この作品は吸血鬼パロディです
世界観などごちゃごちゃしてますがあんまり気にしないでやってください
吸血鬼が登場しますので当然のように流血他暴力的表現を伴います
苦手な方はご注意ください
大丈夫な方はどうぞ
それはまだ、俺がよく物を知らない子供の頃のことだ。 あの頃の俺は、どうして自分が村でも優遇されているのか、他の子供らとは違うことをしなくてはならないのか、何も知らずにいた。 一番幸せだった頃の、苦い思い出。 村外れの荒地で、俺は一匹の犬を拾った。 黒い毛並みは傷み、傷を負っているからか、唸ってばかりいる犬だった。 小さな仔犬の体に、大きな裂傷は痛々しく、俺は噛み付かれながらもその犬を拾って帰り、家にあった薬草で手当てをした。 俺に敵意がないと分かったからか、少しずつ仔犬は俺に懐き、体の傷も少しずつ癒えていった。 俺は自分の手でその小さな命を救えたことが嬉しく、仔犬が表を自由に駆け回れるようになるまで世話を焼いてやった。 それが、自分自身の人生を狂わせるものだとも知らずに。 そう、俺は何も知らなかった。 無知であるということが大きな罪となり得るということさえも。 吸血鬼、と呼ばれる化け物がいる。 血を吸うと書くものの、実際に奴等が吸っているものは、生きているものの持つ精気だ。 精気を吸われても少量であれば命に別状はない。 だが、大量に吸われてしまえば、命を失うほかはない。 実際にそこまで精気を吸われた例は滅多になく、命を失うだけで済むのか、それとも吸血鬼の仲間になってしまうのかは分からない。 伝承レベルの曖昧な話が伝えられるだけだ。 しかし、どうなってしまうのか分からない以上、人々が吸血鬼を恐れるのは当然のことだろう。 吸血鬼が精気を吸う手段には、血を吸うほか、性交による方法もある。 だが、吸血鬼が専ら血によって精気を吸うのは、その方法には相手の同意が必要ないからだ。 蚊やノミが遠慮の欠片もなく血を吸っていくように、眠っている人間やぼんやりしている人間の首筋に噛み付いて、奴等は精気を吸っていく。 血を介した場合、ロスが多いのか、吸血鬼が吸収した以上の精気が失われるとされる。 逆に、性交による方法はロスが少ないらしく、何度も何度も吸血鬼と交わっても死ななかった例もあるとされている。 それなのにどうして奴等がそちらの方法を用いないかと言うと、相手の同意が必要だからだということだ。 何にせよ、情報は古く、曖昧だ。 吸血鬼と交わった例など、数えるほども伝わっていないしな。 ある伝承によれば、吸血鬼とは黒い魔術に手を染めた人間だということも言われている。 しかし、別の伝承では、吸血鬼とは生まれた時に赤い羊膜をつけて生まれてきたものだという説もあるため、甚だ信用ならない。 当事者たる吸血鬼ではない人間に分かるのは、吸血鬼が恐ろしい化け物だってことと、その存在を感知し、倒すことが出来る人間が少ないってことくらいだ。 その、吸血鬼を退治する資質を持つ人間は、生まれた時に白い羊膜をつけて生まれてくる。 クルースニクと呼ばれる、吸血鬼を相対する者。 それが、俺たちってわけだ。 俺は昨日退治した吸血鬼の死体を明るい太陽の光の下で検分しながら、小さく毒づいた。 「くそ、やっぱりこいつは違う」 「それは残念だったね」 と言ったのは、この吸血鬼に襲撃されていた村に雇われているクルースニクの国木田だった。 半月ばかり一緒にこいつを追っていたのだが、いつも笑みを崩さないあたりなど、なかなかに気の抜けない相手なのだが、悪い奴ではない。 俺はため息を吐きつつ、 「付き合わせておいて悪かったな」 「僕の方も助かったんだから、気にしないでよ。ひとりでこいつを退治するなんて、僕には無理だっただろうからね。