エロです
入ってます(ちょ

























































結論(後編)



古泉の手が、俺の足にそっと触れ、膝を立てさせる。
露わになった脚の付け根に古泉が触れてくるのが、くすぐったくて、そのくせ気持ちいいのが変な気分だ。
「あ…んま、触んなよ…。まだ、イきたく、ねぇんだから…ぁ…」
「…可愛い」
嬉しそうに微笑んだ古泉が、熱を持った芯から手を離し、そのくせまだ煽るように、更に下へと手を滑らせると、ぞくぞくとしたものが背筋をゆるやかに這い登る。
「んっ、ぁ、…った、く…もう……」
「なに?」
訝しむように聞いてくる古泉に、俺は軽く頭を振り、
「別に。……お前、に、触られるだけで、こんなに、なるのが……どうしようもなく、思えるだけだ……」
「僕も同じだから、怒らないで」
くすくすと笑いながら言った古泉が、俺の腰を浮かせ、更に脚を割り開く。
なんつうか、
「…みっともねぇ、かっこ…」
「そう、かな? 僕には、魅力的に見えるけど」
「解剖台の上のカエルがか?」
俺がそう、可愛げの欠片もないことを言うと、古泉は情けなく眉を下げて、
「…やっぱり、嫌?」
と聞いてきた。
……あのな。
「はい?」
俺がひねくれた物言いをするのなんて珍しくないだろうがと睨めば、古泉は苦味の混ざった笑みを見せ、
「僕だって、不安なんだって、分かってくださいよ。…今だって、本当にいいのか、怖くて仕方ないんだから……」
「阿呆」
それを言ったら俺の方がよっぽど不安なんだよ。
だから、
「うだうだ言ってねぇで……早く…続き、しろ」
「…ん」
目元にまだ不安をのぞかせたまま、唇で弧を描き、古泉は俺を抱き締める。
耳元で囁くのは、
「愛してる」
と言う言葉だ。
「俺も…愛してる」
そう返して、キスをする。
何回目、なんて数えるのも馬鹿らしいほど繰り返しても、足りない。
足りない、が、満たされていないというわけでもないのが不思議で、その理由を問うように口付ける。
と、唇の端に古泉の指が触れた。
なんだ、と思う間に唇が離れ、それに名残惜しさを覚えるより早く、指が唇を割って入る。
「んっ…?」
何のつもりだと目で問えば、
「突然だったから、何の用意もしてなかったんです、と言えば、分かりません?」
……朧気に分からんでもない。
「それに、あなたも何かしたいように見えたから」
と薄く笑った古泉に答えてやる代わりに、俺はため息をひとつ吐き出して、大人しくその指に舌を這わせ始めた。
見た目にも分かる綺麗に整えられた指は、別に舐めても不快ではない。
むしろ、そのことに興奮を覚えそうなくらいだ。
…「そうなくらい」、なんて付け加えるだけ無駄って気もするがな。
「そんなに味わうように舐めなくてもいいんだけど……」
「なんえあよ」
俺もしたいって分かってんなら、大人しくされてろ。
それとも、別のところを舐めてやろうか?
「え…!?」
驚きに目を見開く古泉の脚の間を、膝で軽く押し上げてやると、古泉がかすかに息を詰めた。
漏れ聞こえた吐息が…なんというか、非常に艶めかしくて耳にも心臓にもよろしくない。
「…あなたって、人は……。どうしてそう、妙に大胆になったりするんだろ」
呆れたように呟きながら古泉が指を引き抜くと、唾液に塗れたそれが艶っぽく光るのが見えた。
視覚的凶器だな。
その指がこれからどういうことをするために使われるのかと思うと、ただでさえ赤くなった顔が更に赤くなりそうなんだが。
「恥かしいかもしれないけど、脚、閉じないで…」
そう言いながら古泉が濡れた指を這わせ、顔を近づける。
恥かしいなんてもんじゃないだろ、と思いながら、俺は観念するしかない。
仕方ないだろ。
こんなことをしたいほどに、古泉を好きだと気付いちまったんだから。
一方的にされるだけってのに耐えられなくなったら、初心者向けじゃなかろうがなんだろうが、俺にもさせろと駄々をこねてやる。
こいつも多少恥かしい目に遭えばいい。
いや、遭わせてやる。
そんな風に俺が現実逃避をしているということはつまり、古泉は俺の妨害に遭うこともなく、着々としたいことをしているというわけだ。
というか、
「…っ、舐める、なって…!」
絶対汚いだろ!
