鬼畜ネタです
当然エロですが、色々と問題のありそうなプレイ、描写があります
本気で18禁なのでそのところを分かってから読んでください
むしろ引き返してください
じゃら、と音を立てて鎖が首輪から外される。 「おはようございます」 と囁かれ、唇に柔らかな感触が触れる。 ほとんど同時に、身体の中から無機物が引き抜かれた。 「んあぁ……」 猫が啼くような声を上げて、俺は目を開けた。 古泉の笑みが見えた。 優しげなそれを見ながら、俺はまた苦しい時間が始まると思った。 どうして自分がここにいるのか、一体どれほどの時間ここにいるのか、俺には全く分からない。 分かるのは、俺がここに閉じ込められていることと、ここを訪れるのは古泉だけということだけだ。 気がつけば俺はここにいた。 さらわれたのか、それとも脅されてここに来たのかも思い出せない。 自分の意思で来たのでないことは、未だに俺がここから出してもらえないことからして確かなんだろうな。 その上、古泉がいない間はずっと鎖に繋がれて、ベッドからさえ動けなくなるんだから、一方的に束縛されているに違いない。 眠る姿勢さえ制限されながら、俺はこの狭い部屋で一日の大半を眠って過ごす。 食事は一日一回。 古泉が食べさせてくれるだけのそれでも、ろくに動かない身体には十分らしく、特にやせ衰えることもない。 髪の手入れも、髭を剃るのも、古泉がしてくれる。 俺はただペットのように大人しくしているだけだ。 「食事の時間ですよ」 と言う古泉は楽しそうで、その手にある皿に盛られた食事も美味そうなのに、古泉はそれを素直に食べさせてなどくれない。 俺はもう何度目とも分からないまま、それがここのテーブルマナーなのだと自分に言い聞かせながら、定型句を口にした。 「口移しで、食べさせて、ください」 一言一言区切って、はっきりと言うのはそうしなければ食べさせてもらえないからだ。 「よく言えました」 古泉がそう言って俺の頭を撫でた。 その手の感触は気持ちよくて、思わず頬を寄せるのに、古泉は小さく笑っただけですぐに手を離してしまった。 その手が、皿の上にあったサンドイッチをつまむ。 小ぶりの卵サンドは一口で古泉の口に収まり、噛み砕かれる。 その目的が咀嚼ではなく、むしろ味付けのためであることを、俺は知っている。 俺は空腹に任せて、古泉に口付けて食事をせがむ。 それくらいのわがままなら、古泉も許してくれると分かっているから。 思った通り、古泉は笑いながら、俺の顎を少し上向かせ、口を開いた。 どろりとしたものが口の中に流れ込み、口の中を満たす。 俺はそれを噛み砕いたりなどせずに、雛鳥のように嚥下した。 それはその必要もないまでに咀嚼されているからだが、たとえそうでなくても、俺は迷わず飲み込むんだろう。 「もっと」 とねだっているものが食事なのか、それとも古泉の唾液なのか分からないまま、俺は猫が甘えるように古泉に擦り寄った。 古泉は俺の耳の後ろを撫でながら、皿の上にあったサンドイッチを全て食べさせてくれた。 満腹に息を吐く余裕もなく、古泉は俺に言う。 「それじゃあ、準備をしてきてください」 これこそ、苦痛の始まりなのかもしれない。 俺は頷いて、ベッドから下りた。 向かうのは部屋の隅にあるガラス張りのユニットバスだ。 便器で用を足して、シャワーを浴び、身体を清める。 それこそ、全身隈なく。 シャワーのノズルを押し当てて、身体の中まで洗い流す。 湯を入れすぎないように気をつけることも、湯を入れてから少し我慢することも、古泉に教えられた。 薄い黄色をした湯が透明になるまでそれを繰り返し、吐くような臭気にも慣れていく。 その間古泉は、ガラスの向こうから俺をじっと見ているのだ。 ガラスには曇り止めの加工がされているらしく、湯気がもうもうと起こっても少しも曇らない。 だから、俺の様子は少しも隠されない。 時と場合によっては、まだ準備をしている最中なのに、古泉が入ってきて、お湯の入ったまま犯されることもあるが、今日はそうではないらしい。 その方がずっといい、と思いながら俺は風呂を出て、身体を拭う。 古泉を濡らさないように、しっかりと。 そうして、また裸のまま、ベッドに戻る。 古泉に抱きついて、甘えるように鼻を鳴らす。 「さて、今日はどうしましょうかね」 言いながら、古泉は俺の胸をまさぐりつつ、視線をめぐらせる。 部屋の隅には玩具箱と称した箱が置かれてあり、その中には様々な「玩具」がしまわれている。 「どうして欲しいですか?」 にこやかに問う古泉に、俺は答える。 「…縛って、くれ。跡が残るほど、強く」 「いいですね。