触手?で寄生でエロです
やはり妊娠ネタも含みます
っていうとハードそうですがそうでもないという中途半端な代物ですが
それでよろしければどうぞ
そもそもの間違いは、俺が妙な仏心を起こしてしまったことなんだろう。 最初から、古泉がどこでのたれ死のうが、はたまた古泉がどこで誰を襲ったりしようが気にしなければよかったのだ。 あいつがどうなろうと知ったこっちゃねぇ、という態度を貫き通すことが出来ればよかったってのに、以前の何があっても忘れたい事件が未だに俺の心身に影響を及ぼしているとでも言うのか、胸がずくりと痛んだ。 良心の呵責を覚える必要などないはずだというのに。 「古泉くんがまた倒れたんだって」 とハルヒに聞かされた俺は思いっきり顔をしかめ、 「何よその反応は。あんたやっぱり、ただの平団員の分際で副団長である古泉くんのことを妬んだりしてるわけ?」 と言われたが、そういうわけではない。 ただ、前回古泉が倒れたと言う状況が非常に常識外れかつ俺にとって不本意な事件を彷彿とさせたから、顔をしかめちまったまでだ。 「それで、古泉は?」 「さっきまで保健室にいたんだけど、放課後になったし、タクシーを呼んで帰ったわ」 タクシーと言うのはどうせあの黒塗りのタクシーに違いない、と思っていると、 「古泉くん、一人暮らしでしょ。だからあんたなんとかしてあげなさい」 「待て、何で俺が!?」 「あんたが適任でしょ。いくら古泉くんが紳士だからって異性にいきなり押しかけられたら困るに決まってるんだから」 それは道理かもしれないが、この状況下で古泉の部屋になんぞ行きたくはなかった。 もし、あの馬鹿がまたあの植物に寄生されてるのだとしたらどうなる。 それこそ、前回の二の舞だろう。 あんな体験はもうごめんだ。 二度とあんな苦しみを味わいたくない。 自分の欲や認めたくない感情と向き合うなんてことは、俺にはまだ荷が勝ちすぎる。 だから何としてでも逃げようとした俺に、 「とにかく、あんたが行きなさい!」 とハルヒは俺の荷物を投げつけ、俺を部室から追い出した。 「いーい? 古泉くんの部屋に着いたら古泉くんの電話から連絡を寄越すこと! そうじゃないと、あんたがちゃんと行ったかどうか分からないでしょ」 俺がハルヒに逆らうなんてことは出来るはずもなく、俺はため息を吐いて頷くしかなかった。 それに、古泉がもし本当に体調を崩して倒れたのだとしたらそれを放っておくことは流石にやりかねた。 もうひとつの懸念は見ないフリをして、俺は古泉の部屋に向かった。 あらかじめ場所を知っていたわけではない。 ハルヒが住所を書いたメモを寄越してきたからそれと分かっただけだ。 高校生の一人暮らしには不釣合いな高級マンションを見上げて、俺は呆れのため息を漏らした。 こんなところを使わせてどうするんだ。 これがハルヒの理想だとでも言うのか? 何にしろ、無駄な金の使い方だな。 どうせなら家族も同居という設定ににしておけばよかったんじゃないか? そうすれば俺がこうして見舞いに寄越されることもなかった。 内心で毒づきながら、古泉の部屋に向かう。 部屋の番号を確かめながら見つけたその部屋の前で、インターフォンのボタンを押したが、返事はなかった。 よっぽど重篤なのかそれとも医者にでも行っているのか、と思った時、ドアが開いた。 が、そこにいたのは古泉ではなく、見覚えのある緑色の植物だった。 やっぱりかよ、と身構えようとした俺だったのだが、そいつは以前とは違う反応を寄越した。 前回、有無も言わせず俺の体を刺したそいつと、全く同じ形状だと思うのだが、そのツルは俺の腕に絡まり、俺を部屋の中に引っ張り込むと、俺の体にそっと絡みついた。 まるで、俺を抱きしめるように。 小さな子供が母親に縋りついてるようだと思った俺の頭は本当にどうかしている。 感じる愛しさなんてのは、前と同じ錯覚に違いない。 ……まだ、奇妙な粘液も何も飲まされていないと言うことを突っ込んではいけない。 触手染みたツタは、すりすりと俺の頬を撫で、ぎゅっと抱きしめてくる。 どうにも憎めない動きに、俺が玄関に立ち尽くしたまま困惑していると、家主――あるいは宿主――が顔を覗かせた。 