腹壊しても知らんぞ!?
「大丈夫…というか、もしそれでお腹を壊しても、悔やんだりしないし、あなたに迷惑はかけないつもりだから」
そんなことを無駄にかっこよく言い切って、古泉は俺の中へと差し入れた指を揺するように動かした。
異物感が吐き気のようにもやもやしたものを腹ん中に形作る。
「もう少し、我慢…して……」
「ん…。……つう、か、舐めるな…。んなことする余裕があるなら、何か喋って、気、紛らわせて、くれ…」
唸るように言うと、古泉は小さく笑って吐息を吹きかけながら、
「喋るって、何を?」
「なん、でも……っぁ」
「…ん、分かった」
緩やかに微笑んだ古泉が、指を更に奥へと押し入れながらも、顔は俺に近づけながら言った。
からかうような調子で、胸のまだ赤いままの突起に舌先を触れさせながら、
「僕は、あなたが好きです。愛してる。それは、間違いないことなんだって、やっと分かった。…でも、本当は、あなたのことを苦手に思ってた頃もあるんだ」
「そう…だろうな……」
「あなたは、僕の持ってないものを、失ってしまっていたものを、たくさん持ってたから、羨ましく思ってたんだと思う。…でも、あなたと一緒に過ごすうちに、気付いた。あなたは、それを見せびらかしたりしてるんじゃなくて、僕にも、欲しくないのかって聞いてくれてて、欲しいと言えばちゃんと分け与えてくれるつもりでいるんだって」
多分に抽象的であり、分かり辛いはずのことが、不思議とすんなりと理解出来た。
それは、俺が古泉の考えを読み取れるからというより、実際にそれが俺のしたかったことだったからなんだろう。
古泉の、作り笑いもしけた面も気に食わなかった。
欲しいならちゃんと欲しがればいいと思った。
友人が欲しいなら、そういう態度を示せば、俺から言い出してやっていいと思っていた。
家族が欲しいようだったから、俺は古泉の家族になった。
なりたかった。
なろうとした。
…ああ、つまり、俺の方が、それこそ出逢ったばかりの最初の頃から、こいつが好きだったのかもな。
好きだから、こいつにとっての最善を考えた。
自分にとってじゃなく。
好きだから、本当にこいつが大切だから、こいつにとって一番の幸せを、こいつが手に入れる手助けをしたかった。
本当に好きだから、こいつの望みを叶えたいと思った。
単純明快だ。
だから、今日、俺の告白をきっかけにして変わったのは俺じゃなくて、古泉の方なんじゃないだろうか。
古泉が俺に対して求めるものが、友人から親友へ、親友から家族的なものに変わったように、今日また、恋人というものに変わったから、俺の方もこれまで無意識にあった感覚が顕在化したということじゃないんだろうか。
実際に俺の意識が変わったというよりもむしろ、そっちの方が正確なように思えた。
どれだけ受身なんだろうと薄く笑いながら、俺は息を吐く。
古泉をちゃんと受け入れられるように。
身の内に蠢く指は、時折快楽めいたものをくすぐり起こす。
古泉は、俺の様子を注意深く伺いなら、少しずつ、その場所を探り当てようとしている。
「あなたを、いつから好きだったんだろう」
困ったように古泉が呟くので、俺は笑って言ってやった。
「別に、いつからだって、…ん、いい…。今、それから、これからも…好きで、いてくれるん、なら…」
「…ありがとう。……大好きだよ」
そう囁いた古泉に、俺はもどかしさのまま、囁き返す。
「も、少し…奥…っ……」
「…え」
「…だからっ、」
二度も言わせるな、と睨みつければ、古泉はほんのりと顔の赤味を増しながら、
「す、すみません。……ここ、ですか?」
とその場所を押し上げた。
途端に、びくんと体が弾んだのが、苦痛のあらわれであるはずがない。
「あっ、ぅ、ん、そこ…!」
体を震わせながらそう頷いた俺の目に映ったのは、古泉の喉仏がいやに悩ましく上下する様だった。
興奮してんだな。
「そりゃ、するに決まってる…! こんな、色っぽい顔なんて、初めて、見た…」
どんな顔だよ。
つうか、どんな表情だろうがしょせんは俺の顔だろ。
俺は呆れるのに、古泉は大袈裟に首を振って、