それにクリップとバイブも追加してあげますよ」 俺が卑猥なことを言うほど、古泉は喜ぶ。 俺はそれを分かっていて、望む言葉を呟くだけだ。 ひたすらにこの苦しみが早く過ぎ去ってくれればいいと願いながら。 滑りの悪いロープは、かえって擦過傷を残さないものだと知ったのもこの部屋。 たった一人の人間としか関わらなくても生きていけると知ったのも、この部屋だ。 両手を背後で拘束された苦しい体勢で更に身体を締め上げられながら、俺はただ耐え忍ぶ。 口から出そうになる言葉を必死に堪える。 それを見抜いてか、 「今日もまた言ってはくれないんでしょうね」 と言いながら古泉が鞭を振るった。 鞭、と言っても短く、だからこそ鋭く、ピンポイントに打擲を与え、俺の身体に蚯蚓腫れを残していくものだ。 痛みだが快感だか分からないものに俺は声を上げる。 「んあっ…」 「ねえ、いい加減素直になってください。僕のことが好きでしょう?」 「違、う」 と俺は今日初めて、古泉に逆らう。 すぐさま飛んでくる鞭に悲鳴を上げながら、俺は首を振った。 「好きだと言ってください。嘘でも怒りませんよ。言ってくださったら、あなたを家に帰して差し上げたっていいくらいです」 それでも俺は首を振る。 この頃になると既に意識もぼうっとしてきて、考えていることがまともなのかどうかさえも分からなくなってくる。 この時間の苦しささえ、分からなくなるほどの熱に浮かされる。 それでも、たった一つのことだけは忘れない。 何があろうと、絶対に、古泉を好きだと言ってはいけないということだけは。 「んぐっ…!」 埋め込まれたバイブが震動を強め、俺はくぐもり声を立てる。 胸のクリップを、外れるギリギリの強さで引っ張られてなお、俺は古泉の言葉を拒む。 「俺は…っ、ん、何されたって、あ、…絶対、にぃっ…お前に、好きなんて…言わっ…ない…!」 喘ぎなのかさえ分からなくなった声に紛れて、言いたい言葉は不明瞭になる。 それでも古泉の耳にはちゃんと伝わるらしく、苛立ちに任せて二度三度と繰り返し打擲された俺はそのまま果てた。 「縛られて、鞭で打たれてイくなんて、はしたない人ですね」 投げつけられる言葉は、痛みと言うよりもむしろ恍惚だ。 「すまん…」 「謝るくらいなら態度で示してくださいと、何度言えば分かるんです?」 そう言われ、俺は体を前に倒した。 両手は縛られているから、自由になるのは脚くらいだ。 それでも、虫が這うようにして頬を古泉の股間へ擦り付けると、怒張したそれに舌を這わせた。 苦味さえ甘露に変えるのは脳の作用なんだろうか、などと考えながらそれを口に含む。 味わいながら、古泉を気持ちよくさせるために苦しいほどに頬張って、喉の奥で締め付けると、古泉が小さく呻く。 それが嬉しくて張り切っていることに、古泉は気がついているんだろうか。 「本当に上手になりましたね。それに、随分楽しそうで、なによりです」 生臭い白濁の飛び散った飛沫まで俺が舐めているのを見て、古泉が言った。 俺は舐め足りないそれがまだ尿道の中に残っているのに気がついて、それを吸い出そうとしているところだったから、いくらか不機嫌になりながら、 「フェラするのに歯が邪魔だ」 「歯ですか」 「どうせ食事にも使わないんだから、全部抜いちまえばいいだろ」 「それももっともな意見なのですが、そうしてしまうとあなたの綺麗な歯があなたの口の中に並んでいるのを二度と見れなくなるでしょう? キスをした時に歯列をなぞるのも僕は楽しいんですよ。それに何より、」 と古泉は笑顔で言った。 「歯を抜くためには歯医者に連れて行くか歯医者を呼ぶかしなくてはなりません。あなたを他の人間の目にさらすなんて、僕は耐えられませんよ」 「じゃあ」 古泉の長台詞の間に残っていたものを飲みきった俺は口の周りについた残滓をどうやったら舌だけで取れるかと苦心しながら言った。 「お前が、抜けば、いい、だろ」 ああ、くそ、取れねえな。 「考えておきますよ」 と古泉は笑い、俺を抱きかかえるようにして座った。 そうして、俺の頬に残っていたものを指で掬い取ると、俺の口に突っ込んだ。 俺は満足と共にそれを飲み込みながら、 「悪いな」 「……そうやって話している時は昔と変わりませんね」 俺がここに囚われる前というのは、古泉が昔と言うほど前のことなのか。 軽く驚くも、すぐにどうでもいいと思ってしまう。 こうしている間は、比較的自由に口がきける、数少ない時間だ。 どういうわけかセックスの最中だけは、俺が敬語を使わなくても、古泉は怒らない。 せっかくのそんな時間をそんな風にして浪費するのは勿体無いだろう。 