恐怖をも超えた (前編)



常日頃酷使している腰に無理を言わせて、長い坂を上る。
たどり着いた先にハルヒがおらず、朝倉がいるという状況にも慣れた今となっては、以前の状態を懐かしむことも少なくなっている。
もっともそれは、古泉のおかげなのかも知れないが。
坂に加えてこの階段はどうなんだ、と思いながら教室に入ったところで、俺は目を見開いた。
クラス替えはあったものの、入れ替えはほとんどなく、つまりは一年の時と何ら変わりのないメンバーがいるはずの教室に変化があった。
というか、2年に進級したのももう数ヶ月前の話だ。
それで、転校生でもないのに変化があるというのはおかしいだろう。
だがしかし、俺の視線の先、俺の席のすぐ後ろには、信じたくない存在があった。
そこに見慣れないものがあったとかならまだよかった。
だが、そうじゃない。
それ以上に恐ろしい存在は、俺が教室の入り口で立ち尽くしているのを見つけると、不機嫌そうに顔を顰めて俺を見た。
「何よキョン、化け物でも見たような顔しちゃって」
ああ、化け物の方がどれだけよかっただろうな。
「ハルヒ」
引き攣った喉からそう搾り出すと、
「何?」
普通に返された。
俺は少し考えた後、
「…今日の放課後はどうするんだ?」
と聞いてみた。
「はぁ!? あんた何言ってんの? 当然部室に集まるに決まってるでしょ! 寝ぼけてんじゃないわよ」
――ぞっとした。
俺はハルヒが怒鳴るのを聞きながらハルヒに背を向け、隣りの教室に向かった。
当然、長門を探してだ。
だがそこに長門はいなかった。
また部室だろうか、と思いながら、ここしばらくはろくに足も運んでいなかった部室へ向かう。
冬以来になる文芸部室は、そう呼ぶにはあまりにも雑多なものが積み上げられ、見た覚えもないようなものが増えていた上に、そこにいた長門は、眼鏡をかけていなかった。
「長門」
長門は顔を上げただけだった。
はにかむように返事をすることもなければ、「今いいところだからちょっとだけ待って」と言うこともない。
透明すぎる瞳が痛かった。
「どうなってるんだ? 世界はまた改変されたのか? それとも、俺の頭がおかしくなったとでも言うのか?」
そんなことはありえないと思いながら聞く俺の声は、俺にしては酷く焦りが滲み、余裕のないものだった。
それこそ、長門に配慮することも出来ず、詰め寄るように距離を縮める。
「何があったんだ」
「エラーを修正した」
長門の返事はそれだけだった。
エラーってのは何だ。
俺と古泉のことがエラーだったとでも言うつもりか?
それともハルヒが力を失ったあの世界そのものがエラーだったと、そう言いたいのか?
