エロですよ
というかもうキョンが頭弱い子みたいですみません
古泉の部屋に着くなり、ただでさえ上昇していた体温が更に上がったような気がした。 もう我慢しなくていい、と思うと矢も盾も堪らず、古泉に抱きついてキスをねだっていた。 「古泉…キス、しろ……」 ねだるにしては可愛げの欠片もない物言いだが、古泉は気にした様子もなく、 「畏まりました」 と優しく言って俺の望みを叶えてくれた。 触れる唇も、抱きしめてくれる腕も、妙に器用な舌も、全てが気持ちよくて頭がおかしくなりそうだ。 あるいは既におかしくなっているに決まっている。 「は…ぁ、ふ……っん」 キスだけでとろかされそうになって、合わせた唇の隙間から甘ったれた吐息を漏らしながら、それでもまだ足りないと感じてしまう。 そのことが恥ずかしいのに、それ以上に欲が俺を突き動かす。 意外とかっちりしたブレザーやシャツを脱ぐのに苦労しながらもなんとかそれを脱ぎ捨てていく。 「気持ちよく、して……」 羞恥心をどこかに置き忘れたかのような俺の言葉に、古泉は嬉しそうに笑ってくれた。 それならいいんだと鈍った頭で判断を下し、笑みを返すとまたキスされた。 それも確かに気持ちいいのだが、それではまだ足りない。 ベッドに移動して、二人して裸になって、ぐちゃぐちゃになるほどもつれあう。 キスをして、触れ合って、気持ちよくなりたいという欲求が抑えきれないまま暴走する。 「な、ぁ…」 赤くなるほどに乳首を吸い上げている古泉に、俺は言った。 「…昨日、も、俺ばっかり気持ちよくなってたけど、それで、いいのか？」 古泉は驚いた様子で顔を上げ、 「それは……どういう意図の発言でしょうか」 どういうも何も、シンプルだろう。 「お前は、気持ちよくならなくて、いいのか？」 俺だったら、なりたい。 というか、だからこそこんな時間からこうしているわけだが。 古泉だって、俺のことを好きだって言ってくれて、こんなことを仕掛けて来てくれたくらいなんだから、したい気持ちはあるだろうに、俺にばっかりするのは嫌じゃないんだろうか。 「……二人一緒に気持ちよくなれる方法があるんですけど」 「そうなのか？」 なら、それがいい。 考えるまでもなくそう言った俺に、古泉は困惑の表情を浮かべた。 何でそうなるんだよ。 「…痛い思いもするかも知れませんよ？」 「いい」 我慢するし、第一、今してるこれだって、最初は痛くて怖くて最悪だったんだからな。 「すみません」 「別に、謝らなくていいんだが…」 「でも、我慢はしないでください。今してることはまだ一応、常識的に知っておいても構わないような程度か、それを少々逸脱した程度ですが、これからすることはまずもって体験することのないようなことですし、何より僕は、あなたを傷つけたりはしたくないんです。あなたと一緒に気持ちよくなりたいのであって、ね」 「分かってる」 と頷きながらも、その発言は全くの逆効果だと思った。 そんな風に優しい言葉を言われたら余計に、二人で一緒に気持ちよくなりたい、古泉にも気持ちよくさせてやりたいと思うだけであり、そうであれば何だって我慢したいと思うに決まってる。 「それじゃあ、力を抜いてくださいね」 仰向けに寝かせた俺の脚を恥ずかしくて死ねそうなほど大きく開かせ、古泉はそう言った。 その指はローションに塗れて濡れ光り、それだけで妙にいやらしく見えた。 そう見えたのもどうやら当然だったらしい。 ローションをまとったそれが、あらぬ場所に入り込み、俺は小さく息を呑んだ。 「痛みましたか？」 心配そうに顔をのぞきこんでくる古泉には首を振る。 痛くはないが、妙な違和感があった。 異物感とでも言うんだろうか。 むず痒くもないではないのだが、あまりにも弱い感覚にそれを快感と呼んでしまっていいのかよく分からないくらいだった。 ぬちゃぬちゃと猥らがましい水音だけがしばらく部屋の中に響いていたが、その指がいくらか奥に入り込んだところで、他とは違う感じのするところがあった。 「…っん、そこ……！」 「ここ、ですか？」 強く押されると、それだけで体がびくりと痙攣した。 「や、…っふ、あ、怖い…っ！」 何だこれ、と言う事も出来ない。 目の前が真っ白に染まる。 