エロというか……気持ち悪い感じでしょうか
どう考えても健全ではありません
しかもハッピーエンドとは言い難いです
主観的になら全くそう言えないわけではないですが、
客観的にはバッドエンドと言っていいでしょう
ですので、
・バッドエンド(死にネタ系)が苦手な方
・SMプレイなどが苦手な方
などは読まないようにしてくださいませ
お好きな方のみどうぞ
ハッピーエンドが欲しい人は本編の方に行ってください(えええ
携帯のバイブレーションが、愛しい者のことだけを思わせる。 思い出させるのではないのは、思い出したりする間もなく、俺があいつのことを忘れられずにいるからだ。 常に思い続けているからだ。 唇をいやらしく歪めながら俺はメールを確認し、更にその笑みを深める。 視界の端で谷口が不気味がる様子を見せたが、そんなもんはミジンコの食事風景並みにどうでもいいことだ。 メールは短く、今日も古泉の部屋に泊まっていいと言うことだけを告げている。 それだけのメールに、心臓がらしくもなくときめくのを、どうかしていると思わなくなったのは、どれくらい前だろう。 俺は手早く荷物をまとめると、 「おい、キョン、まだ授業が…」 とどうやらまだ友人として俺を認めてくれているらしい、お人好しの谷口が声を掛けてきたが、俺は我ながら悦に入りたくなるようないい笑顔で、 「知るか」 と吐き捨てて教室を飛び出した。 途中、教師と擦れ違ったが特に何も言われなかった。 これは多分、ハルヒへの扱いと同じなんだろうな。 他校の生徒であるあいつが授業時間中にうちの高校の中をぶらついていても何も言われないんだ。 それなら、他校の男子生徒と不純同性交遊真っ只中と評判の俺のことだって、触らぬ神に祟りなしとばかりに、見てみぬフリをするに決まっている。 こう考えて見ると、ハルヒの思い切りの良さってやつも意外と悪くはないんだな。 そう思いながら俺は早足になり、ほとんど走るようにして坂を下った。 向かう先は、言うまでもなく、古泉の部屋だ。 古泉はおそらく真面目に授業を受けて帰るだろうから、授業をサボった分、古泉より早く着けるはずだ。 目論見通り、先に古泉の部屋に帰りついた俺は、俺の私物が大分増えた部屋に荷物を放り出し、支度に取り掛かる。 夕食の支度に風呂の支度、ベッドメイキングとくれば、ほとんど新妻気分だ。 あるいはもう既に古女房と化しているのかもしれないが、古泉が不満を抱いていないようだから別にいいんだろう。 鼻歌なんぞ歌いながら部屋の中を好き勝手に歩きまわる。 もはやここは俺の家みたいなもんだから、遠慮も何もあったもんじゃない。 実際、ここのところ、実家に帰るよりここに帰ることの方が多くなってきている。 別に、交友関係のせいで家族との関係がまずくなったというわけじゃない。 古泉のこともオープンにしちまっているものの、うちの両親は意外とあっさりと諦めた。 おそらく、高校か担任あたりから連絡も行っていたのだろう。 お前がいいなら、と諦観としか言いようのない声で言われた時には、流石に申し訳ない気もしたが、すぐに忘れた。 だから、そういう意味では心配はない。 ただ、家に帰ると変に心配されるから、帰りたくないだけだ。 古泉が調子に乗りすぎた結果として、俺の体は見苦しいほど傷だらけになっちまっている。 古泉はそれをむしろ褒めてくれるのだが、普通の人間にはいじめにあっているか暴行に遭っているかとしか思えないに違いない。 だから、俺は暑くても長袖を着て過ごし、余人には素肌を見せないように気をつけていたのだが、その体を、風呂に入っている時に乱入してきた妹によって見られたのは本当にまずかった。 それを見た妹が、深刻な顔でお袋に報告したのも。 おかげで俺はいじめの被害者疑惑をかけられてしまい、顔を合わせるたびに心配させてしまうので、顔を合わせ辛くなっちまったのだ。 しかし、だからと言って、「古泉とのプレイが盛り上がりすぎちまったから出来た傷であって、ずたぼろと言っていいまでに傷だらけであっても、それはむしろ愛の証しなので気にしないでくれ」などということは流石に言いかねるので、誤解は解けずにいるままである。 困ったね、と思いつつも、俺は結局古泉を止めることも出来ないわけだ。 たとえ、帰ってくるなり、 「ただいま帰りました」 の言葉に「お帰り」と返す間もなく床に押し倒されたとしても。 「お前、なぁ…」 「そんな声じゃ、止められませんよ」 くすりと笑った声にすら煽られているんだから、止められる可能性などなきに等しい。 「…っん、なん、で、そうなんだよ…! 毎日のように会ってるってのに…」 返事は、長くしつこいくらいのキスの後だった。 「あなたを見ると、つい催してしまう、とでもいいんでしょうか」 にやにやといやらしく笑いながら古泉はぬけぬけとそう言った。 