エロですよー
痴漢ですよー
愛はある……かな…?
たまたま乗った電車に、古泉が乗り合わせているなんて確率はどれほどのものだろうな。 最寄り駅が同じ以上、利用する路線も似たようなものだろうし、同じ車両に乗り合わせる可能性もないではない。 だから、確率的にはとんでもなく低確率でも、高確率でもないはずだ。 日常的にあり得ること、そんなレベルだろう。 それにしたって、こんな風に偶然、同じ車両に乗っているのを見つけたのは初めてだった。 ラフな私服姿と言うことは、ただの「古泉」として出かけていたんだろうか。 ドアのすぐ側、窓の方を向いて立っている古泉の、なんとなく苛立っているような、むしゃくしゃしているような表情が意外だったが、それはつまり、特に演技もしていない古泉ということなんだろう。 古泉がいると気付きながらも声を掛けなかったのはそのせいだ。 わざわざ妙な任務を思い出させてやることもないと、誰だって思うだろう? ――演技をしていない古泉がこんなにも殺伐とした雰囲気の男だと思っていなかったせいで、声を掛けあぐねたということでもあるのだが。 少し離れたところから見る古泉は、近づくと危ないと思わせながらも人を惹きつけるような雰囲気を持っており、俺以外にもちらちらと見ている人間がいた。 顔がいいだけじゃない、ってことかね。 全く、羨ましい限りだ。 そんなことを思いながら、他に見るものもないので古泉を見ていると、不意に古泉の顔が顰められた。 苛立ちを通り越して、キレる寸前、と言わんばかりの表情だ。 何かあったんだろうか。 その頭がきょろきょろと辺りを見回すように振られ、俺は思わず目を逸らしたが、古泉がそんなことをしたのは別に、俺を探すためじゃないだろう。 その顔が少しだけ赤味を帯びている。 そうして少し身をよじる仕草。 ――まさか、と思った。 古泉はどこからどう見ても男で、女には見えない。 だから、と打ち消しかけて、古泉の見映えの良さやなんかを思い出しちまった。 それなら、ないとは言い切れないんだろう。 古泉が、痴漢に遭ってるなどということも。 どうしたもんだろうな。 近づいていって声を掛けてやれば、痴漢が逃げ出してくれるだろうか。 そうであれば、そうしなくてはならんと思うのだが、さっきまで声もかけずに放っておいただけに、声が掛け辛い。 なんて、思ってる場合じゃないな。 混雑の中、古泉のいる方へ強引に進もうとしたところで、俺は、驚きに足を止めた。 周りが怪訝そうに俺を見ているのが分かっても、どうしようもない。 ――古泉が、笑っていたのだ。 面白がるように、からかうように。 そこに羞恥や屈辱の色は欠片もない。 むしろ、挑発するような、相手を蔑み、逆に屈服させるような表情だった。 それを見て俺は動けなくなった。 見慣れないものを見て頭がどうかしちまったんだと思いたい。 そんな古泉に、見惚れたなどとは、口が裂けても言えない。 だが、目を離せなくなるくらい、古泉は綺麗で、ぞくぞくした。 その薄く開かれた唇がかすかに動き、何か呟いたと分かる。 興奮にか、赤く染まった顔が、時折顰められる。 それさえ艶めいて見えた。 どうかしている自分の頭をどこかへ打ちつけることさえ出来ず、俺はただ古泉を見ていた。 そうこうするうちに電車が駅に着く。 まだ下りるべき駅ではないのだが、古泉がするりと電車を下りた。 そのすぐ後を、中年のサラリーマン風の男がついていく。 俺は周囲の迷惑も顧みず、人の群れを掻き分け、慌てて電車を下りた。 ドアの閉まる音を聞きながら、辺りを見回すと、さっきの男が階段を下っていくのが見えた。 それを早足になりながら追いかけると、古泉も見つかった。 