ガクガクと体が震えて、制御しきれない。 それなのに、気持ちいいと俺の淫乱な頭は判断したらしい。 古泉の体に縋って、 「も、っと…ぉ」 とこれまでになく甘ったれた声を立てると、古泉がごくりと唾を飲んだのが分かった。 その目に、強い欲望の色が見て取れることにも、興奮する。 「気持ちいいんですか？」 「いい…っ、から、もっとして…」 「普通、初めてでこんなに感じたりは出来ないと思いますけど」 「…ん、か、んじるんだから、しょうがないだろ…！」 喋ってないでもっとしろ。 ああでもそれじゃ俺ばっかり気持ちよくなるだけなのか？ 古泉はどうするんだ？ 「絶対、他の人に触らせたりしないでくださいね」 「するわけ、ないだろ…ひ、あんっ…」 「約束ですよ」 こくこくと頷き、古泉の唇を求める。 気持ちよくて、よすぎて、どうにかなりそうだ。 たった二日ばかりの間に、俺はどれだけ新しいことを知れば済むんだろうか。 これに終りはないのか？ 「もう、いいですかね…」 独り言じみた古泉の言葉に、目を向けると、古泉が指を引き抜いたところだった。 「ぁ…なんで、抜くんだよ……」 「すみません。すぐに代わりのものを入れて差し上げますよ。…痛かったら、言ってくださいね」 そう言った古泉が押し当ててきたものの熱に、目眩を感じた。 恐怖感を覚える部分と、更なる快楽を期待する部分とに、身体も心も真っ二つに分かれてしまいそうだ。 古泉が腰を進め、それを押し入れると、痛くて熱くて怖かった。 それこそ、抗ってしまいそうになるのを堪えるのに必死になるほど。 「大丈夫…ですか？」 「だ、いじょ、ぶ…だから、うご、けよ……。そ、したら、お前も…気持ちよく、なれるんだろ…？」 どう聞いても大丈夫じゃない声だろうに、古泉も余裕を失っていたらしい。 「すみません」 聞こえるか聞こえないかというレベルの小さな声でそう呟くと、腰を動かし始めた。 痛い、怖い、気持ち悪い、気持ちいい。 ぐちゃぐちゃに混ざり合った感情と感覚に、くらくらした。 喉が痛いのは泣いているからなのかそれとも喘いでいるからなのかすら分からない。 確かだったのは、よく分からない感情の渦の中に、ひとつだけ飛びぬけて大きな嬉しさがあったことくらいだろう。 目が覚めてやっと、短い間とはいえ、自分が気絶していたことを知った。 心配そうな顔をした古泉が、 「大丈夫でしたか？」 と俺の顔をのぞきこむ。 「大丈夫だ…」 思ったよりも身体も心も平気なようだった。 そりゃ、全く痛まないわけじゃないが、まだ余裕はあると思えるくらいには力も残っていた。 「水でも飲みますか？」 と立ち上がりかけた古泉の手を掴んで止める。 困惑気味に揺れる瞳に、ぞくりとした。 「…古泉」 「なんでしょうか」 「……もっと、したい」 そう言って後悔したのは、古泉が目を見開いたからだ。 何でそんな風に呆れたり驚いたりするんだ。 お前がこうしたくせに。 そう言ってやりたいのに、代わりに出てきたのは、酷く心細げな、 「――お前が、嫌じゃないなら」 という言葉だった。 あからさまなほど不安の滲んだそれに、恥ずかしくて死にたくなる。 いや、更に恥ずかしいことをしたり言ったはずだっていうのに何をかいわんやと言えばその通りなんだが。 古泉は柔らかく微笑むと、俺の身体を労わるようにそっと抱きしめた。 「嫌なはずがないでしょう？ 今のは少し驚いただけですよ」 「…俺がエッチだからって嫌いになったりしないか？」 「するわけないでしょう。僕がそうしてしまったのですし、それに、それくらい夢中になっていただけたら、３ヶ月大人しく我慢した甲斐もあると言うものです」 「…そうか、そうだったよな」 俺はぎゅっと古泉を抱きしめ、 「我慢させて、悪かったな」 今、全く以って我慢出来てない俺としては、そんなにも長い間我慢出来たという古泉には驚きと賞賛を向けるしかない。 同時に、本気で申し訳なくなった俺に、古泉は苦笑して、 「いいんですよ。あなたは何も知らなかったのですし、だからこそ僕は今こうしてあなたにイケナイコトを教える楽しみが味わえるんですから」 「…じゃあ、もっとしよう。我慢させた分も、俺が知らなかった分も、全部」 俺の提案に対する古泉の返事は、笑顔とキスだった。 |