「あなただから、かも知れませんけどね。少なくとも、僕にとっては、…その、凄く……艶かしくて、堪らないくらいだ…」
とそれこそ大袈裟なことを言う。
「ばか…」
毒づきながら俺は手を伸ばし、古泉の肩を抱く。
「…なぁ、」
「は、い…?」
「……早く…。俺も、限界だ…」
「っ…!」
かすかに声を上げた古泉が、堪りかねたように俺に口付けると、中に押し入れた指を大きく動かした。
「ひぁっ…!」
「本当に、大丈夫そう? 無理してないでしょうね?」
「だ、いじょうぶ、つか、…も、我慢、出来ん、から…ぁっ…」
聞き苦しいばかりの声を、古泉は嬉しそうに聞く。
もっと聞かせて欲しいとばかりに。
そうして俺はまた、こいつの求めに応じてしまうのだ。
それが言葉になっていようとなっていまいと、こいつが求めるのだから、と。
指が引き抜かれる。
そうして出来た空隙に感じるのは、たとえようもない寂しさと切なさと物足りなさだろう。
「はや…く……」
もはや恥じらいも何もなく訴えれば、古泉の喉の鳴る音が聞こえそうなほどだった。
「…痛かったら、ごめんなさい」
そう言いながらあてがわれるものは、空隙が生じさせた感覚を消し去って余りあるほどの熱を持っていた。
限界まで開かれた脚のせいで股関節が痛い、なんてことを思う余裕もなく、それがゆっくりと押し入れられる。
「っ……!」
痛いなんてもんじゃないそれに、喉が引き攣れる。
「すみ、ません」
「…あや、まるな…ぁ…!」
痛みのせいで滲んだ涙もそのままに睨みつけると、古泉が困ったような顔をして俺を見つめた。
謝るくらいなら、宥めてくれ。
キスでも言葉でも何でもいいから。
「…愛してます。あなたが、好きだ」
俺の意を察したのだろう古泉がそう囁きながら、俺の体に優しく触れる。
本当に愛おしそうに。
うっとりと弛緩する体の中を、熱いものがじわりじわりと進んでくる。
全身の筋肉が、緊張したり弛緩したりと忙しい。
「凄い…な。あなたの中、暖かくて、きつくて、……困る」
「はっ…ぁ? なに、言って…」
苦笑混じりに言った古泉に問い返せば、
「…あなたが辛いのに、僕だけ気持ちいいのは、申し訳ないってこと」
「あほか…!」
たとえ今回痛いだけだったとしても、俺はいい。
大体、生まれつきそうするために体が出来ているはずの女の子だって最初の内はそんなもんだっていうだろ?
なら、元々そんな風に出来てない俺の体が快感を拾えなくったって不思議じゃないはずだ。
だから、慣れればいいだけの話だろう。
今回限りだっていうならともかく、これから先何度も、慣れるまで、俺が気持ちよく慣れるまで、そうなってからも、してくれるんだろ?
それに…確かに今は痛みの方が強いが、そればっかりじゃないってことくらい、初心者の俺にだって分かるからな。
「…ほんとに、あなたって人は」
さっきも聞いた言葉を泣き笑いみたいな表情で言いながら、古泉が俺の体を抱き締める。
完全に埋め込まれたのだろう熱い塊が、体の中で痛いくらいに自己主張をしているのが分かる。
「どれだけ、僕を甘やかしてくれるんだろう…。あんまり甘やかすと、付け上がりますよ?」
「つけ、あがれよ…。お前が、付け上がったって、たかがしれてるくせに……」
それに俺は、相手がお前なら、振り回されるのも甘やかすのも好きなんだよ。
「…そんなあなただから、僕はきっと、あなたに夢中なんだ」
くすりと笑って言った古泉は、額に浮かんだ汗を手の甲で拭ってから、眉を軽く寄せ、
「…約束する。あなたが気持ちよくなれるように、今度はちゃんと準備もするから、今は……ごめんなさい」
「謝るなって…」
それに、今も痛み以上に感じるものがあるからいい。
「それは?」
「…言わなくても分かるだろ」
それが、キスをしたのと同じか、それ以上の幸福感だってことくらい、な。
「とりあえず、一週間以上も時間はあるんだ。…ゆっくりでいいから、よろしくな。…一樹」
そう言ってキスをした俺に、古泉は感激でもしたように深いキスを返した。

その後の俺たちがどうなったかは、あえて言うまでもないだろう。
酷く予想通りで、分かりやすく、何の捻りもない結末が待っているだけだからな。