「どうでもいい」 と俺は首を振って、 「それより、もう入れろよ」 「入れろ、と言われましても、あなたの中はすでにバイブでいっぱいでしょう?」 「こんな太いの入れるからだ」 せめてもう少し小さいのにしとけばよかったんだ。 「堪え性のない人ですね。あんなに強情にもなれるくせに」 拗ねるような言葉は無視して、俺は腹に軽く力を込める。 縄で縛られているせいで、うまくいかないが、少しバイブの位置が変わり、単調な震動に慣れていたはずだというのに腰が揺れた。 「んっ、あ、もう……早く、これ、出して、お前の入れろって…」 「しょうがないですね。入れてください、でしょう?」 「入れて、ください…っ」 「分かりました」 そう笑った古泉がバイブのコードを引っ張る。 震えたままのそれが中を擦りあげながらじわりと引き出されていくと、足が震えた。 「んあぁっ、も、…焦らす、な、って…」 「焦らしているつもりじゃありませんけど、そう言うんでしたら」 「あぁあああ…っ」 一息にそれが引き抜かれ、のけぞった俺を古泉が片手で抱きとめる。 「自分で入れますか? それとも、乱暴に突き上げて欲しいですか?」 「突き、上げて…」 返事はキスだった。 「本当に、あなたは気持ちがいいことが貪欲なまでにお好きですね」 「好き…好きだから、早く……」 熱に浮かされるように訴える。 「僕のことも、好きでしょう?」 俺の油断を突くように古泉は言ったが、それでも俺は首を振る。 「お前なんか、好きじゃな…っいぃあああぁぁ…!!」 文字通り一息に突き上げられた。 痛みや快感より強い恐怖に、俺は古泉へ縋りつく。 「本当に、っ、意地を張りますね。僕のことが好きだと、いい加減認めたらどうです」 「ぃやだっ、あぁっ、言うもんか…っ」 「素直じゃない口なんて、要らないんじゃありませんか」 そう思うならこの口を縫い閉じてしまえ。 俺の口から「好きだ」と聞くまで、それさえしてくれないくせに。 そんなことを思いながら、俺は意識を手放した。 目を覚ましたが部屋の中は暗かった。 まだ夜らしい。 珍しい、と思うのは、俺が気絶しようが眠ろうが、古泉は大抵ここにいる限り俺を抱き続け、苛み続けるので、俺がまともに目を覚ました時にはすでに夜は明けており、古泉はいなくなっていることがほとんどだからだ。 古泉は、まだ時間に余裕があるのか、俺の隣りで眠っている。 俺を縛っていた縄は解かれ、胸のクリップもなくなっていたがバイブだけはきっちりと俺の中に埋め込まれていた。 ただし、それはいつものことだ。 もはやどうとも思わない。 身体の一部になっている、と言えば言いすぎだが、それに近い状況だからな。 ずっと首につけられている首輪には、古泉が今夜来た時と同じように重い鎖が繋がれていて、俺が体を起こすとじゃらんと音を立てたが、古泉は目覚めそうになかった。 俺は古泉の悲しいほどに綺麗な寝顔を覗き込み、そこに憂いの色を見つけた。 ずきりと胸が痛む。 それでも、古泉に好きだとは言いたくなかった。 あの状況でそう言えば、古泉は満足しながらもどこかできっと俺を疑うだろう。 あるいは、頭から信じない。 苦し紛れに、脅されて言っただけだと思い、今以上に苦しむ古泉など、俺は見たくない。 だから、言わない。 本当に、――そう、こんなことをされてもまだ、俺は古泉のことが好きだから。 俺はそうっと身を乗り出し、古泉の唇に口付ける。 それだけで、一番言いたいことを言うことも出来ない、あの苦しみの時間を忘れさせるほどの愛しさが胸に溢れ、傷ついた心が満たされる。 「愛してる」 古泉には絶対に聞こえないよう、小さな声で囁いた。 もっと俺に酷くすればいい。 傷を残して、キスマークを残して、俺は古泉のものなんだと全身に刻み付ければいい。 痛みはすぐに消えてしまうが、傷なら残る。 それが消えてしまう前に、また新しい傷をつけてくれれば、俺は他に何も要らない。 古泉からの愛の言葉も、要らない。 今だって、口を滑らせないように必死なのに、聞いてしまったら俺はもうそれを止められなくなるだろう。 ――なんて不毛な恋なんだろうな。 その苦しみさえ悦びに変えて、俺は声を立てずに笑った。 重く短い鎖が強い独占欲のあらわれなら、首輪は所有の証だろう。 それを愛しく思いながら、俺はそっと首輪を撫でた。 この部屋のことも、愛しい。 狂ってしまった俺と古泉を守ってくれる最後の砦だからな。 俺はのそりとからだを横たえると、古泉に気づかれない程度の想いを込めて、古泉の体を抱きしめた。 目を閉じればまぶたは重く、今夜の安眠を約束してくれるようだった。 その安らかな眠りが、どうか古泉の上にも訪れるように願いながら、俺は眠りに落ちた。 |