それこそ、何事もなかったかのような調子だったから、一瞬、俺の勘違いだったのかとさえ思った。 古泉がそのまま公衆トイレへ、男を伴って入って行きさえしなければ。 トイレの前に突っ立って、考え込む。 そもそもどうして俺は、こうして古泉を追ってきてしまったんだろうか。 古泉が心配だったのか? だが、あの様子なら心配は要らないだろう。 どうするつもりだか分からんが、少なくとも危険はない気がする。 それなら何故、俺は古泉を追いかけてきたんだ? 分からん。 ただ、古泉のことが気になっていた。 その時だ。 「ふぐっ…!」 押し殺したような声が聞こえた。 古泉の声じゃない。 それなのに、俺はその声に惹かれるようにふらふらとトイレに足を踏み入れた。 足音を極力立てないようにしながら入ったそこに、人影は見えなかった。 個室にでもいるんだろうか、と思ったところで、かすかに古泉の声がした。 「いいんですか? 声を上げても。誰かに聞きつけられるかもしれませんよ?」 嘲笑うような声は、初めて聞くもので、何故だか胸がざわついた。 「僕は聞かれたって構わないんですけどね」 「うあっ!」 「どうせならもう少しいい声で啼いてもらいたいものです」 クスクスと笑う声に、ぞくぞくしたものが背筋を駆け上る。 危険だと思うのに、逃げ出すことさえ出来ない。 もっと古泉の声を聞きたいと思った。 「それにしても、土足で踏まれて感じるなんて、どうかしてると思いませんか?」 その言葉こそ、踏みつけているように思えた。 踏みつけられているのは、何だろう。 さっきのあの男か、それとも、俺自身なのか、それさえ分からない。 しばらくまたうめき声が続き、一際大きなそれが上がったことで、俺は終りを知った。 「ああ、ズボンの中が汚れました? 自分で何とかしてくださいね」 残酷な声が告げる。 「僕はこれからまだ、お楽しみが待ってますから。ねえ?」 呼びかける声がしたかと思うと、いきなり個室のドアが開いた。 見たこともないような凄絶な顔をして、古泉が俺に笑いかける。 「あ……」 とっさに言葉も出ない俺に、古泉はふふっと笑い、 「興奮してるでしょう?」 「これ、は…っ」 うろたえる俺に構わず、一気に距離を詰めた古泉の手が、俺の股間に触れる。 「こんなになって、」 耳元で囁かれる言葉に全身が震える。 「恥ずかしくないんですか?」 「っ…」 顔どころか全身がかっと真っ赤になったかと思った。 「ああ、羞恥心は持ち合わせておいでのようですね。その方が僕もいじめ甲斐があって嬉しいですよ。先ほどの彼のようだと、さほど楽しくないので」 まあしかし、と古泉は唇を舐め、 「彼のような小物で、あなたのような大物が釣れたんだから、よしとしましょうか」 その手が、熱を帯びた俺のモノをやんわりと揉みしだく。 でも俺は、その手の動き以上に古泉の声に、言葉に、熱を煽られていた。 「ずっと、思ってたんですよ。あなたを組み伏して、僕に屈服させられたらどんなに楽しいかって」 言葉を紡ぐ舌が、耳朶を食む。 「ひぁっ…」 「ああ、いい声ですね。思った通りです」 「思った、通り、って……」 「ずっと思ってたと言ったでしょう? その潤んだ瞳も、羞恥に打ち震える姿も、思い描いていた通りで、素敵ですよ。理想的と言ってもいいかも知れない」 さあ、と古泉が頭の中へ直接吹き込むように囁く。 「選んでください。ここでしますか? それとも、ホテルにでも行きます? 僕の部屋でも構いませんが、何にせよ、」 ――逃がしはしませんよ。 その言葉だけで、イかされるかと思った。 「大丈夫ですか?」 と言いながら俺の体を支えて歩く古泉は、調子を崩した友人を助けてやっているようにしか見えないだろう。 