キョンが来てくれてよかったよ」 ちなみに、キョンというのは俺の通称である。 訳あって本名を名乗ることが出来ないために使ってるのだが、どうにも間抜けな響きだと思う。 俺は吸血鬼が蘇らないよう、その足の腱を念入りに切断しつつ、国木田に言った。 「こいつくらいならお前一人で十分だろ。俺が追ってる奴は、もっと強いはずだ」 「そうなの? それって、大変そうだなぁ」 本当に大変そうだと思っているんだろうかと疑いたくなるような間延びした調子で言った国木田だったが、いくらかは俺を気遣ってくれる気があるのか、 「で、キョンが追ってる吸血鬼ってどんなのなの? なんだかんだ言ってまだ教えてくれてないよね」 「俺が追ってるのは、」 と俺は憎らしい宿敵の姿を思い描く。 栗色の柔らかそうな髪。 緩やかな曲線を描く唇。 白く抜けるような肌。 そして、圧倒的な魔力。 「そんなに強いの?」 「……一度死に掛けた吸血鬼は、あり得ないほど強くなるからな」 俺の言葉に、国木田は目を見開いた。 「それ、本当だったんだ」 俺は黙って頷いた。 「ただの伝承だと思ってたよ」 「俺もだ」 言いながら、顔を顰めたのは、あの時のことがまざまざと蘇ってきたからだ。 小さな黒い犬が、俺の目の前で人の姿に変わったあの瞬間。 それでやっと、俺はそいつが吸血鬼だと分かったのだ。 吸血鬼の命を助けちまうなんて、と愕然とする俺に、そいつはわざわざ挨拶までしていきやがった。 ショックのあまりに何を言われたのかは忘れてしまったが、あの日から俺は、あいつを追い続けなければならなくなってしまった。 つまり、村を追われ、放浪することとなったのだ。 「……もうすぐ、十年か」 俺の苦々しい呟きに、国木田が言った。 「キョンの旅がうまく行くよう、僕も祈ってるよ。多分、僕の村の皆もね」 「…ありがとう」 なんとなくむず痒い思いがして顔を背けた。 何故なら、俺は感謝されるべきではないのだ。 吸血鬼の命を助け、更に強大な力を手にしたそいつを野に解き放ってしまった罪は大きい。 たとえ奴を見つけ出すことが出来たとしても、この罪を償ったことにはならない。 むしろ、奴を退治出来たその時から、俺の贖罪は始まるのだろう。 俺は嘆息し、目を閉じた。 クルースニクの能力というものは、なかなかに便利でありながらも全くもって使い物にならないものだと思う。 狼や鳥、蛇などに姿を変えることが出来るのは便利であるし、有効だとも思う。 だが、それが吸血鬼が近くにいる時にしか使えないってのは、あまりにも不便だ。 吸血鬼がそこいら中に溢れているわけではない以上基本的には、俺のようなクルースニクでも、普通の人間と同じ程度の能力しか持っていない状態が続く。 国木田のようにどこかの村で雇われているクルースニクならそれで十分だろうが、俺みたいに旅をしなければならない時、クルースニクとしての能力など、ほとんど役に立たない。 山賊に狙われてもクルースニクとしての力は全く使えないんだからな。 そのため、武術もある程度使えないと意味がない。 また、旅をし続けなくてはならない俺の場合は、吸血鬼退治以外の方法で稼がなければ即野垂れ死にが待っている。 仕方なく、副業として行商をしているのだが、商人としての才能がないので、食っていくのがやっとだ。 もう少し割のいい仕事に就くため、手に技術でもつけようかと思うのだが、それがなかなか難しい。 当分は行商が続くんだろう。 やれやれ、と空を見上げると、 「キョン!」 と声をかけられた。 この村の村長の娘、ハルヒだ。 俺と同い年のこいつは、世界の不思議が好きだとかで、吸血鬼が実在し、かつ俺がクルースニクだと知ると嬉々として俺に話をせがんできた。 