エロです
キョンがエロい子(?)なので苦手な人はバックプリーズ





































雪より白く



金曜の夜。
俺はひとりで街を歩いていた。
いつもなら被らないような帽子を被って頭を隠し、服装も着慣れない系統のジャケットで誤魔化して。
そうしてこそこそと向かう先は、古泉の部屋だ。
ただの友人の部屋に行くだけであれば当然、そんな風に変装染みたことをする必要などない。
びくつきながら向かってしまうのは、古泉と俺の関係がいわゆる恋人同士であるためだ。
なんでそうなっちまったんだろうなと、思わないでもない。
気がつくと一緒にいるだけのことが心地好くなり、邪魔が入ると嫌な気分になるくらいになっていた。
もしかして古泉のことが好きなのか、と気がついた時には驚いたし、慌てた。
男同士だぞ。
しかも相手は古泉だ。
それなのに、ってな。
今となってはお笑い種だ。
古泉だから好きになったってのにな。
まあ、そのままなら、俺は確実にそのことを忘れようとし、思い違いだと思い込もうとしただろう。
実際、そうしようとした。
古泉との過剰な接触を避け、出来るだけ長門や朝比奈さんと話して過ごそうとしたりな。
ところが、その結果として古泉に告白されちまったんだから、人生ってのはどう転ぶか分からん。
「あなたは気持ち悪いと思うかもしれませんけど」
なんて言葉で前置きをした古泉には悪いが、二つ返事で付き合うことを了承したことは言うまでもない。
かくして俺は、古泉に用事のない週末には、人目を忍んで会いに行くようになったわけだ。
通い慣れた道を歩き、マンションのドアをくぐる。
長門のマンションほどセキュリティが厳しくないので、普通に出入りが出来るのは気が楽でいい。
エレベーターを待って、古泉の部屋のあるフロアまでの短い間を、急かすような気持ちで過ごす。
エレベーターを下りた後は、早足になりながら部屋に向かう。
ドアをノックすることもドアフォンを鳴らすこともなく、ドアノブを捻ってドアを開けた。
「古泉、来たぞ」
そう奥へと掛ける声が普段よりずっと明るいことは自覚しているから指摘しないで貰いたい。
「いらっしゃいませ」
にこやかな、ただし余所行きのそれとは少しばかりニュアンスの違った笑みで、古泉が俺を迎えてくれる。
それだけのことが嬉しい。
「夕食は済まされてきたんですよね?」
「ああ。お前は?」
「僕もさっき食べました」
「そうか」
なら、何をして過ごそうかと考え込んだ俺を、古泉が抱きしめてきた。
「愛してます」
何を唐突に、と思うだろ。
でもこれがこいつの標準なのだ。
何が不安なんだか知らないが、ふたりきりでいると何の前触れも脈絡もなく、好きだの愛してるだのと恥ずかしいことを恥じらいの欠片もなく人の耳に吹き込んでいきやがる。
それでも、そう言われること自体が嫌なはずはなく、俺は呆れながらも俺より少しばかり大きな古泉の体を抱きしめ返し、
「俺も愛してる」
と言ってやった。
見事にバカップルだな。
呆れるしかない。
それなのに、
「……本当ですか?」
返ってきたのは、不安そのもののような情けない声だった。
「…疑うのか?」
自分の口から飛び出た声の細さに、自分でも驚いた。
俺の方がよっぽど不安丸出しじゃねぇか。
「いえ、疑うというか……その…」
「…俺は、お前のことが好きだから、こうやってこそこそ会いに来たりするんだ。嫌いだったら、こんな面倒なことしない」
「そう…ですよね。ええ、あなたはそういう人です。でも……それならどうして…」
「どうして?」
古泉は深刻な顔で俺を見つめて言った。
「…付き合い始めてから、もう3ヶ月経ちますよね」
