当然鬼畜風エロです
むしろそうじゃないといけない気がするシリーズです
































有りの儘を曝け出す



古泉からメールが入ったのは、俺が帰り支度をし始めた時だった。
『涼宮さんの気が変わったので、本日の活動は休止です。』
そんな連絡は俺のところに来ていなかったが、ハルヒなら俺にだけ連絡しないということも大いにあり得るな。
世界が変わろうがどうしようが、あいつは俺に対して気を遣うということをしないのだ。
念のため、ハルヒに確認のメールを入れようとして、メールにまだ続きがあることに気が付いた。
しつこいくらいスクロールさせた先には一言、
『部屋でお待ちしてます』
と書かれていた。
困った奴だな、と思うのに、頬が勝手に緩むくらいには、俺は古泉が好きらしい。
全く、どうしてだろうな。
あんな鬼畜変態エロ野郎で、そのうえ猜疑心ばかり強くて、俺の都合なんてほとんど構いもしないような奴なのに。
あるいは、こんな風に俺が無駄足を踏まないように連絡をくれたりする優しさに、俺は弱いのかもしれない。
苦笑しながら俺は古泉に返事を打つ。
分かった、とただ一言だけで用は足りるだろう。
ついでに、ハルヒへ確認のメールを入れ、お袋にもメールを送っておく。
内容は、古泉の部屋に泊まるというただそれだけだ。
今日は金曜日だから、まず間違いなく古泉に引きとめられるだろうからな。
……別に、期待してるわけじゃないぞ。
ハルヒから、古泉によってもたらされた情報が嘘でないということを示すメールが届いたのは、坂を下りたところだった。
早いな。
一体何してるんだ、あいつは。
あまり迷惑を振りまいてなければいいんだが、と思いつつ、それでこそハルヒだとも思う。
小さく笑いながら、俺は足を速めた。
これでもう懸案事項はない。
数日ぶりに、SOS団以外で顔を合わせることになる恋人の顔を思い描きつつ、俺はにやける頬を押さえていた。
「いらっしゃいませ」
古泉はいつになく穏やかな笑みでそう言って俺を迎えてくれた。
機嫌がいいらしい。
これなら久し振りに、まともなプレイでおさまるかな、と思った俺はまだ甘かったね。
何しろ古泉と来たら、俺が、
「邪魔するぞ」
と靴を脱ぎつつ玄関のドアを閉めた途端、俺を抱きしめてキスしてきやがったからな。
「んっ、ふ…っ」
驚きに薄っすらと開いた唇から、古泉の舌が入り込んでくる。
柔らかいくせにちょっとやそっとじゃ引きやしないそれが、俺の口の中を文字通り蹂躙する。
くちゅくちゅと水っぽい音が響き、口の端から飲み切れなかった唾液が零れ落ちていくのを感じても、それを拭う余裕さえない。
俺の手からカバンが落ち、どさりと音を立てた。
四肢どころか全身から力が抜けて、くたりと揺らぎそうになる俺を、古泉は離しもしないどころか、より強く抱きしめた。
応えることも出来ない俺の舌を絡め取って、吸い上げる。
名残惜しげに唇を離した古泉は、薄く笑いながら俺のブレザーを脱がせた。
「ちょ、ちょっと待て、古泉…!」
「どうして待つ必要があるんです?」
「ここをどこだと思ってるんだ」
「僕の部屋ですよ。何の問題もないでしょう?」
大有りだ。
玄関先でコトに及ぶつもりか。
「だって、」
と古泉は子供が拗ねるみたいにして言った。
「ここにしか、大きな鏡はないんですよ」
「……鏡?」
確かに備え付けられた姿見がありはするが、それがどうしたって言うんだ?