「エラーは私に生じた。私はそれが発生することを事前に知っていた。でも、不可避の事態だった。……私の予測では、エラーはあなたによって修正され、何の問題もなく収束するはずだった。でも、誤差が生じた。……あなたが、誰が改変者だったのか気付いてしまったことが、誤差」
その言葉に、俺はあの冬の日を思い出した。
緊急脱出プログラムを、自らの手で消去したあの時を。
「…あなたはそれに気付くべきではなかった。そのため、世界の再改変とエラー修正に時間が掛かった」
「なんで、」
声は泣きそうに滲んでいた。
「修正する必要があったんだ!? お前はあの世界でそうだったように、普通の女の子になりたかったんだろ? 朝比奈さんも古泉もハルヒも普通で、それでも集まって、楽しくやれた、それで、よかっただろ。なのに、何で今更……」
「……あなたも、本当は気がついていたはず」
長門は俺をじっと見据えたまま言った。
それがどんな感情を帯びた表情なのかさえ、俺にはもう分からない。
それくらい、あの長門に慣れていたんだと気がつく。
「あなたは過去に朝比奈みくる及び朝比奈みくるの異時間同位体と遭遇している。それは、彼女が未来人であるということの証であり、未来人が過去にやってくる技術と必然性を持った未来があるということの証でもある。それは、涼宮ハルヒが情報操作能力を持っていなければあり得ない未来。だから、世界が私によって改変された後、速やかにそれが修正されることが規定事項だった。あなたも、それに気がついていた」
そう言われて、やっと俺に理解できたことがあった。
どうしてあんなにも不安を感じていたのか、ということの答えだ。
いつか絶対に消えてしまう、変えられてしまうと分かっていたから、どんなに古泉の側にいても、言葉を交わし身体を重ねても、不安を拭いきれなかったんだろう。
「どうして、今更だったんだ…」
声を荒げる力すら失って俺がそう問うと、長門は数瞬の沈黙の後、口を開いた。
「これまではエラー修正もままならなかった。それはあなたたちが結束していたから、情報操作を行う余地がなかったため。でも、昨夜隙が生じた」
「隙…?」
「あなたたちが迷いと呼ぶものが、古泉一樹に生じた」
「古泉に?」
問い返しておきながら、長門の答えを待たずに俺はそれを悟った。
同時に、昨日のやり取りも思い出した。

昨日、俺は放課後いきなり担任の岡部に呼び出された。
ハルヒが他校生である以上、生徒指導室に呼ばれるほどの悪さをしでかした覚えもないんだが、と思いながらおっかなびっくり訪れた生徒指導室で、岡部はかなり長いこと黙り込んでいたのだが、唐突に、
「お前に関して妙な噂が流れてるんだが」
と言われ、俺は首を傾げた。
「妙な噂ですか」
さて、どういう噂だろうな。
この前巫女さん姿の朝比奈さんを連れてSOS団全員で商店街界隈を練り歩いたことでも噂になったんだろうか。
だとしたら、俺ではなく団長たるハルヒに文句をつけてもらいたいものだが。
それともあれだろうか。
ハルヒが俺の中学時代の友人に喧嘩を売ったことだろうか。
あれはそれなりに大きな騒ぎになったが、こんな場所に呼び出されるほどのことだろうか。
岡部は言い辛そうにしていたが、耐えかねたように言った。
「お前が、……その、他校の男子学生と、交遊関係にあるという噂なんだが…」
「はい? 交遊関係が何か問題になりましたっけ?」
「いや、だから、……不純異性交遊ならぬ不純同性交遊だとか言う噂があってだな」
――とうとう来たか、と思いながら俺は薄く笑った。
「それに何か問題でもありますか」
こんな言い方をすると、古泉みたいだなと思いながら、わざとあいつの嫌味な言い方を真似するように言う。
「根も葉もなく、不本意な噂なら問題でしょうけど、事実だから別に構いませんよ。放っておいてください」
それだけならこれで、と俺は絶句したままの岡部を放って生徒指導室を出た。
その足で今日の集合場所である古泉の部屋に行き、ハルヒたちといつも通りに過ごした。
呼び出され、そんなことを言われたと古泉に報告したのは、ハルヒたちが帰った後のことだった。
