突発性ぬこキョンでエロですよ
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猫の恋



季節は春。
多くの動物たちにとっては恋の季節である。
それはどうやら「彼」にとってもそうであるらしく、僕は小さくため息を吐いた。
彼に猫の耳と尻尾が生え、彼の精神までもがどうやら猫になってしまったのは、今日の朝のことだった。
先に目を覚ました僕が彼を起こしに行くと、その姿が変わっていた上、揺り起こした彼は、
「にゃあ」
という、猫そのものとしか思えないような声を、それもやや高い声を上げただけで、人語を解する様子がなかった。
僕に興味を持つ様子もなく、乱れた髪を猫がそうするように両手を舐めながら、寝癖を直そうとしていた。
「……キョンくん」
いつもは呼ばない呼称でそう呼ぶと、彼がじっと僕を見上げた。
名前くらいは分かってくれるらしい。
だが、その他のこととなると、まるきり猫になってしまっているらしい。
僕は数分間、彼と何とか意思の疎通を成り立たせようとしたのだが、見事に通じなかったので諦めた。
その代わりにすることは決まっている。
困った時の万能選手、長門さんに連絡することだ。
彼女の説明を事細かに記す必要はないだろう。
そう至るまでの経過はともあれ、彼は涼宮さんの能力によって猫化してしまったということと、一日もあれば元に戻るということが要点なのだから。
ちなみに、何故涼宮さんがそんなことを考えたかと言うと、僕が昨日、彼を猫のようだと評したせいだ。
それも、事細かに。
微に入り細に入り、語って聞かせたのだ。
それが、彼の猫化を狙ってのものだったことは言うまでもない。
しかし、ここまで見事に猫になってしまうなんてことは、予想の範疇から大きく外れたもので、僕はため息を吐くしかなかった。
流石は涼宮さん、一筋縄ではいきません。
とりあえず歩き方や物の食べ方その他は人間のままでいてくれたので、特に困ることもなく、一日過ごせた。
彼が多分につれない猫で、頭や耳を撫でることすら許してくれなかったのは残念だけれど、彼の性格を思えば仕方がないことだろう。
…そう、思っていた。
「まさか、発情までするとは思いませんでしたよ…」
と僕はため息を吐いた。
夜になって、他所の猫の声が聞こえだしたあたりから、彼がそわそわし始めたのだ。
窓際に立ち、切なげに窓をかりかりと掻く音がする。
どうやら、鍵を開けるということは出来ないらしい。
そうじゃなかったら、既に外に飛び出していただろう。
……精神的に猫化している彼が、外に出てメス猫を襲うのかどうかはよく分からないけれど。
それにしても、困ったな。
彼のあんな切羽詰ったような表情は初めて見る。
体を繋いだことだって、何度もあるのに。
彼から求めてくることは一度もなくて、ただ僕から求めるからと許してもらうばかりだった。
彼にはそんな顔をしたりすることもなければ、あんな風に求めることもないんだろうと思っていたのは、僕の勝手な思い違いだったらしい。
…メス猫に嫉妬するってどうなんだろう、人として。
そんな風に思い悩んでいたからだろうか。
僕は彼が窓の側から離れていたことに気がつかなかった。
ましてや、自分のすぐ側にまできているなんて。
「んにゃっ!」
すぐ近くで声がした、と思った次の瞬間、僕はソファの上に押し倒されていた。
僕の上に馬乗りになっているのは当然、彼だ。
「い、一体どうしたんですか!?」
そう尋ねても、猫になっている彼は答えてくれない。
ただ、いつになく熱を持った瞳で僕を見つめている。
その呼吸は荒く、性的興奮の色を感じさせた。
「んなぁ……」
甘ったれた声を漏らした唇が僕に近づいてくる。
そうして、ぺろりと鼻先を舐められた。
「え……」
まさしく驚天動地だ。
彼が自分からそんなことをするなんて。
そこまでは猫化していないらしい舌は滑らかで、彼自身のそれだと分かる。
その舌が、僕の顔をぺろぺろと舐めた。
僕を煽るように――いや、間違いなく、煽ろうとしているんだろう。