「ああ…」
と俺は頭の中で数える。
「そうだな。もう3ヶ月か」
まだ3ヶ月にしかならないのかと思うのは、恋人という関係になる以前から古泉とは友人付き合いをしてきたせいだろうな。
「それがどうかしたのか?」
「それなら……もうそろそろ、先に進んでもいいと思いませんか?」
「先にって…何のことだ?」
前々から思っていたが、古泉は普通なら口にしづらいところでストレートに物を言うかと思ったら、単純なところで遠回しな表現をするので話が分かり辛い時が多い。
そのせいで話が分かり辛いんじゃないだろうか。
「とぼけないでください」
「とぼけてなんかない。はっきり言え」
俺が眉を寄せながらそう言うと、古泉は焦れたように俺の後頭部に手をやると、そのままキスしてきた。
キスは初めてじゃない。
だが、合わせた唇の隙間から古泉の舌が入り込んできて、本気で驚いた。
「待て…って、んぅ…!」
抗議の声を上げようとした口の中を、遠慮の欠片もなく舐められる。
突き飛ばそうと腕に力をこめても、敵わない。
普段は体格差なんてほとんど意識してなかったが、意外と大きいものだったのか。
それとも古泉が鍛えてるんだろうか。
妙に器用な舌が、歯茎をなぞり、上あごをくすぐると、くすぐったくて堪らん。
むず痒さがどうにもならない。
これは何か、拷問か何かか。
そう思うのに、頭の芯がぼうっとなって溶け出しそうになる。
何か余計なことでも考えてないとおかしくなりそうで怖い。
というか、息、息が苦しい。
脳に酸素を寄越せ。
ふらつく頭で古泉にしがみつくと、やっと解放された。
新鮮な空気が肺を満たす。
ああ、やっと人心地がついた。
「……一体、なんなんだよ…」
まだ呼吸が落ち着かないまま俺が問うと、
「分かりませんか?」
と返された。
分からんから聞いてるんだろうが。
「…カマトトはやめてください」
カマトトって、俺は別にそんなつもりじゃ、と言うより早く、古泉の手が服の中に入り込んできた。
「いっ!? ちょ、おいっ!? 待て!」
「待てません」
遠慮のない手が体をまさぐる。
「ひあっ! せっ、背中に触るな、くすぐったい!」
「くすぐったい? 気持ちいいんじゃありませんか?」
「気持ちよくなんか、ない…!」
むしろ気持ちが悪いくらいだ。
「ああ、こちらの方がいいんですね」
そう言いながら、古泉が胸へと手をやり、乳首を抓んだ。
「つぅっ…、痛いって、やめろ、本気でやめろ!」
くすぐったさがどんどん強くなる。
むず痒くて、そのくせなんでだか切なくて、怖い。
何なんだこれは。
それに、古泉も怖い。
俺の話を聞かないどころか、説明さえしないなんて、そんな奴じゃないだろう。
じわりと滲みそうになる涙を必死で堪えているうちに、床に押し倒された。
服を肌蹴られ、露わになった乳首に古泉が吸い付く。
「やめろっ、嫌だ…!」
何でそんなことするんだ。
もう訳が分からん。
頭は混乱するし、切なさは強まるばかりだ。
体が震えるのは恐怖のせいだと思うのに、古泉は楽しげに薄く笑った。
「震えるほど感じてるんですか」
感じるって何をだ。
恐怖なら嫌というほど感じている。
「まだそんなことを言うんですね」
呆れたように言った古泉の手が、ズボンの中へ入り込んだ。
「ひっ、や、やめろ古泉!」
「どうしてです?」
「汚いだろ、そんなところ…!」
「……は?」
古泉は訝しげに俺を見ると、
「それ、新手の冗談か何かですか? それともあなたは潔癖症だとでも?」
「なんで、そうなるんだよ…」
「いえ…だってまさか、知らないとは言わないでしょう?」
そう言った古泉の手が、ゆっくりとそこを扱く。
あのよく分からない感覚が強くなる。