「今日、担任に不純同性交遊で噂になってるって言われた」
と俺が言うと、古泉は笑顔のままやりかけのチェスの駒を手に固まった。
「おーい、古泉ー?」
大丈夫か、と目の前で手をひらひらとかざしてやると、
「あの、…本当、ですか?」
「ああ。事実だからほっといてくれと伝えておいたんだが……」
「それでいいんですか?」
驚き、焦るような調子で言った古泉に俺は首を傾げた。
だって、そうだろ。
今更何言ってるんだ。
特に隠したりもしてないから、ハルヒたちにもどうやら気付かれているようだからな。
それに、俺はずっと覚悟は決めていた。
後ろ指を差されたり、白眼視されるくらいの覚悟はな。
「お前は違ったのか?」
「いえ…。僕だって、あなたとならどんな風に言われようと構いませんが、でも、それにしても……」
いつになく歯切れの悪い古泉の言葉に、俺は眉を寄せ、
「否定した方がよかったのか? 根も葉もない噂だと言ってやった方が? そんなの、俺は嫌だ。別に悪いことでもなんでもないだろ」
「……それでも僕は、」
と古泉はチェスの駒を置き、俺に向かって手を伸ばした。
大きな手が俺の頬に触れる。
だが、それは酷く遠慮するような動きで、俺はそれに焦れて自分から頬をすり寄せた。
「…あなたが、人から差別されたり、僕といることで傷つく姿を、見たくないんです」
「……勝手な言い草だな」
言葉だけはきつく、だが声は柔らかなものしか出せなかった。
苦笑混じりに呟きながら、古泉の手に自分の手を重ねる。
「俺がその程度のことで傷つくと思うのか? もし、傷ついたとしても、お前が側にいてくれるんなら、傷口くらいすぐに舐めて治してくれるんだろ?」
言いながら、古泉の心にどうやら開いてしまったらしい傷口を塞ぎたくて、その手をぺろりと舐めた。
古泉は何とも言えない様子で唇を引き結ぶと、そのまま俯いてしまった。
肩を震わせているが、泣いてはいないのだろう。
聞こえてきた声は意外にはっきりとしていた。
「愛してます。あなたのことを、他の何よりも、愛してます」
「俺も、愛してる」
だから、気にすんなよ。

――と、俺はそう言ったのに、古泉は気にしたんだろう。
こうなってはいけなかったんじゃないか、俺をちゃんと元の世界に帰すべきだったんじゃないか、などと考えたことくらいは予想がつく。
俺は、離れたくなかったのに。
堪えきれなくなった涙が、俺の目から零れ落ちる。
俺はそれを拭うこともできないまま、長門を睨みつけた。
「長門、お前ならもう一度世界を改変することも出来るんだろう? 俺を帰してくれ、あの世界に、あの古泉の側に」
パラレルワールドでもなんでもいい。
俺のあの古泉のところへ、帰してくれ。
俺のいるべき場所はもう既にこっちではなく、あの世界なんだから。
「不可能」
というのが長門の答えだった。
「情報統合思念体は私の行動に制限を課した。今の私に、情報統合思念体の意に背く、世界の改変は不可能。また、あの世界は平行世界として存在するものではない。よって、そこへあなたを送り込むことも出来ない」
「そ…んな……」
俺はそのままその場に崩れ落ちた。
聞こえてくる授業開始を告げるチャイムも意味をなさないまま抜け落ちていく。
「俺は、一体何のために選んだんだ…」
あの時、それが最良だと信じて選んだ道を半年も経ってから否定されるなんて、国語の読解問題で理不尽な減点をされるよりも腹が立つ。
俺の意思すら否定されたに等しい。
「あなたには悪いことをしてしまった。だから、選択肢を提示したい」
「選択肢…だと……?」
「そう。…ひとつは、このまま、改変された世界の記憶を持ったままこの世界で過ごすこと。あなたにはない、この世界での半年分の必要な記憶はインストールすることが出来るから、支障はない。もちろん、あの世界での記憶を消すことも可能。もうひとつは……あなた自身が、あの選択の時からやり直すこと。この場合は、あの世界での記憶は消さなければならない。どちらかひとつ、選んで」
「…今、すぐにか?」