この辺りに吸血鬼がいないらしいことを知って肩を落とす暇もなく、矢継ぎ早に質問をされ、俺としては苦笑するばかりだ。 しかしハルヒの父親である村長はかなり子煩悩なようで、俺を屋敷に泊めてくれたばかりか、ハルヒのわがままに付き合わせる詫びとしていくらかの金までくれた。 全くもってありがたい話だ。 「今度はなんだ?」 俺が聞くとハルヒはきらきらと目を輝かせながら、 「突然現れたり消えたりする館って知ってる?」 と言った。 それはあちこちの伝承で聞かれる話だ。 何もないはずの荒野の真ん中に唐突に現れる館があると言い、その中に入ったものは二度と戻って来れないとも言われる。 それをハルヒの口から聞かされた俺が眉を寄せたのは、その伝承が伝えられる地域には大抵吸血鬼が現れているためだった。 確かめられてはいないがおそらく、その館は吸血鬼と関係が深いのだろう。 一説には強い力を持つ吸血鬼の館だとも言われている。 その話が、吸血鬼がいないと思っていたこのあたりにも伝わっているんだろうか。 俺が問うと、ハルヒはあっさりと答えた。 「そんな話、伝わってないわよ。あんたも知らないかと思ってたんだけど」 俺が知っていたということがつまらないことであるかのように言ったハルヒだったが、だとしたらなんでそんなことを言い出したのかが理解できない。 「どこで聞いたんだ?」 誰か老人の口でも割らせたんだろうかと思いながら聞いた俺の期待を打ち砕くように、ハルヒは言った。 「昨日、谷口のバカが見たんだっていうのよ。谷口の話だからデマだと思ったけど、調べてみたらそういう話があるみたいなことが本にあったから、あんたに確かめてみようと思ったの」 谷口というのはこの村に住んでる奴で、猟師をやっているため村の外に出ることも多いのだが、いたって軽薄で調子のいいところがあるから、信憑性があるかと言われたら考え込むしかない。 だが、クルースニクとしては吸血鬼に関係する話を無視するわけにもいかないだろう。 俺は谷口に話を聞きに行こうと草むらから腰を上げた。 「谷口のところにいくつもり?」 「ああ」 「わざわざ行かなくても、色々聞いといたわよ。どこで見たのかとか、どんなだったのか、全部ね」 ハルヒならありうるだろうな。 だが、一応会っておくべきだろう。 その妙な館ってのが吸血鬼の物だとしたら、それを目撃した谷口に何か影響が出てないとも限らない。 「谷口はどこにいるんだ?」 「まだ酒場だと思うわ」 「そうか。……って、ハルヒ」 「何よ」 きょとんとした顔をしているからには、分かってないんだろうな。 「なんでお前までついてこようとするんだよ」 「館の話を誰があんたに教えてあげたと思ってんのよ。あたしが一緒に行ってあげるって言うんだから、喜んだっていいくらいよ!」 なんでそうなるんだ、と抗議しても無駄なのは、ここしばらくの逗留で悟っている。 俺はため息を吐き、 「勝手にしろよ、もう」 と呟いた。 俺が言うまでもなく、ハルヒは好きにするんだろうがな。 そうやって会いにいった谷口の状態はいたって良好のようだった。 精気を吸われた様子もないし、妙な術を掛けられた形跡もない。 ただ、薄っすらと、吸血鬼の匂いがした。 匂い、と表現したがそれは嗅覚で感じるものではなく、吸血鬼の持つ魔力の残滓のようなものだ。 そうしてその気配にはどこか覚えがあるように感じられた。 「谷口、その妙な館をどこで見たって?」 「村から北に結構行った草原だ。あの辺りにウサギを獲りに行ったら、もっと北の方にばかでかい館が見えたんだよ」 それが恐ろしかったのか、谷口は小さく身震いして、飲んでいた酒のカップを取り上げて飲み干した。 