「ああ、いらっしゃいませ」 いたって平気そうな顔をしているそいつに俺は思いっきり顔をしかめてやった。 「これはどういうことだ」 「いえ、先日のあの種を植えてみたんですよ」 悪びれもせずに古泉はそう言った。 「一体どのように成長するのか、気になったものですから。もし、他の場所で生えていても、姿が分からない状態では警戒のしようもないでしょう?」 「それでここまで成長させたってのか?」 「どこまで大きくなるかと思いまして。もっとも、このくらいが限界のようですが」 これで十分だろう。 人一人包み込んでるんだぞ、こいつは。 「すぐに終りますよ」 何が、と聞く間もなく、俺の体に絡んでいたツタがすっと消えうせた。 消えたと言うよりもむしろ、俺の体に吸い込まれたように見えた。 同時に、体の中に違和感を感じ、また寄生されちまったらしいことが分かった。 「…古泉、お前、倒れたってのは嘘だったのか?」 「嘘ではありませんよ。間違いなく倒れてしまいましたし、あなたがいらっしゃるまでベッドで横になっていたくらいです」 「それにしては元気に見えるな」 「あなたが来てくださいましたから」 何だその気色悪い発言は。 「僕が寄生されたのは数日前なのですが、まだ未発達だったためか前回のような衝動に襲われることも、他の誰かに雌花が寄生することもなかったんですよ。いつもと違うことがあるとすれば、あなたの姿を見なければ落ち着かなかったことくらいでしょうか」 「はっ?」 わけが分からん、と眉を寄せた俺に、古泉は嫣然と微笑むと、 「誰がお母さんか、ちゃんと分かっているようですよ?」 「な…っ…」 「そのせいか、昨日一昨日の休日の間、あなたにお会いできなかったというだけで、体調を崩してしまいまして、情けなくも倒れてしまったというわけです。あるいは、僕が倒れればあなたが来てくださると、子供達には分かったのかもしれませんけれど」 子供達とか言うな。 「実際そうではありませんか。ねぇ、お母さん?」 古泉が俺の体を抱きしめると、それだけで前回のそれを思わせるような快感が沸き起こる。 むしろ、歓喜に近いような、暖かく柔らかな感覚に、俺は渋面を作るしかない。 「そんなことはもうどうでもいいから、とにかく電話を貸せ」 「…電話、ですか?」 「ハルヒの命令でな」 という一言で事足りたらしい。 「ああ、なるほど。分かりました。ではこちらへどうぞ」 古泉は俺をリビングに連れて行くとその隅に置いてあった電話機を示した。 お前、一人暮らしのくせにしっかり固定電話も持ってるのか。 「ファックスを利用することもあるものですから」 ああそうかい、ご苦労さんだな。 俺は受話器を取り上げると、携帯の画面を見ながらハルヒの番号を押した。 数回のコールでハルヒが出る。 『ちゃんと古泉くんのところにいるんでしょうね?』 「当たり前だろ。思いっきりぴんぴんしてるぞ。難なら代わってやろうか?」 『いいのよ。無理してるのかも知れないから、ちゃんと面倒見てあげなさいよ』 「ああ、分かって――っ、ん!?」 『何? どうかしたの?』 「い、いや、なんでもない」 とハルヒには答えながら、俺は背後にいた古泉を睨みつけた。 電話中に人の耳を舐めるっつうのはどういう了見だこの馬鹿野郎。 「じゃあ、また明日な」 俺は慌ただしく電話を切ると、 「お前は何を考えてるんだ!?」 と古泉を怒鳴りつけた。 「すみません、我慢出来なくて」 しれっと言った古泉が、俺の体を抱きしめる。 触れられた部分が熱を持つのは、寄生されているせいだ。 それ以外ありえない。 「古泉…っ」 「だめですか?」 熱を持った瞳が俺を見つめると、体の芯まで融かされるような気がした。 それに、どうせまたヤらなきゃ解放されないんだろう。 俺はため息を吐き、 「……また床でってのは嫌だ」 古泉は小さく笑うと、 「そうですね。それでは、ベッドに移動しましょうか」 と俺の体を抱え上げた。 「っ、下ろせこの馬鹿っ!」 「いいじゃありませんか、これくらい。……それにしても、軽いですね、あなた」 何と比較しての発言だ。 