俺の脚がろくに立たなくなっているのも、高熱でもあるかのように顔が真っ赤になっているのも、全て古泉のせいなのだが。 ふらつく俺を平然と支えて見せる古泉は、見た目以上に力があるらしい。 優男なら優男らしくしてればいいものを。 あれだけ音が響くトイレでコトに及ぶのも、古泉の部屋まで戻るという過程で電車に長いこと揺られるのも嫌だった俺が、つまりは消去法でホテルに行くことを選んだ後、古泉は嫣然と微笑んで俺の耳に吹き込んだのだ。 「そうですね。ホテルなら、あなたをもっと楽しませてあげられるでしょうから」 それに反論しようとした口を、そのままふさがれて、腰が砕けるようなキスをされた。 人が来たらすぐに見えるような位置だというのに、古泉は驚くほど大胆で、口腔を思うがままに蹂躙した。 キスだけでそんなに感じるなんてことを、男女交際の経験すらない俺が知るはずもなく、混乱に陥った俺に、古泉は面白がるように笑い、 「初心なんですね。とても可愛らしいですよ」 「ぅ…?」 頭の中までかき回されたような感覚で、問い返すことすら出来ない俺を、古泉は優し過ぎるほどに感じるような手つきで抱きしめた。 「古泉……?」 「……さあ、行きましょうか」 そう言って体を離した古泉の顔が、どこか仮面のように見えたのが気になったが、それを口にする余裕はなかった。 「脚が震えてますね。肩を貸しましょうか?」 「……すまん」 小さく言って、薄く笑う古泉に縋る。 そうして古泉に支えられたままトイレを出て、薄暗いように思える界隈を後ろめたい気持ちで歩き、ホテルに入った。 部屋に入るなりベッドに押し倒される。 予想以上に性急なやり方で。 「んっ…古泉……」 「まさか、今更逃げ出すなんてこと、しませんよね?」 俺が何も言わないうちから、古泉はそう言った。 「逃がさないと言ったでしょう?」 言いながら、乱暴にキスされる。 舌で犯されてる気分だ。 どうして、こんなことになってるんだろうか。 今更の疑問を抱いたのは多分、少しだけ頭が冷えたからだ。 痴漢行為に遭う古泉に興奮して、それ以上に、人を貶める古泉の言動に熱を煽られたということはつまり、潜在的にか無意識的にか俺が古泉にそういった欲を持っていたということなんだろう。 ただ、分からないのは、古泉があんなことをし、かつ、今こうしている理由だ。 「ひとつ、だけ、…聞かせてくれ……」 捲り上げられたシャツの下にあったふたつの突起物を指と口で刺激していた古泉に、そう問うた。 声が情けなく震えていたのは、恐怖のせいではなく、それが快感をもたらしていたせいだ。 「なんです?」 ゲームを邪魔された子供のように、不機嫌な顔で古泉が俺を見る。 「お前、なんであんなことしてたんだ?」 記憶のどこを探っても見つかりそうにない表情に、ガラにもなくどぎまぎしながら問うと、古泉の顔が更に歪んだ。 「……ストレス発散ですよ」 吐き捨てられた言葉にほとんどダメージを受けなかったのは、予想していたからかもしれない。 あるいは、それが本気に聞こえなかったからだろうか。 「電車に乗っていると無遠慮に触ってくるような輩が少なからずいましてね。仕返しに、ああしていじめてやるんです。あなたに見られるとは思いませんでしたけど」 そう言って、既に赤くなりつつあった突起に、歯を立てた。 「っ…!」 痛みに顔を顰める俺へ、古泉は艶かしく微笑み、 「いいですね。あなたのそんな表情も」 「ば、か…」 「普通、なかなか難しいですよ? 初めてで、乳首だけでこんなに感じるなんてこと。経験でもあるんですか?」 「……そうだと言ったらどうする?」 古泉がどう反応するか知りたくて、そう言ってみると、古泉の顔がカッと朱に染まった。 