「それに、あなただって同じでしょう? これだけのことで、こんなに硬くしているくせして、まだいい子ぶるんですか?」 言いながらその場所を強く握りこまれ、 「ひあ…!」 と悲鳴染みた喘ぎが漏れた。 「僕が我慢しようとしたらかえって不安になったのは誰です?」 くすくすと楽しげに笑いながら、古泉は俺の服を脱がせ始める。 外されたネクタイや脱がされたシャツが手枷や足枷になるのもいつものことだ。 きつく縛り上げられた手足が軋んでも、その痛みすら快楽に変えてしまう自分の体の浅ましさを笑えもしない。 「まだろくに触れてもないのに、気持ちよさそうですね」 「はっ……お前の、せい、だろ…」 「ええ、そうでしょうとも」 愉悦に歪む古泉のその表情を見たくて、俺はどこまででも堕ちていくのだろう。 「もう…止めようも、ないんだろ…? だったら、早く…」 「素直に、欲しいと一言仰ればいいんですよ」 そう囁かれるだけでぞくぞくする。 胸の内までもが満たされていく。 不安なんか少しも感じられなかった。 他人にはどう見えようとも、俺は本当に幸せだった。 「欲しい…っ、から…!」 そう強請り、求めることに必死で、俺は少しも考えていなかった。 どうして古泉がそんな風に凶暴なと言ってもいいような歪んだ愛ばかりを俺に向けるのかなんてことは勿論のこと、その愛が歪んでいるということさえ、少しも気付かなかった。 …いや、あるいは俺自身も、そのことに気がつけるほどの正気なんて、持ち合わせていなかったのかも知れない。 愛していますと繰り返しながら、古泉は乱暴に俺を抱き、傷を作り痕を残す。 引っ掻き傷、噛み痕、拘束の跡。 内出血、擦り傷、切り傷。 痺れるような痛みも、全身に響くような関節の鳴る音も、どれも快感に変えられる。 痛みを感じていないはずはないくせに、そんなものは与えられる快楽と古泉に愛されているという想いに酔わされて消えていくだけだ。 「ぁ、ん、…っ、は…! こい、ずみ……好きぃ…」 仰け反る喉に噛み付かれ、歯形を残されるのが分かる。 そうして俺が考えるのは、明らかにシャツからはみ出すだろうその痕をどうすべきかなんてどうでもいいことではなく、どうしてこのまま食いちぎってくれないのかと言うことで。 月並みだが、血の一滴、骨の一欠けら、肉の一片すらも残さず全て古泉のものになりたいとばかり思っていた。 当然のように毎日、それも日に何度も体を繋げるせいで、俺の体はきっともう普通とは変わってしまっている。 ろくな準備も何もなしで、快楽を得るような体に。 それに喜悦を感じながら、蕩けそうな体を古泉の体にまとわりつかせる。 「愛してます。…あなたが好きです」 本当に愛おしさに満ちた声で告げられ、優しく抱きしめられる。 体の中に古泉を飲み込んで、俺は笑って頷いた。 「俺、も…っ、ん、ぅ、、あぁん…!」 気持ちのいい場所など、あってないようなものだ。 どこに触れられても感じる。 触れられなくても、古泉に見つめられただけで達してしまったこともある。 電話越しに言葉をかけられただけでも十分だった。 古泉がいる、古泉が確かにそこに存在すると感じられることが何より嬉しい。 だから、繋がりたい。 繋がっていれば間違いなく古泉は自分の中にいると分かる。 このままどろどろに溶け合ってしまいたい。 どうあってもそれは叶えられないのが恨めしいくらいだ。 乱暴な抽挿に、体が音を立てて軋む。 背中を打ち据えられ、反り上がった体を押さえつけられる。 耳を千切れんばかりに噛まれ、古泉以外の何もなくなる。 何も要らない。 古泉以外、何も要らない。 SOS団の集まりにもろくに顔を出していないからハルヒたちがどうしているのかなんて知らないが、そんなものさえどうでもいい。 俺はただ、古泉さえいればいい。 古泉がずっと一緒にいてくれればいい。 俺が死に絶えるまででいい。 俺の体が朽ちて原型もなくなるまで側に置いて欲しいなんて高望みはしない。 俺の意識がなくなるまで、俺の世界が闇に閉ざされるまででいい。 それまでの間に一瞬でもいい。 古泉が俺のことだけを考えてくれたなら、俺はそれだけでいい。 それ以上なんて望まない。 だから、愛して。 「愛しています。僕はいつもあなたのことだけを想っていますよ。…あなただけです」 そう告げた古泉の指が俺の首に掛かり、そこを圧迫すると、ゾクリとしたものが走る。 「かっ……は…!」 喘ぎとも言えないような掠れた吐息が喉を焼く。 「凄い、締まりますね。…首を締められて、感じるなんて」 「ぁ…! ぁ、もっ……と、ひぃぁ…!」 痛みなんてものはもう感じない。 ただ嬉しくて気持ちよくて、もっととねだる。 首の締め付けが強くなり、嗚呼、そして。 俺の望みは叶えられた。 |