俺の問いに、長門は首を振った。
「すぐでなくても構わない。でも、早い方がいい。出来れば今日中。遅くとも明日の放課後までには決めて欲しい」
「……分かった。明日の放課後返事をする。それと、長門」
「……何?」
「…世界が改変されたってことは、古泉は古泉なんだよな?」
長門がかすかに頷いたのを見て、俺はゆっくりと立ち上がった。
顎にさえ伝い落ちた涙を袖で拭い取る。
俺がこれからしようとすることは、全くの無駄なことかもしれない。
でも、そうせずにはいられない。
古泉が本質的には同じ古泉であるなら、思い出させてやる。
それしかない、と思った。
「……授業は?」
と聞く長門に、
「受けていられる状態じゃないからな。サボる。お前は?」
「これから教室に向かう」
「そっか。…遅刻させて悪かったな」
「問題ない」
そう言って長門は俺の隣りを通り過ぎ、ドアを開けた。
ドアが閉じる寸前、
「……ごめんなさい」
という長門の、どこか悲しげな声が聞こえた。

長門が出て行った部室でひとりになる。
作られた半年の間に何があったのかは分からない。
だが、どうも色々あったらしいことは備品の増え方で分かる。
朝比奈さんのコスプレ衣装も増えていたし、本棚の内容もどうやら変化しているようだ。
古泉のものだろう、ボードゲームも少し増えているのが胸に痛かった。
こっちの古泉は俺の古泉じゃない。
そう思っても、自分の知らない古泉という存在が嫌だった。
古泉は俺のなんだと醜悪な独占欲がどうしようもなく湧き上がる。
同時に、俺は古泉のもののはずなのに、と被支配欲とでもいうような妙な感覚も。
壁に貼られた写真も変わり、写真の中で笑う自分が化け物のように思えた。
世界が、記憶が、誰かによって作られると言う恐怖を、俺はまたもや味わわされているわけだ。
あの時も俺は、なんとか自分の場所を取り戻そうと走り回ったものだが、今回もそうしなければならんのだろう。
世界のためや誰かのためじゃない。
自分のために。
エゴイスティックとすら言える思いに、俺は醜く唇を歪めた。
創作された半年間を寒々しく感じながら部室で過ごし、休み時間になるのを待って、古泉の携帯に電話を掛ける。
この世界の俺の携帯にもちゃんと古泉の番号は登録されていた。
カテゴリも何も変わっていない。
だが、通話記録やメールボックスを見ると明らかに違っていて、それだけで泣きそうになる。
正直に言えば、俺のではない古泉に会うどころか、その声を聞くのも恐ろしくてならなかった。
そうすれば、古泉が変わってしまったことを嫌でも思い知らされるだろうからな。
それでも、俺は、古泉を取り戻したかった。
『もしもし、どうかなさいましたか?』
俺から、それも休み時間に電話を掛けてきたということが、こっちの古泉は驚きでしかないんだろう。
どこか遠いくせに、友人と言う意味では非常に近く感じられる距離感に焦燥感を煽られながら、俺は言った。
「ああ、緊急事態だ。すぐに帰り支度をして、本館昇降口まで来てくれるか?」
『一体どうしたんです?』
「詳しくは会ってから話す。…早く、来てくれ。……頼むから…」
震えそうになる声を必死に誤魔化しながら言うと、
『…分かりました。すぐに向かいます』
「悪い」
そう言って電話を切り、俺も昇降口へ向かった。
ほとんど同じタイミングで昇降口に着いたらしい、不審そうな顔をしているブレザー姿の古泉に、ずきずきと胸が痛むのを感じながら、俺は言葉は掛けず、そのまま目立たないよう裏門へ向かった。
誰にも見咎められることなく門を出て、歩きだしたところで、古泉が口を開いた。
「一体何があったんです?」
「……古泉、世界の改変についてどう思う?」
「いきなりですね。あなたのことですから、何か関係があるのでしょうけれど」
と言いながら古泉は少し考え込み、
「確か、冬休み中の合宿の際、雪山の山荘で閉じ込められた時に話してくださいましたね。世界が改変されて、それを何とかするために大変な目に遭った、またあの日に時間移動しなくてはならない、と。それから、一月になってから、必要なことは済ませたという話も聞きましたが」