熱っぽい瞳で僕を見つめて、僕の服を脱がせにかかる彼は、その背後でうごめく尻尾のシルエットも相まって、とんでもなく卑猥な生き物に見えた。
首筋を舐められ、ぞくりとした。
彼の舌が、鎖骨をなぞり、肌を辿って下りていく。
僕の足に押し当てられた熱源はおそらく、彼の興奮したものなのだろう。
彼に求められているということに、僕も興奮していく。
「でも、」
苦笑しつつ、今まさに僕のズボンを下ろそうとしていた彼の手を、僕は掴んだ。
「すみません。あなたに……少なくとも、今の状態のあなたに抱かれるわけにはいかないんですよ」
それこそ、何の準備もなく突っ込まれて流血を見そうな気がする。
だから僕は、不満げに唸った彼を組み敷いた。
「その分、ちゃんと気持ちよくして差し上げますから」
言いながら、彼の着ていたスウェットをまくり上げ、露わになった胸に口付けると、いつになく敏感になった彼の体が跳ねた。
「ん、なぁん…っ」
いつもの、抗議混じりの押し殺したような声じゃない。
愉悦に滲んだ声が飛び出し、僕は思わず微笑を浮かべた。
「ねぇ、気持ちよくなりたいんでしょう?」
そう囁くと、暴れていたはずの手足が少し大人しくなった。
そこを見計らって、尖った胸の突起を口に含み、軽く歯を立てると、
「にゃっ、あぁん…」
先ほどまで外に向かって放っていたそれよりもずっと切なげな声が漏れた。
更なる刺激を求めて体をすり寄せてくるのも可愛い。
普段の彼に、この十分の一でも可愛げがあれば、と思ってしまうのは贅沢なことだと思う。
思うけれど、思うだけなら自由だとも思うので、許してもらいたい。
服を脱がせても、彼は文句を言うどころか嬉しそうですらあった。
これからするのが何かはっきりと分かっている様子で、自ら足を開き、体の力を抜いて僕を待つ彼は、期待に満ちたどこか昏い光を宿した目をしていた。
その足の間に顔を埋め、先走りに濡れたものを口に含むと、
「はっ……にゃ、あ…」
艶やかな声が彼の口をついて出る。
盛りのついた猫という言葉があながち間違っていないと証明するように、彼の欲望は留まるところを知らないらしい。
僕の頭を押さえつけて、もっとと態度でねだる彼が愛しい。
だから僕は、彼が僕の口腔いっぱいに白濁を吐き出すまで、丹念に愛撫を加えた。
そうしてやっと僕を解放した彼だったが、それで満足する様子もない。
僕が何も言わないうちから、足を大きく割り開き、その奥を僕の目にさらす。
「困った人ですね」
思わず苦笑しながらも、当然僕だってあれでやめるつもりはない。
だから僕は、彼からそうして求めてくるのをいいことに、そこに舌を這わせた。
「にゅ、にゃ、…なぁん…っ」
歌うように彼が甘い声を上げる。
入り口付近の浅い部分でこんなにも感じていたなんて、声を押し殺して耐える彼を見ているだけでは、気がつけなかっただろう。
それだけでも、僕は涼宮さんに感謝してもいいのかもしれない。
「入れますよ」
僕の言った言葉が通じているわけでもないだろうに、彼は嬉しそうに頷いて腰を高く上げた。
彼が焦れるほど念入りに解したそこは、待ちわびていたかのように震えていた。
彼の淫ら過ぎる姿に負けて、いささか乱暴に押し入っても、彼は抑えることを知らない嬌声を上げながら僕を締め付けるだけで、文句など一言もなかった。
「にゃっ、ん、あ、…っにゃ、あぁ…っ」
激しく体を揺すり、腰を使えば、いつもの彼なら嫌とか駄目とか言うところなのに、腰を振り、もっととねだる。
彼の体がこんな激しいセックスに耐えられたなんて、知らなかった。
それどころか、僕の全てを搾りつくそうとしているかのようだ。
僕が一度彼の中で達しても、同時に彼が達してもなお物足りない様子で、僕に跨って腰を振る彼は、これまでに見たことのない顔をしていた。
獣のような飢えた瞳。
欲情の色に上気した頬。
赤く染まった唇の端からは拭うこともされない唾液が透明な糸を引いて垂れている。
そんな姿さえ、彼はとても綺麗で。
「愛してますよ」
繰言のように呟きながら、僕は彼を突き上げた。