「どんな館だった?」 「どんなって……でかくて、薄暗くて、とにかく不気味だったとしか言えねえよ」 「生き物の気配はしたか?」 「それがないから不気味だったんだろうな。ありゃ」 決定的だな。 俺は小さく口を歪めた。 やっと、会えるんだろうか。 俺の人生を変えたあの化け物に。 「どうするの? キョン」 ハルヒが聞いてきたのは、酒場を出てすぐだった。 「判断するのはもう少し情報を集めてからだ。まだ早いからな」 「でも、どうするかもう決めてんでしょ。あんたのことだから」 まあな。 ……この村に近づいてくるようなら、この村に入ってくる前に迎え撃つ。 離れていくようなら追うだけだ。 とりあえず、ここが狙われているかどうかが問題だな。 これだけ世話になっておいて、見捨てるわけにはいかないだろう。 それに、と俺はハルヒに目を向けた。 「何よ?」 「いや、なんでもない」 と口で言いはしたものの、不安はあった。 吸血鬼が好むのは若くて精気の溢れる女性であることが多い。 ハルヒは活力の塊みたいな奴だから、狙われる可能性は高い。 これまでの恩もある。 ハルヒもこの村も守って見せると、俺は胸の内で誓った。 俺の嫌な予感を確信に変えたいかのように、時が経つほどに吸血鬼の気配は強まっていた。 間違いなく、この村へ近づいてきている。 それも、尋常でないほど強い力を持った吸血鬼が。 正直なところ、勝てるかどうか分からない。 だが、それでも、その吸血鬼が俺の追うものであれと、祈らずにはいられなかった。 「キョン…大丈夫なの…?」 魔性のものに敏感な獣たちが姿を消したことで異変を感じた村人たちと同様に、ハルヒも不安を感じているようだった。 俺は笑顔を作りもせずに言った。 「何とかしてみせる」 「何とかって……」 「クルースニクにも、切り札はあるからな」 自分の命を引き換えに吸血鬼を消滅させるその技は、一度きりしか使えないものだが、出し渋るようなものじゃない。 この村のためなら、使ったって惜しくはないしな。 「死ぬつもりじゃないわよね」 「当たり前だろ。あいつを倒して、村に戻るのが俺の望みなんだからな」 そう、少しだけ嘘を吐いた。 村に戻ることなど、すでに望んではいなかった。 俺が望むのは、贖罪だけだ。 そして、この村を守れれば、たとえ相手が俺の狙う奴でなかったとしても、贖罪はなされたと思える。 それがたとえ独り善がりな思いであっても。 今夜には吸血鬼が現れるだろう。 期待とも不安ともつかない感情と共にそう思った。 「ハルヒ、そろそろお前も家の中にこもってろよ」 「あんたはどうすんのよ」 「俺がこもってたんじゃ意味ないだろ」 「あんただけ残してけって言うの」 俺を睨み上げてくるハルヒの目はどこまでも強気だ。 羨ましくなるくらいの強さだな。 俺は笑いながら、 「それが俺の仕事なんだ。ここいらじゃあまり見ないかも知れないがな」 そうだ。 家の中からならどんな風にしてるのか見ててもいいぞ。 ただし、外には出てくるな。 「……分かったわよ」 唇を尖らせながら言ったハルヒを送っていこうとした時だった。 ぞっとするような気配が恐ろしいほどの速さで近づいてきたのは。 「伏せろ! ハルヒ!!」 「え? …っ!?」 黒い獣。 狼か犬かは俺には分からない。 風のように速く近づいてきたそれが、ハルヒの腕近くを掠めて行った。 ハルヒの腕につけられた傷から、一筋の血が流れる。 「この野郎!」 叫び様、俺も姿を変えた。 白い鷲となり上空へと舞い上がる。 素早く動き回る物を追うなら上空からの方がいいからな。 そうして見つけた獣が再びハルヒへ迫るのへ、勢いよく降下する。 それはかわされたが、獣は村の外へと駆け出していた。 