「前に約束したでしょう? 僕に抱かれているあなたがどんなに魅力的か見せるために、鏡の前で抱いて差し上げますと」
そんなことを言われたような気もするが、本気だったのか。
「そのためには、やっぱり大きな鏡がないと。……でも、あなたがそんなに仰るなら、僕は小さな手鏡でも構いませんよ。狭い範囲しか映らない分、結合部を映し出したら、より扇情的に映るでしょうし」
余計に変態度が増すだけだろうが。
「では、やはりここでしましょう。僕も、鏡片手なんて不自由な状況でなく、思う存分あなたの乱れる姿が見たいですからね」
そう言った古泉の手が、シャツの中へ入り込み、胸の突起に触れる。
「ひあっ…!」
「ふふ、もう勃ってますね。まだ触ってもなかったのに。期待してくれてたんですね」
「や、違…っ、そんなんじゃ、ないっ…」
「声、余り上げない方がいいですよ?」
親切めかした言葉が耳へ吹き込まれた。
それだけで腰が揺れる。
「何…?」
「だから、余り大きな声を上げると、誰か聞きつけてくるかもしれませんよ。そうしたら、簡単にドアを開けられてしまうでしょうね。何しろ、鍵を掛けてませんから」
はっとした。
確かに古泉は鍵を掛けてない。
一抹の期待を込めてドアノブを見たが、間違いない。
「なら、余計にこんな、…っあ、ところで、すんなよ…!」
「聞けません。あなたが声を控えればいいだけのことですよ。僕としては残念なことですが、あなたはいつだって声を上げまいとしますし、そっちの方がいいんでしょう? 今日はそれで許してあげますよ」
「んなこと言った…っぁあ…!」
背後から俺を抱きしめなおした古泉の手が、俺の胸へ伸びる。
ちっぽけな突起を抓まれ、押し潰されるだけで、どうしようもなく声が上がる。
俺は必死に口を押さえた。
「そう、それでいいんですよ」
と笑った古泉の手は、更に傍若無人になって、俺の体の上を這い回る。
背筋をなぞり、臍の横をくすぐり、下肢へと伸びる。
急所を揉みしだかれ、
「んっ、んんっ…ん…」
と声にならない喘ぎが漏れる。
「ほら、目は開けていてくださいよ」
囁きながら、古泉が耳朶をぬっとりと舐めた。
それだけでぞくぞくする。
「それじゃあせっかくの媚態が見えないでしょう?」
何が媚態だ、と抗議しようとして薄目を開けた俺は、鏡に映された自分の姿に愕然とした。
赤くなった頬。
上気して薄桃色に染まった肌。
興奮に昂ぶった性器。
そして何より、恍惚とした表情――。
「…う、そ…だろ……」
「嘘じゃありませんよ。あなたはいつだって、こんな顔をして僕を誘ってるんです。この顔を見たら、僕が途中で止められなくなるのも分かるでしょう?」
言いながら、古泉は硬くなったモノを俺の体へとすり寄せた。
それだけで腰がしどけなく揺れる。
「ねえ、誘ってるとしか思えない顔でしょう?」
「誘って、ひぅっ…、なんか、ない…!」
混乱した体が、勝手に涙をこぼす。
それでも、鏡から目が離せない。
鏡に映る、自分の媚びるような姿から。
「気持ちいいんでしょう? 気持ちいいことが、好きなんでしょう?」
奈落にいざなう堕天使のように、古泉が囁いた。
違う、と必死に首を振る俺へ、古泉は優しく言い聞かせる。
「いいんですよ。認めてしまっても。気持ちいいことが嫌いな人間なんていません。セックスを気持ちのいいことだと言えないような倫理観や慎ましさは、あなたを形成する中でもある程度の位置を占めているのでしょうけれど、そんなものは体面的なものであって、そうであれば僕たちの間には必要ないものではありませんか」
何を言われようと、認めることは憚られた。
首を振り続ける俺に、古泉は苦笑しつつ、中へ埋めた指を動かした。
「んんん…っ!」
それだけでびくびくと体を震わせる俺に、
「全部、僕にくださったんでしょう? それなら全部、見せてください」
そんなことを言われても、俺はこんな自分なんて知りたくなかった。
これ以上の浅ましい姿なんて、古泉を好きだからこそ、曝したくない。
そう思うのに、古泉のモノをそこへ押し当てられると、それだけで鏡の中の俺は歓喜に打ち震えた。
顔に喜色を滲ませて、早くそれが欲しいと全身で訴えて。
「このままでは流石にやり辛いですね」
古泉は意地悪にそう笑うと、俺を抱いたまま床に腰を下ろした。
そうしておいて、
「自分で入れてください」
と笑顔で言った。
「そんなの、出来るか…っ」
「出来ませんか? 前にもしてくださったではありませんか」
「あの時とは、状況が違うだろ…」
我ながら苦しい言い訳だが、実際そうなんだからしょうがない。
あの時は本当にどうかしていたんだ。
「一度出来たことが出来ないとは言わせませんよ。あんなにおいしそうに、ここで飲み込んでたじゃありませんか」
ここ、とその場所をくすぐられ、体から力が抜ける。
「ねえ、出来るでしょう? 僕も手伝いますから」
と古泉が俺の腰を支え、俺を膝で立たせる。
「ほら、後は体を沈めるだけですよ」
「無理だっ…」
鏡に映されたそれは怖いほど怒張していて、本当に自分の体の中に納まるのかさえ怪しく思える。