いつにない持久力を見せた彼が元に戻ったのは、結局夜明け近くになった頃で、唐突にその耳と尻尾が消えた。
それを残念に思う間もなく、彼が我に返った様子で僕を見つめた。
「こいず…み……?」
一日ぶりに聞けた彼の声が、どうしてだろう。
今夜一晩で目にしたどんな艶かしい姿や表情よりもずっと愛おしく、劣情を誘った。
「なんで、こんな…」
戸惑う彼に口付けて、その耳に吹き込む言葉は決まっている。

「どんなあなたも好きですが、やっぱり僕はいつものあなたが何よりも好きですよ」











更にぬこキョン視点↓

裏・猫の恋



気がつくと俺はこの部屋にいた。
だから多分、拾われるかどうかしたんだろう。
部屋の主は古泉と言うらしい。
不自由な飼い猫の身としては唯一の同居人であるらしいそいつに愛想を振りまき、媚を売るべきなんだろうが、俺は生憎そんなことが出来る性格ではない。
素直に甘えてやるのも癪で放っておいたら構ってもこないので余計につまらなかった。
もう少し構え。
少しつれなくしただけで放任とは、つまらん奴だ。
そもそも俺が率先して甘えに行くような猫だと本気で思ってるのか?
などと、普通に考えることが出来ているうちはまだよかった。
ところが、日が暮れて少しすると、体に違和感が湧いてきた。
むずむずする。
体中が敏感になったような感じだ。
遠くからメス猫の声が聞こえてくるせいだろう。
発情期か、と意識してしまうともう駄目だった。
体がどんどん熱くなる。
外に出たい、と思うのに古泉は窓を開けてくれない。
俺がこんなに苦しいのに。
憐れっぽい声を出しても、古泉は見向きもしない。
一人涼しい顔をしていやがる。
それが腹立たしい。
熱い体を鎮めたくて、それが出来るなら相手なんてもうどうでもいいような気分になった俺は、古泉が考え込んでいる隙に古泉をソファの上に押し倒してやった。
「古泉っ!」
と声まで掛けてやったのに、気付くのが遅れた古泉はいとも簡単に押し倒せた。
そのままその顔を見つめる。
俺には人間の美醜は分からんが、結構いい男なんじゃないかと思う。
その唇が、何か言った。
なんと言ったのかは分からないが、戸惑っているらしい。
「黙って俺に食われてろよ」
そう囁いて、古泉の鼻先を舐めてやると、古泉が驚いた様子で目を見開いたのが分かった。
それが面白くて、俺はその顔を嘗め回す。
そうするうちに、古泉も興奮してきたのが、匂いで分かった。
俺までその匂いに煽られながら、服をはだけ、もっととその肌を舐めてやる。
股間で恥ずかしげもなく大きくなっているものを押し当ててやると、古泉の匂いが強くなる。
お互いに煽りあっているとしか思えない。
邪魔な服を脱がせてやれ、と俺が手を掛けたところで、古泉がそれを止めた。
「なんだよっ、今更止めるのか? お前だって、我慢できないくせ…にっ!?」
俺の抗議は途中で消えた。
古泉が俺を組み伏したせいだ。
「何するつもりだよ…!」
思わず耳を伏せながらそう叫ぶと、耳元で何か囁かれた。
優しい響きのそれに、体が一瞬ふわりと浮いたような気がした。
俺がぼうっとなっている間に、古泉が俺の服をまくり上げて、俺の胸にキスした。
くすぐったい。
でもそれ以上に気持ちいい。
「古泉…っ、もっと、して…」
思わずそう言うと、古泉が笑った。
通じたんだろうか、と疑問に思うまでもなく、鼓膜を震わされる。
意味は分からない。
でも、それが優しくて、それでいて俺の熱を煽るものだということだけは俺にも分かった。
だから俺は抵抗をやめ、古泉に身を委ねることにした。
すると、胸の突起に歯を立てられ、体が震えた。
痛いくらいなのに、それが気持ちいい。
「あ、んん…っ、古泉……」
もっと、と体を古泉の体にすり寄せると、古泉はちゃんと分かってくれた。
邪魔っけな服を脱がせて、俺の昂ぶった熱の中心を口に含んだ古泉に、俺は遠慮の欠片もなくすがった。
その口の中に吐き出して、それでもなお熱は鎮まらない。
古泉がまだ興奮しているせいだ。
その匂いにまた煽られて、熱は留まるところを知らない。
俺はまるでこの先何をするのかが分かったような感覚で、自ら足を開き、膝を抱えた。
あるいは、知っていたのかもしれない。
古泉と何をするのか。
どうすれば気持ちよくなれるのか。
古泉が俺を気持ちよくしてくれることも、ずっと前から知っていたのかもしれない。
古泉に舐められる場所がくすぐったい。
このくすぐったさが性的なものだと分かる。
もっと奥に、そこよりも気持ちよくなれる場所があることも。
唾液を絡ませた古泉の指が、そこに入り込んでくる。
じわじわと、警戒するように。
それとも俺の体を労わってるのか?
俺のことを思うなら、早く、より強い刺激を寄越せと言いたい。
ぐちゃぐちゃという水っぽい音を耳が拾う。
それさえ刺激になるのに、それはまだ足りないとそこが訴える。
だから、
「古泉…っ、あ、は、早く…もっと、奥に、欲しいから…ぁ…」
とねだるのに、古泉には通じないのがもどかしい。
結局古泉は俺を焦らしたかったかのようにそこを念入りに解してやっと、俺が望むものをくれた。
遅いんだよ、ばか…。
焦らされた体は止められない。
明日、体が辛いことになりそうだと思いながらも、俺は腰を振る。
もっと気持ちよくなりたい。
そう思っていたはずなのに、気がつけば別のことを思っていた。
もっと古泉と愛し合いたい、と。
どうしてそんなことを思うんだろう。
俺は猫で、古泉は人なのに。
そう思うと胸がずきりと痛んだ。
ああ、どうしてだろう。
古泉が好きで好きでたまらない。
言葉も通じないってのに、どうしてそんなことを思うんだろう。
それでも、愛しくて、愛しくて、放し難くて…。
だから俺は、体に無理を言わせてでも、古泉と体を繋ぐことをやめなかった。
飛びそうになる意識を必死に押し止めて、古泉の体を抱きしめる。
「愛してる」
そう囁いても、叫んでも、繰り返しても、古泉には決して届かなかった。