俺は自分の姿を白い狼へ変えながら、ハルヒへ怒鳴った。 「早く家の中へ入れ!」 「キョン…!?」 「急げ!」 家々には俺が吸血鬼避けのまじないを掛けておいた。 少なくとも丸一日は吸血鬼は入れないはずだ。 早めにしておいてよかったと思うと共に、予想より早く吸血鬼が来たことに驚きを隠せない。 昼日中に襲撃してくることも、夜活動することが多い吸血鬼にしては珍しいことだった。 だが、予想が外れたことに驚愕している暇はない。 とにかく奴を追う。 北へ、草原の方へと駆けて行くと、背丈の高い草の中に身を潜めた黒い獣の姿を見つけた。 苛立ちながら、俺は人の姿となり、問うた。 「どうして逃げたんだ? 俺の力でお前に敵うはずがないのは、お前にも分かってるだろ」 それくらい、力の差は歴然としていた。 今でも、ここから逃げ出したいくらい、威圧感を感じている。 それも、相手は力を抑えているらしいのに、だ。 だからこそ、こいつがまるで遊ぶように、あるいはそうすることが台本に書いてあったからとでも言うように、少しだけハルヒにちょっかいを掛け、逃げ出したことが不思議でたまらない。 納得できない。 そう思い、問いかけた俺に、 「僕は絶対に、あなたには勝てませんよ」 穏やかな声が聞こえた。 若い男の声だ。 間違いなく、聞き覚えがあった。 顔を顰めた俺に、声は言う。 「恩ある人へ向けるような牙はありませんから」 「――やっぱりお前か…!」 驚きで、絞り出すような声しか出なかった。 声は小さく苦笑して、 「僕のことを、話してしまったんですね。……いけないと言ったのに…」 その言葉に、忘れていた映像が蘇ってきた。 俺の目の前で黒い仔犬は人の形になった。 幼い俺よりずっと大きな青年に、俺は腰を抜かした。 殺されるんだと思った時、そいつは恭しく腰を折って見せた。 「ありがとうございました」 「う、え…?」 「驚かせてすみません。でも、どうしても、お礼を言っていきたかったんです」 怯える俺に、傷ついた顔をしながらもそいつは言った。 「僕のことを人に話せば、あなたが村を追われてしまうでしょう。そうならないために、犬はどうしたのかと聞かれたら逃げてしまったと答えてください。…本当は、あなたの記憶を消すことが出来ればよかったのですが、クルースニクであるあなたに暗示をかけるのは難しいでしょうから、止めておきます。どうか、自分で頑張ってください。このままこの村にいられるように」 そう言って身を翻したそいつは、もう一度だけ振り返り、 「…本当に、ありがとうございました。絶対に、僕のことを言ってはいけませんよ」 とその身を黒く小さなコウモリに変えると、夜の闇の中へと飛んでいった。 「僕の名前は、古泉一樹と言います。何かあったら、僕を呼んでください」 そう言い残して。 「こいず…み…?」 俺が呼ぶと、草原の中に人影が現れた。 栗色の髪も、抜けるように白い肌の色も変わっていない。 憂えるような表情さえ、そっくりに思えた。 「お久しぶりです」 どうしてだろうか。 優雅に腰を折って見せたその姿を見て、俺の目からは涙が零れ落ちていった。 怨みも憎しみも全て忘れたように、ただ懐かしかった。 「元気に……なってたんだな…」 仇だと思っていた相手に対して言うにはおかしな言葉だったが、古泉は笑いもせずに受けてくれた。 「あなたのおかげですよ。それなのに……こんなことになってしまい、しかもそれをこれまで知らずにいました。すみません…」 「お前のせいじゃない」 悪いのは、俺だ。 しかし古泉は首を振り、 「僕のせいです。だから、」 自分の胸を指差して言った。 「僕の心臓を取り出して、村へ持って帰ってください」 と。 |