「大丈夫ですよ。十分解しましたからね」
ね、と古泉が俺の腰を軽く引き下げるように手を動かした。
ぐちゃりと粘着質な音が響く。
感じる熱に、その映像に、くらくらした。
「後は、出来ますね?」
その甘い囁きに、鏡の中の俺が首肯するのが見えた。
ゆっくり腰を沈めると、怖いくらいあっさりと、古泉のソレが俺の中に入っていくのが見えた。
「あ、ぁあ、ああ…っ」
鏡の中の俺が、みっともなく喉を震わせて、愉悦に表情を醜く歪ませる。
そんな俺へ、古泉は声にも表情にも、溢れんばかりの愛しさを滲ませて囁くのだ。
「愛してますよ。もっと、見せてください。あなたの素敵な姿を」
「…っ」
腰を沈めきって、力が抜けそうになりながら、俺は古泉の手を握り締めた。
「これ以上、隠さなくていいんです」
その言葉が、トドメだった。
喜びに熱を帯びた瞳が、殻を打ち壊した。
「……と」
初めは、小さな声だった。
「なんですか?」
からかうように聞き返されて、恥も外聞もなく、叫んでいた。
「っ、もっと…深く、……欲しい、から…っ!」
「いいですよ」
嬉しそうに古泉は囁き、俺の肩にキスを落とした。
その手が俺の脚を持ち上げ、結合がより一層深くなる。
「…っああ!」
鏡の中の俺が笑っていた。
「古泉…っ、もっと、イイから…っもっと…!」
甘ったるい声が、喉を震わせる。
ぐちゃぐちゃと音を立てて、出入りを繰り返すソレを、潤んだ目が見つめている。
「あ、……はっ…、本当に、ぁんん…っ、繋がって、んだ…」
「ええ、繋がって、ますよ」
余裕の失せた古泉の顔が鏡に映る。
それさえ、愛おしくて。
「古泉、好き…好きだ…」
うわ言みたいに呟くと、
「愛してます」
と返される。
無理矢理頭を後ろへ向けると、唇が重なった。
俺の方から舌を求めて、絡めて、唾液を零して。
零れたそれを舐め取る古泉の舌にさえ感じた。
「もっと、深く…」
ねだるだけですぐに応えられた。
古泉の手が俺の体を前に倒し、手をつかせる。
持ち上げられた腰を打ちつける乾いた音が響き渡る。
その音が外に漏れているかもしれない、誰かに聞かれているかもしれないと思うと、そのことにすら劣情を煽られた。
イきっ放しでゆるゆると精を吐くソレが、濁ったもので床を汚す。
笑みの形に歪んだ口の端から零れ落ちる涎まで、鏡にくっきり映される。
醜い、汚い俺。
だが古泉は、
「愛してますよ」
とこの上もなく愛しげに呟き続けるのだ。
それなら、その言葉を信じようか。
そう囁かれるだけで余計に熱を高められ、全身を歓喜に染めながら、俺はそう思った。
俺の中に熱い液体が注がれてもまだ、体の熱は留まるところを知らない。
「大丈夫ですか?」
と尋ねてくる古泉に口付けて、引き抜かれたソレへ手を掛ける。
それだけでも、古泉が驚いた顔をしたことがおかしくて、俺は笑いながら言った。
「俺からも、何か、したい、から」
興奮にもつれる舌でそれだけ言って顔を伏せ、ソレに舌を這わせる。
苦いと感じながら、放す気になれないのは、それさえ愛しいからだろう。
ぴちゃっ、と音を立てて舐め上げると、古泉がぶるっと体を震わせた。
「本当に、してくれるんですか?」
「するって言ったんだから、大人しくしてろよ」
動いた結果としても歯を立てちまっても俺は知らんぞ。
「夢みたいですね」
何度目だか分からない言葉を古泉が呟いた。
現実だ、と言う代わりに、俺はソレを口に含んだ。
それだけで、質量を増すそれを吸い上げる。
「くっ…」
古泉が声を上げるのが面白くて、ハマりそうだと思った辺り、俺ももうおかしくなっている。
それならどうなったって同じことだ。
口を離した俺は、
「なあ、古泉、もう一回するぞ…」
と古泉を抱きしめた。
そのまま床に押し倒され、いくらか乱暴に挿入される。
「やっぱり、ん、こっちの方が、いい…っ」
そう言いながら、俺は古泉にしがみつく。
体を抱きしめて、キスをすることが出来て、古泉をもっと感じられる。
鏡を見なくても、自分が笑ってると分かった。
「……本当に、可愛い人ですね」
そう微笑んだ唇が、俺の頬へと触れた。

シャワーを浴びて、服を着ながら、俺はため息を吐いた。
もうどうしようもない。
これまで、恋人らしいことをろくにしなかったのは、古泉をつけ上がらせるだけだと思っていたからなのだが、あれだけ醜態をさらしたら、隠したって無駄だろう。
それなら、もう少し素直になった方がいい。
恋人らしくしてやれば、古泉だって多少は落ち着くかもしれないし、そうじゃなくても、もういい。
俺がそうしたいからするんだからな。
今度、俺の方から外出に誘ってみよう。
健全なデートに。
とりあえず今日は、夕食を作ってやりたい。
「晩飯、作ってやるよ」
俺が言うと、俺と入れ違いに風呂に入ろうとしていた古泉が嬉しそうに振り返り、
「ありがとうございます」
と笑顔を見せた。
心底嬉しそうな、子供のように無邪気な笑みだ。
「お前、そんな顔も出来るのか」
言ってよかったと思いながら、俺は笑顔でそう呟いた。