「…そういうことになってんのか」
「はい?」
首を傾げる古泉を放って、俺は額を押さえた。
長門に頼んでどういうことになっているのかその流れだけでも聞いておくべきだったかも知れん。
「あの、……なんだか少し、変ですよ。何があったのか、そろそろ教えていただけませんか?」
「…変だと思うか?」
質問に答えずにそう問い返すと、古泉は頷き、
「なんとなく、あなたらしくない気がします。どこがどう違うのか指摘しろと言われると困ってしまうのですが…」
「……そうか」
そうだろうな。
俺にとって今隣りを歩いている古泉は、古泉であって古泉じゃない。
だから、打ち解けることなど出来やしない。
おそらく、今の古泉の、作られた記憶の中の俺は、あの冬以前の俺よりも古泉と親しくなっていたんだろう。
時間移動だの世界の改変だの、おそらく古泉には関係のない話まで、古泉にしているんだからな。
俺はじっと古泉を見た。
初めて学ラン姿の古泉を見た時は違和感を感じたものだが、今こうしてブレザーを着た古泉を見るとそれをむしり取ってやりたいくらいの気持ちになった。
……ああ、後でそうしてやろう。
「なあ、古泉」
「はい」
名前を呼びはしたものの、何を言おうかと悩む。
俺としてはこいつが本当に俺の知るあの古泉と同一人物であると言う確証が欲しいんだから、あいつならどう答えるか確実に分かる質問をすればいいんだろうか。
何にせよ、ダメで元々だ。
俺はじっと古泉の目を見つめながら言った。
「お前、俺のこと、好きか?」
古泉は驚いたように目を見開き、俺を見た。
「それは……一体どういう趣旨の質問なのでしょうか?」
「別に、どういう趣旨も何もストレート過ぎて捻りのかけらもないだろうが」
「いえ、あなたなら物凄いからめ手という可能性もあると思ったんですが……」
しきりに首を捻る古泉に、俺は顔をしかめながら、
「俺の様子がおかしいと思うんだったら俺がどこか変だからだと思ってくれ」
実際におかしくなっちまったのは俺ではなく古泉の方なんだろうが。
「…分かりました」
苦笑混じりに頷いた古泉は、そのままの困ったような笑みを浮かべた状態で、
「あなたのことは好ましい人だと思っていますよ」
「……嘘だな」
俺がそう断言したのは、古泉の表情からそれと分かったからだ。
古泉は嘘を吐いている。
いや、本当のことを言っていないというべきか?
とにかく、そう思った。
それと分かるのは、あの古泉が嘘を言う時と同じような様子を古泉が見せたからだ。
そんな風に同じような部分を見つけられて、少しばかりほっとしたが、古泉が本当に嘘を吐いているとは限らない。
だとしたら、この古泉はあの古泉とは違うことになる。
…違ってもいいと思った。
古泉が俺のことを好ましいと言ったそれが嘘だとしたら、悲し過ぎる。
「どうしてそう断言なさるんです?」
「お前、嘘吐く時に顔が少し強張るんだよ」
この辺りが、と頬をつついてやると古泉がぽかんとした顔で俺を見た。
何だよ。
「いえ……あなた、そんな風に人に気安く触ってくるような人でしたっけ?」
……そうか。
この古泉だからそう思うのか。
俺はため息を吐き、額を押さえた。
どうすりゃいいんだ、本当に。
うまく説明出来るんだろうか。
唸りながら考えている俺に、古泉が言った。
「ところで……我々はどちらへ向かっているんでしょうか」
「…分からんか?」
「分かりませんね」
まあ、まだ歩きだしてそんなに経ってないからな。
「お前の部屋だ」
「……はい?」
「だから、お前の部屋」
「あの……どうして、あなたが僕の部屋をご存知なんですか? いらっしゃったことはありませんよね?」
「……知ってるから、知ってるんだ」
呆れるくらい頻繁に足を運んだからな。
それこそ教室から文芸部室に向かうよりも、古泉の部屋に行くまでの道程の方が慣れている。
俺はそれきり黙りこんだまま古泉の部屋まで黙々と歩いた。
古泉が何度か質問してきたが答えず、ただ、どう説明すればいいんだろうかと考えながら。