った兄ちゃんの声は熱を帯びていて、半端なくエロかった。
それだけでぞくぞくしながら、俺は兄ちゃんに任せる。
シャツを脱がされ、ついでとばかりにズボンも何もかも脱がされ、裸にされた俺は、兄ちゃんを引っ張るようにしながら、ころりと床の上へ横になった。
兄ちゃんは俺に伸し掛かるようにしながら、
「猫って、撫でてると気持ちよくなって、お腹を見せたりするよね。それと同じと思っていいのかな?」
「にゃあ」
当たり前だろ、と笑いながら、俺は兄ちゃんの鼻をぺろりと舐めた。
兄ちゃんの大きな手が、俺の腹をなぞる。
くすぐったさに身をよじると、
「可愛い」
と笑いを帯びた声で言われた。
「んにゃぁ」
じれったさへの不満を込めて啼くと、乳首をつままれた。
「んぁっ…!」
「キョンも、感じやすくなったね」
兄ちゃんの言葉には反論できない。
悪ふざけのような、前戯のような、どっちつかずの行為を重ねるのもこれで数回目で、その数回のうちに、俺の体はすっかり覚えちまっているのだ。
兄ちゃんがどこを触るのかとか、どこを触られると気持ちいいのかとか、つまりはそういう系統のことをな。
肌にキスされる気持ちよさも、印を付けられる痛みに似た快感も、ささやか過ぎる胸への刺激がもたらす熱の甘さも、全部兄ちゃんに教えられたことだ。
そして、兄ちゃんが教えることを俺の体が覚えないはずもなく、ほんの少し押し潰され、つままれただけで、そこは恥ずかしいほどにぷっくりと勃ち上がり、更なる愛撫を求めている。
「兄ちゃん…っ」
直接言葉でねだるのは憚られて、そう訴えると、兄ちゃんは笑って、
「分かってるよ」
と言いながらそれを口に含んだ。
舌先で転がされるくすぐったさと、甘噛みされるかすかな痛みに、俺は喉を震わせるしかない。
「可愛いよ、キョン」
何度目か分からないくらい囁いた言葉をもう一度繰り返しておいて、兄ちゃんは体を離した。
「ちょっと待っててね」
と言っていなくなる兄ちゃんを恨みがましい目で見送る。
「ローションを取ってくるだけだから」
そう兄ちゃんは弁解したが、それくらい分かってるし、いなくなる理由が分かっていても、この状況で放り出されるのは喜ばしいことじゃない。
つくづく、男の我が身が嘆かれるぜ。
「お待たせ」
と戻ってきた兄ちゃんは、
「ついでだから、ベッドに行こうか」
と言って俺をひょいと横抱きに抱え上げた。
「自分で歩けるって」
「僕が運びたいんだよ。だめかな?」
そう言われたら俺がそれ以上何も言えないって分かっててやってんだろうな。
それくらいには、兄ちゃんも打算的だ。
俺は諦めて兄ちゃんの首に腕を絡めた。
兄ちゃんは細身に見えて、実は結構がっしりしているから、俺の貧相な体くらい軽々と運べてしまうらしい。
兄弟なのに、と少し羨ましくなるが、それ以上に誇らしい気持ちになるくらいには、俺は弟としても兄ちゃんが好きだ。
「兄ちゃん」
ベッドに下ろされながら、俺は言った。
「何?」
「…兄ちゃんが好きだからな。…兄ちゃんも……」
「もちろん、キョンが好きだよ」
繰り返し繰り返し、バカみたいに何度も聞く俺に、嫌な顔ひとつせずに兄ちゃんは応えてくれる。
最上級の優しさと愛しさをこめた笑顔とキスで。
兄ちゃんはわざわざ取りに行ったローションのボトルからどろりとした中身を出すと、目的の場所へと塗りつけた。
その間俺がすることといえば脚を広げておくことと、出来るだけ力を抜いておくことなのだが、それがまた恥ずかしい。
くちゅりと濡れた音が響くのも。
「大分慣れてきたね」
中に入れた一本の指でくるりと中をかき回しながら兄ちゃんが言った。
「んんっ…! だ、って、俺も……兄ちゃんと、したい、から…」
「自分で広げてみたりしたんだ?」
かぁっと赤くなる俺に、兄ちゃんは優しくキスしてくれる。
「嬉しいよ。キョンもそんな風に求めてくれることが」
「当たり前だろ…」
そんな風に一応会話が出来ていたのも、それまでだった。
兄ちゃんの指が少し奥へと届き、前立腺と呼ばれる箇所を擦り上げたせいで、
「ひぁあっ…!」
とあられもない声が口から飛び出し、思考回路までぐずぐずに崩された。
体がビクビクと震え、中が締まったのが俺にも分かった。
「キョンの中はいつもキツイね」
嬉しいのか困っているのか分からない声で、兄ちゃんが言った。
「少し緩んだと思ったら、数日後にはまたきゅっと締まってて、ちゃんと出来るのはいつになるかな」
俺は痛くてもいいと何度も言ったのだが、兄ちゃんは頑として首を縦に振らなかった。
どうせなら、一緒に気持ちよくなりたいと言うのだ。
性行為の意義は通常第一に生殖があるが、それはどうやったって果たせない。
残りの意義は、大別してしまえば、一体感を得ること、つまりはコミュニケーションの一環としてということと、快楽を得るためのふたつだ。
全てを満たすことが出来ないならば、せめて残りの二つだけでも満たしたいというのが兄ちゃんの希望らしいが、俺にしてみれば二つ目の一体感が最重要事項だと思うんだがな。
もっとも、俺だって、快楽を軽んじれるほど枯れてもないが。
「じゃあ、」
愉悦に揺れる声で、俺は訴えた。
「明日も、明後日も、来るから、金曜も土曜も泊まれば、そうしたら……出来るだろ…?」
「……本当にもう…」
困ったなぁ、と呟きながら兄ちゃんが俺の頬へキスをした。
「この小悪魔みたいな可愛い猫は、僕をどれだけ骨抜きにすれば満足出来るんだい?」
さあな、と答える代わりに、
「にゃあ」
と啼いておいた。