「そう嫉妬しなくていいですよ? 誰かをこうして抱えたことがあるというわけではなく、単純に想像よりも軽かったと言うだけのことですから」 「なっ、だ、誰が嫉妬なんかするか!」 「おや、僕の勘違いですか?」 そう言った古泉はどう見ても余裕の笑みを浮かべており、腹立たしいことこの上ない。 それなのにどうして俺は、わざわざ自分からその首に腕を回したりしてるんだろうね。 いや、あくまでも落下防止のためなのだが、それ以上に体が密着することで胸がざわつく。 泣きたくなるほど腹が立っているのだが、それが何に対する怒りなのかが分からない。 古泉にこれから組み敷かれるのが嫌なのか、それとも寄生されているのが嫌なのか。 あるいは両方かもしれない。 寄生された、普通でない状態で古泉に抱かれることが嫌なのか? それじゃまるで、俺が古泉を――と思いかけてやめた。 くそ、頭の中まで既におかしくなってるに違いない。 ぶんぶんと頭を振ると、 「危ないですよ」 という揶揄するような笑いと共にベッドに下ろされた。 「…今日は、抵抗しないんですね」 「…したって、…っふ、無駄、なんだろ……」 俺がそう言うと、古泉は頬にキスを寄越した。 くすぐったいそれに身を捩ると、必要以上に優しく抱きしめられた。 「…こいず、み……?」 「もう少し素直になってはいかがです?」 どういう意味だ。 「本当は嬉しいんでしょう?」 「なっ…」 人を何だと思っていやがるんだこいつは。 俺が男に犯されて喜ぶような奴だとでも思ってるのか。 「僕を好きだと言ったのはあなたが先ではありませんか」 「あれ、は…」 気の迷いだ。 誰だってあるだろう、感極まって思わぬことを口走ったりすることなんてのは。 「それでも、事実は事実です」 あの時はろくに触れもしなかったくせに、なんで今更そんなことを言い出したりするんだ。 「あの時は余裕がありませんでしたからね。…あれは、あなたの本心でしょう?」 じわりと滲んできた涙を古泉が舐め取る。 やめてくれ、と抗うことも出来ない。 「あなたが忘れてしまったのなら、もう一度言いましょうか。……僕も、あなたが好きですよ。寄生されているからでも、一度あなたと体を繋げたからでもなく、ずっと前から、あなたのことが好きです」 「……っ、んなこと、言って、いいのかよ…!」 泣きじゃくりながらそう言った俺に、古泉は微笑んで、 「僕の立場を考えるとかなりまずいことでしょうね。しかし、だからといって抑えられるようなものでもありませんから」 古泉はそう言いながら俺の頬にもう一度キスをした。 唇を合わせないのは、そうすればまたあの分泌液のせいで頭の中までぐちゃぐちゃにされ、どこからどこまでが自分の意思なのかさえ分からなくなってしまうということが分かっているからだろう。 正気のまま告げろというのは残酷すぎやしないかと思いながら、俺は古泉の体を抱きしめた。 それだけでも幸福感を得るのは、寄生されているからだけではないに違いない。 「…俺も、ずっと…好きだ…。けど、お前に言っちゃいけないんだと、思って…っ……」 自分がそう思っていることにさえ気付かないフリをし続けた。 どんなに愛しいと思っても、それを無理矢理嫌悪や友情や、とにかく他の感情にすり替えて来た。 そうしなければならないと、思ったから。 「ありがとうございます。あなたがそうして気遣ってくださったことも、嬉しいですよ」 そう言った古泉が、やっと唇を触れさせた。 古泉を抱きしめ、薄く唇を開いて舌を迎え入れると、甘ったるい陶酔感が訪れる。 それは前と変わらないはずだというのに、前よりもずっと甘く、強いものに思えた。 「愛してます」 「俺も…」 自分から求めて舌を絡ませ、蜜のような唾液をすする。 それだけで、快感も満足感も得られるのに、同時に足りないと思う自分の浅ましさに薄く笑うと、 「何ですか?」 と問われた。 「…別に。……浅ましいと思っただけだ」 「それは、僕のことですか?」 少しばかり表情を曇らせて言った古泉に俺は苦笑して、 「何でそうなるんだ?」 「違うんですか?」 「……まあ、お前もそうなんだろうけどな」 「…あなたも、ですか?」 