怖くて堪らなくて、無体なことを仕掛けてきている相手である古泉にしがみつくしかなかった。
古泉が何をしたいのかよく分からないが、それがさっさと終ってしまえばいい。
そうして解放されるなら、それで。
「硬くなってきましたね」
面白がるように言う古泉に、
「何が…っ」
「何がって、ここがですよ」
そう言いながら、先端を押し潰すようにされて、
「い、やだ…っ」
とうとう涙が零れた。
一度零してしまえばもう同じだ。
「え…!?」
驚く古泉に縋りついて、
「もう、嫌だ! 本当に、嫌なんだ。止めてくれ。…っく、怖い、何か来そうで、嫌なんだ…っ」
ぼろぼろ情けなく涙を零しながらそう訴えると、古泉は心底仰天した様子で、
「あ、あなたまさか、本当に自分でしたこともなかったんですか!?」
「だから、……ひっく…何をだよ…!」
「…えぇと……自慰とか、したことも、ないんですか?」
しどろもどろになりながら言った古泉に、俺は頷く。
「絶対、しなきゃならんってもんでも、ないだろ…。やり方も、分からなかった、から」
「――ああ、それでだったんですね。あなたが性的なことに興味を示さなかったのも、朝比奈さんや涼宮さん、長門さんに対して、そういう目を向けなかったのも」
合点が行ったというように呟いた古泉が俺のことを慰めるように優しくキスをしてきた。
「すみません。あなたが純粋な人だと分かっていたはずなのに、そこまでだとは思ってなかったんです。驚かせてすみません」
「…もう、止めてくれるか……?」
俺が問うと、古泉は困ったように眉を寄せながら、
「この状態で止めると、あなたも辛いと思いますよ。今の状態がそのまま続くことになりますからね」
今のこの、わけの分からない状態が続くなんてのは、ぞっとしない。
「優しくしますから、ね」
「……じゃあ、ひとつ教えろ」
「はい?」
「…何か来そうで、怖いんだ。むず痒くて、切なくて、どうしていいのか分からん。これは、何なんだ?」
「……それは、」
古泉は何故だか優しい笑みを浮かべると、俺の耳に囁いた。
「気持ちいいって言うんですよ」
「これの、どこが…!?」
「快感と言い換えてもいいでしょうね。少なくとも、怖いことではありません。自然なことですから、安心してください」
「けど、こんな…おかしくなりそうなのに……」
「おかしくなってもいいですよ」
そう言いながら、古泉の手が動きを再開する。
「ふ、…っあ、んん…」
ぎゅっと古泉の服を握り締めると、
「僕を信じてください」
と言われ、俺は頷きながら目を閉じた。
古泉に触れられている場所に、意識が勝手に集まる。
熱くて、頭の中まで焼けそうに思える。
「古泉…っ」
「そろそろイきそうですか? と言っても、イくというのがどういうものか、あなたには分からないんですよね」
「から、かうなぁ…!」
「からかってませんよ。…可愛いと思っているだけです」
「ひ、あ、やだ…っ、それ止めろ…っ!」
ぐちぐちと水音を立てるそこを強く刺激されて、頭の中が白く染まる。
そうして不意に、ふっとどこかが楽になったような感覚が訪れた。
その寸前にあった苦しいほどのそれは形容さえ出来ない。
その名残だけで、体がビクビクと震えた。
「大丈夫ですか?」
慌てた様子で古泉が顔をのぞきこんできても、しばらくは反応を返すことすら出来なかった。
放心していたらしい。
口の中にたまっていた唾液を飲み込むと、ごくりと大きな音がした。
「あの…」
心配そうな顔をした古泉を、じっと見つめて、俺は言った。
「…もう一回…したい……」

何か開けてはいけない箱を開けてしまった気がしたのだが、あながち間違ってもないんだろうな。