「許せませんね」 低く、唸るような声で言った古泉の手が、遠慮なく下肢へ伸びる。 何の準備も配慮もなく、無理矢理に指を押し入れられて、 「っ、痛い、って」 と抗議の声を上げた俺に、古泉は冷たい声で言った。 「痛いと言う割に萎えませんね。痛いのもお好きなのではありませんか?」 「んなわけ、あるか、ぁ…っ」 中を探るような動きに、体が震える。 どうかしてる。 「あなたも経験者だというなら、遠慮なんて必要ありませんね。好きにさせてもらいます」 「あ、やっ、…そこっ、嫌だ…っ」 痛いだけだったはずだってのに、その一点を擦りあげられると、みっともない声が上がった。 耳に痛いほど艶めいた、誘ってるようにしか聞こえない声だ。 「嫌? イイの間違いでしょう」 そう揶揄されても仕方ないくらいだったが、本気で止めてもらいたい。 刺激が強すぎて頭がおかしくなりそうだ。 何か縋るものが欲しくて、シーツを掴み、指が白くなるほど力をこめた。 「感じてますね」 そう言った古泉の上擦った声が、余計に煽ってくる。 「でも、流石にこのままもう1本指を入れるのは無理みたいです」 「あ、たりまえ、だろ…!」 快感があるからといって痛みが平気になるのかというとそうでもなく、痛いものは痛いんだからな。 そうであれば体が防衛本能を発揮させ、拒むのも当然だろう。 そんなことを考えていると、冷たく、べちゃりとしたものが掛けられた。 「冷たっ…」 「そうですか? 体温が上がっているせいでしょう」 そんなことを言いながら、古泉がそれ――どうやらローションらしい――をさっきまで指が入っていた場所へと塗りこめる。 スムーズに出入りする指が、痛み以外のものばかりをもたらし、腰が揺れた。 「ふふっ、欲しくてしょうがないって顔ですね」 誰のせいだと思ってやがるんだこの野郎。 「さあ? 最初にあなたを開発した相手に言ったらどうです?」 だから、それもお前だろ。 「……え」 俺は思い切り顔を顰めながら言った。 「まさか、忘れたとは言わないだろうな」 夏の合宿の一日目の晩に、俺を部屋まで送るとか言って部屋に連れ込んだ挙句、酔っ払って前後不覚状態になり、抵抗が出来ない俺を抱いただろ。 そう指摘してやると、古泉は驚きに目を見開き、 「な、……あなた、翌朝にはすっかり忘れてたんじゃあ…」 忘れていたとも。 だがな、記憶ってやつは、同じことをされれば、フラッシュバックすることもあるんだよ。 これで、どうして古泉を追いかけてきちまったのかも分かる。 古泉があんな顔をするのがどういう時か知っていて、俺以外にそんな顔を見せる古泉に腹が立っていたんだろう。 無意識的にではあるが。 「…本当、ですか?」 「こんな嘘を吐いてどうするんだ」 それにお前、口で言うほど悪人でもないだろ。 正直に、俺が好きだって言えよ。 あの時みたいに。 「……好きですよ」 拗ねるように言った唇が、俺の唇に触れる。 「あなたは、どうなんですか」 さっきよりもよっぽど感情を感じさせる目で問われ、俺は正直に答えた。 「…正直分からん」 「…はぁ?」 そう呆れるな。 こんなことをされても嫌じゃないということは好きなのかも知れないが、体が快楽に負けてるだけという気もするんだよ。 だから、お前を好きなのかどうかは分からない。 「……少なくとも、嫌いではないんですね?」 「ああ、それは確かだな」 嫌いな奴に抱かれたいとは思わん。 「なら、僕には抱かれたいと思うんですね」 ……しまった。 口を滑らせたか。 「嬉しいです。たとえ体だけでも、あなたに求められるなんて」 そう言った言葉通り、嬉しそうに笑いながら、その指がくちゅりと音を立てた。 「んんっ…」 「もっと、善くしてあげます。