そうじゃないように見えるとしたらお前の目はおかしい。 「そう…ですね」 ふふっと鼻にかかった笑いを漏らした古泉が俺の服を脱がせにかかる。 体を浮かせてそれを手伝いながら、古泉の体に自分の胸をすり寄せると、それだけでぞくぞくしたものが背筋を走った。 「古泉…っ、早く、触れって…」 俺がそう言うと、古泉は一瞬息を呑んだ後、 「全く、どれだけ煽るつもりなんです?」 と俺の首筋に噛みつくようにキスをした。 「あ…っ、ん、古泉…!」 「いい、ですか?」 善くなけりゃこんな反応出来るか。 そう恥ずかしくは思っても苛立ちはしなかったから、俺は小さく頷いた。 「嬉しいです」 そう笑った古泉が胸の突起に舌を這わせてくる。 「ぁ、ん、……っ、ひぅ…!」 喘ぐことしか出来なくなっても、あの植物に寄生されているからか、俺の体は古泉を求めて貪欲に動く。 「ねぇ、」 熱を帯びた声で古泉が囁くだけで体が跳ねる。 「な、んだよ…」 「ここ、前より濡れてるの、分かります?」 そう言った古泉の指がその場所に触れると、ぐちゃりと水っぽい音が響いた。 「ひあっ、や、め……っ」 「やめて、いいんですか?」 「な、…ぁっ……!」 意地悪く言った古泉が指を引き抜くのさえ耐えられないほど、ぐちゃぐちゃになっているのは俺の頭の中なのか、それとも体なのか。 「や、めるなばか…!」 「やめろと言ったのはあなたでしょう?」 くそ、忌々しい。 「…やめろってのは、その、…っわざとらしく、音立てたりすんなって、ことだ」 「では、続けていいんですね?」 だから、そういうことをニヤニヤしながらわざわざ聞くんじゃない! 何で俺はこんな奴が好きなんだ、と唸りたくなりながら、俺は小さく頷いた。 俺にはこれが限界だ。 明言させようとはしてくれるなよ。 「分かってますよ」 小さく笑った古泉が俺の中を掻き混ぜ、体が震えた。 「…あ、ぅ…っんあ…!」 「あまり解す必要も無さそうですね」 「…っ、なら、…ふ、ぁ…! 焦ら、さず…さっさと入れろよ…!」 「っ、どうなっても、知りませんよ…!」 これでどうにかなるものなら、もうとっくになってるだろう。 いや、ある意味その通りなんだろうが。 古泉に昂ぶったものを押し当てられただけで腰が揺れるのは咎めないでもらいたい。 仕方ないだろ。 体は寄生植物のせいで盛りのついた猫さながらの惨状だし、それ以上に俺自身が欲しくて堪らないんだ。 やっと好きだと伝えられて、それを認めてもらえたんだ、これくらいの暴走はむしろ、極普通の男子高校生として健全だろうと思いたい。 「ア、ん、ぅあぁ…っ!」 古泉を飲み込んだ体がガクガクと痙攣する。 「だい、じょうぶ、ですか…?」 大丈夫だ、と答えはしたものの、半分以上呂律が回ってなかった。 体の中が融けそうに熱くて、くらくらする。 「…あなたが、好きです。他の何よりも、あなたが愛おしい」 繰り返し囁かれる言葉も甘ったるく俺を蕩かせていく。 どろどろに融けてしまったんじゃないかと思うような体で古泉を抱きしめ、古泉を受け止めると、どうしようもないほど幸せを感じた。 「愛してる」 うわ言のように呟けば、 「僕も、あなたを愛してます」 と笑顔で返された。 幸せ過ぎて死にそうだ、と思いながら古泉が出て行くのを待っていたのだが、 「……っ古泉!?」 「すみません」 へらりとした笑顔で古泉が言い、再び腰を使い出した。 さっきよりもゆっくりした動きなのは余裕があるからなんだろうか。 「ひっ、あ、やだ、だめだって…!」 突き上げられ、内壁を擦り上げられるたびに腹の中で何かが動く気配がする。 それが何かなんてことは考えるまでもない。 「種っ、出なくなる…っ、育ち、すぎるから…ぁ…!」 泣きながら懇願しても古泉は止まらない。 「大丈夫ですよ。もう一回くらいなら、ちゃんと産めます」 「そ、ういう、…ひあっ、も、んだいじゃ、ねぇ…!」 「あなただって、いいんでしょう? 種で中を掻き混ぜられるのが」 それは確かにさっきとは違う刺激で、悪くないわけじゃないのだが、それ以上に恐怖が先に立ち、体が竦んだ。 「や、らぁ…っ! 