僕なしでいられなくなるくらい」 「ひぁ、あ、そこ、だめだって…っ」 「大丈夫ですよ。少しくらい乱れたって、見ているのは僕だけですし、そもそもあなたは普段からストイック過ぎます」 そうは言われても、俺としては、快感の余り頭がおかしくなるかもしれないという、俺が感じている不安を分かってもらいたいくらいなのだが。 「僕が、信じられません?」 「……そういう、言い方は、っふ、ずるい、だろ」 ああ、ラジオでも流してやればよかった。 そうすりゃこんな淫らがましい水音に耳を占領されることもなかっただろうに。 古泉の獣染みた目と、古泉がそんなことをしているビジュアルとにやられちまった俺の目は、逸らすことも閉じることも出来ないまま、それを見つめ続けている。 されてることよりもむしろ、そっちに感じてるんじゃないだろうか。 痴漢相手にはあんなにも支配者然とした姿を見せていた古泉が、額づくようにしながら俺に奉仕しているということに。 「古泉、もう、いいから」 興奮の強さと快楽に耐えかねて、そう訴えると、古泉の喉が鳴った。 「痛むかもしれませんよ?」 「それでも、いいから…っ、早く、欲しい…」 「困った人ですね」 とからかうように笑っているくせに、その目には余裕などない。 作った表情の中にのぞく、素の古泉の姿が、気になる。 愛しいと言ってしまってもいいかもしれない。 そんな思考も、熱い塊を押し当てられるとどこかへと散ってしまったが。 「入れますよ」 「んっ…」 出来るだけ力を抜き、息を吐いてそれに耐える。 押し入ってくるそれが、強引とも慎重とも言いかねるのは、気を抜くと性急になりかかる自分を、古泉がなんとか制そうとしているからなんだろうか。 一度しっかりと納められたそれが、引き抜かれ、今度は一気に最奥を突いた。 「…っぁああ…!」 一瞬、意識が飛んだかと思うほどの快感。 頭のタガまで壊されたように、俺は古泉に縋りつき、腰を振る。 「古泉っ、あぁっ、や、…ひぃっ……!」 「僕はちゃんとここにいますよ」 与えられるキスにさえ、縋って。 最終的には、もっとだのなんだのと、かなり恥ずかしいことまで口走っていた。 ふらつきながらシャワーを浴びて出ると、 「大丈夫でしたか?」 と古泉が俺にタオルを掛けた。 ついでにわしゃわしゃと俺の頭を拭くのは何だ、保護者気取りか。 「どうせなら、保護者ではなく恋人と言ってもらいたいですね」 「阿呆」 と言っておいて、古泉の肩に妙な痕を見つけた。 半円に少し足りない、赤い点線のライン。 「……おい、それってもしかして…」 「ああ、やっぱりあの時にはもうほとんど意識が飛んでたんですね。ええ、あなたが考えている通り、これはあなたの噛み痕ですよ」 嬉しそうに言うんじゃない、気色悪い。 「嬉しいですから」 痴漢相手に足コキしていたぶってた人間の言うこととは到底思えないのだが、古泉は二重人格者だとでもいうんだろうか。 「悪かったな。噛んだりして」 「謝る必要はありませんよ。嬉しいと言ったでしょう?」 「だが、痛むだろ?」 「どうってことありません」 何を言っても無駄だな、と俺は小さく息を吐き、この後どうするべきかと考え込んだ。 まあとりあえず、ひとつ言っておこうか。 「…いくらストレス発散でも、ああいうことは止めろよな」 俺が言うと古泉は小さく笑って、 「あなたがそう仰るのでしたら」 「……その分、俺が付き合ってやるから」 我ながら、恩着せがましい言い方だとは思う。 だが、仕方ないだろ。 俺は、素直な言い回しが出来るようには出来てないんだ。 古泉はにやにや笑いながら、 「ありがとうございます」 と言うと、 「顔、真っ赤ですよ」 と余計なことまで指摘したのだった。 |