産みたい、んだから、産ませろよ…っ、頼むから…!!」 「そんなに、産みたいですか?」 俺は大きくはっきりと頷き、 「あ、たり、前だろ…っ! お前の子なんだから…!」 古泉は嬉しそうに破顔一笑すると、俺の体をそっと抱きしめた。 「嬉しいですよ」 「それなら……っは…早く、産ませろよ…。……その後、いくらでも、付き合ってやるから…」 「…そう言われては退くしかありませんね」 ずるりと古泉が引き抜くと、確かにそれを望んでいたはずなのに、体が冷え込むような寂しさを感じた。 「どうしました?」 不審そうに顔をのぞきこんでくる古泉に向かって手を伸ばし、 「手、握っててくれるか…?」 と聞いたのは失敗だったかもしれないと思うくらい、不安げな声が出た。 古泉はそれを笑うでなく、力強く俺の手を握りこみ、 「ええ、それくらい、喜んで。……大丈夫そうですか?」 「…なんとか、なるだろ……」 言いながら、腹に力を込めると、ごぷんと音を立てて球形のわが子が転がり出た。 「んっ……ふ、ぅ……はぁ……」 「苦しいですか?」 「大丈夫だって、言ってんだろ…」 二つ目、三つ目、と産み落としていく。 その度に古泉がそれを慎重な手つきで拾い上げる。 そのひとつになりたいと、どこかぼやけたままの頭で思った。 古泉の掌の中に納まってしまうような、古泉が自分の世界の全てになるような、ちっぽけな存在になりたいと、思った。 「古泉…、キス、しろ…」 「はい」 笑みの形になった綺麗な唇が俺のそれに重なる。 流し込まれる蜜は甘く、感じる痛みを鈍らせてくれる。 その助けを受けながら、俺は全部で八つもあった子らを全て産み落とした。 ぐったりと脱力した俺の手に、古泉が子供たちを握らせた。 それを握り締め、頬をすり寄せると、 「…続き、してもいいですか?」 とどこか切羽詰ったような声で囁かれた。 「……あぁ、そうだったな」 俺はベッドの隅に枕を押しやり、そこに子供たちを寝かせると、古泉の首に腕を絡めた。 だらしなく口を開いたままの部分に熱を保ったままのものが触れ、体を歓喜に震わせる。 襲いかかってくるような眠気に抗いながら、俺たちは睦み合った。 その意識が途絶えるまで。 目を覚ました俺は、ベッドに起き上がった状態でぼんやりと状況確認を試みようとしていた。 ぐるりと室内を見回し、真っ先に口を吐いて出た言葉は、 「……っ、種は!?」 というもので、慌ててベッドの上を探し回っているとドアが開き、 「…まず種の心配ですか」 と呆れ顔の古泉に呟かれた。 「普通は僕がどこに行ったのかとか考えるものじゃないんですか?」 「お前は足があるんだからどこかに行ったって帰ってくるだろう。種はそうはいかないんだぞ」 「それはそうですけど、」 ぎしっとベッドを軋ませながら俺の側に膝をつき、俺の顔を覗き込んで来た古泉は、 「僕のことを一番に考えてもらいたい、というのは僕のワガママでしょうか?」 どこか拗ねたような口調でそう言った。 俺は唖然として古泉を見つめた。 だって、そうだろ。 あの古泉が子供みたいにそんなことを言ったんだからな。 にやっと笑った俺は、 「お前のことを信じてるってことなんだから拗ねるなよ」 と言って、軽く触れるだけのキスをした。 「…っ、あなたって人は…!」 驚きに目を見開いた古泉が、俺をベッドに押し倒す。 「ちょ……ちょっと待て!」 慌ててストップをかけると、古泉は眉を寄せながら、 「なんです?」 「結局種はどうしたんだ?」 「ああ、大丈夫ですよ。大切にしまってあります。だから今は心置きなく……ね」 悪戯っぽく笑った古泉に、俺は小さくため息を吐くと、 「…しょうがないな」 と呟いた。 正気の状態で、というのは恐ろしく恥ずかしいものではあったのだが、それ以上に、自分の感情も古泉の思いも嘘じゃないことが嬉しかった。 だからおそらく、今日のこれも、さらに言うなら先日の事件も、本当は災難などではなかったのだ。 むしろ、幸運で幸福な、祝福染みたことだと感じながら、それゆえについつい羽目を外してしまった俺は、最終的に疲労困憊し、そのまま昏倒しちまったのだった。 |